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128話

 ー 迷いの草村(グラスヴィレッジ) ー


 広大な敷地に濃い魔素溜りが複数発見され、並の住民では生活が出来なくなり放棄された迷いの森と言われる森林地帯にある村。今でもここに住めるのは魔素耐性の高いダークエルフかランク4を超えるモンスター位。

 ランクは高いもののベースレベルはそこまでではないので戦闘技術を磨くにはもってこいの場所である。ただし、出現するモンスターは基本群単位で登場するのでソロでのレベリングは推奨出来ない。

 この村の特産品は魔素を多分に含んだ《デモンズ・トーン》と呼ばれる高ランク素材の薬草である。薬効の高さゆえに扱いが難しく、使いこなすことが難しいので見向きもされていないのが可哀そうな所。



 「と言う訳で樹齢王の治める森林地帯に来たわけだけど……すごい賑わいね……」


 私が到着した迷いの草村にはたくさんのプレイヤーがパーティー、レイド単位で賑わっていたのだ。

 とりあえず近くにいた女性プレイヤーに話しかけてみると理由が判明した。

 この迷いの森全域で大量経験値を持つモンスターが確認されたんだって。種族は魔動機種で名前は《ギアメタルラビット》、見た目は名前から想像できる通り機械仕掛けのウサギらしい。

 分かりやすく言うと、メタルス○イムやはぐれ○タルみたいなものらしく、なんとドロップに低確率でスキルの種があるんだとか。

 だけど見た目に反して防御力はそこまで高くない代わりに素早さが非常に高いんだって。たまに無防備な背中に速度を生かした体当たりを食らって死に戻るプレイヤーもいるんだとか。怖いウサギだねぇ。


 先ほど例に挙げた(別のゲームの)ものとは違い頻繁に見かけるからこその、この賑わいと言う訳。

 普通のスキルの種かぁ……もしかしたらバザーに並ぶかもしれないし、購入予約しておこうっと。


 それにしても大量経験値かぁ。メリュジーヌのカタコンベより貰えるのかなぁ?聞いてみたところ経験値の量は15k(15000)だと言う。メリュジーヌで安定狩りできる私からしたら若干少ないけど、一般プレイヤーからしたら美味しいモンスターなんだろうね。

 この位のモンスターだと私の食指はうごかないけどね。経験値モンスターって事はそこまで強くないんだろうし、会えたら会えたで相手にする感じでいいかなぁ。


 狩りに来たプレイヤーを相手にしている回復アイテムを扱う露店で魔力回復系のポーションを購入した後は、村を出てエリアに行くだけだ。


 「おいっ、そこの姉ちゃん達。一人で行くのは危ないぞ?だから俺んとこのパーティに入らないか?」


 村を出ようとしたら後ろから声がかかる。あぁ、このパターンは嫌な思い出があるよぉ……。囮、嫌だったなぁ。ちなみに姉ちゃん達の達のなかにはまだ経験値を取り戻しきれていないティアが含まれています。


 「い、いえ、私達はこのままでいいんです……多分、あなた達と私の目的は違いますから」


 「経験値稼ぎに来たわけじゃないのか?なら一体何をしにこんなところへ……?まさか!?」


 「ちょっと森の奥にいる大物を狩りに来たんです」


 「……森の奥の大物って……樹齢王かっ?そういや……最近化け物ぞろいの王種を次々と倒しているというプレイヤーが居るときいた。確か名前は……アイリッ!?」


 あはは……なんかすっごい有名になってる……。

 そしてこの人が名前を出したから周囲のプレイヤーの視線がこっちに集中してきてるし……。


 「えっ?アンタがアイリか。SSで見るより美人だ。付き合ってください!」


 「ごめんなさい、無理です」


 金髪でそこそこイケメンのプレイヤーからの申し出をきっぱりと断る。イケメンとかこれから先もいらないですし?


 「じゃあ俺と二人で樹齢王にっ!」


 「うちのクルスに勝てるならご一緒しますよ?」


 「クワァァッ!」


 「ヒィッ!?化け物鳥!?」


 「化けッ……なんですって?もう一度言っていただけます?」


 「さ、さーっせんしたぁ!?」


 クルスを化け物鳥と言った人に【麗王の覇気】が発動した。謝るのが一瞬遅かったためか《プレイヤー:エシュルトの【大槌強化・中】が封印されました》と言うログが流れた。

 攻撃スキル封印しちゃったからしばらく狩りするのが難しくなっただろうなぁ。残念だったね?

 ちなみに封印効果はデスペナ(もしくはPVPで敗北する)を受けるか12時間経過しないと解けないよ?なんたって効果時間は私のCHA依存だからね?もしかしたら封印解除系のアイテムがあるかもしれないけど、少なくとも私は聞いたことが無い。

 PVPで敗北するのが一番簡単に解除できる方法だけど教えてあげない。私の逆鱗は範囲が広いから注意してもらわないとね。家族が増えればその分逆鱗が増えるんだから。


 「あっ、あぁっ、俺の最強スキルが封印っ~!?」


 がっくりと手をつくプレイヤー。私の事を面白そうに見ている他プレイヤーにも警告すべく声を上げた。


 「私の事は何を言ってもいいですけど、うちの子たちを貶した人はこの人のようにひどい目に合いますのであしからず。文句がありましたらいつでもどうぞ」


 ついでにロアンやセツナと言った迫力あるモンスターを呼び出し、くぎを刺しておいた。

 まあ一部のプレイヤーはそのロアンたちに対し興味深そうな顔をしていたので、後方には注意した方がいいかもしれない。


 警告をしたあと、ロアンに跨り村を出発。この時も後ろから「えっ?あんなのにも乗れるのか?」と言う声が聞こえて来てた。そういえば情報の提供してなかった……。ロアンに乗っている間に書き込みしておこうっと。それにしてもロアンをあんなの扱いしたプレイヤーの顔を覚えられなかった……無念です。



 「主よ。樹齢王の気配を感じるがまっすぐ向かうのか?距離的には一~二時間と言ったところじゃが?」


 「うん、そうだね。この森でやりたい事って言ったら樹齢王を倒す事くらいだから、まっすぐ向かってくれる?」


 「了解した。しっかり捕まっておるのじゃよ」


 そこからしばらくしたところでロアンが立ち止った。理由は騎乗状態では通行できない設定をされたフィールドがあったから。


 「ふむ、我に乗って入れるのはここまでのようじゃな。主よ。あとはゆっくり歩いていくしかあるまい」


 「そうみたいだね……それじゃ安全の為に皆を呼び出しておこうかな?」


 フルメンバーを呼び出し、予想外の事にも対応できるようにしておきました。

 迷いの森と言うだけあって、多方向へ道が枝分かれしている。まあロアンが居るから樹齢王が居るという方向だけは分かるんだけど、たまにその方向に進んでもループ系トラップで別の場所か見たことがあるような場所に飛ばされたりして訳が分からなくなったりする。


 途中に例のウサギ達を発見したのでロアンが瞬動を使い瞬殺した。

 でもドロップはありませんでした~。そう上手く手に入らないよねぇスキルの種……。



 「……それにしても目的にたどり着ける気配が全然ないね」


 「ヴヴヴ……」


 騎乗禁止エリアに入って数時間、私たちは同じ道を延々と行ったり来たりしていた。もちろん何度も行ったり来たりしてるとモンスターも当然湧いてくるわけで……。流石に例のウサギは出てこなかったけど魔蟲種の《ウツクシヤマカブト》とかいう名前の通り綺麗な装甲のカブトムシっぽいモンスターが居たので配下に加えておいた。……スキルに猛毒の針があったけどね。

 そんなこんなで何度目かのループを経験した時、何やらカエデが止まるように枝を広げた。


 「どうしたのカエデ?」


 「ヴヴヴッ」


 「もしかしてこのループの罠の攻略法が分かったとか?」


 「ヴヴッ!!」

 

 どうやら本当に分かったらしい。樹齢王と同じく魔樹系統だからこそわかったりしたのかな?でも最初はこんな素振りをしなかったから何度も迷った末に謎が解けたって感じなんだろうね。……ちなみに私は迷いの森の法則すら全くつかめていない。


 早速カエデを矢面に立たせて迷いの森を抜けるルートを進む。

 相変らず同じ景色が続いたけど、最後にカエデが枝で指した道を進むと一気に視界が開けて目の前に大きな広場と巨大な木があらわれた。

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