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14話

 少々苛立つ出来事がありましたが、いつまでも気にしていられる状況ではなかった。


 先ほどのパーティの男性が言っていたように、山のモンスターが本当に手強かったんです。

 鼬の時のように圧倒的な能力差で追い詰められるというわけではありませんでしたが、コウガ達の連携では難しい相手もいたのです。


 その理由はやはり戦うフィールドの違い。

 山に入って最初に遭遇したモンスターは【ビッグチュン】というスズメの鳥類モンスター。

 翼を広げると1メートル近い大きさで初見では驚かされました。


 「な、なんでスズメなのにこんなに大きいの!」


 そのビッグチュンはこちらの攻撃が届かない空中から襲い掛かってくるので、その動きを見極めるには少々時間を要しました。それでも数羽ほど戦っていれば、単調な攻撃しか無い事に気づけた。


 始まりのフィールドの鳩もといポポの場合は、最初は空から襲ってくるんだけど、戦いが始まれば剣などが届く位の低空からの攻撃だったので苦労する相手ではありませんでした。



 それに比べてこのビッグチュンはそう言った近接攻撃が届かない中空域からの攻撃を得意としていたのです。弓や魔法があれば十分攻撃できる距離ですけど、ウチの子達がそんな装備を扱えたりするはずがないので、ただひたすらに攻撃の時に降りてくるタイミングを待って挟み撃ちをする形になりました。


 他にもビッグチュンは同族を呼ぶスキルも持っていたので、あまりに数が増えたときには戦略的撤退もしました。

 ビッグチュンは単体だとかなり慎重に攻撃の機会を伺いますが複数いる場合は弾丸の如く積極的に攻撃してくるのでこれも注意すべき点でした。


 そんなビッグチュンから頂いたドロップ品はやはり羽系が多かった。お肉?ありませんでしたよ~。あの巨体なのに食べられるお肉が無いなんて不条理ですよね!

 まあ細工師のルグードさんなら羽素材を羽根飾り系の装飾品に変えられるだろうから使い道はあリますから残しとこうかな。



 ビッグチュンのほかに遭遇したのは【ストーンワーム】というミミズ。これはもうアレでした。

 種族は虫系らしく私の【不興(中)・魔蟲/虫】パッシブスキルの影響を大きく受け、すっごい攻撃的になってました。まあ地面から突然飛び出してくるのが脅威だっただけで、コウガ達の爪と牙による連携の前に意外に早く沈んでいきましたけどね。

 ちなみにドロップアイテムは《硬そうな土砂》という分類が難しい素材でした。誰か買い取ってくれる人がいれば良いけど。


 あぁ、そうそう。非常に不本意ながらストーンワームは肉も落としたんです。動物タイプからのお肉ドロップは少ないのに虫からお肉を貰ってもねぇ?


 ……コウガたちは喜んで食べてました。格上のモンスターだったので経験値のボーナスもすごかったです。

 あっ、コウガ達。悪いけどその口で私を嘗めたりしないでね?いや、ほんとに……。

 別にミミズ自体が嫌いというわけじゃないのよ?ミミズを食べた口というのが無理なだけだからぁ。

 あっ、ち、ちょっと待っ……。きちゃだめー!ひぃぁっ!



 うぅ、大変な目に遭いました……

 涎まみれ?になった顔を拭きながら(口やその周囲を嘗められるのだけは死守いたしました!)ある悪戯を思いつきました。

 別に拭かなくてもすぐ消えるエフェクトなんだけど気分的に拭いちゃったんです。分かってもらえますよね?この気持ち!


 この気持ちを共感してもらう為に、ミミズの肉シオリさんに売ってあげよう!きっと喜んでくれますよね。さっきは目の色変わるくらい求めてたんだし!反応が楽しみですね、フフッ。



 順路を進み、ようやく依頼主の一つである山村に到着。そこで大鷲の情報の聞き取りを開始しました。

 村人が言うには、この村に現れる前には順路を少し進み、その先の分かれ道を右に行った所にある岸壁の辺りに姿を現すそうです。ちなみに左に行けば山頂への正式な順路になります。


 大鷲が現れるのは各山村の近くということで幾つかポイントがあり、行っても出会えないことがあるんだって。


 ふむふむ、じゃあとりあえずそこを目指していきましょう。戦いになったら足場などの位置取りが大事ですし。ハズレだったとしても下見しておくに越した事はありませんし。



 道中、何度かモンスターと戦いがありましたが無事岸壁にたどり着きました。

 意外に拓けた場所でコウガ達が走る分には問題ない広さかな。ただ、セツナの潜伏を使うには不利ですねぇ。

 さらに詳しく言いますと前方は足をかける場所も無い岸壁、左右は木々が生えており移動が困難、後方は順路へ戻る道があります。



 クケエェェェェーー!!



 広場の中央部分まで進むと岸壁の上から声が聞こえました。それと共にバッサバッサと翼が羽ばたく音も。この音からかなりの大きさだと予想が出来ます。


 あらわれたねっ!まさか最初のポイントで遭遇できるとは思ってませんでした。大鷲の攻撃方法を探るチャンスです。


 「コウガ、セツナ。相手の様子を見ながら行くよ。倒せると判断しても倒すのは絶対ダメだからね?」


 「ガオンッ」「ウォンッ!」


 良い返事ですね!さあ、勝負開始ですよ!絶対私の仲間になってもらうんだから!覚悟しなさいビッグバーディ!



 ビッグバーディの初撃は岸壁の上からの直滑降によるものでした。目標は広場の中央にいたコウガとセツナ。


 ズドーンッ!!


 すごい音と共に土煙が上がる。土煙でモクモクしている場所に映っていたのは大きく羽を広げ威嚇している様子のビッグバーディのシルエット。


 「コウガ…セツナ……無事?」


 「「ガウッ」」


 声に振り向くと無傷の2頭の姿がありました。よかった。無事避けれたみたい。あんな速さの一撃でも避けれるなんてすごい。私ならステータス的にも無理すぎです。

 私が狙われたんじゃなくて良かったです……。それにしても挨拶代わりの一撃がすごすぎなんだけど……?



 クケエェェェ!



 ビッグバーディの声が響く。その声にはなんとなく「よく攻撃を避けたな、自分と戦う資格はあるようだ」的な感じが含まれてる気がした。


 ふむ、このビッグバーディは気位が高そうです。モンスターにも性格って物があるのでしょうね。

 こちらで言うとコウガは積極的に攻撃するタイプだけど、セツナは奇襲が好みだとかそんな感じで。



 「コウガ、セツナ。見てのとおり相手は素早い上に攻撃力も高いみたい。油断はしないでまずは好きなように動いてみて」


 「ガウッー」


 コウガはビッグバーディに向かっていき、セツナは狭い森を潜伏スキルを遣いながら背後へ移動し、挟み撃ちを狙うみたいですね。

 確かに挟み撃ちを狙うのは良いですけど、相手は鳥なんですよ?忘れてない?


 クケェェ!


 案の定ビッグバーディはクルクルッと首を回し挟み撃ちを狙われていると悟ったのかすぐに上空へ退避していく。意図を見抜かれたコウガ達は残念ながら立ち往生。そこをチャンスと見たビッグバーディが大きな羽を広げ薙ぎ払うべく、滑空してくる。


 「二人とも上にジャンプッ!」


 離れた場所から見ている私はお互いの動き方が把握しやすい。

 コウガ達に自由に動いてというと基本は挟み撃ちを狙う。何とか挟み撃ち以外の攻撃方法も覚えてもらいたいんだけど、教える私がそういうのに詳しくないからなぁ。今度勉強しよう。


 ビッグバーディの滑空からの攻撃も何とか無事に避けたコウガ達は攻撃可能範囲に降りてきたビッグバーディに飛び掛る。この辺りはビッグチュンと戦った時に覚えたみたいですね。感心感心。

 相手を捕らえようと無駄に飛んだり跳ねたりしたら体力がいくらあっても足りませんし、体力の温存は大事です。


 ここまでビッグバーディが見せた攻撃は高空から直滑降による体当たりと、翼で薙ぎ払う鋭角に来る滑空攻撃。まだまだ攻撃方法がありそうですね。何とか全部見ておきたいんですけど……ビッグバーディからすると、この2つの攻撃だけで倒せると思っていそうです。確かにあたれば大きいからその通りでしょうけど。


 アッチからの攻撃対処法は勿論考えないとね。コウガ達も防戦一方でビッグバーディに一度も攻撃を当てることが出来てないのが問題です。

 やっぱり彼らに相応の装備を見つけて上げるのが先決のようです。


 多分これ以上ビッグバーディと戦っても相手の攻撃の引き出しを増やせないだろうしね。



 「なっ!?何だ。このモンスターは!」


 撤退をしようと考えたとき、後ろから聞き覚えのある声が聞こえた。

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