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17話

 現在私はコーヤドールやアーマーアーミーといったやたらと横棒の多いモンスターが出現するガイアの街から東へ1時間ほど進んだ先にある荒野にいる。


 「コウガとセツナは相手の動きを止めて! イリスはトドメお願いっ!!」


 「「グオッン!!」」


 「コポー」


 ブシュゥーー!!


 私の合図でコウガとセツナが土と鉄で出来たモンスターを前後から挟み行動を阻害しやすい配置に付き、そこに2頭の後ろから来た生物が水の塊を放ちモンスターを打ち抜いたのだった。


 「うん、これで20個目だね。この位集まれば十分だし街に帰ろう~。3人ともお疲れっ!」



 3人とも、と言った通り私はこの荒野に来る前に訪れたガイア湖という場所で、新たな出会いをしていたのです。




 ★☆ 荒野到達数時間前 ★☆


 ゴブリンの集落で素材の荒稼ぎをした後、コウガ達のレベルが上がり新しいスキルを修得したので使い勝手、その他諸々を確認する為にゴブリンの集落と荒野の中間にあるガイア湖に休憩を兼ねて行くことにした。


 まずは湖までの間に、コウガのスキルの検証を行うことができた。


 コウガが得たスキルは壁蹴りというもので行動可能な場所を増やすスキル。そこらの木で試してみたら、垂直の木を地面を走るような動きで落ちることなく上り下りできたので、これなら場所次第ですが真上からの急襲も可能と判断できる。


 セツナが得たのは風魔法1。使える魔法は攻撃系のウインドスラストと補助系のエアロアップ。

 エアロアップは移動速度などが増加する魔法だったので道中に試すことができたけど、ウインドスラストに関してはモンスターに出会わなかったので試せていません。


 ガイア湖での休憩ついでに湖に出現するモンスターで試す予定です。



 ギャーギャー

 ギャーギャー

 バッシャンバッシャン

 バシュンッ


 湖にたどり着くとそこは生存競争の真っ只中。

 灰色のカラスの群れが湖に居る何かに攻撃を加えており、湖の中の何かも必死に水を飛ばしたりして応戦している。まあ水の中に居るんだし魚とかその辺よね。


 「……大変そう。モンスターの世界も世知辛いんだね。まあちょうど良いか……別に助けたいわけじゃ無いけど風魔法を試すにはちょうど良いし。セツナ、やっちゃって!目標は当てやすそうなカラスで良いよ」


 「オンッ」


 セツナの口からコオォォという音が聞こえ始め、数秒後緑のエフェクトを纏った衝撃が湖の上を飛ぶカラスに炸裂しアニメや漫画でよく見る剣閃が発生させスパスパと切り裂く……風が収まったあとには灰色の羽がバラバラッと飛び散っている。

 数体ほどは倒せたみたいだけど、生き残ったカラス達は攻撃を放ったこちらに激しい敵意を向けていた。


 ギャーギャー

 ギャーギャー

 パッシャーン!


 カラスたちの鳴き声に混じって水の音も聞こえる。撃墜されたカラスが湖に落ちたのかな?それともさっきカラスと戦ってた魚か何かかな?

 なんにせよ私に感謝しても良いんだよ~?私が来なかったら君はカラスに食べられちゃってたんだから。

 でもでもカラスと一緒になって私達に攻撃してくる気なら一緒に倒しちゃうからねー!その時は一切容赦しないよ。




 「うーん、セツナの攻撃として見れば威力は強い方かな?やっぱり魔法能力の方が高いセツナだからこの威力が出たんだろうしね。

 これで装備を作ってもらったらまだ効果上昇するはずなのよね。結構楽しみかも。

 ……っと、それじゃあコウガとセツナはもうすぐこっちに来るお客さんを倒してちょうだい」


 「ガウッ!」「オフッ!」


 コウガは跳躍しつつ届く範囲の灰色カラスに引っ掻きをし、セツナは魔法が気に入ったらしくウインドスラストを再発動し、さらに数を減らして行った。


 カラス達の敵意がこっちを向いてから一分も経たないうちに、あれだけ騒がしかった全てのカラスが沈黙した。経験値の状態を見るとそこそこ貰ったみたいだけどレベルが上がるほどではなかったみたい。


 ドロップアイテムは言うまでもなく羽と嘴、それに卵(素材用)でした。まあ欲しい人がいたら売れば良いかな~。



 「おもったより稼げなかったね。ま、いっか。それじゃあ2人とも休憩しよう。こっちにおいで~」


 時折、水面を跳ねる魚を見つつコウガ達を撫ぜながら、しばしの休息を取った。

 湖の浅瀬でコウガやセツナと水遊びをしたら、それに釣られたのか数匹ほど魚が私の足をつついてきたのがこそばゆかったです。


 それにしても景色の良い湖や自然を眺めてると気が落ち着くよね~。リアルでこう言う外でのんびりしたのは高校でいった2~3泊くらいの旅行以来だし、ゆっくりしちゃおうー。



 ★☆★☆★☆★☆



 湖のほとりで犬達と戯れる美人アイリの画はガイアから荒野方面へ、もしくは逆にガイアへ戻るプレイヤー達、多くの目に留まり掲示板に波紋を起こした。

 波紋の原因となった理由は、光が乱反射した水しぶきに驚いている美人とか、湖をバックに浅瀬で遊ぶ犬たちを見守る白銀の髪を靡かせた美人がのSSが張り出されたりといった具合だ。

 奇跡的な一枚として、水しぶきでコンマ数秒だけ表示されるアバターのインナーが透けた瞬間を撮ったものもあったらしいがそれは何者かに削除されていたらしい。

 後日それを聞いた掲示板の住人たちは血涙を流したとかどうとか……


 波紋を起こしたアイリ本人はそう言った掲示板の存在は知りつつも、興味がわかなかった為、大荒れした掲示板の内容を知ることは無い。だが仮に彼女がその掲示板を覗いていたらどうなっていたのだろうか……。



 ★☆★☆★☆★☆



 「よーし、それじゃあ荒野に向かうよ~」


 「ウォンッ」「ワフッ」「コポコポコポー」


 ……ん?今、何かおかしくなかった?反応が多かったような?

 周りを見たけどコウガ達以外は誰も居ません……

 気のせいだったんだねきっと。じゃあ気を取り直して


 「……い、行くよー?」


 「ウォンッ」「ワフッ」「コポコポコポー(バッチャンバッチャン)」


 き、気のせいじゃなかったぁ!?絶対何か居るぅ!?間違いなく変な声と水の音(お婆ちゃんを呼んでるわけじゃないからね)が聞こえたよ!?

 私が湖の中を覗くと青と赤の入り混じった鯉のような魚がつぶらな瞳で私を見つめていました。どうやらこの子が返事をした子みたいです。



 「もしかして君はさっきカラスに襲われてた子かな?」


 問いかけると水中で円を描きながら泳ぎ始める。これは肯定って事かなぁ?まあこれだけじゃ分かりにくいし、もう少し聞いてみよう。


 「あっ、もしかしてカラス達から助けられたお礼を言ってる?」


 魚はまたしても水中で円を描いている。ふむふむ。


 「そっか。でも気にしないで良いんだよ?あれは私達にとっても都合が良かったことだからね」


 事実、スキルの確認の為に手を出しただけだもん。


 「お礼を言いたかっただけならもう大丈夫だよ。

 でも次に襲われても助けられないから自分で何とか出来ないと……水を吐くことができるみたいだから、それを練習したらあんなカラス位、すぐ倒せるようになるなるっ。だからがんばって!……それじゃ私達は行くからね~」


 私が立ち上がると魚は慌てたように水面を跳ねる。キャー!水しぶきが超飛んで来てますっ!すぐ乾くけどーー!

 この様子からこの魚は私に用事があるっぽい?聞いてみましょうか。


 「え?まだ何かあるの?」


 やはり円を書くように泳ぐ。むむぅ、魚の言葉なんてわかんないからこの子が何を言いたいのか想像もつかないよぉ!だれか魚語ぷりーず!!はふん……(ため息)


 「言葉は話せないけど言ってることは理解してくれてるみたいだし、幾つか質問していくから答えてくれる?」


 魚は水中に円を何度も描いた。早すぎてちっちゃい渦が出来てるよ!?


 聞いたことは至極全うに他に仲間がいるのか?とか、遊びたいの?とかそんな感じのこと。

 そんなこんなでいくつ目かの質問で、ただ円を書くだけじゃない特殊な行動をしました。

 その質問とは……


 「私についていきたいの?」です。


 その質問に対し魚は【待ってました】とばかりに水面から浮くわそのまま空をスイスイ飛ぶわの大騒ぎ。

 ……んっ?いやいやっ!おかしいよね!魚だよね君っ!何でそんな普通に空飛んでんのー?


 まあただの魚なら水中行動しか出来ないからいくら望んでも連れて行くのは難しいけど、空飛べるんだよねぇ。面白いからあり……かな?

 次に仲間にしたいのは大鷲だったんだけどせっかく向こうから連れて行ってくれって言ってるんだし、いっか。最近仲間になってくれる子がいなくて寂しかったし~。



 「分かった連れて行ってあげる。ちゃんと私の言うこと聞いてコウガ達とも仲良くしないとダメだよ?」


 魚は喜びを素早い飛行で表現した。うん早い早い!私の速度じゃ捕まえられないよ!(笑


 「それじゃいくよ?【テイム】」


 「コポ~♪」



 魚の体が光り、私の仲間になったことを示すかのようにステータス枠が表示される。今現在のテイム状態だとモンスターの種類と性別しか見えません。名前をつけることで詳細まで見れるようになるのでまずは名前を決めないと!


 うーん……女の子みたいだから……可愛い名前が良いなぁ。


 ポチ、タロウ、タマ……これはだめです。犬や猫の名前にしてどうするんでしょう。オスっぽいのも混じってますしね。


 うーん……そうだ。この子の体の色から連想できれば良いかも!青と赤だから……よーし、これに決めたっ!

 


 名前 イリス

 種族 マリーンフィッシュ♀ 魚種ランク1

 LV 2(3/50)

 スキル

 アクティブ 【水魔法1】【突撃】

 パッシブ  【浮遊】【飛行】【水入らず】

 強さ

 物理能力 9

 魔法能力 12


 称号:迷子



 本来はアイリスと名づけたかったのですが、私の名前と被る部分があるので頭の文字を取り、イリスとしました。

 名前を由来であるアイリスの花には青やら薄い赤色(ピンクの方が正しいんだけど)の種類があるので決めた次第です。


 現れたステータスを見て一言で言うと弱いですっ!まあこの辺は頑張って育成するしかないですね。

 次にスキルの確認です。


 【水魔法1】:水属性の魔法を使用できる。レベル1では、スプレッド・アクアアップが使用可能。

 スプレッド:大量の水を噴射する。ノックバック効果(小)が付くことがある。

 アクアアップ:水の力で魔法能力(魔法攻撃力・魔法防御力)を僅かながら増加させる。

 【突撃】:前方一直線に突っ込む。何かに当たるか目標とした距離の1.5倍走行するまで止まれない。

 【浮遊】:空中に浮くことが出来る。

 【飛行】:空を飛ぶことが出来る。

 【水入らず】:魚種・水棲種専用スキルで水がなくても行動が可能になる。水中での能力値が上昇する。



 最初から水魔法を覚えてるのは嬉しいですね!強くなればセツナと一緒に後方からの魔法要員として頑張ってくれそうです。

 仮に接近されても接近戦用の突進スキルもあるから何とかなりそう。

 空を飛べる力を持っていますが、本来は水中で本領を発揮するタイプなところかな。



 で、称号……。迷子って……なにさ?


 迷子:何らかの原因で元々居た住処から引き離された個体。この称号を持つものは親切な行動に弱い。


 なるほど。これがテイムされた詳しい理由か~!

 なぜか湖に一人(一匹)残されて居た所をカラスに襲われ絶体絶命に。

 そこを華麗に?助けた私(達)に懐いてきたという事ですよね。把握出来ました!


 でもこうなると元の住処が何処かは知らないけど連れて行ったら仲間から外れちゃうのかなぁ?

 イリスにもとの住処に帰りたいかと聞くと、否定を示す尾ビレ叩きを披露してくれました。

 うん、それならいいや!じゃあこのお話はおしまいっ!これからは戦力として頑張ってもらうよ!




 ステータスを確認した所で改めてイリスをコウガ達に挨拶させる。挨拶といっても口をパクパクしてるだけなので空を飛んで貰う事で意思の疎通を図れるようにしたいと思います。


 こうして新しい仲間を得た私は荒野へ向かい、イリスやコウガ達のレベル上げと素材回収を終えました。

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