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閑話 アーサーとブレイブソウルの面々

本編書くより長くなった……。まとめがヘタだからダラダラと続いている気がする。

 やあ、皆始めまして。俺は浅葱雄太……もといアーサーというものだ。

 俺はこのアーサーと言う名前を使って【Eternal Story】通称エスというゲームをプレイしている。


 エスを共にプレイしている友人にして幼馴染の樫谷伊織と滝本沙良という子達とプレイしている。

 幼馴染と言った通り、彼女達は昔から仲の良い友人として苦しい時も悲しい時も、そして嬉しい時も共に分かち合ってきた大切な子達だ。


 二人はカーシャ(樫谷)サアラ(沙良)と名乗り、ゲームの世界でも俺と一緒に居ることを望んでくれたので俺達はパーティ《ブレイブソウル》を結成したんだ。


 ……まあカーシャになんかダサいって言われたが気にしないことにした。あぁ、気になんてしてないさ。



 そんな俺達はそれぞれ現実で打ち込んできたことがある。


 俺は剣道、伊織は総合格闘技と柔道、沙良は弓道といったもので俺達3人はそれぞれ高校生の部門で全国トップとまでは言わないまでも、全国で上位ランキング入りするくらいには腕を磨いている。


 まずは何故こんな話をしたかというとエスというゲームには、リアルな身体能力も僅かながら影響があるときいていた。

 なので現実ではなかなか良い線行ってる俺達なら、他の人が苦労するような場所にも責めていけるんじゃないかと思ったんだ。


 その予想は見事に的中し、俺達は初日から誰も行った事の無いエリア、ノースガイア山で余裕を持って行動する事ができた。

 行った当初はミミズがいきなり地中から襲ってきてサアラが悲鳴を上げて逃げ回ってたくらいか。

 まあそのミミズも遭遇回数が上がるに連れてサアラも慣れてきたらしく、無心で射抜くという技をやってのけた。口からは魂が出ていた気がしないでもないけど。


 カーシャに関しては特に心配する必要はなかった。カーシャのメインスキルは格闘術。

 やはりミミズに触れるのはイヤだったらしく、サブウェポンとしてもっていた短剣・小太刀を上手く扱い、今はメインスキルよりもサブウェポンの方がレベルが高いということになっている。


 俺は別にミミズが怖いってわけでも無いし、他に現れたビッグチュンとかいう大きいスズメのモンスターも落ち着いて相手することが出来るから問題は無い。


 そんな俺達がちょうど良いと思った狩場は山の中腹にある大木の広場。

 ここは大スズメがどんどん出現するのでたった一日で面白いほどレベルが上がった。ぶっちゃけ俺達のレベル今はこのエスでトップじゃないかって思うくらいだ。



 そして二日目、俺は出会った。


 ガイアの街と山を往復して何度目かの補給を終え、山に向かうとその麓に犬を2頭連れた銀色の髪の女性プレイヤーが山を見上げていたんだ。


 「なあ、そこの犬連れたプレイヤーの人。アンタ、まさかこの山に一人でレベルあげに来たのか?」


 俺はなんとなくその人に声をかけた。最初は……一人だったら大変だから本当になんとなく手助けしてやりたいなと思っただけだった。

 俺ならこの山の事は一通りまわったからしっている。まあ道中にあった山村の利用は出来なかったのは面倒だとおもったけどな。



 振り向いた彼女を見たとき、俺の胸の鼓動が強くなった気がした。

 振り向く寸前まで足元に居る大きな犬を撫ぜ……いや、モフっていたらしく、その表情は緩んでいた。しかしそんな緩んだ顔も目が離せないほどに美しかった。


 後で聞いた話によると俺だけじゃなくカーシャやサアラも同じだったらしい。同性ですら見とれさせるってすごい人なんだな。素直にそう思った。


 彼女がこの山に来た理由を簡単に説明してくれた。今までの所だと役不足なので少し強いところで戦えるか試したいということだった。


 俺は敵の強さを知りたいなら一緒に行動しないか?的な事を言ったら、彼女は一人と仲間モンスターだけで頑張りたいのだと言い張る。


 それに俺の突然言い出した誘いに関してなぜかカーシャが慌てて無理強いは良くないよと言い出す。

 あぁ、そうか。カーシャって犬苦手だったわ。幼い頃に近所のドーベルマンに噛まれて大怪我を負ったんだよな。

 それで終わらず、そのドーベルマンに死闘の末、柔道技をめてしまい、骨を折るといった怪我をさせた。

 そのドーベルマンは全国区のドッグショーで活躍する犬だったがその怪我が元で引退することに。


 ドーベルマンの飼い主と樫谷家で裁判を起こしてたな。そんなこんながあって伊織は小型犬は比較的大丈夫になったが大型の犬は苦手になったままだ。



 彼女を連れて行くと、もれなく大きい犬が(2頭も)ついてくるからイヤなんだろうなぁ。




 その後すぐにサアラはカーシャが犬嫌いだという事を言ってしまったから大変だ。嫌いではなくて苦手なんだと言い直したかったがそれは出来なかった。


 先ほどまで微笑を浮かべていた白銀の髪のプレイヤーの目つきが鋭くなり、明らかにこっちに対して嫌な思いを抱いたらしい。

 不謹慎だが、その怒った顔も見惚れてしまいそうな美しさを出していた。

 ……やばいな。綺麗な人ってだけで何度も見惚れるなんて真似は今まではなかったんだけどな。


 慌てて俺がフォローしようとしたが、彼女は気分を損ね、犬たちと共に山を駆け上がって行ってしまった。



 「あの人は犬が大好きなんですね。私、考え無しに悪い事いっちゃった」


 サアラが自分の失言に気付き後悔している。俺はその様子を見て、彼女を追いかけ謝ろうというとカーシャは少しだけ嫌な顔をしたが最終的に折れてくれた。


 そしてすぐ彼女が上って言った方向へ進路をとる。カーシャが索敵と追尾といったスキルを所持しているので、彼女を追いかけるのは容易かった。


 あっ、索敵というのは周囲の敵やらプレイヤーやらを見つけるスキルで、追尾は逃げ出したモンスターを追いかけたりするときに使うスキルだ。



 「……あの犬達、強いわね」


 「そうだね」


 最初こそ不慣れだった見たいだけど、ビッグチュンやらストーンワームといったモンスターを数度戦闘をしただけで危なげなく倒していく様子を見ながらそう言った。


 「あぁ、たしかに腕試しを一人で行くというのも頷ける強さだ。……なにっ?」


 「えっ?うそ、あそこって入っても無意味な山村だったよね?」


 「そうだよ。私達が立ち寄った時は誰も居なかったはず……なんで?」


 「……もうちょっと様子を見ようか。追いついて謝るのはいつでもできる」


 「……分かったわ」


 俺たちが彼女について行き、見たのは俺達がどの時間帯に訪れても人っ子一人いなかったのに、彼女の場合だと沢山の人が行きかっていたのだ。


 暫くすると彼女は山村からすこしのぼったさきにある岸壁の方へ向かっていく。

 確かあっちは、サアラが薬草を取りに行くポイントだったな。


 「あっ、薬草がリポップしてる……。すぐ傍だしちょっと集めてくるね」


 「待て、サアラ。敵だ!」


 「えっ?あっ、またこいつら?」


 現れたのはストーンワームが3匹とビッグチュンが4羽。そしてこの山に稀に現れるMT(マウンテン)バグというモンスターが1体。


 MTバグは耐久力が高く、体力が半分をきると逃げていく。だがそれを追いかけて倒すことで【山地の結晶】という装備品を強化するレアアイテムをドロップする事があるので、見かけたときは積極的に狩りたい相手だ。


 「どうするの?せっかくMTバグ出たけどさっさと逃がしちゃう?」


 「……そうだな。他の雑魚の群れを倒し、彼女の様子を見てから逃がして放置するか彼女を追いかけるか考えよう」



 ストーンワームは俺とカーシャが、ビッグチュンはサアラが弓でうまく地に落とし、俺かカーシャのどちらかがトドメをさす形だ。


 「カーシャ……彼女がどういう状況か分かるか?」


 「……この先の岸壁エリアで立ち止まってるかな。多分戦闘中……」


 「わかった。それじゃあ、MTバグを倒してから急いで合流しよう。まだ彼女が戦っているようだったら助太刀する方向でな」


 「「わかった」」



 MTバグとの闘いは予想より長引き15分ほど掛かってしまった。


 だが俺はまだ彼女が岸壁エリアに居ることを知り、急いで駆けつけそこで見たのは、この山では見かけたことの無いほど大きく強そうな鳥のモンスターだった。


 「なっ!?何だ。このモンスターは!」


 思わず叫んでしまった俺を誰が責められようか……だってさ、ここであんなん見たこと無いんだぞ?驚くに決まってる。

 彼女は声を上げたのが俺達と気付くと微妙に嫌そうな表情を浮かべた。


 「何でここに居るんですか?まさかストーカーですか?」


 いきなりストーカー扱いかよ。いやまあ着いて来てたのは事実だけどなんか釈然としない。

 だが先ほど俺達も彼女に不快な思いをさせたことは間違いないのだからこのくらいは甘んじて受けよう。


 一言二言交わしたとき、鳥のモンスターが叫び声を上げると、彼女は俺達のことを気にしないようになり、犬達に撤退を伝えていた。



 けど、撤退するなんて勿体無い。かくなる上は俺達で!


 とおもったんだが、鳥は犬達が撤退すると同時に引き上げてしまった。くそっ。


 などと悔しがってる場合じゃないな。あの鳥のことも気になるが、まずすべきことがあるんだから。


 色々考えているうちに彼女は帰り支度を終えて歩き出していた。当然ながら既に俺達のことなど居ないものとして扱っているのが丸分かりだ。


 「ま、待て。待ってくれ。いい加減無視するのやめて貰えないか?」




 話し合いの結果、何とか和解に持っていくことが出来た。まあ彼女からすれば、カーシャの態度がまだ気に入らないみたいだけどそれはすぐにどうこうできる問題じゃないから仕方が無い。


 和解が済んだ後はあの鳥について質問をした。それによるとあの鳥はギルドで受諾できるクエストから派生したらしい。


 クエストは面倒くさそうだったので、何とか一緒に挑ませて貰えないか頼もうとしたら先手を打って断られてしまった。

 その際に、独り占めする気か?と声を荒げてしまったが、彼女はそのこと自体には関心がなかった様子で安心した。すぐカッとなるこの癖は治さないとな。


 それにしてもギルドか……俺達まだ登録して無いんだよな。昨日は混んでるって聞いたけど、そろそろスムーズに登録できるかな。


 彼女からどういったクエストをこなし鳥に至ったかを詳しく聞き取ると俺達はお礼を述べてガイアに戻った。そこでギルドの位置が分からないという初歩的なミスを犯したが親切なプレイヤーが教えてくれたのでよしとしよう。


 だがギルド登録クエストから始まり、討伐やら収集やら、彼女から聞いたクエストをこなし、報告を行ったが彼女の言うクエストは紹介されなかった。


 もしかしたらプレイヤーごとにNPCの好感度的なものが違うのか、もしくはギルドの貢献度の入り具合が1回目にこなした彼女と、2回目以降の受注者となる俺達では違うのではないかと結論に至り、様々なクエストを片っ端から受けては報告した。それでも出現しなかった。


 資金的にはかなり潤ったが、クエスト消化に2日かけたところで断念した。



 「こうなったら、彼女が来るのを山で待ってるほうが良いな。そして鳥の討伐に入れてもらおう」


 「それは無理じゃない?だってあの女性ひと、この鳥は私が捕獲する予定ですっていってたもの」


 あっ、たしかに。そうか、討伐だと思ってたけど彼女は調教師だからあの鳥を仲間にしようとしているに違いない。なのに間違っても倒してしまったりしたら彼女からの心象がさらに悪くなってしまうから非常に困る。


 って、何で俺が困るんだ?別に人一人から悪感情もたれたところで関係ないだろう?

 彼女と一緒にペアと組むでもないのにな。


 まあ嫌われるよりは嫌われない方が良いのは誰も同じだと思うけどさ。



 その次の日、俺達が山に向かうと既に中腹の岸壁辺りに向かう犬達の姿を発見した。


 「い、犬が居たぞ!彼女はあそこに居る!急いであそこに向かうぞ!」


 「私はもう面倒だからここで待ってる。私が行くとあの人とぶつかっちゃいそうだし」


 「私もカーシャと待っているわ。いくならアーサーだけで行ってね」



 な、何だよ?二人とも急に……。クエストまで手伝ってくれてたのにここに着いた途端、掌を返したみたいに……。


 「……二人とも何か不満があるんだよな?教えてくれないか?」


 カーシャとサアラは顔を見合わせて頷きあう。


 「綺麗な人とお近づきになりたいアーサー君にはいえません」


 「右に同じ!」


 「い、意味わかんねぇって!」


 「例えていうと好きな人と一緒にいた時に、近くを通ったすごく綺麗な人に彼氏の視線とかを全部取られたみたいな?しかもその人に近づく為に手伝ってくれって言われた気分?」


 「そうだねー。わたしも同じかなー」


 今のって例えじゃないよな?すんげぇ、リアリティを含んだ言い方だったぞ。

 だけど考えてみたら理由が分かった。コイツラは嫉妬してるんじゃないだろうか。何に対してかは言わなくても良いよな。



 「分かった。彼女を追いかけるのはもうやめる」


 「えー?なんで?あの綺麗な人のことが好きなんじゃないの~?」


 俺があの人を好きだって?馬鹿いうな。俺は昔からお前らが……あれ?昔からそうだったのか?

 信じたくないが俺って今まで鈍感だったのかもしれん。いや、しれん、じゃなくて鈍感だったんだな。


 「落ち着いて考えてみりゃ、俺が好きなヤツってそんなにいないんだよな」


 「えぇっ!アーサーって好きな子いるの!?だれだれ?教えてよ~」


 「そうよ~。幼馴染としてそれは聞いておかないといけない内容よ~。ほらーいいなさ~い」


 あっ、これはあれだコイツラも鈍感系だ。そういうことなら言わないでおこう。


 「まあ内緒だ」


 「え~。ダメだよ教えてよ~」


 「アーサーのけちんぼー。全部はいたら楽になれるよー。さあ、吐けー吐くのだー」



 もしこの先の言葉を言って今の関係がギクシャクするのはいやだからな。ヘタレ?どうとでもいえ。俺はこのままコイツラと一緒に何事も頑張るって今、心に刻み込んだんだ。




 数日後、俺達が町を散策していると犬2頭となぜか空を飛んでいる魚と留まれるのかって言いたいくらいに細い腕に捕まっている鳥を連れた彼女を見かけた。


 そうか、あの大きな鳥をテイムできたんだな。犬達が小型犬になってるんだから腕に居る鳥はあの時の鳥モンスターに違いない。


 俺達も彼女もお互いに軽く会釈をしただけですれ違う。俺達は攻略に戻り、現在いける範囲で一番の強さを誇る狩場で戦い続けている。


 彼女の噂もチラホラと聞くようになった。あれからさらに仲間が増え、度々ガイアの街の広場に現れては獣型のモンスターと戯れ、周りのプレイヤーを巻き込みほのぼのとしているらしい。その様子から白銀の獣姫と呼ばれているのだが、彼女はそのことを知っているんだろうか。



 正式サービス開始から約2ヶ月後……突如ガイアの街にどこからともなく、大量の獣や鳥といったモンスターが発生し襲われることになる。

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