15話
「なっ!?何だ。このモンスターは!」
「えっ!?」
後ろから聞こえた声に振り向くとそこには3つの人影が。
さっき山の麓で出会った人達です。名前はもう忘れちゃったけど何でここに来てるの。もしかして付いて来てた?
……そう考えるのが妥当よね。だって私がこの広場に来て撤退を決めるまで15分も経ってない。
となると最初から付いてきていて、ずっと私の行動を見ていたってことになります。で、ボスらしきものと遭遇してるのをみて声をかけてきたって所でしょうか。
「何でここに居るんですか?まさかストーカーですか?」
この人達を見た瞬間、先ほどの嫌な気分がよみがえる。後ろにいる猫の人は顔を背け、視線を合わそうともしていません。うん、感じ悪い。
「い、いや。そうじゃない。君に話したい事があったからで、他に疚しい気持ちはないんだ」
「こっそり付いてきてる時点で十分に疚しいですよ?ここまで来たって事は最初から私の居場所を捕捉して来てたってことですもんね。一体何が目的なんだか……」
彼らは麓で会った時に、この山を狩場にしていて自分たちはこの場所に詳しいとまで言っていたのだから、後ろから来なくとも先回りすることが可能だったはず。それなのに後ろから来た理由……PKはまだ出来ないから却下です。じゃあ他に理由が……?
クケエェェェェ!!!
あっ、こんな人達の相手をしている暇は無いんでした。
私は話を続けるのを止め、未だ戦うコウガ達に撤退することを伝える。
コウガ達は了解とばかりに吠え、視線を敵に向けたままジリジリとこちらへ戻ってくる。
ビッグバーディはその様子を見て翼を羽ばたき飛び上がる。
私達は追撃が来るかも?と思って身構えましたが、ビッグバーディもこれで終わりかと言わんばかりの視線を向けた後、岸壁の上に飛び去っていきました。
「お帰り二人とも。今日は相手の様子を見れて良かったね。次は今日みたいに防戦一方にならないように頑張ろう!」
「ワオーンッ」「ガフガフッ」
「それじゃ一旦帰ろっか」
「ま、待て。待ってくれ。いい加減無視するのやめて貰えないか?」
私達は広場から順路に戻ろうとしたら、やはりというかずっと空気だった男が話しかけてくる。
別に無視したいわけじゃないんです。このまま話をしたら余計こじれそうだから遠慮させてもらおうと思っただけで……。
「いいえ。私はただウチの子達がそちらの身勝手で嫌われてるのが嫌だっただけです。それなら近づかない方が良いと思っただけですよ」
「やはり先ほどの私の発言で気分を害してしまったようですね。大変申し訳ありませんでした」
そういって前に出てきたのはエルフの女性。確かに犬嫌い云々の話を最初に振ったのはこの人だった。猫の獣人の人はコウガ達に関わらないように振舞っていただけ。まあその態度も人によっては不快になるので隠して欲しかったけどね。
「わかりました。謝罪を受け入れます。苦手なものは仕方ありませんから。発言した本人が戯れに発した言葉でも人によって解釈が違うので気をつけてくださいね」
よしっ、話は終わりっ!2頭共、帰ろうー!
「いや、だから待ってくれって!」
「他にまだ用事があるんですか?先ほどの付いて来ていた件はこれで終わりよね?」
「あぁ。その件に関しては俺達もこれから気をつける。
それとは別に聞きたいのがさっきのモンスターについてだ。俺達は時間の続く限りここで狩をしてきたが、あんなモンスターは見たことが無い。だからあれについて教えてもらえないか?」
なるほど。レアモンスターか何かと間違われてるっぽい?。
まあ確かに本来の生息地と違うらしいのでレアモンスターですけどね。教えるのは良いけどそのせいであの鳥を倒されても困ります。
でも何も言わなかったら今回みたいにしつこく付きまとわれそうだし仕方ないか……。
「いろいろクエストを進めた結果あれと戦うことになりました」
「!! そうか、なるほど。クエスト限定モンスターか。それは盲点だった。
ということは今の時点であれと再戦闘するには君がいないといけないということか。そこでどうだろう?俺達と……」
むっ!?その先は言わせませんよぉ!
「いやです。あのモンスターは私が捕獲する予定のモンスターですので一緒に行動はしませんよ」
「ひ、独り占めする気なのかっ!!」
「その通りですけどそれが何か?あれは私が行動を起こした結果、遭遇することになったモンスターですよ?
どうしても戦いたいのでしたら貴方もクエストを起こしてあのモンスターと戦えば良いだけです。
人が苦労して進めてきたのに美味しいとこだけ奪おうとするのは調子よくないですか?」
「……協力させて欲しかっただけで奪うつもりはなかったんだ。すまない。
見たことの無いモンスターだったからついつい熱くなってしまった。許してもらえるならば君の言うクエストを教えてもらえないか?」
「それくらいなら構わないですけど、結構大変ですよ?」
今まで受けたクエストを教えてあげると、どうしてもビッグバーディと戦いたかったらしく、彼らはお礼を言うと急いでクエスト消化を行う為に山を降りていきました。
ふふっ、でも残念でした。私が今受けてるクエストは特殊依頼なのよ。
ヘルプで調べてみたらそれは一人しか受けられないオンリーワンなクエストなので、貴方たちがいくらクエストをこなしても出現しません。
まあ私がこの依頼を破棄したら話は別ですけど、例え1ヶ月かかってもそんな予定はありません。
……でも1ヶ月もかけてたら被害が増えちゃうかも知れないのでそんなに時間をかける気は無いわ。
それにあの人達ならばすぐに私の付いた話の通りに行かないことに気づくはずです。もしかしたらあの人達に粘着されて戦闘中に割り込まれかねません。あの人たちは初めて会ったときから気配察知で強そうな感じがしてたので要注意対象ね……。
このまま、すぐにガイアに戻ることも考えましたが、大鷲が出現する他のポイントも確認しておかないといけないので、他の山村を回りつつ順調に調査を終えた。
他の出現箇所は山の中の渓流のすぐ傍のフィールド。
もう一つは山の中腹にあり、ビッグチュンが次々と飛び出してくる大木の近く。
前者の渓流周辺で戦闘になった場合、水の流れに足をとられ行動阻害の影響を受けそう。
しかもなんか大きい魚ッぽいのが居ました。襲ってくる事はなかったけど大鷲と戦闘してるときも襲ってこない保証は無いのであまりここで戦いたくない。
後者の大木の近くは大鷲と戦闘中にビッグチュンが大量に出てくるのが予想でき、ただでさえ高い難易度が跳ね上がることは予想に難くないので却下です。どう考えてもこっちは今の私の戦力じゃ無理です。
これらの点から今日であった岸壁で戦うのが一番楽です。
ただし、この大木に湧きでてくるビッグチュンの群れはレベルあげには使えそうなポイントだから、大鷲を仲間にした後、ここで稼ぐのはありだと思う。とうぜん育てる対象は仲間にしているであろう大鷲だよ!
次に山村で集めた情報面では、大鷲は村で飼っている牛や羊といった家畜を狙ったり、近くの川で狩をしていると言う話を聞いたので好物は肉とか魚じゃないかということが分かりました。
ストーンワームを食べていたという情報もあったね~。まあ鳥が昆虫を食べるのは自然の摂理だし、おかしいとは思わない。
あとは戦う意思を見せない人・なくした人と、恐怖に駆られた人には無闇に襲い掛からないということが分かりました。これは私が逃げようとした時に去っていったことから想像は出来ます。
まあなんにせよ好物が分かったのは大きい。現地調達が可能なストーンワームの肉を用意してあの場所で迎え撃ちましょうか。
一通りの調査を終え、ガイアに戻ってきた私は、まずは街の武器屋でコウガたちの装備できそうなものを物色する。2頭が装備可能な武器は爪と小太刀の2種類。
武器の特性としては、爪は物理攻撃面の補正が高く、小太刀は物理と魔法能力の複合補正でした。
両方の攻撃を吟味した結果、爪は物理能力の高いコウガに、小太刀はセツナに装備させるのが良いと判断しました。
身に付けさせる装備の種類は決まったけどここで問題が一つ。
街の武器屋で扱っているのはスキルレベルの高いプレイヤーが作ったものより性能が劣るので強い装備が欲しければプレイヤーに頼む方が良い。その分、費用は掛かる……と注釈が付きますけど。
町を歩いて鍛冶スキル持ちのプレイヤーを探すのもありですが、あまり時間を掛けるわけには行かないのでここは生産者の横のつながりに期待したいと思います。
コトノ、ルグードさん、シオリさんの3人に鍛冶師の知り合いが居ないか聞いたほうが早いもんね。
これで誰も知り合いが居ないって言われた場合、仕方ないので店売り装備で挑む事にします。




