170話 ー閑話 新年②ー
大変遅くなって申し訳ありません。
まさか1カ月も遅れるとは想定外wもう正月の時期じゃねー!というツッコミはあると思いますが、飲み込んでください・・。
ストーリー進行もまったくない日常の一コマ?ですし・・・。次からまた本編に戻る予定です~
「うわぁー。予想していたけど人が多いです・・」
という事で100段程度ある階段を上り、神社に到着した私達を出迎えたのはたくさんの人、人、人の群れ。それを見た奈緒ちゃんがこのような感想を言うのは至極当然の事でしょうね。
やはり新年と言うだけあり、初詣に来る人が多いみたいですね。ちなみにいつもならお年寄りが数人、運動がてら訪れる程度です。
なぜそれを知っているかというと去年は私がここの神社の巫女のアルバイトをしていたから。今年に関してもアルバイトをしていなければもしかしたら厄介になってたかもしれないね。
「あいちゃん、まずは何処から周るのかしら?」
小枝子さんが尋ねてくる。その質問に対し私は少し考えた末にこう答えました。
「…そうですね。やはり最初は手水から順に作法通りしていきたいところなんですけども・・」
「へっ!?愛梨さんはそういう作法をご存知なんですか?」
「ええ、一応去年はここで巫女のアルバイトをしていたので、最低限の事は教わってるの」
「すっごぉい!あれ?でも私去年もここにお参りしてきましたけど愛梨さんを見なかったような?」
「そりゃあ、去年も今年と同じくらい人が来ていたはずだから私なんかが目立つはずないじゃない」
奈緒ちゃんの言葉にそう返事をすると奈緒ちゃんは驚いた表情を浮かべていた。
「えぇ、愛梨さんそれ本気で言っちゃってるんですか?愛梨さんほどの美人さんが巫女装束をきて参拝客の相手をするんですよ?絶対目立つに決まってます!」
「そ、そんな馬鹿な事あるハズないじゃない」
「うーん、奈緒の言う事も一理あるわね~」
私が否定の言葉を出すとほぼ同時に小枝子さんまでが奈緒ちゃんに同意する発言をしてきたのだ。おかげで私の発言は二人の耳に届かなかったようです。
「あの、それにですよ?去年の私は午前中に破魔矢やお御籤の売り子をしていたんですけど、あまりの忙しさに数時間足らずで裏で作業することになってしまいまして・・」
「あっ、そういう事ね!どうりでお昼過ぎから来た私達が気づかなかったわけだ~」
「そういえば去年、ものすごくたくさんの参拝客が一部の売店に並んでいたって聞いた事があるわ~。その売店に立っていたのが、あいちゃんだったとしたらあの騒動も納得いくわね」
私の弁明でなぜか納得したような様子の二人。というかそもそも去年のこの時期はまだ二人に出会ってないのに先ほどの予想・判断の内容をどういう風に導き出したのか、私にはこの二人が納得したのか見当もつかなかったけど、これ以上の追求は無い様子なので良しとしましょう。
気を取り直して私たちは、手水舎での作法から開始し、参拝、お賽銭までを終わらせ、次の目的を決めるために甘酒を飲みながら相談しようという事になったのです。お賽銭まで終わった神社には基本用事は無いですからね。この後は三人でどこかに遊びに行くか、解散するのか、その辺を決めたい。
「ややっ!?君は確か……」
甘酒を飲みながら小枝子さんや奈緒ちゃんと話をしていると、後方から話しかけてくる初老の男性。
「あ、神主さんお久しぶりです。去年はお世話になりました」
声の主はこの神社の神主さんで、文字通りお世話になった方です。去年いつまでたっても参拝客を捌けなかった私が売り子は向いていないと早急に判断し、後方作業に回してくれた人。
「やっぱり見覚えのある雰囲気の子だと思ったら響さんだったんだね。着物を着ているし人違いだったらどうしようかと思ったよ。うん去年のウチの巫女装束も似合っていたけど、着物も凄く似合っているね」
「そうですか?ありがとうございます。……ところで神主さんはここで何を?去年と同じであれば今の時間ですと神楽をやっているはずでは?」
「ん、まあ、そうなんだけどね。実は私と同じく神楽を担当する子がインフルエンザにかかってしまい休んでしまったんだよ。一応代わりの人材はいるにはいるんだけど、その子は今、売店にかかりきりでねぇ」
なるほどねぇ。相方さんがインフルエンザかぁ。流行っているみたいだもんね。私はかかったことが無いので他人事ですけど。
神主さんは他の売店を周り、神楽が出来る代わりの子の代わりを探すために奔走していたと言う訳。
「そうだ!響さん。私を助けると思って売店に入ってもらえないだろうか?もちろんバイト代は弾ませてもらうよ」
「えっ?でも去年の私はお客さんを捌けなくて戦力外だったんですよね?」
「ん?だれが戦力外だなんて言ったんだい?むしろ、去年君が担当していた売店の売り上げは過去最高だったんだけどな」
神主さんは私に去年の結果を問題ない程度に説明してくれた。どうやら私は戦力外だったわけではなく、大半のお客さんがなぜか私の担当する売店にばかり並んだため、社への通行に混乱が生じたので後方作業にしたという事だった。
あっ、そういえばさっき、小枝子さんが同じようなことを言ってましたね。
「それでどうだろうか手伝ってもらえないかな?もちろんそちらのお二人も歓迎ですよ」
「あっ!私も巫女装束を着てみたい~」
「奈緒がそういうなら私も構わないわよ。それに、あいちゃんの巫女装束も見ておきたいしね?」
「どうせこの後の予定も決まってなかったですし、二人もやってもいい感じですのでお手伝いします」
「おぉ!本当かい?いってみるもんだなぁ。それじゃあ早速更衣室に行ってくれ。場所は去年と同じだからね?」
私たち三人はこうして更衣室へ向かった。ちなみに更衣室には様々なサイズの巫女装束が置いてあるので、私たちはそれぞれに似合うものを選んだ。
「愛梨さんの巫女装束すごく綺麗…」
「奈緒の巫女姿もかなりいいわよ~。奈緒~こっちむいて~・・・パシャリ」
「あぁっ!お姉ちゃん、勝手に写真撮らないでよ~!」
この後私も写真を撮られたのは言うまでもないですよね‥。突発的なアルバイトをする前に気疲れしたよ…。
神主さんに案内され私たちが入ったのはお御籤を扱う売店だった。私は去年やっており、そこそこ覚えていましたので奈緒ちゃんと小枝子さんが一通り商品の説明を受けることになった。
二人が説明を受けている間に、私は売店に立つ。うん、カラオケ店とは違った視点ですね。
ちなみに普通の売店のように客寄せのために声を出す必要はない。呼ばなくても並ぶのがお御籤を扱う店の宿命だもんね。
店頭に立ち、しばらくすると人が増えてきたのか忙しくなってくる。客商売なので笑顔を絶やさず仕事をしているといつの間にか奈緒ちゃんと小枝子さんが私の隣に配置されていました。二人は仕事中に私語をしないタイプなので私たちは黙々と作業を続けました。
そしてあっという間に夕方になり、売店を閉める時間になりました。……年始の神社の売店は忙しすぎる。それが私たちの気持ちだった。
「ふぅ~~~」
「あぁ~~~、疲れたよう~!」
「私たちのバイト先では考えられない忙しさだったわね」
更衣室で着替えを終え(私の着物に関しては、小枝子さんに手伝ってもらい形にした)神主さんからここで待つように言われていた控室で待機していると、紙袋をもった神主さんが入室してきました。
「三人ともお疲れさま!今日は本当に助かったよ。さて、まずこれが今日のアルバイト代で、こっちの紙袋は福袋というかお土産に持って帰ってくれ」
「「「ありがとうございます」」」
お礼を言いお金と紙袋受け取る私達。神主さんはこの後もいろいろと用事があるらしいので、また来年良かったら手伝って欲しいと言い残し、部屋を出ていった。……と思ったら直ぐに戻ってきました。
「おっと言い忘れていたよ。君たちが着ていた巫女服だけど、良ければ持って帰ってもらって構わないよ?代わりの服はまだまだあるからね」
そういうと今度こそ神主さんは部屋を出て行って戻ってこなかった。
「……ああいってましたけど、服どうしますか?」
「もらえるというなら貰って帰ろうかしら」
「私も欲しいから貰ってかえろーっと」
二人が貰って帰るようなので私ももらって帰ろう……と思ったけど、貰ったところでいつ使うんだろう。という疑念を抱いたので貰うのは辞めておきました。
二人が巫女装束を回収しに行く間に私は控室の掃除を済ませ退室。ちょうどそのタイミングで二人が戻って来たので、突発的なアルバイトの感想をいいながら帰路につきました。
そして数日後、カラオケ店の女子従業員の更衣室内に何故か巫女装束が飾られていた。……しかも私が着ていた奴・・。どうやら小枝子さんか奈緒ちゃんが持ってきたらしい。
流石に自分が着ていた服が飾られているのは恥ずかしいので、赤面しながら回収したのは言うまでもない。なぜか知っていたバイト仲間の男性陣が、着て帰ってくれないのか?と言っていたけどもちろん断りました。




