133話
樹齢王は変身により自身のランクを上げて放った自慢の【木秘術】による攻撃をルドラに弾かれ、呆けた表情を浮かべている。私はその間にカエデとルドラに指示を出し、攻撃行動に移った。
カエデの準備が整うまでの間に時間稼ぎ目的として、私の数少ない攻撃方法である【チャームドレイン】を使うために前提として【麗王の覇気】を使ったんだけど変化はその時に起こった。
「ひょおあぁ?なな、なんじゃぁ~ワシの体の中から湧き起こるこの言いようもない感覚はぁぁ!?」
【麗王の覇気】をうけた樹齢王は急に悶えてゴロゴロと転がり始めた。ちなみにログを確認した所、樹齢王にスキル封印はレジストされたけど《魅了・小》の効果は出ていることが分かった。
きっとこれは思春期の男子がよからぬ妄想した後、スッキリと正常に戻り、恥ずか死ぬような思いをした時にとる行動ですよね!私にはわからないけどきっとそういう物なんだと思います!
……とりあえず、王種とはいえ樹齢王は魅了攻撃に対する耐性値が低いという事だけは分かったので私も攻撃やら補助にまわれそうで嬉しい。そういえば光の領域にいた時、最後に人王と戦った時も覇気による影響を受けてたよね……。となると人王も魅了耐性は低いのかもしれないね。覚えておこう。
氷獣王の時は氷獣王が私を最後の最後まで狙わなかったから前に出る必要はなかったし、地壊王やら星粘王の時は初めから相手をするメンバーを決めてたから出る必要性を感じなかった。出ても負けるのが分かってたという事もあるけどね。
今回の樹齢王戦も参加メンバーを決めて挑んでいるものの、コウガ達の場合は取り巻きやら配下の連中を倒し終わりこちらで一段落したらウズウズしだして、樹齢王戦に乱入してくるだろうことが予想できる。
だから彼らの気持ちが疼きだすまでに何とか倒してしまいたい。理想はカエデで止めと行きたいところだけど、予定が変わってルドラやイリスが止めを刺すことになってもいいかな。それまでに活躍をさせてさえいれば。どっちにしても進化するからには、レベルをいつも通り50か60までは上げておきたいからね。
「お、おのれぇ!これはおぬしの仕業じゃろう?ワシに何をしたのじゃあぁぁっ!!」
なおも身悶えしながら攻撃できずにいる樹齢王に対して私は【チャームドレイン】を発動。
僅かとはいえ(ミスティちゃんが樹齢王に今まで与えていた合計ダメージ(5%)分?)ダメージを与えることに成功した。
うん、もしスキル封印が効いたのなら樹齢王も私の周回討伐対象になってたかもしれないね。
今回の経験値をもらってからその辺は考えることにしようっと。
「ぬひょぉぉ!?対象の体力を奪う技か……その技……聞いた事があるのぅ……。確か……《色欲》辺りの固有能力にそのような力があったはず……はっ!?まさかお主、こ、古代魔王種なのではっ!?」
「断じて違います。私もそういう存在が居ることは把握していますけど、本人でないことは確かです!」
しかもなんでよりにもよって色欲なんですか!?一体私のどこに色欲的な要素があるというのよっ?あぁ~三日三晩問いただしたいところだわ。寝不足はお肌に悪いから実際にはしないけどさ……。
「ひょ……ひょ……そんな事はまあ良いじゃろう。ワシが樹齢王になる前は古代魔王種というのが幅を利かせておったらしいがなぜか突然いなくなったと言うしのぅ……そんな存在が今更現れるのもおかしいというもんじゃしな。
……さて、こちらの思惑通り、お主が会話に参加してくれたおかげで先ほどの状態から回復できたわい。じゃが先ほどの攻撃は二度と効かぬぞ?魔樹タイプの王種ともなれば状態異常への耐性が高いのでな。さっきの状態異常《魅了》じゃったか、その耐性を得たわい。ひょっひょっひょ」
あっ、やっぱりそれ狙ってましたか!私も薄々そんな事じゃないかと思ってたんですけど、実はそれも計算の内なんですよね。
樹齢王……もとい魔樹王になるのかな?……が、どのような固有スキルを持っているかを知る良い機会だったし、あと私も王種相手に戦闘貢献できるっていうのがわかったからね。
「あら、奇遇じゃない。私も樹齢王の行動を検証していたからお互い様よ。まあ私としては貴方の固有能力を見れたおかげで本気で行けるようになったから、先ほどのようにモタモタしてあげないから覚悟してよ?」
「ひょっひょっひょ。言いよるのぅ。ならばワシ相手にそのような余裕を見せた事、後悔しながら死ぬがよいっ!」
樹齢王は無詠唱の【木秘術】で次々と鋭利な葉っぱのようなものを作り出し、一斉に掃射してきた。大半はルドラに向かったが、その壁を越えて私に届く葉っぱもあった。
「ギシャァッ!?」
「大丈夫よ、ルドラ。今は目の前の攻撃の処理に集中。その後は(ゴニョゴニョ)……分かったわね?」
「ギシャルルッ!」
そして私の方へ抜けてきた葉っぱが私に当たると爆発し炎上。その様子を見て樹齢王は高笑いを決めている。
「ひょーっひょっひょっひょ!ワシの木秘術が当たればお主など原型すら残さず、木っ端微塵なのじゃぁぁ……あぁぁっ!?な、なんじゃとおぉぉっ!?」
爆発が止み、私が消し飛んだと思っていた樹齢王は現場に無傷で立つ私をみて今までにない程の驚きの声を上げた。
無傷の理由は言うまでも無いけど1000(+1000)近いCHAによる魔法防御力でレジストしただけ。魔法特化の死霊王の魔法でもCHAが200(+237)の時にレジスト出来たんだから、その約五倍の数値でレジスト出来ないことは無いはず!その予想が当たってて安心しました。
「今よ!ルドラ!カエデ!」
どうでも良いんだけど樹齢王は驚きすぎじゃないかな?毎回驚きで動きが止まってくれるから、こちらとしては攻撃しやすくていいんだけど……。もしかして樹齢王……あまり戦闘経験ない?
仮に樹齢王になった当初、この樹齢王が強者であり戦いを挑まれたりする回数が少なくて、経験を積まないまま年月だけが経ってしまったとか?
木秘術とか言うのも案外、発動したら大抵のモンスターに大ダメージを与えられたから自信を持ってただけとかね?でも、樹齢王の会話の中に吸血王やら魔人王という名前も出て来てたから、そいつらとは戦ったことはあるんだろうと思う。
まあどちらも倒れていないという結論から実はこの辺の王種の底力はどっこいどっこい……かな?
そういえばトリビアや、パーシヴァルさんも、私が軍勢を出せばほぼ無傷で倒せると言ってたもんね。
と、話がそれた。
私が指示を出した二人はというとこのような行動をとっていた。
ルドラは先ほどの爆発する葉っぱを防ぎ切った後、私の指示を待つカエデの元へ向かった。一瞬葉っぱが直撃した私を心配していたらしいけど、私の気配が全くゆるぎなかった事から気持ちを切り替えたのだ。
そしてこの戦闘で本来一番活躍するはずのカエデはというと……
樹齢王がまだ巨大樹木だった時に準備していた奴の弱点っぽい属性である雷や風の木の実を吸収し、自分の攻撃属性をそれらに変化していた。
そのスキルの名は【属性吸収】。各モンスターによって吸収の仕方は異なるが、カエデの場合は属性を持つ植物素材からそれらの属性を抽出し自分の攻撃に乗せるというものだ。
スキルレベルが低いため根を下ろして吸収しないといけないから、そのままでは樹齢王に攻撃などできるはずがない。だからルドラにカエデの元へ向かってもらい、ルドラの【破壊の尾撃】により、フレンドリーファイアよろしくの強制移動をさせることにした。
これにより吹き飛ばされたカエデは私を見て驚いている樹齢王に接近し、弱点属性による大きな一撃を食らわせたのだった。
中盤から終盤にかけて言い回しがしつこかったかなぁ……?




