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142話

 カティちゃんに装備を依頼してから二日経過し、希望の装備が完成したという連絡が来ました。今日こそ、私の事を教えて抱き付いてもら……じゃなくて感動(?)の再会気分を味わいたい!


 ちなみにこの二日間は闇の森、海岸エリア、迷いの森の周回をしていました。目的?言わなくてもいいでしょ?とりあえず住処が確定していて翌日に沸くのが分かってるガイコツやらプヨプヨしたものやら樹木やらの三種のモンスターをメインに狩り、ついでに周辺フィールドで遭遇するフィールドボス狩りなど素材やら資金稼ぎのためのボスドロ装備を集めることに集中してたんです。

 バザーに出品したら飛ぶように売れたことも添えて報告させていただきますね。



 それ以外にも進軍中の魔人王がどの辺まで来ているかなどの確認をトリビアから報告してもらってる。それによると今現在魔人王たちは私の本拠にしてる集落まであと二日程度の場所まで来ているみたい。


 魔人王は彼の兵を連れて進軍中なのでどうしても進軍速度が落ちる。流石にバカじゃないから自分一人でやってきて軍勢を出して攻撃するという行為は取らないみたい。そんなことをした場合、ヘリオストスへの転移(訪れたプレイヤー誰でも使用できる公共の装置)で私がヘリオストスを軍勢で蹂躙してたよ。もちろんその後は後方から軍勢を連れて挟み撃ちにする形で魔人王を葬って終わりだったと思う。


 なお魔人王軍は道中にある領地内の集落を攻めたりしてる様子はない。確かに私を倒した後の事を考えたら潰すより残しておきたいからね。

 私も魔人王達が無茶をしてこないなら大人しく彼らの言う事を聞くように住民たちに言ってあるので抵抗はしていないこともトリビアからの報告で受けている。

 そう言う訳で魔人王との戦いはあと二日ほどで開始されるはず。



 さてでは話を戻してヘリオストス内にある《カティラス・ウェンブルグのマイスター工房》にて。

 ちゃんと今日は入ってすぐに私についての自己紹介をしたんだけど、カティちゃんの反応はクールでした……。カティちゃん曰く「いまさら言われなくても喋り方と雰囲気で気づいてた。関係者で気づかない方がおかしい」だそうです。

 ……気づいてたならちゃんとそういう反応してよぉ!さみしいじゃない!


 感動の再会気分を味わう事は残念ながら出来なかったけど、ミスティちゃんから聞いてた通りに時間があるときに狩りに行かない?って聞いたら「時間が空いてれば構わない」というありがたーい返事をもらえましたっ!どっかのエレなんとか言うダークエルフとか、ギンなんとかていう魔人とかと違って二つ返事でOKをだしてくれたカティちゃんは良い子だね。細心の注意を払って嫌われないように気を付けよう……。


 そんな会話を終え、ようやく本題(?)へ。そう完成した装備品についてです。



 「……これが預かった素材から作り上げた私の最高傑作。実は付与作業より、アイリさんの装備条件に合わせるのに苦労した」


 おぉ、確かに私のレベルが1だから装備レベル制限が付くようなものを作れないよね。カティちゃん苦労を掛けてごめんね……。


 カティちゃんが出したのは鞭・ネックレス・木で出来た冠の三種です。

 この中の一つでもできてればいいと言ったはずなのに目の前には三つとも用意されている。使い慣れない素材だったはずだから、もしかして無茶したのかも?

 そんな私の思いを感じてかカティちゃんが口を開く。


 「……無理はしてない。ただ新しい素材を扱える嬉しさから気付いたら全部作ってしまってただけ……」


 「それならいいんだけど……それじゃあ説明をお願いできる?」


 「……分かった。まずは鞭の《万寿鞭》から……これは万年樹の蔦を基礎素材に使って作った。装備レベルの制限で基礎素材を一種類しか使えてない為、いくら元の素材が良くても基本攻撃力の面では不安が残ってる……けど、それは仕方ない。その代りに効果が付いた事とステータスの補正値に関しては素材のランクが高いから気合入れて行った」


 万寿鞭の基本素材は樹齢王からドロップした蔦っぽい素材。

 カティちゃんの説明によると武器や防具を作るとき、一種類の素材をもとにして作ったら装備レベルの制限が付かないらしい。

 逆に複数素材を混ぜて基礎素材とすれば装備レベル制限が出る代わりに性能がいい装備が作れるという事、もちろん制作難易度も桁違いにあがる。ただし基礎性能がいい代わりにステータス補正値に関してはある程度制限が出てしまうらしい。


 「あとは《チャーミングネックレスα》と《王羽の樹冠》。

 《チャーミングネックレスα》は、アイリさんが装備しているチャームネックレスよりも補正値を大きくした装飾品。預かった金属素材が高レベルの錬成スキルを使わないと作れない希少材料なうえ、素材のランクが凄く高かったからCHA補正値が結構な数値になった。

 《王羽の樹冠》は霊樹を基礎素材に、基礎素材の効果を高める目的の補強素材には王鳥の羽を使用した。ぶっちゃけ羽を付けた意味はほとんどなかったけど、あっても無くても変わらないんなら、見た目が少しでも良くなるように配置した。……言い忘れてたけどこの装備にしか対人耐性(中)を付けることが出来なかった」


 それにしてもティアに錬成してもらった金属素材って性能がいいものだったんだね。今は例の情報収集に行っちゃってるけど、帰ってきたら素材が良かったことを褒めてあげないとね。


 あっ、霊樹は樹齢王の、王鳥の羽は地壊王のドロップですよ。

 やっぱりこういう基礎素材は王種から手に入れるのがいいよね。ちなみに素材回収の周回で樹齢王を倒して得たドロップ素材は一度目に獲得した素材よりもレアリティというか品質の面でかなり劣っていたので、王種として長く存在してればしてるほどいい素材を落とすのは間違ないと思う。三週間くらい放置してた死霊王のドロップ素材も結構な品質になってたし……。



 万寿鞭:長い年月を経て繊維質が密集し強化されている蔦で作り上げられた鞭。その鞭が振るわれた軌跡には美しい残像が残る。

 STR+15、CHA+15、装備時【森の恵み】の効果を得る。

 【森の恵み】:森や山などの木が茂る場所で戦闘する際、ステータスが10%上昇する。これはパーティメンバーなど仲間にも影響を及ぼす。


 チャーミングネックレスα:様々な鉱石や動物素材を合成、錬成した合金を鍛えて、作り上げられた見る人の目を引くネックレス。CHA+24


 王羽の樹冠:魔力と霊力のこもった木材を基礎に作り上げられた樹の冠。被る者に様々な恩恵を与える。INT+30、VIT+20、CHA+30、【対人耐性(中)】



 これにより変更された私の装備一覧がこうです。


 装備

 多弁鞭 STR+7 二回攻撃できる。素STR値が30を超えているとき攻撃回数+2 → 万寿鞭:STR+15、CHA+15、装備時【森の恵み】の効果を得る。

 ヒマティオン・フェザー VIT+4 INT+7・CHA+12

 チャームネックレス CHA+4 → チャーミングネックレスα:CHA+24

 鬼樹のサークレット+2 STR+9、VIT+8、INT+5 → 王羽の樹冠:INT+30、VIT+20、CHA+30、【対人耐性(中)】

 クイーンシューズ+3 AGI+12、CHA+15

 鬼姫の躯手 STR+5、CHA+6

 スカッドモノクル INT+5、CHA+5

 花鳥風月 【薫り立つ美】【見通す視線】【対人耐性:中】【天つ風】【月詠】 内蔵スキルに依りCHA+20



 STRの補正値に関しては下がってしまいましたが、他のINT/VIT/CHAに関しては桁違いに上昇した。これで魔人王戦を前に強くなれたのは間違いない。

 あと注目すべきはカティちゃんに鑑定を頼んだ《花鳥風月》の残りの能力が判明した事。


 【天つ風】:山や草原・荒野などのフィールドでの戦闘時、速度が割合上昇する。この能力はパーティなど仲間にも影響を及ぼす。

 【月詠】:夜時間の戦闘、もしくは洞窟や光の少ない屋内での戦闘時、敵からの先制攻撃を受けにくくする。


 どうやら両方とも通常行動時に効果を実感できるだろう類のものだった。

 能力が判明してなかった今までもこの能力の恩恵があったんだろうけど、気付かなかったから上昇率とかで言えばそこまで凄い物でもないと思う。まあ、あるだけラッキーという認識で良いよね。


 「ありがとうねカティちゃん」


 「……気にしないでいい。アイリさんがこの後忙しいのはお姉ちゃんから聞いてる。月並みだけど頑張ってきて」


 「えぇ、カティちゃんが作ってくれた装備のおかげで、また強くなれたし大丈夫よ。それじゃまたね」


 「……ん」



 私はカティちゃんの工房を出てヘリオストス中心部にある転移装置へ向かった。

 だけどそこには装置を取り囲むように衛兵が陣取っていた。そしてその周りには状況を知らないプレイヤーの群れが出来ている。


 「おい、転移装置つかえねぇだろ!どけよっ!」

 「そうだそうだ!衛兵が勝手に封鎖していいもんじゃないだろ!」


 プレイヤーたちが口々に文句を言っている。どうやら何かあったらしく転移装置を封鎖されてしまったらしい。とりあえず近くにいるプレイヤーに聞いてみよう。


 「あのぅ?この騒ぎは一体どうしたんですか?」


 「あぁんっ!!?……んっ、うわっ!?……すみませんね美人さん。ちょっと気が立ってて失礼な反応をしてしまった」


 「いえ、それは別にいいんですけど……この人だかりは一体?」


 「なんかヘリオストスを治めている魔人王とかいう奴が他の街からの敵の侵入を防ぐために転移装置を封印しちまったんだ。おかげで転移装置を使って遠方から買い物に来てた俺達みたいなプレイヤーが帰れなくてさ……」


 「……そうですか。大変なんですねぇ」


 もしかして私を攻めている間に他の王種がこの街に攻めてくるかもしれないことを懸念してこのやり方をしてるのかな?もしくは私が転移で単身乗り込んでくるのを見越して移動できなくしたとか?


 「そうなんですよ~。転移装置が使えないから騎乗馬車とか借りようにも既にほかのプレイヤーが借りてるとかで馬車とかの車体はあっても操縦する魔物が残ってないって言うし……どうしてくれんだよぉって感じっすわ」


 「町の門から普通に出れるんでしたら歩いて移動された方が良いんじゃない?ここに居てもいつ出れるかわからないんでしょ?」


 「いや、俺達のベースは砂漠の集落なんで結構遠いんっすよね……。あっ砂漠の集落ってのはヘリオストスから徒歩移動で四日くらい離れてる場所なんですけど、最近急激に発展が進んで、周辺ダンジョンからも良い装備とか素材が手に入るとかで人気が急上昇中の場所なんすよ」


 ……うん、それは知ってる。意外に情報が拡散されてるみたいだね。【完全統治】になってから、新しい集落を作ったり、新ダンジョンを発掘したり様々な成果が上がってきてる。

 そういえばトリビアからプレイヤー在籍数に関しての報告をしてもらってなかったなぁ。次からは報告してもらおう。


 「あっ、砂漠の集落へ向かわれるなら一緒に行きますか?私もそこでしなくちゃいけないことがあるので向かう所だったんです」


 「えっ?いいんすか?あっ、でも砂漠の集落からこっちに来てるの俺だけじゃないんっすよね……」


 「あらぁ……あっ、それでしたらさっき言ってた車体はあるけど引く魔物が居ないっていうお店を紹介してくれません?もしかしたら何とかできるかもしれないので」


 「?それくらいは構わないっすけど……」


 私はプレイヤーから店の場所を聞き、すぐに向かう。プレイヤーには人を集めたら町の入り口で待ってくれるように言っておいた。


 そう私が考えたのはせっかく巨大な獣型の家族が居るんだから馬車位引けないかな?と思ったんだよね。

 ほらだって、コウガにソリを買ってあげるって約束してるけど、全然バザーに流れてないからこの際馬車を引いてもらっちゃおうかな……ってね?


 馬車の筐体は現在残ってる一番大きい十人乗りで百万D。聞けばさっきまで二十人乗りのもあったけど、真っ黒な服を着た不思議な男が即金で購入していったそうです。……真っ黒な服かぁ。痛そうな服装だよね。厨○病を患ってるんじゃないの?

 とりあえず資金だけは潤沢にあるので購入することに問題はない。ただ砂漠から来てるプレイヤーの数が多すぎたら乗せられないんだよね……。

 まっ、とりあえず買っちゃおう!人数が多かったらその時に考える!



 「あっ、マジで美人さんだ」

 「じゃんけんで負けて買出しさせられた残念な俺だけど、美人さんに会えて超ラッキ~」

 「ふーん、あの人が私たちを砂漠の集落に送ってくれる人なんだ?」


 町の入り口に戻ると数人のプレイヤーが待機していた。声を掛けた男性プレイヤーも含めて、一、二、三……男性五人、女性三人の合計八人ですか。私を入れて九人ですね。うん、乗れる乗れる!とりあえずプレイヤー達を場所に押し込みコウガ達を呼び出した。

 ……あとはコウガ達が馬車を引いてくれるかどうかなんだけど、無理なら配下を呼び出してみようと思う。



 「わふんっ?(ソリ、買ってくれたであるか?)」


 「うぅん違うの。ソリはまだなんだけど馬車を買ったからそれを引いてくれないかなぁ……って思ったんだけど嫌かな?」


 「わんっ!(ソリでも馬車でもご主人様が乗ってるなら引くのであるっ!)」


 「ふむ、我は馬車馬などではないのだが、主が言うのであれば引こう。だが勘違いするでないぞ?主が乗るから引いてやると言っているだけなのじゃからな?」


 コウガは別に私が乗るのならソリじゃなくてもいいんだそうです。で、ロアンが何故かツンデレな感じになってるけど……まあいいか。


 「グルルッ(あら、この流れは私も引く方が良いのよね?)」


 「あっ、セツナはいいよ。女の子に馬車を引かせるなんてとんでもない!」


 「グルルッ?(ご主人様、それは差別ですわ!私もお兄様やロアン様に負けないくらい強いのですから引くに決まっております!)」


 うんっ?あっちゃ~セツナまで馬車を引きたいって言いだしちゃったよ。セツナには索敵と周辺モンスター殲滅をお願いしようと思ってたのに。まぁいいか。それはクルスにでもお願いしようかな。


 「ところで主よ。なぜホース君とやらが居るのに我らに轢かせようとしてるのだ?」


 「あぁ、ホース君だと砂漠での移動速度にマイナス補正がかかっちゃうのよ。その点ロアン達なら砂漠での移動速度減少効果なんてものともしないでしょ?」


 「ふむ、そういう事であったか。あい、わかった。我等に任せておくがよい」



 私以外を乗せるのは嫌だとか言って渋るかと思ったらそんなことは全然なかった。

 まずはコウガとセツナの二人を馬車につなぎ、ロアンとクルスが索敵と敵の殲滅。途中のオアシスについたら、少しの休憩の後、ロアンが馬車を引き、コウガ達が索敵担当をする事にした。


 大体馬車でいくと一日かかる予定だった砂漠の集落までをわずか五時間で踏破しました。まぁ、ロアン達もレベルアップとかでステータス上がってるんだしそういう事も在り得るよね。


 「噂以上に美人さんのペットがヤバかった……」


 乗っていた他のプレイヤー達も道中で出会ったモンスター討伐速度やら集落到着までの早さに驚きを隠せていなかったのは言うまでもない。

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