125話
パーシヴァルさんとの再会から二週間が経過しました。現実側では十月も終わりに近づき。まもなく学祭がはじまりますねぇ。少し憂鬱だよ……。
簡単にこの二週間の流れを説明しますと、私の軍勢の力をにわかには信じがたいと言うパーシヴァルさんとトリビアを連れて、砂漠エリアにあるそれなりの強さのダンジョンに潜り軍勢のお披露目をしてみた。あとはエレノアに返信した内容でツッコミが多かったのと、新しく発覚した王種の星粘王や元からターゲット指定してた樹齢王の討伐完了かな。
まずお披露目に関してだけど、ここで私も驚いたことがある。
ダンジョンの入り口で軍勢を呼ぶ → 私が帰還の指示を出すか、一体辺り三回攻撃しないと戻れない為、気が付けば一層目の敵を全滅させてしまってました。
二層目以降も同じ流れで殲滅。結局そのダンジョンでまともに敵を見たのは最下層にいるボスだった。
「アイリ様……これはひどいです。なぜお一人でこのようなバカげた戦力をお持ちなのですか……」
「そ、そんなこと言われても知らないよ!?私はただ配下の軍勢を使い捨てにしたくないから鍛えてただけなんだもん」
「いえ、本来配下は使い捨てにするのが普通なのです。配下に加わったものもその事は重々承知しているはず。なのに今回、アイリ様の配下は一つのダンジョンを一体たりとも欠けることなく踏破してしまった……正直申しまして異常でございます」
パーシヴァルさんもトリビアもあきれ顔である。ただトリビアは軍勢を見て何か思案している様子だったので何を考えてたのかあとで聞いてみようかなぁ。
「……確かにランク7のモンスターも確認できました。ほとんどが獣と鳥型でしたが……そういえばアイリ様は戦闘時における種族相性というのをご存知ですか?」
「?知らないけどそれって大事なの?」
「そうですね。高ランクになればなるほど大事になるでしょう。例えばアイリ様や僕のような人族や魔人族は獣型との相性が非常に良いので戦闘時にダメージボーナスが発生します。獣型のモンスターは鳥型や爬虫種との戦闘相性が良いですし、鳥型なら魚種との相性がいいなどが存在します」
へぇ?そんなのあったんだね。……あっ、今ヘルプに追加された。なるほど。こういう情報は住民の誰かから聞くことで追加されるタイプなんだね。普通こういう基礎的な事ってチュートリアルで教えるものじゃないかな?と思うけど、まあいいや。
私は知らなかったけど、闇の領域でスタートしたプレイヤーはこの情報をユールで入手できる。今回は私の方に情報が入っていなかっただけである。もっとユール集落の探索をしてればよかった……。
「あれ?となると魔人王との戦いだったら私の軍勢では相性が悪いんじゃ?」
「本来ならそうなのですが……ご存知ですか?数とは暴力なのですよ?」
「あっ、はい。ソウデスネ」
私の軍勢ならその程度の相性など無視できるとそういう事らしい。
ちなみにそのダンジョン最深部の宝箱からは《多弁鞭》という私が装備できる鞭を手に入れた。レベル制限がない分補正値は低いけど、二回攻撃が出来るというものですね。まあ物理攻撃に参加しない私に必要なのかどうかで言うといらないんだけど。最近の私の攻撃方法は遠距離からでも可能な【チャームドレイン】ばかりだしね。
軍勢の確認が終えたことで次に向かうは海岸エリアの星粘王が居るという海洋型ダンジョン。
クリアすべき場所が四カ所もあるから時間がかかるかなと思ったけど、一つ辺りがそこまで深くなかったし、軍勢スキルで楽が出来ると知った以上、トラップ以外で苦戦することは無かった。
「おのれっ、この辺鄙な場所に王種が現れるのは計算外だった……」
忌々しそうにそう言ったのは星粘王。地壊王よりも流暢に話せて銀色ボディが輝くメタルほど硬そうじゃない大きなスライム。やっぱり鳥系は頭が悪いのかもしれない……あっ、クルスは別だから拗ねたりしないでね。
軍勢バトルで始まったわけですが星粘王の操る魔粘種勢VS私の多種族勢の戦い。結果は私達の圧勝で私の方の損害は、ランク5の数体のみ。
「私の配下になるか、やられるか選んでいいよ?」
王種を相手にしているときの私は意外と冷徹だ。感応スキルのおかげか後ろでロアンがビクビクしてる気がするけどなんでだろうね?
とりあえず配下になるにしても死を選んだとしても私の力が増すことには変わりないから、返事は早くお願いしたいところです。
「……ぐぬっ!こうなればお前を倒すっ!」
星粘王が飛びかかってくる。だけどその前に現れる影。コウガとクルスである。コウガは【火纏】からスキル変化した【焔纏】を使用し能力を増加し火だるまにした星粘王を蹴り上げ、クルスは【砲翼奥義7】で爆撃砲と斬翼を使い、空でうごめく星粘王を切り刻んだあと跡形もなく破片を消し飛ばしていく。
爆撃砲を免れたものの燃えながら粒子となっていく星粘王を見ながら私はがっかりしていた。
「あぁ、結局勧誘失敗したなぁ……」
どの口が言うんだろうね?王種を前にした時は性格が変わってるくせにね?いくらテイムスキルが高性能になってもあんな高圧的な口の利き方じゃダメと思う!
「あ、主よ……もう話しても大丈夫かのぅ?王種を倒したのならステータスの確認しなくてもよいのかのぅ?」
「あっ、そうだね。いつも通りアナウンスも届いているし確認してみるよ」
なぜか大人しくしていたロアンに微笑み、ステータスのログをスクロールしながら確認していく。
ちなみにロアンが大人しくしていた理由はさっきも言った通り、王種を前にした私の雰囲気が変わる事に慣れていないそうです。ロアン……というか氷獣王と戦った時もその片鱗を見せたよね。
《海岸エリアにおいて、あるプレイヤーが王種モンスター《星粘王》に勝利しました》
《プレイヤー名:アイリが《星粘王》に勝利しました》
《プレイヤー:アイリが王種を倒した事で魔王の資質が強化され魔王の熟練度がⅤになりました》
《プレイヤー:アイリの魔王の資質が強化された事で新しいスキルを取得しました【軍勢:魔蟲/虫】【軍勢:堕天/魂】》
《プレイヤー:アイリの魔王の資質が強化した事によりステータスが上昇しました》
《とあるプレイヤーからメッセージを送信されましたが、受け取り側の当プレイヤーの都合により受信しませんでした》
地壊王を倒したばかりだから、【統治】【感応】のスキルレベル以外ほとんど変わってないけど……
名前 アイリ
種族 人族
適正 魔王 (Ⅳ → Ⅴ)・調教師
LV 1(-/-)
スキル
【Nテイム】
【統治19】
【感応13】
【※エクスチェンジ】
【麗王の覇気】
【魔唱歌】
【軍勢・魔獣/獣】
【軍勢・魔鳥/鳥獣】
【軍勢・魚獣/魚】
【軍勢・亜人】
【軍勢・魔樹/植物】
【軍勢・物質/魔動機】
【軍勢:死霊/精霊】
【軍勢:魔粘体】
【軍勢:魔蟲/虫】
【軍勢:堕天/魂】
パッシブ
【好感(小)・魔人】
【好感(大)・魔獣/獣】
【好感(大)・魔鳥/鳥獣】
【好感(大)・魚獣/魚】
【好感(大)・死霊/精霊】
【好感(中)・妖魔/堕天種】
【好感(大)・魔樹/植物】
【好感(中)・魔蟲・虫】
【好感(大)・魔粘体】
【好感(中)・物質/魔動機】
【好感(中)・亜人】
【メイクアップ】
強さ
STR 1(+21)
VIT 1(+12)
AGI 1(+12)
DEX 1(+1)
INT 50(+21)
CHA 460(+460+62) → 490(+490+62)
装備
バスターウィップ STR+5 攻撃後、出血効果が付くことがある(小) → 多弁鞭 STR+7 二回攻撃できる。素STR値が30を超えているとき攻撃回数+2
ヒマティオン・フェザー VIT+4 INT+7・CHA+12
チャームネックレス CHA+4
鬼樹のサークレット+2 STR+9、VIT+8、INT+5
クイーンシューズ+3 AGI+12、CHA+15
鬼姫の躯手 STR+5、CHA+6
スカッドモノクル INT+5、CHA+5
花鳥風月 【薫り立つ美】【見通す視線】【対人耐性:中】【※※】【※※】 内蔵スキルに依りCHA+20
称号 闇勢力の切り札・気になるあの子・魅惑の美姫・神をも堕としうる美貌・傾国の美女、世界を揺るがす美神・虫嫌い・魔素を知る者
ステータスの増加はCHAが+30されただけかぁ。でも次の王種を倒せば六体目だからボーナスが入るはずだよね!
……六体目を魔人王にするか樹齢王にするか迷うところだけど……領地に帰ってトリビアと相談してみよっと!
「ふむ……星粘王も大したことのない王種じゃったか。我は星粘王という存在を聞いたことが無かったが、これからも目にかけるほどではあるまい。我一人でも十分倒せるようじゃしな」
「そうだね。でも軍勢バトルなしであの数の魔粘体を倒すのは苦労したと思うけど?」
「問題ないのぅ。我の復活した新スキル【氷獣王の咆哮】を使えばあの程度簡単に蹴散らせるわい」
そう、この言葉からわかる通り、ロアンのレベルが氷獣王として戦った時のレベルにもどった。ようするにレベル57ですね。
効果は相手に氷属性のダメージを与えつつ、バッドステータスのスタン・麻痺・恐怖の異常を付与するもの。それに氷属性には移動能力低下の追加効果が付く。魔粘体には麻痺は効きにくいけどスタン耐性は低いからロアンの言う通りの結果になる事は間違いないんだと思う。
星粘王を倒し、領地に帰還途中のこと。
「アイッ、アンタッ。なんで私のメッセージを受信拒否してんのよっ!」
ある人物から怒りのチャットが飛んできました。だって、また飛んでくるのが予想できてたもん。しょうがないじゃない……ねぇ?そう思うでしょ?
星粘王の件も含めて説明しつつ、ある人物をなだめた後、砂漠の領地に帰還した。
領主館にいたトリビアにさっき考えたことを相談すると、現在魔人王達はヘリオストスからこちらの砂漠に向けて動きだしたらしい。
この情報はアサシンギルドのイザベラさんからも受け取っているので事実だね。ただ進軍速度はかなり遅く(この領地まで二週間はかかるらしい)ので、樹齢王の居場所が分かるなら先に倒して来ても問題ないとのこと。
「そっか。それじゃお言葉に甘えて樹齢王を倒して超パワーアップして戻ってくることにするわ」
「承知いたしました。では砂漠の守りは私とパーシヴァルにお任せください」
こうして私は樹齢王の治める《迷いの草村》へ歩を進めた。……ごめん、私が歩いたんじゃなくてロアンが……でしたね。
途中ですが、ここで一旦更新を停止させていただきます。
約一か月後の更新再開後すぐに樹齢王戦1~3か4話、大学文化祭の閑話1~3話、その後魔人王戦1~?話へと続く予定です。
と言いつつ、間に掲示板回とか別のプレイヤー視点などが入る可能性もあります。もし希望される誰かの視点があればこの期間中に感想などで送ってくださると助かります。
(光の領域の料理人シオリ視点とか、コウガ視点とかロアン視点とか……)




