186話
ギャラルホルンは前回は使用してこなかった新しいスキル【金色の輝き】を使用し、辺り一面を光で満たして視界を奪っていく。
「クルスは慌てずいつもの訓練通りに攻撃に専念、ルドラは【サークルガード】発動、カエデは……念のためクルスの補助をして頂戴」
「クケェ」「グルァッ」「お任せあれ!」
「うぅっ、目がっ、目がぁぁぁ!!!」
それぞれが返事をする。カエデが普通にしゃべっていることに関しては今は触れない。どうせコトノ達との距離は離れているし、大声で話さなければ問題ないでしょう。とはいえ、すでに家族の一員であるロアンが話せる事を知っているコトノ達ですから、新しく木の枝に見えるカエデが話したとしても問題はなさそうです。
そんなコトノ達はと言うと全員が目を抑えて定番のセリフを言いながらゴロゴロと、のた打ちまわっている。
その口元は狙っているかのようにニヤッとしているように見えなくもない。……私はツッコみませんよ?
そもそも全員がボケに周ってどうするのかな…。うちの領地にもボケ役はたくさんいるけどツッコみ役は少ない。どこの国でもツッコみ役が不足しているんですね…。
とまあ周りの反応を置いておきましてギャラルホルンの方かな。
【黄金の輝き】を使用して私たちの行動を阻害したと見たギャラルホルンは遠距離から【岩石地獄】を発動し、攻撃をしてくる。
その狙いは普通なら直撃コースだけど……クルスは【危険感知】と【振動感知】スキルがカンストし王種へ進化したことで取得した【空間感知】によりそのすべての攻撃を避ける。
この【空間感知】は遠距離攻撃なら9割の確率で発動し、回避能力が増すスキル。代わりに近距離からの攻撃には発動率が低く設定されているようですので名前のわりに完全無欠と言う訳ではないっぽい。
一方、こぼれ球(石)が飛んできたこちらはルドラの【サークルガード】により無傷。これはまあ言うまでもなかったことですけど一応ね?
イリスがコトノ達と一緒に居るのでこちらの回復役はカエデが担う事になっている。とはいえカエデは元々【樹魔法】などの支援系の魔法が得意だったので、ルドラに対し各種スキル効果発動率が高くなる《受動支援》を使う事で動けない自分の身を守ることに成功している。
「ヒャハァァ!まさか全部ミスしちまうたぁ、驚きだぜぇぇ!」
そんな感想を述べているギャラルホルンに対し、私はクルス達に攻撃指示を出す。あんまり喋ってると死ぬよ?ってな感じでね?まあ私の家族を貶したんだからその位、ギャラルホルンも承知しているはずだね。
とはいえ、私も家族を貶されたことに関しては非常に遺憾ながらも怒りの心に支配されながらも冷静な部分に目覚めた。そう、いわゆるスーパーなんちゃら人ってやつですね!あれは逆の設定だったけどまあ今はそんなことどうでも良い。
「クルス遊ぶのはおしまいで良いけど止めは刺さないようにしてね。そしてルドラ。私も前に出るからカエデを咥えるなりして一緒について来て」
「りょ‥‥クワァッ」
「グォンッ!」
うん、今クルス、普通に返事しかけたね?すぐ言い直したからコトノ達には聞こえてないだろうけどちゃんと注意してよね。私に一年近くも会話出来ることを気づかせなかったんだからその位徹底してくれないと困るからさ。一応話せるのがバレていいのはロアン(最悪カエデも可)って決めてるんだからね。
「それでは主様、某はサポートに回らせていただきましょう」
カエデはそういうとすぐに移動速度上昇効果のバフと全体的な能力を向上させるバフをかける。
その後はおとなしくクルスたちに目を配り適宜、回復・支援行動をとるつもりのはず。カエデも王種として周りの自戦力をうまく使いこなせるようになってもらわないとね。私の家族の中には王種だろうが何だろうが序列は存在しない(遺憾ながら私自身が最上位にいるのはシステム上仕方のないことですが、私は家族たちを下に見ることなどしたくないからね……そりゃ攻撃命令とかはしちゃうけど戦闘以外では束縛したくない)
「コトノたち~、もう休憩は終わりだよ!さっさと働いて!」
「ふぇっ?」
すでに観戦モードになっているコトノ達を呼ぶ。……ふぇっ?とか言ってる場合じゃないからね?
当初の目的通りギャラルホルンはコトノ達にやってもらう。
ルドラを馬鹿にされたことに関してはいいのかって?もちろんめっちゃくちゃ怒ってますよ?ですからすごく失礼なんだけどギャラルホルンよりちょっと劣るコトノ達に倒してもらおうと思ってるんです。
ギャラルホルン的にはいわゆる弱者に負ける方が堪えると思うからね。
そのための支援をするために前に出てきたんですよ~。私達とコトノ達のパーティはレイドを組んでいるからこの場に同席できている。
すなわち、私の【魔唱歌】の効果が及ぶという事。でも家族たちに使うような全消費みたいなことはしない。せいぜい1.5倍位になる程度の支援ですけどそれでもこのギャラルホルン程度になら通用するはず。
現状の強さはさっきまでの行動で計っておいたから多分大丈夫。王種特有の【覚醒】をされてマズそうなら最悪家族たちが止めを刺せばいい。
ここから先はギャラルホルンの攻撃はルドラがメインタンクの役割をすることで防ぐか潰すかしてもらう予定。
クルスの攻撃力は十分高いからやり過ぎないように監視しないといけないね。カエデにはバフを中心に展開してもらう予定。そして…
「イリスも戻ってきなさいー。あんまりサボってると……オシオキだよ?」
「クポァッ!?クピィ~」
すごい速さで戻ってきました。コトノ達の横でシオリから食事を貰ってたのを放り出す位の必死さで……。
オシオキって言葉を発するとうちの子達皆が焦るんですよね~。
ちょっと構う時間を一日か二日程度、全面カットするだけなのに。それがそんなに嫌なのかなぁ。うん、私って家族たちから恐れられてるのか好まれてるのかわからなくなってきました‥‥。あとで確認しよう。
パーシヴァルが・・・だけどね?私が直接聞くと本音を言えないかもしれないからそういうのを聞くための人柱になってもらいましょう。彼なら私の言う事は二つ返事で聞いてくれるもんね(あくどい顔)。
「イリスは回復担当だけど少しくらいなら攻撃に参加してきてもいいよ。でも私の指示でちゃんと戻ってくること、わかった?」
「クポォッ!」
嬉しそうにクルスの近くへ飛んでいくイリス。クルスも相変わらずイリスには優しい。いや、別にクルスが基本意地悪なわけじゃないけどね。イリスに対しては仲間にしたころからすごく優しいんですよね。なんでかは知らないけど。
もうクルスとは話せるんだし、この件についても今度聞いておこうっと。
と言う訳でコトノ達が恐る恐る戦線に出てきたところで【魔唱歌】を詠唱する。
「これがアイリさんの歌~。これぞ本当の女神の歌…なのですね。ってかステータスの上昇値すっご~いんですけど~?」
「おぉこりゃいいや。攻撃力だけじゃなくて魔法の威力も上がるのか!」
「回復魔法の効果量も上がってますね。これなら行けますよ皆さん」
「「「おぅともよっ!」」」
紆余曲折あったけどようやく本来の目的通りコトノ達とギャラルホルンの戦いが開始された。
展開が二転三転、前進後退してしまい申し訳ありません。
次回の更新はまた不定期です。すみません。




