21話
あぁ、疲れました。何が?って課題ですよ、か・だ・い。
私の通う大学の課題って種類が多くて大変なんです。
そのくせ噂によると教授たちは提出された課題には碌に目を通さないとか。学生の苦労をなんだと思ってるんですかね、ったくもぅ~。
とまあそういう嫌~な話もあったけどそれも今日まで。
そう、本日から待ちに待った2ヶ月近くある夏季休暇なのです。つまりエスをプレイし放題!あぁ、なんていう天国……。もう夢なら覚めないで……。
って言いたいところなんだけどエスにばかり、かまけてられないのも事実。
実はこの夏季休暇から以前面接で採用してもらったアルバイトに行く必要があるのです。だって一人暮らしですからやっぱりお金は必要でしょ?
学費と家賃は親が出してくれてるけど、食費とかその他の経費は自分で稼がないとダメなのです。あぁ……夏季休暇くらいはダラダラしたい……。
アルバイトの開始は本日夕方からなので、まだ新聞配達すらされて無いほどの早朝である今からだったらご飯とかの時間を抜いても10時間は余裕ですね!うふふ!
そういうわけで、いざエスの世界へ旅立とうではないかぁー!
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ガイアの街のログインポイントである広場に降り立つとすぐに、コウガ達を呼び出しつつ状況の確認を行う。
課題に取り組んでる間もなんだかんだで時間を見つけて少しずつプレイしてたんだけど、やっぱりゲームに来たらステータスって確認したくなりません?
私自身のステータスなんてキャラ作成当時からほとんど変わってないですよ?変わるものって言えば気配察知のスキルが1だったのが5に成長してるくらい。
私が気配察知を使わなくてもスキルも無い割りに、そう言ったことに敏感なコウガやクルスといった子たちが見つけてくれるから、使い機会がなかったのよ。
気配察知は害意を持って私に近づく対象に対して発動するスキルだから、パッシブスキルの【不興】関係の効果が及ぶ虫系と粘体系のモンスターと戦う時に発動する。あとはパッシブスキルに含まれない亜人種(例・ゴブリンなど)とか無機物種(例・コーヤドールなど)のモンスターくらい?
ステータスを確認し、クエストの受諾状況の確認を済ませた。
今請けているクエストは、面倒くさいけど報酬が良さそうなものばかりです。簡単に済ませられる類のものは課題の合間合間にログインしていた時間で片付けてある。
《常注クエスト:時折東の荒野に現れる【ストーンゴーレム】の討伐》
《常注クエスト:時折北の山に現れる【MTバグ】の討伐》
《常注クエスト:時折西の湿地に現れる【マインキャティッシュ】の討伐》
とまあこんなものです。まあ要するにレアモンスター討伐の依頼ですね。常注クエストの中でも狙って達成できるものではないので、こう言うものは報酬金は多いものの残りがちになる。
当然ながら依頼を請けずに討伐している人は多いけど、その場合はノーカウントになる。
一度に請けられるのは1パーティで5つまで(個人で請けていた場合はパーティで請けたものが優先される)ですのでいつ会えるか分からない討伐依頼を持っておくのは嫌なんでしょうね。それなら達成できる依頼だけを持って行き来した方が効率的に稼げますから。
私達が初日に倒した連続強盗殺人犯みたいに賞金首にしたら良いのにと思うけど、賞金首になるのは人型だけみたい。
「それじゃあ、近いところからまわっていこっか」
私はコウガ達を引き連れ、まずは西の湿地へ、次にノースガイア山、最後に東の荒野に行くことにした。
西の湿地帯は足元の環境が非常に悪くコウガやセツナにとっては非常に動きにくい場所。
だけど、イリスとクルスに関しては問題ない。だって二人とも飛べるし。
イリスに関しては湿地に潜っていつもより元気一杯の様子です。
よって、この湿地ではイリスとクルスをメインにレベル上げとクエスト達成を目指していきたいと思う。
この湿地で一番出現するモンスターはマッドスライムという粘体種のモンスターで、私の近くに沸いたときは私に向かって攻撃してくるから要注意。私の守護役は当然コウガとセツナで付かず離れずで肉壁として頑張ってくれてる。守備力に優れてるわけじゃないのにゴメンね二人とも……。
次に現れやすいのは湿地から突然群れで現れるマイクロフライという魚種モンスター。
1体1体は弱いけど、如何せん数が多く対処が難しい。
ここで活躍したのはクルス。
マイクロフライの群れを見つけるなり、クケェ!といいながら突っ込んでいき、食う、食べる、丸ごと飲み込む、翼で切り刻む……あれ?最後以外全部食べてるじゃん。ほんとに魚が好きなんだね。でもイリスを間違って食べないようにしてね?絶対だからね?
ゴボゴボゴボッ!
バッシャーン!!
とまあ蹂躙に蹂躙を重ね、1時間くらい経過した時ようやく対象のモンスターが現れました。
見た感じからして鯰。なるほどマインキャティッシュというのは短縮した名前でしたか。恐らく正式名称はマインキャットフィッシュなのでしょうけど名前が長すぎて文字制限に引っかかったとかそういう感じに違いない。まあ、短縮しても長いとか、ダメじゃない?
「ゴパッ、ゴパッ……」
マインキャティッシュ……長いので鯰にします。
確か情報サイトに鯰を討伐した人の記録があったね。口から爆発する塊を出してきて効果範囲が広く、威力もそこそこあるので魔術師タイプは一撃で死ぬこともあるんでしたっけ。
ということは私が食らえば多分……というかほぼ死にますね。自慢じゃないですけど私の能力はそこらの魔術師以下(ドヤ顔+胸張り)ですからっ。
相変わらず動きにくい場所だからコウガ達にはきついだろうなぁ。
セツナに風魔法を使わせたいけど、あまり敵の気を引いちゃうと範囲爆弾でもろとも爆破されちゃうし。
やっぱイリスとクルスに任せちゃえ。という訳で、私に攻撃軌道が向かないように各々自由に攻撃せよと指示して置いた。あとは私は見ーてーるーだけー。
戦っている子の邪魔をしないことは調教師?として大事なことなんだよ。
鯰は空を飛ぶイリスたちに翻弄され、情報より早く沈んだ。やっぱり人が相手するより、空を飛ぶという有利な状況を作り出せる方が良いね。爆発する塊も当たらなければそもそも意味が無いんだしさ。
《常注クエスト:時折西の湿地に現れる【マインキャティッシュ】の討伐》を達成しました。
ドロップアイテムは鯰のヒゲと鯰の肉。それに水地の結晶というアイテムを取得できました。
初めての結晶アイテム。こう言う結晶系アイテムは装備品の強化に使えるらしいんです。
勿論自分で手に入れて使うのも良いですけど、使いたい武器を扱える生産職の人に代理で使ってもらった方が効果が上がるんだって。しかも生産職さんの経験値も上昇するとかで一石二鳥となるわけ。
……ジィ(ジュルッポタポタッ)
……ジィ(ジュルリ)
……ジィ(タラーリ)
……ジィ(ジュルッ)
コウガ・セツナ・イリス・クルスの4体が見つめるのは鯰の肉。
意外と大きい肉塊だけど、一つしかないのよねー。本来だったら功労賞のイリスとクルスに半分ずつ分けるんだけど、私を守ってくれてたコウガとセツナにも食べさせてあげたい……。
とりあえず4体には待たせておき、私はシオリさんへ連絡をする。そう、このレアモンの肉を調理して4等分出来ないか聞いたのだ。
結果可能だという事です。やりましたね!ちゃんと分けてあげないとこの子達拗ねちゃうからね。
「食べたいのは分かるけど街に帰るまで我慢して。みんなが同じ量食べれるように料理してもらうから」
「ワウッ!?」
「オフゥッ…」
「コポー……」
「クケェッ…」
町に帰るまで我慢してとは言ったけど次に向かうのは北の山脈だよ。いちいちガイアの街に戻るなんて時間の無駄だし、どうせ次のMTバグも肉をおとすっていう情報があるから、2種のレアモンスターの肉盛り合わせって感じで食べさせてあげようと思う。
鯰の肉はまあ泥臭いのを取れば料理に使えるからいいとして虫の肉は可能な限り食べたくないもの。
ちなみに流石に最後に向かう予定のストーンゴーレムは肉は無いみたい。むしろあったら怖いよね……。




