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165話

 「……あーぁ、先を越されちゃったかぁ。残念」


 ギルドでクエストをこなして貢献度を稼ぎ、ようやく得られたのは宝金王ギャラルホルンの住処である《ブライトス宝石鉱山》だった。

 だけど私がダンジョンに到着する寸前にガウェインとかいう人がソロで倒したというアナウンスが流れてしまい、光の領域の王種初討伐とはならなかった。

 コーカサスに関して?あれは運営が取り急ぎ配置した感じがプンプンする生まれたてのようなものだったし、強さも普通のプレイヤーでも余裕で倒せる王種戦の腕慣らしみたいな扱いだからノーカンです。


 とりあえず当面の問題は倒されたばかりの宝金王が復活するまでほぼ一日かかる事なんです。この宝石鉱山まで移動が面倒(毎度のことながらロアンに乗ってたけど)だったから、町まで戻るというのも却下。

 特に私の場合は他のプレイヤーみたいに行き帰りで遭遇する敵を倒して経験値を稼ぐという必要がないからね。経験値が必要なコウガ達に関してもドラゴンズホールでのブートキャンプで鍛え上げてるし、この辺の敵ではドロップ集め以外では旨味を感じない。

 そういいつつ明日のこの時間にリポップしなかったら戻るけど。なんか初心者ダンジョン等がある町の近くに《王種の夢》とか言う特殊ダンジョンが出来たみたいだし、そこも見ておきたい。出る王種はほとんんど私が倒したやつだけどね。特に氷獣王とかもう一回戦ってみたら面白うだと思うんだよね。

 ロアンVS氷獣王とか面白そうじゃない?



 「……しかたないかぁ。クエスト消化ついでに採取ポイントを周って採掘しちゃおう。……えっと確かツルハシがあったはず~……あっ、あったあった」


 私が取り出したのは宝金王を倒すついでに引き受けた宝石の原石調達のクエストで配布された宝石採掘用ツルハシ。このツルハシで採取ポイントを掘れば宝石の原石や宝石がぽろっと出てくる。まあ基本は原石ばかりなんだけど、たまに宝石本体も出てくるから資金稼ぎにはちょうどいい。しかもこのツルハシは特殊な物だからいくら使っても壊れないときたもんだ。採取作業をするのはロアンを仲間にした氷窟以来だから、とっくに飽きたと言う感じはなくなってる。そういう訳で今日一日くらいなら採掘をして過ごす事は容易です。多分。


 ぶっちゃけクエストに含まれない種類の宝石系が出てきたらルグートに頼んで付け替え用の装飾品にしてもらうつもり。と言う訳でカエデを装備している私の護衛にルドラを近くに配置、邪魔になりそうなモンスター退治に関してはセツナとパーシヴァルに頼んだ。キャンプ中もパーシヴァルには闇の領域のユールの集落に派遣してたから、たまには暴れる事でストレス発散をしてもらいたい。


 「アイリ様に危険が及ばぬよう、この階層のモンスター達を全て掃除してまいります」


 「あっ、それは程々にお願いね。倒しすぎて採掘したアイテムを持ちきれなくなるとかなったら困るからさ」


 「はっ!申し訳ありません。それでは抑えめに間引いて参りますね。それでは行きましょうか、セツナ殿」


 「ガルルッ!」


 セツナ達が鉱山の奥に消えてから数分。二人は順調に討伐していってるらしくアイテムドロップがどんどん増えている。……うん、全然抑えてるように思えない増加量ですね。

 しかも倒す速度が速いせいで、採掘中の私の近くにモンスターが次々にポップしてきたりして困る……。まあルドラがポップしてくるモンスターを数秒以内に倒してくれてるけどさ。文字通り真横にポップされた時はマジ死の危険を感じた。装備中のカエデが反応しなかったのか理由を聞いてみた所それがノンアクティブモンスターだったからでした。

 とりあえず驚きすぎると魅了することもままならないから採掘中でも気合を入れておかないといけないとここで学んだ。



 カツーンカツーン……


 鉱山内部にツルハシの振るわれる音が響く。以前の氷窟の時と違い、カエデを装備している私のSTR値は100を超えているので、採掘作業が楽です。ツルハシを一回振り下ろせば採取ポイントが爆発し、《ルビー原石》《アメジスト原石》《トパーズ原石》など複数の原石類がコロコロと出現してはアイテムボックスへと転送されていく。ちなみにクエスト対象アイテムは《メノウ原石》で出現率は低い目。

 ……なはずなんだけど、すでにクエスト達成可能数を超えているので大丈夫。



 装備品としてカエデが居ると私の力が強くなってる気がする……いや、実際にSTR補正で強いのだけど、それだけです。実はSTR値ばかり高くても攻撃を当てるためのDEX値が低くステータス同士が釣り合ってないから無意味なんだよね。動かない敵ならともかく、プレイヤー相手の近接戦は絶対無理。このゲームはCHA以外のステータスはある程度バランスよく割り振っていないと攻撃が当たらなくなる恐れがあるらしい。



 採掘をしているうちにゲーム内には夜時間が訪れる。

 そうなると敵の種類が変わり、無機物系のモンスターから闇属性の精霊系モンスターが現れたり、死霊系のモンスターが現れたりする。流石にずっとセツナとパーシヴァルに任せるわけにはいかないので夜の間の討伐にはコウガとロアンを呼び出した。クルスは鳥目らしく暗い場所での視界は狭いので呼び出していない。代わりに明日のボス湧きの予定時間まではクルスとイリスに殲滅をお願いするつもり。


 「コウガにロアン。殲滅中に珍しそうなモンスターが居たら倒さないように気を付けてね。配下に誘うつもりだから」


 「ワンッ!!」


 「うむ、我に任せておくがいい。主殿はゆっくりしておくと良いぞ」


 そう言い残しコウガ達は狩りへ。で、クエストアイテムも集まり暇になった私がやる事と言えば……

 それはもちろんトリミングタイムですね!そう、トリミングとは私の癒しの時間……。

 セツナの毛皮を梳き、デフォルトで私の腕位の大きさになってしまったカエデの持ち手部分を磨いたり、熱い目で見つめてくるパーシヴァルとお話し(主に領地関連の報告が多かった)したり、集めた素材をティアに渡して【錬成】してもらったり……。

 イリスとクルスも呼び出しているけど今は私の近くでゆったりしてる。全員のトリミングが終わったら最後に今まで警護してくれていたルドラを呼び寄せて他のメンバーに守ってもらう事にした。


 「グロロォッ~~♪」


 鱗磨きが気持ちよかったのか嬉しそうな声を出すルドラ。うーん、ルドラったら進化もしてないのに声が太くなってきてる?やっぱりこのゲームにも時間経過による成長はあるのかなぁ……。


 「アイリ様。僕達は戦闘で経験を積む以外にも時間経過で成長します。戦闘で成長すれば戦闘型に、時間経過で成長すればそれまでの行動により伸びていくのです。アイリ様の領地にいる住民たちもそうです。彼らにはアイリ様が資金を提供したことで戦闘以外の方法でも成長することが出来るようになり、大工や薬師、ギルド職員など様々な職業につくことが出来るようになりました」


 どうやら考えてたことが口に出てたみたい。パーシヴァルが疑問に答えてくれた。


 「そっかぁ。私ってさ、領地関連は資金の補充をして報告を聞いて次の方向性をトリビアに指示する程度の事しかしてないの。だから領民たちがどういう経緯で成長してたのかわからなかったんだよね」


 「アイリ様の治める領地にいる民はみんな幸せそうです。何か事業をしようとすればアイリ様から頂いた資金を使うことで、最高の設備で始めることが出来ます。設備が良ければスキルレベルの上昇も早くなりますし、他の街から職人を雇うことも出来るようになります。

 現にユールの集落にいた仕事がなく働きたくとも働けなかった民が0名となり、全員が何らかの仕事についており、税収も以前に比べて大幅に増加しております。もちろん別領地の集落や町で活躍している者たちもおります」


 「……そっかぁ(えっ?いつの間にそんな調査してたの?そんな報告受けてなかったけど!?)」


 内心驚きつつ、領民たちの意識調査内容を聞いた。

 とりあえず私に不満を持っている領民は居ないらしいので安心した。トリビアからもこの方面の報告を聞いてたけど、パーシヴァルからも同じような報告が聞けると信用性も増すってものです。……トリビアを疑ってるわけじゃないんだよ?

 なんにせよ、顔も出さない金だけ領主とか言われてなくてよかった。



 「あの~、マスター。ここで取れた宝石の原石を錬成してたら全く別の物が完成したんですけど……使いますかー?」


 「そうなの?一応それ見せてくれる?」


 「了解ですマスター、これが件のアイテムです~」


 パーシヴァルとの会話に割って入って来たのはティア。

 笑顔を浮かべてたはずのパーシヴァルはティアを一瞬睨みつけたような気がするが気のせいだよね。うちの家族が意味もなく敵視するはずがないし……。


 ティアが渡してきたのは《宝石竜の角》と言う素材だった。説明文にも地竜が宝石を食べ続けて変異したジュエルドラゴンの角だということ以外は記載されていない。

 とりあえず綺麗だから持っておくことにしよう。


 「ティア、この角のレシピとか登録できてる?」


 「いえ、それが錬成時にランダム要素が発生して完成した物ですのでレシピ登録は出来てないですね~」


 作れないのかぁ。まあランダムの結果じゃ、しょうがないよね。

 私はこれをルグートに……いや、やっぱりカティちゃんへのお土産(製作依頼)にする事にしてアイテムボックスの中へしまっておいた。




 その後、しばらくしてコウガ達が精霊種ノーム死霊種ゴーストのレアモンスターをトレインして連れてきたので、魅了して配下に引き入れておきました。

 その後は殲滅ではなく、モンスターを連れて来るように頼み、仲間にしたばかりのレアモンスター達を【軍勢】を使う事によって育成していった。

 他のプレイヤーがいたらMPKとなりかねないけど、町からかなり離れていて行き来に面倒がある上、ここのモンスターはレベルが高い割に経験値はそう多くない。ドロップ品もちょっと高値で売れる程度だから来る人はいないはず。というか、王種がいる場所ってそういう妙な調整されてることが多いんだよね。


 軍勢の方もある程度しっかりしてきたところで夜が明けた。

 多分、もうすぐ宝金王が復活する。よし、皆。しっかり倒しちゃおうね!

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