176話
いつもより 1000文字くらい少ないです…
クルスが新しいスキルを使うモーションに入ったけど、ライトニング・フェニックスがそれを看過することなどあるはずもなく、魔法による次々と激しい雷を降らせる攻撃をしてくる。
「クケェ、スキルの錬度が低い!その程度の魔法など我らの誰もが避けられるわっ!」
クルスはそれを風を切るようにシュパシュパッと避けつつ、隙を狙っていく。念のため、説明しておくと鳥系の魔物を一部を除き、雷属性のダメージは大きくなるのである。
クルスもそれは例外ではない。しかし攻撃者本人であるライトニング・フェニックスは雷が弱点ということもない。
「キュイィィィィ!」
ライトニング・フェニックスはその言葉にキレたかのように、避ける隙間などないのではないかという程の雷を降らせ始める。
「クケェ。ほぅ、お主やるではないか。これは攻撃の隙間を狙うべきではなさそうだ。だがそれでも錬度が低いことに変わりない!【岩石纏】」
クルスは新しいスキルを狙い続けるのは辞め、まずはライトニング・フェニックスに大きな隙を作ることを目的に決めたらしい。そしてクルスの体は見る見るうちに岩に囲まれ、大きな岩の塊と化した。
【岩石纏】は【地纏】からスキル進化した。地纏のままだとある程度の高さまで飛行すると地属性が弱くなり、効果がなくなってしまうが進化して岩石纏になったことで、ほぼ絶縁体である岩自体を纏うため雷属性の攻撃に耐えられるようになる。当然レベルが上がればその性能も上がっていく。その代りといってはなんだけど岩その物を纏うのでその素早さは著しく低下するんだけどね?
まあクルスの言っているスキルの錬度が低いというのは、使い手の能力が高い割にスキルのレベルが低い事を示す。
それはつまりクルスが使ったスキルレベルの高い【岩石纏】ならば、避ける隙間のない雷であろうとも無効化できるという事である。
ライトニング・フェニックスの放った雷をものともせずその中を突っ切っていくクルス。
まさか魔法のど真ん中を抜けてくるとは思っていなかったライトニング・フェニックスは驚き、逃げ遅れる。
「クケェ。いったであろう?この距離ならお前がどのように速く動こうとも我の攻撃射程範囲内だ。エンベラスの配下に成った事を後悔しながら逝くがよい…【ブリューナク】」
クルスが新しく覚えたスキルは、【ブリューナク】というものだ。神話に出てくる貫くことに特化した槍みたいだけど、どういう攻撃かは先ほど覚えたばかりなのだから私も見たことが無い。スキルの説明を読むことは出来るけど、説明を読んであれこれ考えるより、実際に使っている所を見て作戦を考える方が楽なんだよね。机上の空論という言葉が好きではないんです、私。
再度、クルスの嘴が輝き始める。ライトニング・フェニックスは食らってはヤバいと感じたのだろう。
背を向け、まさしく雷かも知れない(あくまでも、かも……です)速度で脱兎のごとく逃げ出した。
しかし、その行動も時すでに遅く【ブリューナク】が発動をした場合、目標だけは必ず攻撃するのである。ライトニング・フェニックスの誤算は、逃げの姿勢を見せてしまった事。
ここで腹を決めて正面から攻撃をするなりしていればクルスの勢いを止められたかもしれない。
「クケェ!終わりだ!」
ライトニング・フェニックスの体を文字通り貫き、その体を四散させた。
【ブリューナク】は雷を纏った槍だったと言われているけど、クルスが放ったのは光り輝く槍。イメージ的にはグングニルとかその辺を思い浮かべそうだけど、まあゲームだから設定位変わるよね…。
「クルス~、お疲れさま。回復するよ?」
「クケェ!そこまで傷を負ってはいないが?」
「体力的にはそうだけどスキルを使ってるんだから魔力は回復しておかないと、鳥王との戦いでスキルが使えなくて負けましたーってなるよ?」
「クケェ!我がそのようなヘマなどするはずが………。むっ、主殿の言う通り想像以上に魔力が減っている‥覚えたての【ブリューナク】は消費魔力が多いのが難点だったか」
まあそういう事ですね。私はクルスのステータスを見る事でどの位消費するとかは分かるけど、クルス達は実際に使わないと魔力が残っているかどうかなど分からないんだよ。
モンスター達からするとそういう点で調教師やテイマーと言った人と組むメリットがある。
「あ、さっきのボスからドロップがあったよ。ライチョウの羽毛と試練の証だって」
前者は素材で後者はイベントアイテムです。当然これがないと鳥王に挑めないわけだけど、全部倒してるんだからいつかは手に入るよね。
クルスの時は適当なモンスターに持たせていたという試練の証。
鳥王が言っていた難しくした試練というのは雑魚モンスターが試練の証を落とすのではなく、ボス級に持たせていたとかそういう意味だったに違いない。
で、鳥王はライトニング・フェニックスを信頼していたから負けるとも思っていなかったわけです。
そういう事で鳥王の驚く顔が目に浮かびますね。クルスを見ると同じ事を考えていたのか口角が上がっている。
回復を済ませた私たちは新たに出現した鳥王へ通じるだろうポータルに乗るのだった。




