134話
「がっ、ひょぉぉおおっ!?」
自慢の木秘術の攻撃を私にレジストされ、その隙をついて吹き飛ばされるように飛んできたカエデの気合と弱点属性の乗った渾身の一撃を、食らわされ情けない声を上げながら宙を吹き飛ぶ樹齢王。
「いいよ、カエデ。そのままアレを狙って!ルドラもカエデのフォローをお願いね」
「ヴヴヴッ!」「ギシャッ!」
私が今カエデに指示をしたアレとはもちろん【ワン・ツー・フィニッシュ】の連携回数を稼ぐこと。
カエデが敵に初撃を与えると連携回数が加算されていき、その後本人もしくは仲間が連携を繋げ、最後の一撃をカエデが決めることでスキルが真価を見せる。連携を繋げている間はカエデはダメージを食らってはいけないのでルドラにフォローをさせてると言う訳。もちろん、節目節目でコンボ回数による威力ボーナスを得るために、何度かカエデ自身も強めの攻撃を樹齢王に加えないとスキルの効果がキャンセルされてしまうので、一撃を与えた後に安全な場所に避難するという方法は取れない。
「クピィー!!」「わんっ!」「クワァァッ!」
ルドラはカエデを守らせるので精一杯、だけどカエデだけで攻撃回数を稼ぐのは難しい。さてさて手数をどう稼ごうかと思ってたところにイリスと樹齢王の配下の掃討をお願いしていたコウガ、クルスの三人が一足先に戻って来た。
イリスが戻ってくるのが遅いなぁと思ってたら、コウガ達のいる戦闘エリアまで足を延ばしてたのね……。
ロアンとセツナ、あとミスティちゃんもマップを見る限り、こちらに戻ってくる途中のようだね。ミスティちゃんは樹齢樹や配下の討伐に参加できたのかなぁ。ロアン達が気を配ってくれてたら心配ないんだけど……。
「三人ともお帰り。イリスはともかく、コウガ達の方は問題なかった?」
「くぉん!」「クワワッ!!」
二人は問題などないに決まっていると言いたげに答える。その目は樹齢王を視界に捉えており、その周辺でペチペチと属性攻撃を加えているカエデとそれを守るルドラを見て今の状況を察したかのようにこちらを見ている。
やっぱり二人はあのコンボ稼ぎに参加したいらしい。そりゃ確かにこちらの手数が増えればその分、連携率とコンボ数を稼ぐことは出来るようになるけどさ、それじゃ最初にメンバーを決めてた意味がなくなるもんね。ちなみにイリスは最初から樹齢王と相対するメンバーに入っているので、すぐにカエデたちのフォローに向かわせた。イリスへの指示内容は「カエデのフォローと、ルドラの回復、それ以外は臨機応変」である。
ちなみになんだかんだで樹齢王自身の体力はまだ全体の20%も切れてない。
相手の出方が変わるかもしれないから新しく手札を切るのは避けたいんだよね……。
「わふぅ……」「クワァ……」
「ロアン達が戻ってきたら少しだけ手伝ってもらうようにするから今は我慢してね」
そういうニュアンスで説明すると二人はすぐに向かえないことにガッカリした様子を見せ、さっきまで自分と一緒に居たイリスへの羨望の目を向けている。当のイリスはレベルが上がり、魔法能力が1400にまで上がった攻撃力を活かし、遠距離から水魔法を撃ち、樹齢王を攻撃。水属性には耐性を持つ樹齢王だけど、こうすることでカエデへの攻撃意識を減らすように立ち回っている。
一方樹齢王に接近して攻撃を重ねるカエデは【属性吸収】により得た効果が尽きようとしていた。
弱点属性を得る為の木の実はたくさん作ったが、一箇所に固めておくと樹齢王の攻撃などで蒸発させられてしまうかも知れなかった為、あちらこちらに点在するように実を作ったのが仇となっている。
回収させに行くと移動の関係でスキルの効果がキャンセルされるしねー。困った。
「わふふんっ?」「クケアッ?」
私の様子を知ってか、自分たちならいつでも出られるよ?と言わんばかりの視線を向ける二人の方を見ず、考える。
「……よし、控えめに【軍勢】から数体呼び出しちゃおうか。確か魔樹系と相性がいいのは鳥系と魔粘系だったっけ」
鳥系の配下からは魔鳥種の氷鳥 《フレスヴェルグ》、魔粘系からは《メタルウーズ》という腐蝕系スキルを得意とするランク6のモンスターを一体ずつ召喚。ちなみに二体は将軍の地位についているので、種族本来の力を扱うことが出来る。
フレスヴェルグはクルスを一瞥し、フンッと鼻息を鳴らしたあと空高く舞い上がり樹齢王の上を取る。
そしてメタルウーズは魔粘体でありながら硬さと柔らかさを兼ね備えた体で、ポヨンポヨンだったり、ザックザックだったり、音を立てながら樹齢王の方へ移動を開始した。
「クケェェェッ!!」
……後ろでクルスが怒り狂ってるけど、もちろんその原因は先ほど召喚したフレスヴェルグの行動からである。おそらく、フレスヴェルグがした一瞥で自分の方が役に立つと判断されたのだ羨ましいだろ?的なニュアンスがあったに違いない。
そう、フレスヴェルグとクルスは非常に仲が悪い。同じく空を主戦場とする存在だから、お互いにライバル視しているのだ。
ちなみにアイリは気づいてない事だが、クルスは自分よりランクが高いフレスヴェルグを目の上のタンコブとばかりに見ており、フレスヴェルグは自分よりランクの低いクルスがアイリの横に居るのが気に食わないのだ。たまに戦闘やら訓練やらでまみえた時、アイリが見ていないところで二人が熱いバトルを繰り広げていたりする。ちなみに後日聞いたロアンからの情報によれば戦力はほぼ互角らしい。
まあ、そんな二体が樹齢王への連携攻撃陣に参加してからは徐々に樹齢王の体力が削れ始める。やっぱり二体だけでもいると居ないでは戦力が段違いだね。
フレスヴェルグは上空からの氷属性の上位である吹雪属性の《冷凍光線》を使い樹齢王の攻撃部位を一時的に使用不可能にしていく。
メタルウーズは自分の体の特性《軟度変化》で攻撃する部位を硬化し、ダメージを受けた時は軟化して追加ダメージを減らすようにしている。もちろんそれ以外にも【腐蝕撃】というスキルを使って地味に樹齢王の新発見となる弱点を突いた攻撃をしている。
「ヴヴッ!!!」
時折カエデが樹齢王の意識が自分から離れた隙に【ナチュラルメイク】を使用し、弱点属性の木の実を作り出していき【高速連射】で樹齢王にダメージを与える。
「う、うぬぅぅ!ちょこまかと鬱陶しいハエどもめ!邪魔だっ消えるがよいっ!【秘樹・木撃烈波!!】」
あちこちから攻撃される現実に我慢の限界を超えた樹齢王がおそらく自身最強であろう技を使用した。
効果は樹齢王を中心とした半径五メートルくらいの円形範囲に及んだ。
フレスヴェルグは、その時に起きた衝撃で空高く打ち上げられたものの、羽を大きく広げ風を捕まえることで大きなダメージを受けることは無かった。
メタルウーズも衝撃を受けた部位を軟化し、地に触れている部分を硬化したことでフィールドは削れたものの戦闘域から弾き出されるのを防いだ。
ルドラに関しては言うまでもなくあの巨体の重量をどうにかできるはずもなく普通に防いでいる。さすがだね。
……で、肝心のカエデはというと樹齢王の周囲に、その姿はなかった……。
定期予告してた月曜に更新できなくてすいません。
ぶっちゃけエタりかけてます。流れ自体はある程度考えてるんですけどそれを表現する文章が書けなくて……。
王種戦を、ある程度すっ飛ばすことも考えてるんですけど、どういう感じですっ飛ばすかが書けないんですよね。樹齢王戦も当初の予定なら今回で終わってたはずなのに。




