130話
まずはお詫びを。
六月中更新速度を落としてリフレッシュ期間を頂きましたが、大まかな流れの中に組み込む小話の内容が思い浮かばず書くことが出来ませんでしたので七月中も六月と同じような更新頻度になると思います。
作者としては今の週一更新(毎週月曜)から週二更新(毎週月木)までもどしたいのですが、今現在においてどの程度まで出来るかわかりません。
楽しみにしてくださっている読者の方にはご迷惑をおかけしますがご了承のほどよろしくお願いします。
樹齢王が出してきた眷属はランク2~ランク4までの魔蟲や魔樹系統とたまにランク5が1~2体かな。樹齢王の軍勢の中には私がさっき配下に加えたのと同種の《ウツクシヤマカブト》等の姿もあり、呼び出された数はざっと100体くらい?全部が全部樹齢王の周りに出たわけじゃなく、この広いフィールドのどこかに呼び出されたのもいるだろうから実際はもっと多いかもしれないけどね。
まあ樹齢王は偉そうなこと言ってた割には配下のランクが大したことないという事だけは分かった。あの時私の軍勢の内訳を聞いたパーシヴァルさんやトリビアが言ってたことにやっと納得できたよ。大げさと思ってたけど私の方がおかしかったんだねぇ。
「うわわっ!?なにこれ!?もしかしてこれ全部樹齢王の取り巻きとかなの?」
しかしミスティちゃんは驚いている。たぶんさっきまでは樹齢王一人でも相手に出来ると思われていたから一対一の戦いが出来てたんだろうね。それなのに私とパーティではなくレイドを組んでしまったから多数対多数の王種バトルに巻き込まれる形になったわけ。……とりあえず今は黙っておいて樹齢王を片付けたら謝っておこうと思う。
「ねぇ、アイ姉~。この数は流石に倒せないと思うんだけど!?ど、どうするのさ!?」
「そうだね。思ったよりは多いみたいだけど……(数だけは……ね。ランクもそこまで高いわけでもないし……)」
「なんでそんなにおちついてるのさ~!こんな数私達だけじゃ絶対無理だってぇ~!」
隣でミスティちゃんが騒いでいるけど気にせず、これなら私は軍勢を出せば一瞬で終わりそうだけど出す必要はなさそう……と考えました。
「それじゃあコウガ達、行ってきてくれる?ペースは任せるから適当に頑張ってきて。あっ、もし魔蟲タイプのモンスターとかから毒を受けたりしたら戻ってきてね。回復するから」
「わふっ!」「ガルッ!」「我に任せておくがいい」「クケェッ!」
コウガ・セツナ・ロアン・クルスという攻撃力が高いメンバーが全員出撃していく。この場に残っているのはイリスとカエデ、ルドラ(ついでにティア)。一応樹齢王はこの三人(?)で戦ってもらおうと思ってるんだよね。この事はさっきミスティちゃんの戦闘を見てる時に皆に言ってあるから、コウガ達が樹齢王の軍勢の掃討を終えて戻ってきても戦闘には参加しない予定です。ミスティちゃんに関してはレイドを組んだだけなので適当に動いていいと言ってある。さっきの戦闘を見る限り、炎魔法が直接カエデの方に行かない限りは大丈夫そうだし?
……これってフラグじゃないよね?だ、大丈夫。ミスティちゃんの魔法の命中精度はしっかり確認したもんね……。
なお、さっきの軍勢程度にコウガ達が負けることはありえないので掃討に向かったコウガ達に心配はしていない。
「あれ、アイ姉?そういえばさっきアイ姉の仲間モンスターも喋ってなかった?」
「ミスティちゃん?目の前の木が喋れるのに動物が喋れないとでも思ったの?」
「!?あっ、そうだよね。木でも喋れるんだもんね……って騙されないからねっ?そっか、モンスターも喋れるようになるんだぁ……どの子が喋ったのかは分からないけど後でお話させてもらおっと」
どうやら誤魔化すことは出来なかったようです。くぅ、眠気がない通常のミスティちゃんだったら普通に騙せたのに!まあいいか。
「ひょひょひょ……なるほどのぅ。あの氷獣王を雑魚の掃除に向かわせるとはワシも舐められたもんじゃな。お主程度のステータスでワシに勝てるとでも思ったのかの?片腹痛いわぁ!」
片腹痛いわって言われても樹齢王のどこに腹があるんでしょう?その大きくて太いのが全部腹だというオチ?
「別になめてるわけじゃないけど?本気でこのメンバーだけであなたに勝てるから残ってるんだから」
「ひょひょ。威勢の良い新米王種が……この魔樹の長老たるワシの手にかかって果てるが良いわぃ。なぁに心配するでないぞ?一撃で決めてやるからのぅ」
いうなり樹齢王は先ほどミスティ戦で見せていた地中から突き出る根っこによる突き刺し攻撃を私目掛けて仕掛けてきた。だけどそこは根の移動によって地面の動いている箇所にルドラがジャンピングプレスをすることで出現を抑えると同時に根っこに多大なダメージを与えていく。
「ぷぎゃあぁっ!ち、地中を走るワシの根を押しつぶすほどの硬さと重量じゃとぉ?見た目からは想像もつかぬジャンプ力に騙されたわい。じゃが次はそうはいかんぞっ!」
樹齢王が次に仕掛けてきたのは樹齢王の巨大な枝葉に数種類の果実を実らせ、それを落下させての広範囲攻撃だ。体の大きさこそ樹齢王の方が大きいけどそれはうちのカエデも良くさせてた攻撃方法だから対処できるんだよねー。だけどそこを避けずに私はカエデに指示を飛ばした。
「カエデ、お願いね?」
「ヴヴヴッ!」
カエデはそう返事をすると、その触手……じゃなくて蔦を伸ばし周囲に張り巡らせる。落下してきた樹齢王の攻撃はその蔦に弾かれ次々と樹齢王本人へと返されていく。樹齢王自体も行動が出来るとはいえその巨体から素早い動きは出来ない。……その分体力は非常に高いんだろうけど、いってみればそれだけ。
「ぎゃひぃ!?お、おのれぇ、このワシの攻撃を弾き返して反撃する奴がおるとは思わなんだ……じゃが、ワシの攻撃はまだ続いておるのじゃよ。ひょひょひょ」
樹齢王の言った通り、弾き返すことが出来ない場所に落ちた樹齢王の果実からは次々とモンスターが出現してくる。名前は《樹齢樹》というらしく、軍勢扱いではない大小さまざまな形をした本当の取り巻きがこれららしい。
「イリス、樹齢樹達を片っ端から片付けて来てくれる?」
「クピポー!」
……あれ?イリスの鳴き声がまた変わった……。米を加工したお菓子の題名のアニメに出てくるガっ○ゃんですか……そうですかぁ。
とにかく指示を受けたイリスは樹齢樹の殲滅に向かった。移動しながら光魔法の《レイ・ブラスター》を発射しているのがかっこいいよ。
「アイ姉!私も魚ちゃんが戦ってる小さい樹齢王とか倒して来るね!」
「えっ?ミスティちゃんは樹齢王本体の相手はしなくていいの?」
「うーん、なんか今突っ込んでも返り討ちされそうだし、鑑定で見たアイ姉のモンスターの邪魔にもなりそうだし。かといってこのまま出番がないのも嫌だから、私は樹齢王以外の犬ちゃんが戦ってるモンスターも含めてそいつらの相手をすることに決めたよ。樹齢王討伐はアイ姉に任せた!」
「そうなの?先に戦ってたミスティちゃんがそういうなら別に私はいいんだけど……」
私としては取り巻き連中とかならコウガ達やイリスで十分だからいてくれても良かったんだけどね。
まあ本人が何か別の事したいというなら引き留めるわけにもいかないよね。まあレイドだとドロップの取得権はMVP方式で戦闘に貢献すればするほどドロップ取得の可能性が上がるシステムだから、樹齢樹を倒したり軍勢を片付けるのも評価としては高いだろうね。特にレベルが低いキャラで強いモンスターを倒せばその評価割合がすごいんだけど、これだと私の一人勝ちになるんだよねぇ。あくまでも権利だけだから私が受け取りを拒否するなどすれば樹齢王から手に入るアイテムで望むものをミスティちゃんにあげられる。私には装備レベル制限があるようなものがあっても処分に困るだけからね。
「いいのいいの!それじゃアイ姉も頑張ぁ~」
いうなりミスティちゃんもイリスを追って戦場を離れた。というのもすでにイリスが周辺にいた樹齢樹を片付けてしまっていたから少し離れた場所に行かざるを得なかったのだ。
まあ樹齢王の軍勢の残りもほぼ居なくなってるけどね。何せコウガ達が自重なく持てるスキルを使用して接近すると同時に即殺してるから。戻ってくるまで五分もかからなさそうだよ。
「ぬぐっ?馬鹿なワシの軍勢がこうもあっさりやられるなど在り得ぬはずじゃが……まあよい。お主を倒せば他の奴らも消えるのじゃからな」
樹齢王が話しながら根を地上に露出させた。どうやらルドラのジャンピングプレスで負傷した傷が治ったっぽい。地面に埋まっている間は自然回復力があるのかな?となると、ジリ貧になる前に圧倒的な攻撃で樹齢王を倒すしかないって事か。
樹齢王はその長く太い根を振り回し私を弾き飛ばして止めを刺そうとするが、それを簡単に許さないのが私の優秀な盾役のルドラ。
巨体と堅さを活かし、体全体で樹齢王の根を受け止めると、ミドルブレスで樹齢王の根を焼き払う。
「ひょひょ……なかなかやるではないか。じゃが根の一本を焼かれたところでワシには何の痛痒もないわ!」
初撃の地中を這わしていた時は痛がってたくせによく言う……。私はそのままルドラにミドルブレスでの攻撃を指示。
「ヴヴッ」
樹齢王の根をルドラが潰す間にカエデが樹齢王の後方から忍び寄る。……普通にモロバレしてるけど樹齢王本人は自分の一番攻撃力がのる位置まで来てからカエデを排除するつもりだった。
それはつまりカエデにとっても同じこと。
そしてカエデが樹齢王の攻撃範囲に入った時、樹齢王の全力攻撃がカエデに襲い掛かった。




