121話
そんな訳で突如発生した王種戦。私は家族全員を呼び出し、戦闘に備える。
地壊王カラドリス(以後:地壊王)は空高く舞い上がり、上空から攻撃のモーションに入っている。そして一瞬止まったかと思ったら一気に加速し、高速でこちらへ向かって突進攻撃を仕掛けてきた。
相手は王種だから見た目通りの突進じゃないはず。気を付けないとね……。
「クルス、今回のメインは貴方なんだからしっかり頼んだからね」
「クエエェ!」
クルスも同じく地壊王に向かって向かうが相手の方が上から来ている分押し負ける可能性は高い。こういう時はあのスキルを使えばいい。
「クルス、【岩纏】からの【岩流衝】。それでもし、相手に隙が出来るようなら【岩石魔法】でスタンを狙って」
岩纏を使うと速度が下がるけど防御力はかなり上がる。そしてその防御能力で堪えたなら行動後の隙を狙って少しでもダメージを稼いでもらうつもりだ。地壊王はさっき自分で言ってたように壊すのが好きそうだからクルスを避けてこちらに来るとは考えにくい。
「クエェッ!」
クルスが指示通りの行動をして地壊王に向かうのを確認せずに次の指示を出す。もちろんこれでクルスが抜かれてしまった場合の事を考えて守備を固めるためだ。
「ルドラ、貴方の体の硬さに期待してるわよ?皆を守って!」
「ギュルルッ」
こちらが準備をしている間、空の上ではクルスと地壊王が激突していた。やはり高高度から落下速度が乗った分地壊王の方が有利みたいだね。クルスも堪えているけど、このままだと抜かれるのは時間の問題かな?
「イリス、タクトマジックで雲を呼んでからクルスに補助魔法をかけて!」
「ピヒュッ!」
イリスがタクトマジックを使うと見る見るうちに上空に雲が広がっていく。うん、最初のころはこの雲を呼ぶのに十分位かかってたのに今は一瞬で呼べちゃうね。成長してるって実感できるわ。
ちなみに雲を呼んだのは攻撃に利用するとかそういう理由じゃない。単に私が上空の様子をうかがうために上を見る必要があり、そのままだと砂漠特有の太陽光がまぶしすぎて状況判断が出来ないからです。
太陽がまぶしいとか言う設定まで再現しなくていいのにね?
その後すぐにイリスは光の補助魔法【幸運光】を使用し、クルスの全能力値を5%引き上げた。この魔法はステータス上昇を促す魔法で、使う度に1~10%の乱数で強化される。
ちなみに【不運光】って言うのもあり、言うまでもなくこれは敵にかける魔法です。
能力が上がったことでクルスは地壊王の攻撃に押される距離が少しだけとはいえ短くなった。
押されている状況には変わりないけど、堪えれば堪えるほど地壊王にのっていた速度も減衰していく。そしてとうとうその速度がゼロになる。
「ホウ、ヤルデハナイカ。王種デモ無イノニ俺様ノ突進ヲ初見デ堪エキッタノハ、オマエデ二人目ダ」
地壊王はクルスから距離を取りつつ、攻撃に耐えたクルスをほめた。クルスも地壊王からの攻撃を耐えた後は涼しい顔をして相手を睨みつけている。多分あの表情はやり返そうとしてるね。
「クルス、地壊王の攻撃パターンを引き出す努力をお願い。その為にあなたに【エクスチェンジ】を使い、能力を倍にしておくわ」
いうなり私はエクスチェンジを使用し、CHAを100ポイント分クルスに分け与えた。クルスの様子を見る限り二倍にしておけば負けるということは無いはずだと判断したから。
そのクルスのステータスはこんな感じだ。
名前 クルス
種族 メティオール・バーディ♂ 鳥種ランク5 ※エクストラ体
LV 31(122587/1085200)
スキル 【岩石魔法3】【砲翼奥義3】【奇声11】【岩纏】【雷撃衝】【一撃必倒】【爆撃砲12】【風翼波】【岩流衝】【隕石魔法】
パッシブ 【超飛翔】【狩人の根性】【振動感知】【危険感知】【スキル封印中】【小宇宙力コスモパワー3】
強さ
物理能力 1265 → 2530
魔法能力 1013 → 2026
「クルルルェェッ!」
クルスが咆哮を上げる。どうやら力の上昇を受け入れる時にテンションまで一緒に上がってしまったらしい。ある程度勝手にしていいという指示を出しているからクルスはすぐに地壊王の元へ飛び立った。
突然だけど私のエクスチェンジスキルはチートだ。
ステータス100ポイントを与えると能力値が二倍に、200ポイントで三倍+α(これはスキルが変化したりする)、300ポイントで五倍+α、そして400ポイントで五倍+β(α以上にスキルが強化されてた)になるんだからね。代わりに300ポイントより先にはデメリットも発生する。
それは戦闘後に時間経過で治るけど回復アイテムなどでは治らないバッドステータスが付与される。
あくまでも戦闘後だから二連戦とかじゃない限り、対処は出来るんだけどね。
いろいろ試した結果、エクスチェンジの効果は単体を対象にするのなら、今言った通りに強化できるけど、氷獣王戦で使った時のように【魔唱歌】を併用し、仲間全員に影響を与える場合は200ポイント分までしかできなかった。
300や400ポイントで魔唱歌を試したけど、歌う時間とかはいつも通り発生したのに効果が表れなかったからね。たぶんこれは魔唱歌に問題があるんだと思う。おかげで最近私はスキルレベルを上げるために魔唱歌スキルを使い続ける日々だ。たとえティアが耳を塞いでいたとしても気にしない。延々と採掘しているよりはマシだから…ね。
今回の地壊王戦でエクスチェンジで強化するのはクルスだけ。
他の皆には残念だけどエクスチェンジは使わない。他の皆の役割は徹底して私を守ること。現在も飛んできている地壊王の《風切り羽手裏剣》みたいなものから守ってもらわないといけないの。
皆が高ランクモンスターになっているから、地壊王の流れ弾的な攻撃でも殺されることはない。……ティアを除いてね?あっ、彼女は私達と戦闘のラインが重ならないように逃げ回ってます。具体的に言うとフィールドのサボテンの陰とかに隠れてる。
クルスで決めるつもりならさっきの二倍に強化した時に400ポイント消費してたらすぐに勝負決めれたんじゃないか?と思われてると思う。
私もそう思うんだけど、クルスが持ってる【狩人の根性】のような、一撃必殺に耐えるスキルを持っていた場合、反撃を食らってしまう可能性があるので、出来るだけ地壊王の体力を減らし、万全を期してから最大のエクスチェンジで決めたい。もちろん今の二倍のステータスでも倒せるならそれに越したことは無いけど、そう甘くないのが王種だからね。
このまま地壊王が新しい戦術を出さずに終わるならそれはそれでいい。これで新しい戦いを見せてくるのなら今回の判断は間違ってなかったと言えるからね。
そして空ではクルスが【爆撃砲】でけん制しつつ、【砲翼奥義】の《ブラウジングウィング》を使い、羽毛に空気を送り込むことで、体全体を大きく膨らませた。
そして次の瞬間、クルスの羽毛がミサイルのように発射され、地壊王目掛けて次々と突き刺さった。これには地壊王も目に見えてダメージを負ったらしく、すぐ持ち直したとはいえ一瞬だけフラついていた。
「クエエッ!」
「ハハハ。貴様は良イゾ!俺様ガ空デノ戦で苦戦シタノハ久方ブリダ。ソノ強サニ敬意ヲ表シテ俺様ノ本当ノ力ヲ見セテヤロウ」
地壊王はそういうと大きく息を吸いこみ、開いたかと思ったら何かが飛び出し、クルスに向かっていった。




