157話
一日遅れました。
新章始まってすぐに文章表現できなくなったためです。
ちょくちょく遅れることもあるでしょうけど、長い目でみてあげてください。
ルグートが用意したのは武骨な輪っかが二種類。しかも輪っかの幅……径がそれぞれ違う。
いくらなんでもこんな見目悪いアクセサリ付けたくはないよ!とルグートを見る私。
「大丈夫だって。とりあえずつけてみりゃこの装備の凄さが分かるって。あぁ、径が太い方が足用で細い方が腕用だから間違えるなよ?」
私は言われた通り足と手にそれぞれの輪っかを装備した。すると輪っかが形状変化したのだ。
腕に付けた方は《花鳥風月》と似た感じの花……バラの花とドラゴンの文様が刻まれ、ジャラリとした鎖が三本垂れ下がっている。この鎖も振り回せば武器攻撃判定があるみたい。
足の方の輪っかも複数の動物の顔(狐と馬っぽい)が浮き出て私の足を包み込むように網目状に展開し、金属製のストッキングみたいな感じになった。でも柄は赤と黒が程よく混じっていてなんとなくいい感じ。
もう片方の足はヒマティオンの布部分で隠れてるから見えない。ヒマティオンをめくっても見えない……。謎だ。
「つけたか?まず腕の輪っかは《可変腕輪》、足のは同じく《可変脚輪》だ。本来なら両方とも装備しているプレイヤーのステータス次第で形状が変わる装備だ。ぶっちゃけるとその装備をしてると相手の高いステータスがまるわかりに……」
「き、却下っ!」
私は急いで腕輪と脚輪を外した。すると当然元の輪っかに戻る。つけてるだけで私のステータスの目安が付けられるとか弱点晒すようなものじゃない!
「まあまあ最後まで聞けって……本来なら……といっただろ?そのアクセサリにはちゃんとそういうのを相手に知られないように認識阻害の効果を元々つけてあるから見る人によって全く違う印象を抱かせることが出来る。だからアイリ、あんたのステータスがまるわかりになる訳じゃないから安心しな」
「……本当に?」
「あぁ、細工師としても友人としても騙したりなんかしないさ」
……そこまで言うならいいかな……とも思ったけどあまり見られないように配慮することが必要だね。ルグートには悪いけど。とりあえず装備の効果だけでも確認しておこうかな?
可変腕輪:様々な金属で錬成されたインゴットから作り上げられた見た目が変わるブレスレット。全ステータス+20・認識阻害。
可変脚輪:様々な金属で錬成されたインゴットから作り上げられた見た目が変わるアンクレット。全ステータス+30 認識阻害。
説明文から察するに同じ素材から作っているのにステータスの補正値が違うんだね。どういうことだろ?
ちょっと気になったから聞いてみた。
「それは試作しすぎたせいで預かったインゴットの量が足りなくなった事とステータスに振り分けるためのスロットを多く食う認識阻害の効果を付けたためだな。アンクレットは問題なかったんだが、ブレスレットの方はステータス補正値が減っちまったんだ。すまねぇ」
なるほど、材料不足かぁ。渡したインゴット……ティアが錬成した物……ならまだ在庫あるから言ってくれればよかったのにねぇ。まあルグートもなんだかんだで私の秘密主義に気付いているから認識阻害をつけてくれたんだろうからそこは感謝しておきます。
ちなみに可変シリーズのステータスによる見た目の変化は次のようになるらしい。
ブレスレットならこう。三種の総合ステータスが低いと左、それなりだと真ん中、高いと右側の姿になりやすい。
STR&VIT&AGIなら、犬・熊・ドラゴン
DEX&INT&CHAなら、タンポポ・ユリ・バラ
アンクレットだとこういう感じだね。
STR&VIT&AGIなら、馬・亀・ドラゴン
DEX&INT&CHAなら、猿・鳥・狐
どういう基準でこう振り分けられているかは不明だけどシステム的にはこうなってるらしい。
このことから相手がどのような手段を得意としているかわかるようになってるんだって。
で、認識阻害を付与した事でこれらの変化をあべこべに表示させることが出来るんだとか……。
本当はドラゴン(物理系上位)の形なのに犬に見せたりユリやバラ(魔法系中~上位)に見せたりするとかそういう事。
腕輪の方はドラゴンとバラが出てるから両方のステータスが高いと勘違いされるんじゃ?と思ったけど、そもそもこの可変装備自体がわずかしか出回ってないから今の所、文様で強さを測られたりはしないらしい。装備を持ってる人はそういう目で見てくるだろうけど、私の場合は認識阻害が付いているから、よっぽどの腕自慢じゃないかぎり絡んではこないだろうとの事。……本当かなぁ?
なおこの可変装備の素材になった金属(ティアのスキルで精錬されたインゴット)で作った物と今現在出回っている可変シリーズの素材のランクが違うのでそもそものステータス補正値が違いので戦闘になってもごり押しで勝てるらしい。なおわずかに出回っている可変シリーズのステータス補正は+15~+20との事。
なるほど。そこまで素材のランクに違いはないみたいだし、ティアの作った錬成インゴットは放出してもよさそう。
「それなら俺かBの所で買い取るぜ?錬成インゴットならスキルレベルの上りも結構よかったしな」
「了解。これに関しては卸す事にするね」
そういうとルグートは最近伸び悩んでいたから助かるとガッツポーズで喜びを表現していた。
とりあえずこれでアクセサリ枠が全部埋まったかな。あと最後は武器を作ってくれたBさんなんだけど……
「んじゃあ、次は俺だな?さっきも言ったんだが、俺の作る装備はレベルの関係でおまえには装備できん。だから前と同じようにお前のペット達の装備に変更してきたぞ」
「それはうれしいかも!それなら早速コウガ達を召喚……」
「まてっ!ここでは呼ぶな。聞いたところによるとペットたちは全員巨大化してるんだろう?」
あぁ、そうか。すでに本来の大きさをコトノ達に見られてるから前みたいに小さいサイズにする必要はなくなったんだね……。まあでも町の中では小さい方が良いし、たまには腕に収まるコウガ達を抱きしめたい。
「そうだけど、小さくして呼び出せるから大丈夫っ」
「そうか、なら構わん……よな?コトノ」
「良いですよ~。元のサイズで呼ぶなら一体ずつでお願いしたいところですけど小さくしてくれるなら全員を呼んでいただいても~」
工房主のコトノの了承も得た事だし、久しぶりにサイズ変更のコマンドを使ってコウガ達を呼び出した。
コウガとセツナは子犬サイズ(一方はオオカミだけど小さいから犬でいいよね)、他の皆も三十センチくらいのサイズで呼び出してみました。……そこで気づいた。
「ロアンがっ、ロアンがっ……かわいすぎるぅ!?」
そう、大きいとサーベルタイガーだった彼をサイズ変更して呼び出すと子猫になったのだ。
闇の領域では元々の大きさから彼を抱っこするという概念すらなかったけど、これからは子猫姿で呼び出すのも断然ありです。だけどエレノアの前でこの姿を取らせると色々まずい気がするので注意しよう。
「あ、主よ……これでは我の威厳が……」
「「「えっ?この子猫が、しゃべったぁぁ!?」」」
あっ、しまった。喋らないように注意しておくの忘れてた……。
このおかげで三十分くらい武器の話がすっ飛んで説明を強要されました……。とりあえず特殊個体をテイムしたと言っておきましたよ。王種も言ってしまえば特殊個体だしね。
続けてティアとパーシヴァルを呼び出したけどこの二人に関しては本来の姿でいい。ぱっと見から人型だからね。一方は魔人族だけど、こっちで活動してた時の姿を取ってもらってるから問題ない。
それよりも問題は……
「……綺麗で可憐だ……結婚してください!アイリさん、この人を俺に下さいっ!」
なんとルグートがティアに求婚してた。ティアは困った表情で私を見る。ティアって私以外とは喋れないもんねー。意思の疎通だけで言えば住民ともできるけど。
「あのさ、ルグート。この子、うちの子なのはわかってるよね?戦闘は出来ないけど大事なメンバーをあげるわけないでしょ?」
「そこを何とか……」
「絶対になんともしない」
言い切ってやった。ティアはすごくうれしそうな表情で念話でマスター大好きですを連呼している。
それを見ているルグートの顔は真剣顔だった。……ゲームキャラ(しかもモンスター)に惚れるなんてね。しかしアイリも気づいてはいないもののパーシヴァルに惚れられているので一概におかしいとは言えないのかもしれない。
この話は一旦ここまで。改めて武器の話に戻ろうと思う。
「話がそれていたな……では改めて俺の作った武器なんだが……」
Bさんが提示したのは爪装備そのものではなく自前の爪に取り付けるアタッチメントパーツだった。アタッチメントパーツと言うのは本来攻撃力等を持たないものを示す事が多いけど、今回は便宜上そう呼んでる。
コウガの爪には錬成インゴット製の付け爪と牙。セツナには魔法補助系の腕輪と爪。
イリスには昔と同じように指輪を尾っぽの細くなっている所に取り付けた。
クルスには破壊力を増すように回転する嘴のパーツと、久しぶりに装備した機関銃とその銃弾。昔の装備は闇の領域に入って早い時期に弾切れでどうしようもなくなったからね。
ルドラには自前の龍の爪と牙の方が精錬インゴットより高性能だったので、腹部を守るプレート系の装備を付けてもらった。ぶっちゃけこれも必要なかったんだけど最近色々頑張ってくれたルドラの装備なしだと可哀想だから装備させておきました。
ティアには……戦闘しないので装備は無し。本人も全然気にしていなかったので大丈夫。
ロアンも自前の武器(剣状の足)の方が強いので配布は無し。
最後にパーシヴァルだけど、彼は普通にプレイヤーと話が出来るので小太刀を作ってもらってた。
もともと装備してた二刀用の武器の損傷が激しいからサブウェポンが欲しかったらしいのでちょうどいい。
念のために説明しておくが小型サイズ時に装備したが元のサイズに戻れば相応のサイズに変化する事を明記しておく。
「ありがとうね。Bさん。皆も喜んでるよ」
「おっ、おう。久しぶりに気合の入った仕事が出来たぜ!」
B=ルドラーの顔が少々赤かったことに関してアイリは全く無視だ。以前もアイリと話すときは赤くなることが多かったから今回もそれなんだろうと思っただけだ。
当然ながらそのB=ルドラーの反応はコトノ達を刺激しているがその話はまあ機会があれば……。
こうしてアイリの歓迎会&新規装備の作成依頼がおわり、それぞれが通常活動へと戻っていく。
期せずしてコウガ達の装備もそろえた事に喜びつつ、久しぶりに光の領域の冒険者ギルドに駆け込んでいき情報を集めるアイリの姿があった。
なおこの街では巨乳美女が情報収集をしていたという記録は残っていない。いないったらいない。




