145話
明日の分を本日投稿しました。
そして木曜日は仕事が休みなので土曜日か日曜に投稿する分を考えてみる所存です……。
魔人王戦は樹齢王の時ほど話数を稼がないつもり(樹齢王時も話数稼ぎする気はなかったんですけど)なので物足りない表現などがあるかもしれませんが、気になった内容をコメントなり頂けばその辺の内容を考えて閑話的な感じで盛り込もうと思ってます。
魔人王と魔人王の配下であるホウオウ・エンジュ其々にこちらの戦力を振り分け、ホウオウ・エンジュ側の戦闘の指示はトリビアに任せることにした。
まあホウオウ・エンジュの方は私が一番信頼しているコウガ達が相手をしているんだから、少々目を離したところで問題など起きないと信じてる。一応コウガ達にはホウオウ・エンジュを相手にしている理由を伝えてあるし、彼らが私の信頼を裏切る事なんてあるはずがないのです。
と言う訳で私は魔人王側を見据えつつ、配下達の強化をするために【魔唱歌】と【エクスチェンジ】を使っている。私がこの準備に入るころには、すでに魔人王と私の高ランクの配下たちが戦闘を開始しており、一進一退の攻防を繰り広げている。
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「俺の配下より強いモンスターがあの王種に従っていたとはな……。しかも活動期前の俺と同等の戦力を持っているのが複数とか笑いが止まらんぜ。久方ぶりに俺の本気を出せるってもんだ……なぁ?裏切り者のパーシヴァルよ」
魔人王がランク7のモンスターを相手にしながらも余裕を見せながらモンスターの後方に隠形していたパーシヴァルに話しかけた。
「……やはり気付かれていたか。さすがだな、我が友バルムンク」
「長年、共にいたお前の気配を俺が感じ損ねるはずがないだろう?しかし、お前もバカなことをしたものだな。俺の隣に居れば闇の領域を統べる王の配下に成れたものを……一時の気の迷いであのアイリとか言う王種如きに唆されやがって……」
「バルムンクッ、俺の事を貶すのは良いがアイリ様を貶す事は許さんぞ!そもそもお前がアイリ様を狙いさえしなければこのようなことは起きなかったのだ!」
「くははっ!それは無理というものだろう?あのアイリという奴は、お前と共に光の領域から来て早々に俺ですら、そう簡単に手を出し難くなっていたあの死霊王を討伐したのだぞ?そういう有望株が居れば手駒に加えたいと思うのは王として当然の事だと思わないか?」
確かにパーシヴァルとしても魔人王バルムンクのいう有望株がいれば手駒にしたいと内容には納得できる。だがその対象がまずかった。パーシヴァルの愛する(ただし現在一方的に……)アイリでなければ、ゆくゆくは抜けていたとしても、このようなタイミングでパーシヴァルは魔人王の配下から抜けることは無かっただろう。
「ふっ、バルムンクよ。お前は勘違いしているぞ?アイリ様がお前だけじゃなく他の王種の下に着くことなど絶対にあり得ないんだ。
むしろ全ての王種こそが頭を垂れ、アイリ様の配下に加えてもらう事が世界の理だと断言できる程の才能をお持ちなのだからな。……それにお前も知っているだろう、あの古の災厄と言われた二強の一角、氷獣王様がアイリ様の下についている事を」
パーシヴァルの言う王種としての才能というのは単純に言うと【軍勢】スキルだ。大抵の王種はいくら強くなろうとも軍勢スキルを三種類以上習得することが出来ない。
だがアイリはすでに取得条件が不明だった《堕天/魂種》なども含め、既に十種類の軍勢スキルを持っており、まだまだ増える可能性があるのだから。
「くくくっ。パーシヴァルよ。お前の方こそが勘違いをしているのだ!確かに古き時代の氷獣王という存在は現龍王と並び、古代魔王種ですら、おいそれと手を出さないほどの存在だったことは認めよう。
だが今の氷獣王はなぜかは知らんが転生の儀を拒み、今となっちゃ、伝承に伝わるあの頃の強さの欠片すらも残っていねぇただの老いぼれの獣だ!あのような雑魚、今の俺ならすぐにでも殺せるわ!いや、むしろぶち殺すっ!」
「ぐっ!バルムンクっ、お前まさかっ!?」
その言葉と共に魔人王から殺気が飛んでくる。どうやら魔人王はかつて自分が憧れ、今もどこかで尊敬していた氷獣王が、どこの誰とも知らない王種に従っていることもアイリを狙った理由だったのだ。
アイリにとってはものすごく不愉快な話である。
名指しで魔王の力を狙われ、あげくには大事な家族を殺すために領地まで攻めて来たのだ。
もしこの会話をアイリ本人が聞いていたらこの場ですぐに魔人王はアイリによる冷たく怒り狂った覇気をその身に受け、その気配を察知した配下達によって塵も残さず消されていただろう。当然ながら、その気配を配下よりも早く感じることになるコウガ達も、アイリの指示を無視して魔人王の元へ来ていたに違いない。
「さて話は終わりだ。氷獣王を殺す前にまずは俺を裏切ったお前から始末するとしようか……くらえっ【次元断】っ!!……さらばだ、我が友よ……」
砂漠というフィールドの特徴で視界を奪う砂嵐が良く起きる。
魔人王の放つ剣技は、闇の領域の武器を扱う戦士という括りの中では最強。だから技を放てば相手が死ぬことは確定事項なのだ。だからこそ砂嵐が発生していようとも魔人王は技を放った後、結果を確認せずにその場を後にしようと背を向けた。そこに魔人王の剣技を防ぐ存在が現れていたという事に気づかず……。
「ありがとうございます、ルドラさん……で、どこに行く気だ?バルムンク。俺はまだ生きてるぞ」
「なっ!?なんだとっ!?」
パーシヴァルの声に驚き、振り返った魔人王が見たものは傷一つないパーシヴァルとそれを守るように立つルドラの姿だった。
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コウガ達の戦闘の様子を見ていたトリビア。
コウガやセツナ達はホウオウ・エンジュ相手に楽しそうに戦っている。今までよっぽど同ランクのモンスターと戦う機会が少なかったのでしょう。確かにアイリ様の行かれた場所には強いモンスターなどほとんどいませんからねぇ。……稀にロアン様のような想定外の存在もいらしたようですが……。
考え事をしていると、ひょっこり現れたルドラ。
「あら?ルドラさん。どうされましたか?コウガさん達ならあっちで戦闘していますが?」
「ギルルァッ!」
「はっ!?自分は防御主体だからホウオウ・エンジュと戦ってもスキルのレベル上げにならない……ですか?」
どうやらルドラさんは攻撃スキルが有るけど自分の身体能力ではホウオウ・エンジュまで届かせることが出来ないし、他の仲間を守ろうにも空中戦が多いのでどうしようもないのだそうです。
要するに拗ねてこっちに来ちゃったんですね。
「ギルルッ!」
「そうですか……しかし、指揮を任されているとはいえアイリ様の指示なく勝手なことをさせるわけには……」
「ギルルンッ!」
「えっ?アイリ様なら自分が勝手な行動しても、そこに理由さえあれば咎めたりしない……ですか?まあそこまで言うのでしたらルドラさんの思うようにすればいいですけど……アイリ様の怒りの矛先が私に来ないように取り成してくださいよ?」
「ギルゥ~」
「はい、ではそのような感じで……お気をつけて」
ルドラは地属性のアダマントドラゴン。砂の中の移動はお手の物ものだ。
あっという間に砂に潜ったかと思うとその気配がすぐに感じられなくなっていた。
「……防御主体という割に隠形能力にも優れているんですね……アイリ様に御家族様のスキル構成を教えていただいておけばよかった……」
詳しいスキル構成を聞いていればコウガ達が好き勝手するだけでなく、もっと効率のいいスキルレベル上げが出来ただろうにとこっそり意気消沈するトリビアだった。




