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31話 (基本イリス視点)

 コウガ達が進化を果たした次の日。


 私達はここでの用事が終わったつもりだった海岸に来ている。というのも、目先のレベルあげに必死になってしまったおかげで本来の目的がすっとんでいたから。

 ……私がこの海岸に来た本来の目的とは、クエストに必要なアイテム《碑貝の殻》を探して集める事。断じてレベル上げだけして戻って良い場所ではなかったのです。


 という訳で、皆で手分けしてクエストアイテムの《碑貝の殻》がありそうなところを探しまわる。

 流石に2日以上もこの海岸に通っていたので地理だけはしっかり覚えているからね!怪しい所なんてすぐに思いつきますよ?


 なら、なぜアイテム探しを忘れていたかは、聞かないであげて。私だって人間なんですから忘れることくらいあります。その頻度はまあそれなりにあるけどさ。


 貝が集まる場所って海の岩場とか砂浜とか海底のサンゴとかが生えてる周辺とかじゃない?

 海岸フィールドなので岩場は数多くあるのでコウガやセツナ先導のもと探索をし、砂浜は私とクルスでのんびりと散策、海底はいうまでもなくイリスにお願いしてやってもらっています。


 イリスだけはランク1の仲間なので海底で強そうなモンスターに出会ったらすぐに逃げるように行っておきました。仲間モンスターがやられちゃった場合、街の教会でリザレクションをかけてもらわないと復活できないらしいので。


 だから絶対無理しちゃダメなんだからねー!



 ★☆★☆★☆★☆★☆★☆


 あたしは魚!名前はまだ無い……。少し前までお水がしょっぱくてすごく広い所でたくさんの家族と暮らしていたの。

 だけどある時、あたし達の住む海域にリーガルレヴィアとかいう、ものすっごく大きい魚のモンスターが現れてあたし達の住んでいた場所をめちゃくちゃにした。


 その時にお父さんやお母さん、そしてたくさんの仲間もアイツの起こした流れの速い海流でどこかへ流され行方が分からなくなっちゃった。

 あたしは運よく、岩の隙間に挟まったから流されることはなかった。そんな恵まれた状態だったのに、あの時のあたしは、アイツに住処を追われたことで頭に血が上り、あいつに向かって何度も何度も体当たりを仕掛けた。

 だけどあたしから見れば相手は山のように大きな体、小石にも劣る体の大きさではアイツに攻撃をしても攻撃とも認識されないという体たらく。


 それでも何度か繰り返した時、アイツがこっちを向いた。だけどそれはあたしに気付いたというわけではなく、単にあいつのエサとなるモンスターの群れがいただけのこと。

 あいつはその口を大きく開けて周りの水ごとモンスターを吸い込んでいく。当然そのモンスターのいる方向には、あたしもいたわけで……。


 あっけなくあたしはあいつに食われ、あいつの体の中を流されていく。途中幾つか分岐があり大半のモンスターは嫌な気配がする方向へ流されていく。

 なぜかあたしは危ない気配が少ない方向にばかり流されちゃってた。多分からだが小さすぎてエサにもなれ無いと判断されたのかも?何故分かったかといえば周りにはあたしと同じくらいの魚も何匹か居たもん。


 そんなこんなで数時間流され続け、最終的に大量の水と僅かな魚たちと共に貯水池?っぽい所に集められました。


 ここは、時折水が減り、暫くするとまた水が流れ込んでくる場所。

 恐らく水が減っているのは何処かに排出しているのだとおもう。お母さんが大きい魚は呼吸と共に水を吐き出すヤツもいるって言ってたから。


 水の増減は頻度が高いので、あたしは注意しつつ水が何処に吸い込まれていくかを見極める。

 ようやくその穴っぽい場所が分かりむやみに吸い込まれないように様子を見ていると、水やら魚が吸い込まれて数秒後には、ものすごい勢いで空に向かって打ち上げられているのが分かった。


 あたしは水が減った瞬間を見計らって水面から顔をだし、水が飛んでいった方向を見ると上部に小さな穴がみえた。


 あの下の穴に吸い込まれたら多分、狭い穴の中の締め付ける力であたしは潰されちゃう。だからここから出るチャンスは水がすごく減ってからあの上の穴に向かって吹き上げられる僅かな瞬間。

 でもその作戦もかなり危うい。下からの水圧が強すぎてもあたしは死ぬだろうし、仮に上手く水の圧力に耐えて吹き飛ばされたとしても上の穴から無事に出れるとは限らないのだから。


 でも……試すしかない。アイツのなかでずっと過ごすなんてまっぴらゴメンだから!


 ここから出てアイツを倒す力を身につけてアイツをボコボコしないと気持ちが治まらない!


 「女は根性!」


 あたしはそう呟き、タイミングを見計らい上昇する水流に身を任せた。



 恐ろしい痛みがあたしの体を襲う。痛みがあるって事は生きてるってことだからまだ大丈夫、耐えられる。あたしは必死に上手く外に出られることを祈った。


 祈りは届き次に目を開けたときには、空を飛んでいた。

 んっ?意味が分からない?あたしも分からないよ!


 アイツから放り出されて無事で澄んだことはうれしけど、あたしは一体何処へ向かっているのか……。

 あぁ、体が乾いてきちゃう……完全に乾いたらしんじゃうよー。だれかーたすけてー。


 《パッシブスキル【水入らず】を修得しました》


 な、なんかきたよー!?よくわかんないけどしんどかったのがマシになった!誰か知らないけどありがとうー。でもどうせなら、何処に行くかわかんないから行き先くらいは自分で選ばせてほしいよー!


 《パッシブスキル【浮遊】【飛行】を取得しました》


 わーい。なんか一杯力がもらえた!


 力が手に入った瞬間その力の使い方も分かるようになった。あたしは早速その力を使い、ただ飛ばされるだけだった体を静止させ、水の気配がある方向目指して空を泳いだ。


 そして見つけた水場。だけどその回りにはなにか灰色の鳥がたくさん飛んでいて嫌な感じ。

 この場所はやめたほうが良いかな?と思い方向転換するも時、既に遅し……。


 灰色の鳥の群れに目を付けられたあたしは、逃げたかったけど手に入ったばかりの力は利点ばかりじゃなかったの。ここまで飛んできて飛行能力を継続する体力がなかったみたい。

 元から空を飛ぶことに特化している鳥に勝てるはずもなく、あたしは追いつかれ体をつつかれる。


 うぅ、いたい、いたいよっ!でもいうなればまだ痛いだけですんでる。


 元々あたしが住んでいたしょっぱい水の上に出る鳥につつかれたらすぐ食べられちゃうってきいてたから、ここの鳥はあたしが住んでいた所よりは弱いのかもしれない。


 博識なお母さんから確か鳥は水の中までは追いかけてこないって聞いてたので、このまま痛い思いをするくらいなら水の中に逃げ込んじゃえと考えた。

 あたしの場合考えた=行動したということと同義だからすでに体は下の水に向けて一直線に降りて(墜ちて)いく。


 ドッポーン


 なんとか水の中に逃げ込めたっ!お母さんの言った通り灰色の鳥は水の中まで追ってこなかった。その代わりに水の上から離れようともしなかったけど。


 もしかしてあたしが出てくるの待ってるとか言う事?


 そっちがその気ならあたしは意地でも出ないよ!

 持久戦?上等!!あたしは食べなくても3日間戦える女よ(自称)あたしを簡単に食べれるなんて思わないことね!


 それにしてもここの水は全然しょっぱくないなー。かといって過ごしやすいかって言われるとビミョウー。

 という訳で、ただ待ってるのもあれだから偶に顔を出して灰色の鳥を水で打ち落としてチャンスをうかがおうと思った。



 次の日。あたしは思ったよりも早くチャンスに恵まれた。

 昨日と変わらず、水の上でギャアギャアといいながら飛んでいる灰色の鳥に水を飛ばしていく。

 鳥は水が2回くらい当たれば落ちることが分かっているから、顔を出すと同時に水を2連射で確実に数を減らしていった。


 いつもどおり水を放ち鳥を落としていたんだけど、その時は完全に不注意で後ろから来ていた鳥に気付いてなかった。水で1羽落とした代わりに、あたしは捕らえられ鳥のくちばしにつつかれようとしていたの。


 その時、少し離れた所にある陸からあたしが使うものと違った魔法が飛んできた。その魔法は風の魔法で、鳥たちを一網打尽にしてしまった。

 陸を見るとたしかニンゲンとかいうやつと毛むくじゃらの何かが2体もいた。その2体はニンゲンに向けて

「褒めて」と訴えていたのがわかる。

 ニンゲンはその意思を汲み取っていたのか毛むくじゃらを2体ワッシワッシと撫ぜて労っていた。

 

 それにしても、あの魔法はつよいー。さっきの魔法ってあのニンゲン?とかいうのが使ったのかな?

 あのニンゲンに魔法を教えてもらえば、アイツに勝てる力が付くかもしれない!


 よ、よーし。そうと決まれば売り込み開始だー!




 最初ニンゲンはあたしを置いて立ち去ろうとしたけど、必死の売込みの結果、あたしはニンゲンたちと一緒に行動できるようになった。

 その理由があたしが空を飛ぶ魚だからなんだって。確かにあたしみたいに空高く飛ぶ魚ってみたことないよねー。納得!


 あっ、そうそう、あたしはニンゲンに名前って言うものをもらったんだ。

 その名前はイリス。名前をつけてもらったらなにかこのニンゲン……じゃないご主人様……んー?お姉さま。あっこれだっ!

 お姉さまのことがなんとなく分かるようになった。お姉さまは魔法とか使えないけど関わったあたしみたいなモンスター?を強くする技を持ってる。他にも色々技を持っている感じはする。

 ただ、お姉さまが自分で気付いていない能力は使えないみたいだからはやく気付いてほしいな。


 「俺達のあとなら可愛がってもらって良いぞ」

 「この群れの最上位は言うまでもなくご主人様よ?その次は勿論私達なの…分かるわね?」


 そう言ったのはコウガさん達。


 さっきの毛むくじゃらの先輩達はコウガさんとセツナ様っていうんだって。

 コウガさんは前に出て戦うタイプでセツナ様は魔法……あたしを助けてくれた魔法はセツナ様が放った魔法だったの……を使って戦うタイプなんだって。

 お姉さまが言うにはしばらくはセツナ様たちが弱らせたモンスターにトドメをさして強くなればいいって教えてくれた。



 その後色々あって鳥のクルスさんが仲間になった。


 「ほう?我への供物か?今すぐ食ってやろうぞー!くけぇー!」


 ……何かにつけてあたしを追いかけてくる困った後輩さんです。でもあたしなんかより10倍以上強いので本気でこられたら文字通り食べられちゃう。だから遊びだって分かってるけど、びっくりするのは仕方ないよね。



 そして昨日、コウガさんとセツナ様が今までにも増して強く進化した。今までとは比べ物にならない力を感じます。多分クルスさんと同じ位……それ以上かもしれない。

 それを見たあたしも早く進化したい!と強く思った。



 今日、お姉さまは何とか貝というものを探してるみたいであたし達に見つけたら教えてねと言いながら其々が探索する場所を振り分けて行く。

 コウガさんたちはお姉さまの命を受け地上の足場の悪い場所を探索し、クルスさんはお姉さまと一緒に砂浜へ、そしてあたしは海の中を割り当てられた。


 海の中は今のあたしと互角くらいのモンスターたちが多く生息していて、一人で戦うには少々厳しい。

 お姉さまも無理しないで強そうなのがでたら戻ってきていいからねと、言ってくれたけど、そろそろあたしもお姉さまの役に立てると言う事を示しておかないとダメな気がする。


 あたしだけでも倒せるウミゴカイというものだけは戦って(食べて)少しでもお姉さまに褒めてもらえたら良いな。

 お姉さまに褒められる回数が多い=進化が近いってことでしょ?セツナ様がいってたもん。



 そしてあたしは見つけた。海と砂浜の境目に赤くて大きくてウネウネした触手を出している貝を。

 強さは……やっぱりあたしと同じ位だと思う。だからあたしは戦った……。

 コウガさんたちには助けを求めず、ただひたすら遠距離から効果の薄い水魔法を打ち続ける。


 「おぬし……何をしておる!?抜け駆けするつもりだな?そんな事はこの我が許さぬぞ!」


 闘いが長引きすぎたのか、気付いたらクルスさんがあたしの頭上を旋回していた。

 クルスさんがいるってことはお姉さまも気付いたのかな?後で怒られちゃうかな?


 「く、クルスさん。お姉さまはここで戦ってる事を知ってるの?」


 「我は知らぬ!我はただ空から探しているとおぬしが変なものと戦っておったから介入したまでの事。……もしやこのウネウネしたものが主殿の求めている貝とやらなのか?」


 「た、たぶんそう?」


 「ふむ、そういうことならなぜ我らに助けを求めぬ?おぬしでは力不足……とは言わぬが苦しい戦いになるのは必然であろう?」


 「お姉さまに認めて欲しいから。そして皆と同じように力が欲しい」


 ……アイツに勝つ為にも……。



 「ふむ、まあよかろう。だが余り時間を掛けては主殿に気付かれてしまうやも知れぬ。ここは我とおぬしでさっさとこやつを倒し主殿の求めるアイテムとやらを取得し、うまい肉を所望しようぞ!」


 「そうだね。分かった。じゃあクルスさん援助お願いっ」


 「む?何を言っておる。早い者勝ちに決まっておろうが!」


 「えーっ!共闘するって言ってたのにぃー!」


 「そんな事は言っておらぬよ。我はさっさとこやつを二人で倒し……といったであろう?ならばどちらが攻撃をして倒しても問題あるまい?」


 くっ!?ヘリクツだー!クルスさんにかかればこんな貝なんてすぐ倒されちゃう!あたしも攻撃に参加しないと!




 ……シクシク。

 結局クルスさんに貝を倒されちゃった……。ひどいよー見つけたのはあたしが先だったのに……。


 「クルスぅっ!あなたは何勝手に対象モンスターを狩っちゃうかなぁ?私は見つけたら教えてっていったよね?」


 優しい言い方だけどお姉さまはお怒りです……。


 「クケッ!?(いや、我は悪くないぞ?悪いのは対象を先に見付けたイリスの方であろう?)」


 クルスさん……いい訳してもお姉さまには通じてないよ?


 「クケッ!?じゃなーい!!そこに座って反省する事!後、クルスは今日のお肉3/4カット!!」


 「クケェェ!?(そ、そんなバカなぁぁ!なぜ我だけがぁぁ!)」


 クルスさんはガックリと肩(翼)を落とし、落ち込んでいる。でも良かったね。優しいお姉さまだから1/4はお肉もらえるんだよ!?


 「……イリス。ご主人様が俺達の言葉を理解していなくて助かったな?」


 コウガさんが言う。ほんとにその通りだよね。クルスさんには悪いけど、あたしの獲物を奪った罰だよ!


 「あっ、そうそう。イリスもクルスと同じ場所にいたわよね?連帯責任だからそのつもりで!」


 なんだってー!お姉さまにはバレてたぁぁ!

 そういうことであたしのご飯もお肉1/4だけでした。ひ、ひもじぃ……。



 ★☆★☆★☆★☆★☆★☆


 《クエストアイテム《碑貝の殻》を獲得しました》


 ほんとにクルスもイリスも私達に見えない場所で固まって何をしてるのかと思ったら、クエストアイテムをドロップするモンスターと戦闘してたみたい。

 無事二人で倒したから良いものの、私を心配させたから後でオシオキしないと!

 まだ一回目の罰だからご飯のお肉の量をカットする程度で済ませてあげようかな。次に心配させるようなことをしたらもっとひどい罰にしてやるんだから。



 現在ユーディットさんからうけているクエストの確保済みアイテムは《岩清水》、《碑貝の殻》、《輝赤石》この3種。

 あとはイタチの出る森で採れる《ウツボカヅラの枝》だけ。

 皆強くなったんだしそろそろ挑んでも良い頃だよね。



 で、それとは別にパーシヴァルさんから請けているアイテム集めも頑張らないと。

 ひとつは多分ノースガイア山山頂で良いと思う。あそこにはすごく足場の悪い崖があったからそこを上れば何かがありそう。

 残りの2種類《鬼王の大角》《霊水草》の情報は全く集められてないからいい加減手を付けないとね。



 まあとりあえず今いけるところから片付けるって言う考えは間違ってないはずだから、次の目的地は森で決定!

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