163話
《個体名カエデのレベルが60になりました。称号《王の器》を得ました。《王の器》を得た事により王種への進化が可能になりました》
来た、来ましたよ。待ちに待っていたカエデの王種進化の時がっ!
いろいろ言いたい事はあるけど、今はまず進化の確認が先だよね。
名前 カエデ
種族 ラッシュド・バーム 魔樹種ランク5
LV 60(94500/2986000)
スキル 【ナチュラルメイク50】【高速連射】【堅魔法40】【アロマテラピー】【森林魔法35】【ワン・ツー・フィニッシュ】【アン・ドゥ・トロワ】【クラッシュ・ド・ラッシュ30】【連続魔法20】
パッシブ 【擬態】【伸縮自在】【火属性弱点:大】【弱り目に祟り目】【植物強化】【魔素吸収】
強さ
物理能力 2680
魔法能力 2550
称号:魔素掌握せし樹・王の器
進化可能:魔樹ランク6《王種》 ワンダー・ミストゥルティン
現在のステータスはこんな感じですね。
森林魔法は既存の木魔法から派生した上位スキルで主に状態異常を防ぐ魔法を覚えていく。
クラッシュ・ド・ラッシュは手数を活かした様々な連続攻撃を行うスキルでスキルレベルがあるので使えば使う程威力が上昇する。
連続魔法は数種類の魔法を同時に使用できる代わりに魔法の効果時間が下がる。カエデは防御・補助魔法型だったので同時発動できるのはすごく都合がよかった。効果時間に関しても私がきっちり把握してたから補助漏れして手痛い攻撃を受けるといったミスはない。
新たに得た王の器に関しては敵勢王種を倒してからその同種族モンスターが一定レベルまで上昇すると得られるものとの事。
ちなみに効果は、すべての通常・派生進化先を生贄にして強制的に王種に進化する事と進化時のペナルティを激減する事。これには特に不満はない。なぜなら、明らかに強い王種に進化できるのに通常種・派生種への進化を選ぶ人がいるとは思えないもん。ただし同じ種族が二体目が居ても王種にはなれない。二体目以降は当然通常種か派生種となる。
続けて進化先である王種の説明について。
ワンダー・ミストゥルティン:別の世界である神を殺したと言われるヤドリギが由来となっている。神を殺す力はないが全ての王種に対して特攻効果を持つパッシブスキル等を取得する。【王種キラー】【王権】【???】
【王種キラー】:王種に対する攻撃力が1.5倍になる。
【王権】:自分にかかっているスキル効果を仲間に与えることが出来る。
【???】:進化した後に追加されるため効果は不明。
素晴らしい……。カエデが見違えるほどの力を得られます。
王種に進化したカエデは王種を相手にする場合攻撃力が上昇。しかもその効果を仲間にも与えられるとか、これはもう完全に私達にすべての王種を倒せと言ってるようなものですね!……とそれはいいすぎでしょうか。ただ実際問題としてこのスキル効果があればこれから先の王種狩りは非常に楽になる。
クルスやイリスの希望も早い段階でかなえられるかもしれない。と言うかもう倒せそうな気がしてならない。
「それじゃ、カエデ。王種へ進化するけど良いよね?」
「ガッサガササッ」
私は確認を取り、カエデの進化を開始。
いつも通りデータが変化する演出の後そこに現れたのは、なぜか私でも持てるサイズの木の枝。見方によっては槍か杖に見えなくもない。
《個体名:カエデが王種へと進化しました》
《新たな王種が仲間に加わったため、プレイヤー名:アイリのステータスが上昇しました》
「あれれっカエデは?」
「主様。某はここにいますよ」
何と目の前の木の枝が喋った。私はあわてて確認を取ると確かに目の前の枝がカエデだった。
さっきまで十メートル近くあった体がお手軽サイズになったことに驚き、カエデが喋っていることや自分のステータスの事に頭が回らなくなっていた。
「まだ信じられないよ、王種に進化したカエデがまさかこんな姿になってしまうなんて……」
「主様、某がこの姿を望んだのです。今までの体では連れ歩いてもらう事が困難でしたので、主様と常に一緒に居られる形をとった結果この姿に。しかしご安心ください。この姿の某でしたら主様の武器となりお役に立てるでしょう。もちろんレベルアップによる能力の強化も王種としての補正も加わりより強くなれます」
どうやらカエデは自分自身を武器として使って欲しかったらしい。今まではなんとなく鞭を使ってきたけどこれからは武器はカエデになりそうですね。
それにしても今までの巨体にそこまで不満を持ってたなんて気づかなかった。そりゃ確かに剪定とかは大変だったけどそれはそれで楽しい時間だったのになぁ。まあカエデが望んだことなら私がとやかく言うことは無い。サイズが小さくなったのならなったで、対応を変えればいいだけだしね。
「えっと、ところでカエデ、その口調は一体……?」
「??どうかされましたか主様。某の口調に何か問題でもありましたか?」
「えっとカエデって確かに性別がない子だけどまさか一人称が某だとは思わなかったからそこに驚いてるの。問題があるわけじゃないから安心して?」
「そうでしたか。某としては私へ変更しても良いのですが、それだと特徴のない存在になってしまいそうでしたので王種への進化が見えてから必死に練習したのです!」
変な所に力を入れてる子ね。まあカエデまでクルスやロアンと同じく我とか言い出さなくてよかった。流石に一人称が我と言う子が三人になったら私以外には誰が喋っているのかわからないもんね。
「それにしてもカエデ、意外と流暢にしゃべるんだね」
「はい、それに関してもロアン殿の指導のもと、喋り方を研究しましたので。ちなみに某は無機物・魔導機種・魔粘種の言葉を理解し完全通訳することが出来ますのでぜひご利用ください」
なるほど。それなら有事の際は今自分で言ってた種族の配下のフォローをしてもらおう。基本は本人の希望通り私の装備として扱うけどね。でも私の装備になるっていつ使われるんだろうね?私のことながら予想できない……。
通訳に関してだけど、ロアンは獣/魔獣種・鳥/魔鳥種の通訳が得意で他の種族もそれなりに通訳できてた。これはきっと年の功によるものだよね。
パーシヴァルは精霊種・死霊種の通訳が得意で、家族以外の別種族の通訳は苦手。ただし、古代語を読むことが出来るそうです。
ティアは通訳と言う意味では万能だけど、そういった話し合いの場面に遭遇しないから頼る機会が少ないんだよねぇ。本人も通訳に呼ばれるよりも生産作業か情報収集をしたいって言ってるし。
「とにかくいろいろ驚いたけどこれからもよろしくね、カエデ」
「もちろんです。おっと、そうでした。主様、某を武器として扱う際の注意もありますのでしっかり把握してご利用ください」
「そうなんだ?それも確認するけどまずは王種としてのカエデのステータス確認からするね」
表示されたカエデのステータスは驚きのものだった。
名前 カエデ
種族 ワンダー・ミストゥルティン 魔樹種ランク6《王種》
LV 1(0/150000)
スキル 【ナチュラルメイク50】【高速連射】【堅魔法40】【アロマテラピー】【森林魔法35】【ワン・ツー・フィニッシュ】【アン・ドゥ・トロワ】【クラッシュ・ド・ラッシュ30】【連続魔法20】【王権】【武器化】
パッシブ 【擬態】【伸縮自在】【火属性耐性:中】【弱り目に祟り目】【植物強化】【魔素吸収】【王種キラー】
強さ
物理能力 2235
魔法能力 2100
称号:魔素掌握せし樹・王の器
【武器化】 ミストゥルティン:使い手を選び王種を倒す事に特化している。槍もしくは杖へと変化する。
槍の状態ではSTR+100となり、杖の状態ではINT+100となる。本人のレベルが上がる事でこの補正値は上昇する。装備へ変化していてもモンスターとしてのスキルは使用可能。※専用装備・装備者は【王種キラー】【王権】使用可能。
すごい。何がって言うとまずレベルアップへの必要経験値の量と【武器化】のスキル。経験値の量は王種になっていない同ランクの三倍以上。
代わり……なのかどうかはわからないけど武器化時の補正値もSTRかINTが+100となってる。……えっ?そのステータス補正は私に必要なのかって?……ど、どうなんだろうね?でもあって損はないはず……。
通常攻撃する時とか、いつか覚えるであろう魔法を得た時に……うん、いつも言ってる気がするけどきっとそう。
と言うか装備時の利点はやっぱり私のスキルとして➀【王種キラー】【王権】を使える点、➁私がカエデを装備をしていてもカエデはカエデでスキルの使用が可能、だという事だよね。
特に➀に含まれる【王権】は良い。だって私の持ってるスキルの効果をみんなに与えられるんだからね。それはつまり、コウガ達が魔王のスキルである軍勢を使えるようになるという事。近いうちに割り振りを考えておかないと。
……そんなことしたら私の影が薄くなる?いいのいいの。私は魔王。陰で暗躍するんだから目立つことはコウガ達に任せておけばいいの。そしてゆくゆくは大魔王にクラスチェンジするんだよ、きっとね。
➁は文字通りだね。私がカエデを武器として装備をしていても、カエデはカエデで行動をすることが出来る。移動が出来るという意味ではなくスキルを使用するという意味だね。仮に私がポカポカとモンスターを叩いていたとしてもそれは私が行動しているだけ。武器として使われているカエデはその間でも補助魔法をかけたり森林魔法を使って攻撃したりも出来るのです。要するにオートスペルだよ!すごくない?
そして今まで持っていた弱点だったものが【火属性耐性・中】という正反対の性質になった。やっぱり王種になったら目に見える弱点は無くなるらしい。想像だけど弱点をさらけ出してる王種はすぐに狩られるんだろうねぇ。
あとは王の器の効果でレベル1になっても能力は高いままですね。これなら大して苦労することなくカエデのレベル上げが出来そうです。
ついでに私もカエデの使い方を覚えよう。練習不足のせいでいざと言う時にスキルが使えないとなったら困るもんね。
あと言うべきことはカエデが王種へ進化したことで私の王種としてのランクは上がらなかったけどステータスが若干上昇したことだろうね。上がったステータスは言うまでもなくあの項目です。上昇領は可もなく不可もなくと言った感じですね。そもそもあの項目の数値が高いので10や20上がったところでなにもかわらない。
これで仲間にした王種は三人目。この調子でどんどん王種メンバーを増やしたいところですね。




