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135話

 「ひょーっひょっひょ!まずは一体じゃな……。次は主らの番じゃぁ!」


 樹齢王のスキル発動ののち、姿の見えなくなったカエデ。

 これを確認した樹齢王は鬱陶しいモンスターを一体排除できたと油断しているのだろうけど、それは甘い。甘すぎる!私の大事な家族があの程度の攻撃で倒せたとでも思ってるのかな?


 そもそもカエデはさっきの樹齢王の攻撃を食らってすらないのだから。その程度の状況判断も出来ずに王を名乗ってるなんて片腹痛いわ!……あっ、今の発言魔王っぽかったよね?魔王が板についてきたかな?



 樹齢王が次の標的に選んだのはメタルウーズとルドラ。地に足(?)をつけて移動する二人なら自分の操る根による攻撃で攻めることが出来ると踏んでの事だと思う。

 実際空を舞うフレスヴェルグに対して針葉樹を飛ばすなどの牽制をしているけど、撃ち落とすほどの威力のこもった攻撃はしていないことから対応策がない……というか少ないのだと思う。


 メタルウーズとルドラはそれぞれミドルブレスや腐蝕撃を使い、カエデが居ないのに加算されていく連携数を増やしていく。もちろん上空からフレスヴェルグも得意の吹雪を使い攻撃していく。

 それを繰り返し樹齢王の体力が半分を切ったころ、樹齢王が動く。


 「ぐぬぬ……この姿となったワシをここまで追い詰める存在がおったとは素直に驚きじゃ……じゃがワシは古き王として負けるわけにはいかぬっ!本気の本気を出す時が来たようじゃな……刮目するがよい【秘樹・覚醒】!」


 樹齢王が使ったのは自身の攻撃力をかなり強化する木秘術に属する類のものだろう。その証拠に樹齢王の周りにあるエフェクトは攻撃力強化を示す赤で覆われており、その濃度から判断するに強化率は三段階以上。数値で言うと175%以上増加しているという事になる。ちなみに攻撃強化のエフェクトには物理と魔法の攻撃力の両方が強化される。樹齢王だと両方がある程度高い数値だろうからその強化された値も凄い感じじゃないかな。


 「ひょひょ。ワシがこの力を出したからには、今度こそ主らに生き残る術など存在せぬっ!」


 そう言いながら樹齢王が攻撃を放つ。攻撃自体は今まで見たことがあるものだったけどその発動速度と射程距離などが全く違う。まずは針葉樹の攻撃が上空のフレスヴェルグに直撃し墜落。死んではいないようだけどランク6の配下を一撃で瀕死に出来る威力はやばいですね。

 続けてボコボコと音を立てながら地中から現れた根がルドラとメタルウーズに襲い掛かる。


 「ギシャシャッ!?」


 エクスチェンジで強化された状態のルドラの防御を崩しは出来たものの、あとに攻撃が続くことが無く吹き飛ばされる程度で済んだルドラに対し、メタルウーズはその体をまき散らしていた。

 そうメタルウーズの特性だけでは樹齢王の攻撃に耐えきることが出来なかったのだ。


 「っ!……まさかウチのメタルウーズがやられちゃうなんてね。……よくも私の配下を殺してくれたわね。だからってあんまり調子に乗らないでほしいんだけど……」


 光となり消えていくメタルウーズを見送りながら私は怒る。まさか樹齢王なんかに大事な配下を殺されるなんて思ってもいなかったから。だけど最初から軍勢を出し圧殺してればそれで済む問題をわざわざ私自身の興味の為に戦力を分散させてしまった私のミスを責めるべきです。


 「メタルウーズ……私のミスであなたを死なせてしまってごめんね」


 完全に消え去ったメタルウーズから視線を外し、樹齢王を見る。

 その眼には明らかな敵意が浮かんでおり、既に先ほどまで浮かべていた様子見をしようという気配などは存在していなかった。


 「コウガ……それにロアンとセツナ……もう遠慮はしないでいいわ。私も力を貸すから速やかに私を怒らせた樹人を始末しなさい」


 後ろにいたコウガ達に加え、こちらに帰還していたロアン達にも指示を出す。

 ロアン達が帰還したのはカエデの姿が居なくなる前。そして一緒に居たはずなのに名前を呼ばれなかったイリスとクルスはというと、フレスヴェルグが樹齢王の気を引いてる間にカエデをその足でつかみ、樹齢王の死角で隙を伺っている。

 


 「ふむ、我が主の怒る姿を見たのはこれが初めてじゃのぅ……やはり我が主は配下の一体ですら死ぬことを悲しむ優しき王じゃのぅ。だからこそ我も主に従っておるのじゃがな!

 だが樹齢王……我がはるか昔(転生前)に会った頃はあんな奴じゃなかったが残念だ…………時の流れは王種の在り方ですら変えるか……さて我もその主の意思に応えなくてはならんな。王種相手だとやはり血が滾るわい」


 「わふわふっ!!!(ご主人様の指示は完遂しないといけないのである!だからご主人様と編み出したあの必殺技を使ってやるのである!!)」


 「ガルルッ……(お兄様。気合を入れるのは結構ですけど、周りの確認をした上でお使いくださいね。まきこまれるのは嫌ですよ?)」


 「わっふん!(合点承知の助なのである!お互い、戦闘中は気を付けるのである!)」


 どうやらコウガは必殺技に巻き込まれたくなかったら自分達も気を付けておけと言ってるらしい。この時点でコウガは仲間の位置を気にせず樹齢王に隙があれば必殺技を使うだろうね。

 ……うーん、まあ大丈夫かな?うちの家族たちなら訓練中に必殺技を見てどういう物かわかっているし、仮に巻き込まれても余裕で生き残るはずっ!

 ……こんな感じで怒っていてもちゃんと家族の心配は出来るのできっと冷静だと思う。


 一方、完全に忘れ去られている存在が居る。非戦闘員のティアと力不足を実感しているミスティである。

 二人はアイリがキレた時からかなり後ろの方でガタガタブルブルと震えていた。


 「マ、マスターがお怒りですぅ!?ちち、近寄ったら危ないですよ~?」


 「アイ姉の怒りモードの時は、遠くから見守る。これが一番いい。余計なことをしたらあの時みたいに私まで巻き込まれちゃう……」



 ミスティは思い出していた。天帝オンラインのサービス終了後に時間つぶしの為に妹とともにプレイしたのほほんとした土地開拓系の育成要素を含んだゲーム。だが、それだけでなく別のプレイヤーが開拓した土地を奪い取ると言ったシステムが存在した。もちろんそのシステムを使えるようになるにはそれなりに自分の土地を開拓しておかないといけなかったが。


 残念ながらアイリはそのゲームでも異質な面を見せていた。

 自分の土地を狙ってきた別プレイヤーに対しては狙われた土地を犠牲にしてでも完膚なきまでに迎え討った。具体的な方法はあえて発展させた土地を狙わせ、そのさらに上にある湖やら川ばかりで構成された土地を氾濫させ、もろともに排除するなど。

 一度死んだ別プレイヤーは開拓能力やら進軍能力がダウンした状態で自分の土地へ戻されるのだが、アイリは間髪入れずその別プレイヤーの土地に攻撃を仕掛け、反撃の準備をさせないままに根こそぎ奪い取ったのだ。なお、根こそぎ奪い取られたプレイヤーはしばらくの無敵時間を得た状態で、別フィールドに移動しそこで一から出直しとなる。


 さらに残念なことにアイリにとってはその奪った土地ですら囮で、そこを狙ってくるさまざまなプレイヤーを挑発しては撃破した。ある程度時間がたつとアイリの持つ土地周辺には敵意を持つ別プレイヤーはいなくなっていた。


 「そういう訳で本気を出すというアイ姉の力、じっくり見せてもらうよ。ふっふっふ」


 「ミスティさんもマスターと同様、怖いです……」

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