12話
そろそろ聞かれそうなのであらかじめ予告を。
今現在の所、タイトルの魅力がNPCで物を購入したという文章でしか表現できてません。
何とか表現したいのですが、スパイ編では後半まで魅力覚醒は出来そうになく……。
魅力がどういう方向に行くのか期待してくださっている方が居ましたら申し訳ございません。
スパイ編がまだ暫く続き、自勢力平定編(仮題)が始まる辺りで何とかその辺に触れるものが書けそうです。ですので今しばらく時間がかかります。
また、こんな魅力チートがあると面白そうとかの意見があれば是非とも参考にさせていただきたいので、メッセージ、感想などをいただけるとありがたいです。
長々と失礼しました。では本編?をどうぞ
ガイアの街に戻りギルドへ向かう事にしました。
途中の通りには沢山のプレイヤーが露店を出しているので何か良い物があれば良いなという感じで覗いていく事も忘れない。探すものは自分が身に付ける物よりもコウガ達が装備できそうなもの。
初心者装備のままの私ですが、狩場で危なくなった時はセツナが助けてくれますから急がなくても良いと思う。
「二人が安心して装備できる装備があると良いんだけどね……」
仲間になったモンスターはその種族の特性を邪魔しないものなら一応装備を身につけることが可能なのです。
特性を邪魔しないというのは、武器を持てない種族のモンスター……例えばコウガの場合は装着タイプの武器……石やら動物の素材から出来たツメ系の武器は装備できますが、手に持つタイプの剣やら斧といったものは装備不可能だということです。
かといって装備できるからといって必ずしも強くなるわけじゃないのもまた事実。
いくら爪系の装備を身につけてもその装備が仲間モンスターの行動の阻害をするなら装備する事を嫌がります。
またコウガの場合で例を挙げますが、攻撃力が高い爪装備を手に入れました。
だけどその装備の爪の長さが、今まで5センチの自前の爪でサクサク倒してたのに、装備した爪の長さが15センチあったせいで、移動しにくくなり上手く狩が出来なくなった。
結果、装備を買ったのに逆に弱体化しましたということも在り得るのです。
「へい。らっしゃい、らっしゃいー。この俺、ジージババーの作った自慢の武器だぜー」
「ドクターデスの薬品店ですー。ポーションから毒薬(弱)も扱ってますのでどうぞご贔屓にー」
「ヤルキネーの木工装備店よぉ~ん。取って置きのア・レ。用意してるからゆっくり見ていってねぇん」
「アルケミス(T)の素材店ですー。販売・買取どちらでも構わないので是非ご相談ください」
ダイブ型のNAPより前に一世を風靡したデスクトップ型でプレイしたMMOのように露店を出しているプレイヤーの頭上には分かりやすいように看板が出ています。
大半がなんでそんな名前にしたの?と言いたくなる個性的な看板ばかりでしたが……。やっぱりこう言う目立つ事から始めるのも大事な事ですね。
そんな通りを冷やかしながらもうすぐギルドという所で私はあるアイテムに目を惹かれ立ち止まりました。
それを扱っているお店の名前は【シオリ料理店】。プレイヤーの頭上の看板にはこう書かれていました。
《素材の持ち込みで料理いたします。食材(肉)をお持ちの方は買い取りも大歓迎!》
「おぉ?あれはー!」
料理スキルを持っている人を探してたから、アレを確かめるにはちょうど良いかも!
そう思い私はそのシオリさん?らしきプレイヤーに話しかける事にしたのです。高山下層部に行ったときに猪肉を食べさせずに残しておいて正解でした。
「あのー、料理をしてもらいたいのですがいいですか?あっ、持ち込み素材は肉です」
「!?も、勿論ですよ!やったぁ。やっと肉の調理ができるわ~」
すごい喜びようですね。知ってのとおり、このエスは肉のドロップ率がすこぶる低いですからねぇ。
持込みしてくるような人がいないんでしょう。さっき見かけた素材を取り扱っているお店にも置いてなかったし。
素材店の人が言うには肉は品薄で高額で取引されているらしく、仮に誰かが市場に出しても1秒もしないうちにNPCの人がすぐに買い占めて行くためプレイヤーに回ってこないらしい。
普通逆じゃないの?と言いたくなる情報でした。1秒ももたないってのがすごいです。
「おっと、待ちたまえ!その肉、私共に譲ってはもらえんかね?勿論そちらのお店の方よりも高く買い取らせて頂く」
私がシオリさんと取引をしようとしたとき声を掛けられました。
なんか高貴そうな雰囲気を感じます……ガイアの街の貴族なのかな?周りに3人ほど用心棒らしき人もいます。
「肉をですか?勿論それなりにストックしてますので、ここで調理をしてもらって余った分を譲ることは構いませんよ」
私としてはコウガ達に食べさせてあげる分があれば余った素材が誰に渡ろうが関係ないしね。シオリさんも調理が出来れば今回は満足してくれると思いますし。
「いや、今あなたが持っている全ての肉を買い取らせて頂きたい」
あっ、これは無理ですね。これはある意味肉強奪イベント?なんかクエスト中の強盗とかこう言う突発イベント多くないかなぁ。
「な、なんでNPCがプレイヤー同士の取引に割って入ってきてるのよ」
シオリさんが口調を荒げながら言う。私も同感だけど喧嘩口調はよくないと思うなぁ。
「ふっ、最近の旅人はすぐに口調を荒げて困ったものだ。こちらはちゃんと高く買い取るといっておるのだから問題ないだろう?」
「だって貴方ですよね。冒険者が狩って来た肉をすぐに買い占めているのは!」
なるほど。さっき素材の人に聞いた肉の買占め問題ですか。で、この貴族がその原因な訳かぁ……。
「うむ、その通りだ。だがそれには理由があるのだよ。君たち下々のものが考えもつかないような……ね」
素直に認め、しかも理由ありきの買占めだという。でも個人で持っている分まで買い取ろうとするのは流石にひどい。売る方にも選ぶ権利があるって物です。
今回、私はお肉を調理してもらいコウガ達の変化を見たいので全て売るのは論外。取りに行くの面倒だしね。それにこの貴族に手持ちの肉を全部売っちゃうとシオリさんに合わせる顔が無いですし。
こちらから調理の話を持ちかけておいてやっぱ無しは最低限人としてやっちゃダメな行為です。魔王プレイしようとしててもそこは譲れない。
「申し訳ないですが全て譲るのは不可能ですので他をあたっていただけますか?」
「ふむ、君は利口そうに見えたのだが、所詮は冒険者だったか。どうしても無理だというのならば私の権限を使い貰い受けるとしよう……。やれ、お前たち」
やっぱり戦闘イベントなのね!何で毎回変な邪魔が入るのよ……そう思いながらコウガとセツナを呼び出す準備行動に入る。
だけどその必要はなかった。
「断らせてもらう」
そう言ったのは戦う事になるはずだった用心棒たちでした。
「なにっ!?貴様ら俺のいうことが聞けないというのか!」
「残念ながら俺達は女に暴力を振るような教育をされてねぇんだよ。しかもこんな魅力的な子になんてもってのほかだ」
「やるなら坊ちゃん一人でやってくれよ」
「俺達はアンタの手下じゃねぇぞ?あんたが危険になった時に守るのは仕事だからやるが我侭に付き合う義理はねぇ」
「ぐぅ……なら、きさまらは解雇だ!何処へでも消えろ!」
「「はいよ。そうさせてもらうさ!」」
あ……あれぇ?戦闘イベントになると思ったのにそこまで発展しませんでした。用心棒たちは貴族から離れていくが、完全に去るつもりは無い様で群衆に紛れてこちらを見ています。
「えっと、そういう事みたいですけどどうしますか?まだ肉を奪う為に戦います?」
「くそっ!おぼえていろっ!」
貴族は流石に自分ひとりでは何も出来ない事を理解していたのか、捨て台詞を吐き足早に去っていきました。後々何かありそうだけど、とりあえず何も起きなくてよかったよ。
「さて麗しいお嬢さん。ウチの元依頼主が迷惑をかけて悪かったな」
声をかけてきたのは用心棒。さっきまでの態度が違いすぎない?さっきまで仕事中だからそれなりの堅物キャラだったのに今はもうナンパなキャラ口調になってますよ。
いつの間にやらシオリさんも近寄ってきていました。先ほど戦闘が始まりそうな気配が漂いだした時にすぐに離れていたのを私は知っているよ!まあ調理師しか適性を持ってなかったらそれも仕方ないんだけどさ。
「いえ。私個人には被害らしき事は何もなかったので謝られる必要は無いんだけど……貴方たちはあの態度でよかったんですか?」
「いいさ。元々あの貴族の坊ちゃんが我侭し始めたのが原因だしな」
用心棒たちに肉の買占め理由をしていた理由を聞くと馬鹿げた事でした。
近い将来、遠く離れた光の勢力の王都ライトルミナスから王族がこのガイアに来るらしい。その王族を肉料理でもてなそうとした事からとのこと。
聞けば聞くほどくだらない。単なる見栄っ張りの為に買い占めてただけとか。
原因は分かったものの根本的には解決していないので、これからも続くだろうといわれました。
王族が来るまでかあの貴族を説得しないと永遠に解決しないのかぁ。敵勢力の流通に関しては私が気にすることじゃないし、その辺は光の勢力の冒険者達で適当に解決して欲しいものです。
私に面倒な事させたりしないでね。ほんとおねがいします。
「あっ、ちょっといい?」
用心棒たちが離れると続いて話しかけてきたのはシオリさん。まあ調理の話もしないといけないので話しかけてくれてよかったです。
「あぁ、色々ありましたけど、お肉の調理お願いできますか?」
「えぇ、それは良いんだけど……これとは別にお願いがあって……」
読めてますよ。どうせお肉の定期的納品でしょう。
少なくとも今日と明日はもうイノシー狩りには行かない予定だから、断るつもりです。
シオリさんが言葉を発する前にお肉の定期納品は無理と答えておきました。すごく残念そうでしたが、お肉が余るようなら真っ先に売りに来ますというと、とりあえず満足してくれたので良いとしましょう。
手持ちの猪肉を調理してステーキとハンバーグにしてもらったので、コウガ達に食べさせてみました。生肉を食べるよりは多く上昇したみたいだけど、残念ながら態々持ち帰って調理を頼む必要は無さそうです。
この事から当分はお肉が出たらその場で食べさせ、帰る間際に出現した肉を残しておく事にしましょう。
余った肉はシオリさんが買取をしてくれたのでまたさらに懐があったかくなりました。品薄だからか猪肉の単価がすごかった。まあ通常プレイヤーが持ち込むのはウサギ肉なので私の持ち込み対象が猪肉だと知ると叫んでいました。(嬉しい方向で)
その後シオリさんとフレンド登録を済ませ、私はようやくギルドにたどり着いたのでした。




