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126話

一カ月更新しないはずじゃ……だと?それは半分嘘だ!だけど次話は来週月曜日です。

 打倒樹齢王を目標にして砂漠の集落を出発した私たちは砂漠と樹齢王の治める迷いの草村(グラスヴィレッジ)の中間にある綺麗な川の流れる渓谷の集落に立ち寄っていた。


 「いったんここで休憩しようか。それじゃあ休憩の定番トリミングターイムッだね!」


 「ワワンッ?」「グルゥン」「キュポー」「クワッ」「ウム、我の毛も梳いてもらわなくてはな……」


 ティアに関しては自分でできるんだから放置だよ。でもこういう時の彼女はおとなしく私に寄り添って構って欲しそうにしているから頭を撫でるくらいはしている。それだけでティアの表情がニヘラ~となってるから満足しているのだと思う。


 「さてまずはコウガからだよ?……ってこらこら、逃げないの!セツナ~、コウガを抑えておいて~」


 「グルゥ~(分かりましたご主人。さあ、お兄様大人しくしてくださいまし)」


 「ワフッ!?(くっ、妹までもが裏切るとはぁ、こうなれば逃げ……ぐぬっ!?)」


 「コウガよ。我は早く毛を梳かしてもらいたいのじゃ。あとが詰まっておる、大人しく主の元へ行くのじゃ!」


 逃げようとしたコウガをセツナが追いかけ、それを逃れたものの瞬動を使ったロアンが前に立ちふさがったため逃げ道がなくなったのだった。悲しそうな声を上げながらコウガは私の前にトコトコと移動し、観念したようにぺたりと座り込む。

 アイテムボックスから大型犬用のブラシを取り出し構える。コウガは相変らずトリミングが苦手だけど体が大きくなった分、毛玉になる場所も増えてるからしっかり綺麗にしておかないとね。


 「コウガ、どうしてもトリミングが嫌ならソリを買ってあげないよ?ソリがなかったらコウガは私を乗せて走れないわねー。あぁ残念だなぁ~?」


 「ワッ……ワフゥ~(そ、それは困るのである……俺もご主人を乗せたいのである)!?」


 「ううん、別に無理しなくていいのよ?私ならロアンが乗せてくれるからね?

 でも、コウガがソリを引いてくれるなら綺麗にした毛皮が風になびいてるコウガに乗せてもらう方がうれしいな。コウガがどうしても嫌だって言うなら私も諦めざるを得ないよね……毛がボサボサなコウガなんてちょっと嫌だもんね~」


 「ワフゥン~(そ、そんな嫌だなんて言わないでほしいのである~。トリミングしてもらうのである。だから早くソリが欲しいのである~)」


 「ちゃんといつも綺麗にさせてくれるならソリを買っちゃうよ?でもソリを買ったらトリミングさせてくれなくなった時は捨てちゃうからね?」


 「わふっ!(わかったのである。だからソリを買ってほしいのである)」



 ふふふ、これで今後も確実にコウガを綺麗にできるね。そんなに私をソリに乗せてでも走りたかったんだねぇ。約束を破らないようにバザーでソリの購入希望予約(売り出された時にメッセージが来る機能)を出しておこう。こうしておけばバザーを確認した職人さんが売るために作ってくれるかもしれないからね。


 こうしてコウガ、セツナは櫛とブラシを駆使してサラッ、フワァッーと美しく整えました!続けてイリスなんだけど、あまり汚れてないんだよねぇ。と言うのも自分で水魔法を使ったりタクトマジックで雨を降らして体を洗ってるからね。……だからきめの細かい布で鱗を磨くくらいしかできなかった。それでも喜んでくれたからいいかな。


 カエデの木の枝に関しては本人の言う要らない枝毛(毛じゃないけど)の剪定をしてあげた。終わったら枝を振りながらニコニコしていた。どうやら余計な枝がなくなって枝が振りやすくなり、コンボスキルが使いやすくなったと言ってるらしい。喜んでもらえて何よりだよ。ちなみに選定したカエデの枝は《魔樹の枝》と言う素材アイテムになっているんだよね。文字通り魔樹系統モンスターのドロップアイテム……。


 続けて行ったクルスは青い羽根が数本抜けてアイテムボックスに収まった。素材アイテムなんだけど、こういう家族の抜け毛とか羽は光の領域にいる時からアイテムボックスの中に結構溜まってるんだよね。売ろうにもお金にならないから取ってるんだけど、いつか使える日が来るのかなぁ……。


 「マスター!お困りのようですね!その素材ひとまず私に預けてください。スキルが使えるようになった時に加工しますので」


 「えっ?本当に?それは助かるよ~。それじゃあ渡しておくね……あっそういえばティアの残りペナルティってあとどのくらい残ってるの?」


 「そうですね……あと70万ほどで完了しますね。カタコンベで大分減りましたのでおそらく樹齢王と適当に数体倒せば大丈夫かと……」


 たしかに樹齢王もなかなか倒されたという話を聞かない王種だよね。ってことは、あの死霊王以上に経験値を持っている可能性が高いって事かぁ。ティアの頭を撫でながら受け渡しを完了。そういやティアの羽の毛って抜けたりするのかな?……例えば堕天使の羽とか言う素材になったり……


 「一応抜けますけど、まだ素材として高品質じゃないのでお渡しするのはちょっと恥ずかしいです……」


 えっ、裸同然の格好より抜けた羽の方に関する事例の方が恥ずかしいの?モンスターって奥が深いよ。

 それにしてもコウガ達の抜け毛とかの素材からどんなアイテムが出来るかなぁ。……ふふっ今から楽しみ~。



 最後にルドラとロアンだけどルドラは元からとはいえモフモフ成分がないので、イリスと同じく鱗というか硬い装甲を綺麗にふき取るくらいで完了。ロアンの毛はかなり長いのでかなり疲れたよ。でも毛を梳いた後のロアンの背に跨った時の感触はすごく気持ちが良かったよ……。

 思わず背中でお昼寝しそうになった(寝たら強制ログアウトね)!



 「なぁ、あんた……プレイヤーだよな?」


 皆のトリミングが終わり、この集落の売りである綺麗な川で休んでいると声を掛けてきたプレイヤーが居た。男三人女三人の計六人で組んでるみたい。


 「そうですけど?」


 「……そのモンスター達は全員あんたのペットなのか?」


 「ペットだなんて失礼な言い方をしないでくださいね。この子たちは私の大事な家族です。そこらのペットと一緒にしないでください」


 「お、おぅ。すまん。それでな?頼みがある。その強そうなモンスターと戦わせてほしい」


 「……戦いたいという理由次第ですね」


 「俺たちは見ての通り、バランスの取れたパーティを組んでいる。だがこの辺のモンスターでは俺達には弱すぎる。そこで他のプレイヤーが操るモンスターと戦ってみれば今のおれたちの実力がどの程度のものかわかるんじゃないかと思ってな」


 「なるほど、実力試しと言う訳ですか。わかりました。私としても対人戦の経験を積むチャンスですからその話お受けします」


 「ありがたい!こっちはいつでも始められるがそっちはどうだ?」


 「そうですね。あっ、もし差し支えなければあなた達のレベルを教えて貰うのはいけませんか?」


 「本当なら言わないんだが、こっちから頼んだことだしな。詳しい詳細レベルは言わないが平均で50レベルだ」


 ……おぉ!トリビアと同じくらいのレベルなんだ。なら強いかもしれない……。よぉーっし!


 「ありがとうございます。それではこちらから出すのは……イリスとカエデ、おいで」


 「キュポー!」


 ズズーン……


 この二人はレベルはまだ35だけど十分戦えると思うんだよね。


 「おいおい。冗談はよしてくれ。こっちは6対6のつもりで申し込んでいるんだが?」


 「あぁ、そうなんですか?申し訳ありませんけど、それじゃ勝負にすらなりませんよ?うちの子たちは一体で王種に勝てるくらいの強さですからね(まあエクスチェンジ込みで……だけどさ)」


 「……はっ?王種ってマジで?って事はあんたがあのアイリなのか?」


 「あの……が何を指すかは知りませんけど、おそらくそうですよ」


 「へぇ、そりゃラッキーだな。まさか王種討伐プレイヤーと戦えるチャンスがあるなんてな。だが一度は6対6でやらせてほしい。そしてその後、そっちの二人と戦うって事でどうだろう?」


 「……後悔しないでくださいね?一応止めましたからね?」


 「あぁ」


 と言う訳でコウガ・セツナ・クルス・イリス・ルドラ・ロアンの六人が前に進み出る。全員がランク5以上なのでその迫力はすごい事この上ない。


 「いざ、目の前で見ると怖いな……」


 「ねぇ、今からでも2対6に戻してもらわない?」


 「……今更引けるかって!いくぞ!」


 あちらはあちらで相談してたみたいだけど結局六人で挑んできました。

 私はコウガ達にいつも通りの対応をするように言っておきました。コウガとセツナは対プレイヤー経験があるから細かい指示はいらないと思う。あとの四人は……まあほっといても大丈夫でしょ!



 開始十秒後……


 プレイヤー六人は地面に倒れていた。ロアンが瞬動で後衛に近づき驚いてる隙に爪でズバッと引き裂いて片付ける。前衛がその様子に驚いてる隙に、セツナがボケっとしていた前衛の後方から噛みついた。そのまま上に放り上げた所にルドラが広範囲のミドルブレスを吐いて終了。


 「つ、強すぎる……なにこれ……」


 「いや、これは流石に無理。倒せるはずがないわ……」


 「ほらぁ~だから二体にしてもらおうって言ったじゃない~って、言うかあの中の一体相手でも無理そうな気がするんだけど?」


 「……そ、そんなことがあるはずが……いや、無理かもしれない」


 プレイヤー達は地面に転がりながらそう言った感想を言っている。


 「えっと、大丈夫ですか?」


 「大丈夫じゃないっすわ……アイリさんのモンスター全員バケモノ級って言うのはよくわかった……」


 「バケモノ級はひどくないですか?私のかわいい子たちに向かって……」


 「あっ、いや、強すぎるっていう意味であって見た目がバケモノってわけじゃなくてですね……?」


 私が怒ったと思ったのか一生懸命弁明を始める最初に話しかけてきた男性プレイヤー。

 もちろん私は怒ってなどいない。


 「ふふっ、大丈夫ですよ。言いたい事は分かってますからね。それでどうしますか?2対6やっちゃいます?」


 「えっと、やっぱ次は1対6にしてもらえませんかね~?」


 「ふふっ、良いですよ。どの子がいいですか?ちなみにそっちの羽付きの美人は戦闘が全くできない子ですので出せませんよ」


 「それならアイリさん本人と戦うのはダメですかね?」


 「私とですか……いいですけど後悔しないですか?(私が弱すぎての意味で)」


 「……なんかこのまま進むといやーな予感がするなぁ……だけどたのむわ。王種を倒せるプレイヤーの強さを知るチャンスだしな」


 「……分かりました。あらかじめ言っておきますけど私はある意味あの子達より酷い(ステータスが)ですよ?」


 「えっ?マジっ?」


 「……あくまでも多分ですよ?」



 ★☆★☆★☆★☆★☆★☆


 私がそうプレイヤー達に言ってる時、家族であるコウガやロアンたちはと言うと……心配そうに戦いの行方を見守っていた。


 「まずいのである……ご主人が【軍勢】を使ってしまうのである」


 「仕方あるまいて……主の攻撃方法はあれくらいしかないんじゃしのぅ……まああの軍勢を相手にするのは全盛期の我でも厳しいのじゃがな」


 「呼ぶならランクの低いやつだけを呼んでほしいのである」


 「それは主のみが知ることじゃ、我らは結果を受け入れるしかあるまい……」


 コウガとロアンは六人パーティを憐れむような表情をしてみていた。そう彼らが心配しているのはこれからアイリが起こすであろう惨劇に合う彼らに対してだった。


 ★☆★☆★☆★☆★☆★☆



 こうして二戦目、6人パーティVS私の戦いが始まった。


 「相手は一人だ。一気に攻めるぞっ!」


 「そうはさせないよっ!」


 前衛が動き出したを見てすぐに私が取った行動はというと……軍勢ではなく【麗王の覇気】です。

 このスキルなら封印と魅了が発生するだろうからね。もう今更相手のCHAの値とか調べる必要はなさそうだし。だって今の私のCHAに勝てる人がいないことは間違いないからね。


 「えっ?何故体がうごかないっ?……ってなんだ?状態異常魅了って?初めて見た」


 予定通り麗王の覇気の効果で6人全員魅了状態になったわけですが……


 「それじゃあ一人ずつ確実に倒していくよ~」


 「えっ、ちょっ?なにを……?」


 「【チャームドレイン】そしてすぐに【麗王の覇気】!」


 チャームドレインは魅了状態の相手から体力を吸収する攻撃スキル。軍勢を除くと私が使えるのはこれしかないんだよね。もちろん最初から軍勢を使ってればそれで終わってたんだけど、対人でこのスキルの効果を確かめておきたかったんだよねー。


 「う、うわぁあぁ!」


 どうやら対人戦でのチャームドレインは最大50%吸収するらしい。って事は私のステータスなら最大吸収率なので回復されない限り一人当たり二回使えば倒せるって事だね。

 まずは前衛さんを連続ドレインして戦闘不能に……続けて遊撃プレイヤーも同じように倒す。

 残ったプレイヤーからすると破滅が近寄ってくるのは恐怖だとおもう。たぶん今残っている人は前衛をやってさっさと死んでればよかったと思ってるに違いない。


 「ぬわぁぁぁ!」

 「あぁぁっ!魔法封印されてるぅ」

 「くぅぅ……!力が吸われるぅぅ?」


 後衛の三人もしっかりチャームドレインで倒して戦闘終了。やはり六人はグッタリとその場に倒れている。戦闘は終わっているのでもう立てるはずだけど立ち上がってきませんね。


 「えっと、お疲れ様?でした」


 「あぅぅ……これは勝てねぇ。近づくことも出来ねぇ……詰んだわ、これ」


 やりすぎたのかな?ボソボソと呟きながらも目が虚ろなままです。どうやら話せる精神状態じゃなさそう。しばらく待っておきましょうか!そして十分後には六人全員が復活していた。


 「俺さ、アイリには手を出すなって掲示板に書いとくわ……」


 「アンタが書いたらアイリさんを狙ってる発言と勘違いされてPKされかねないわよ。私が代わりに書き込んでおくわ」


 「王種討伐プレイヤー、綺麗な顔してマジ容赦ねぇわ」


 「それ、顔は関係なくねぇ?てか王種討伐ってこのくらい強くないと無理なのか?超無理ゲーじゃないか?」


 其々が言いたい放題しているのを聞きながら、私はリーダーっぽい最初の前衛男性に話しかけた。

 内容はもちろん私の技を食らってどうだったかという感想です。もちろんさっきの言いたい放題の所で聞いてるんだけど纏まった意見を聞きたい。


 「あぁ、アイリさんの攻撃方法は対プレイヤーにおいてはかなり効果的なんじゃないか……。これならPKの群れに狙われても負けるって事があり得ないんじゃねぇか」


 「そうですか……私も対人戦であのスキルがここまで使えるとは思っていなかったので検証が出来て良かったです。ありがとうございました」


 「あっ、いや。俺達も上を知る……いや実際には全く見えてないが、まだまだ強くならねぇとだめだって事が分かったから、こちらこそ礼を言わせてもらおう。俺たちが強くなった時にまたリベンジの機会をもらいたいんだけどいいか?」


 「もちろんです。私の拠点はユールからほど近い場所にある砂漠ですので用事がありましたらそちらに来ていただければ、対応が出来ると思います」


 「そうか。そういえばあの辺りには遺跡系ダンジョンがいくつかあったよな?」


 「そうですね。強さはピンキリでいくつもありますので楽しめると思いますよ?ただ、あのエリアで私が一度クリアしている所の出現モンスターが結構強くなっているので警戒は必要かと」


 「えっ?まじで?領地にしたらそんなシステムも増えるのか?」


 「そうらしいですよ。私も入り口周辺の確認だけして放置してますので……詳しいことは言えませんけどね」


 「面白そうだな。王種プレイヤーの治めるエリアにある強化されたダンジョン……敵が強くなってるという事は手に入る装備品も凄そうだし早速行ってみるわ。楽しそうな情報サンキューな!」


 六人パーティの面々は渓谷の集落でアイテムを補充した後、私の領地である砂漠東部へと旅立っていった。

 これであの人たちが私のエリアに居ついてくれれば、現在生産している装備の情報がいきわたるようになるわね。こればっかりは私が発信しても自分の領地の売り込みと言われ、相手にされない可能性があるから関係のない人に噂を流してもらう必要があった。

 あとはあの六人パーティに頑張ってもらって私の領地が潤うように動いてもらうだけだ。他にもめぼしい人が居たら私の領地に行ってほしいものです。



 さらに一時間後、ロアンたちに何故先ほど軍勢スキルで倒さなかったのかなどの質問に答えつつ綺麗な小川での休憩が終わり、私たちは本来の目的地である迷いの草村へと移動を開始した。

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