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119話

120話辺りで更新が止まると言ったがあれは嘘だっ!

もうちょっと切りのいいとこまで行ってから止まることにします。

 「あ、アイリ様……お待ちしておりましたっ!」


 高原の集落に戻って来た私を待っていたのは呼び出した本人であるイザベラとその直属の部下だというアサシンが二名。たぶんイザベラの護衛なんだろうなぁ。


 「実は魔人王がアイリ様を名指しで探しているのです。アイリ様が新たな魔王であることを知り、自分の陣営に取り込もうとしているのです。魔人王はヴェルガムの吸血王と並び、長らく闇の領域の王種を務めている相手。

 現在のアイリ様では勝つのは難しいかもしれません。もちろん私の敬愛するアイリ様ですから負けるとも思っておりませんが……。ですが現在魔人王は活動期に入っていまして、通常よりも強化されています。今の時期を避ければ安心して挑めると思いますので、念のためヘリオストス地方からお離れになった方がよろしいかと!」


 マジですかー。魔人王が私の存在を知っただってぇ?しかも活動期?そんな情報あったっけ?

 まあ確かに聞くだけでもヤバそうだよね。もし見つかって戦闘になると魔人族と人族って領域が違う以外、ほとんど一括りだから負けてしまった場合、私の魔王を奪われてしまう可能性が高い。

 もちろん光の領域の人王も同じ条件なんだけど。んっ?でもこれで魔人王か人王を倒して王種の適性を私が奪ったらどうなるんだろう?気になるね。


 こっちに氷獣王のロアンが居るからと言って確実性に欠ける闘いはしたくない。というか、負けるの嫌だし?……前のレアモンの時は慢心しちゃったからやられたけど、今回は慢心なんてしない。すっごく落ち着いてる。

 だから今の最適解を導き出すために考える。


 ……そういえば名指しで私を探してるって言ってたっけ。まずどこで私の名前を知ったのかな?

 魔人王は王種でありながらも住民型。掲示板の利用も可能……うん、なんかその辺りがとっかかりになってそうだね。その後は私の王種討伐を聞いて興味を持ったって所かな?


 「イザベラ、魔人王は私の姿の情報を手に入れてると思う?」


 「いいえ、魔人王の陣営側がアサシンギルドに依頼をしに来た時に確認をしましたが、アイリ様の容姿についてはまだ知られていないようですが……それも時間の問題かと思われます」


 「そうなのね……うーん、逃げるにしてもここからどこに逃げればいいのか……」


 「アイリ様、転移石の購入はまだされていなかったのですか?」


 「うん、あの店主から買うために条件を出されたんだけどそれが達成できてないのよね」


 「あのクソジジイ……アサシンギルドからの紹介状だけでは飽き足らず、アイリ様にそのような対応をするとは……後できっちりとシメ(殺して)おきますね」


 こ、殺しちゃだめだよ?


 「それでは私個人の持ち物で申し訳ありませんが転移石を差し上げます。一つしかありませんので逃げる道中で魔人王達に見つかってしまった時などの緊急事態の際にお使いください」


 「ありがとう、イザベラ。ありがたく貰うわね。このお礼はまた次に会った時に」


 「はい、またお会いできる時を楽しみにしています。お気をつけて……」


 私はイザベラに見送られ高原の集落から出る。ただ問題はこの後に行く予定だったヘリオストスに居るという私を待っているという謎の人物なんだけど。しょうがないよね。パーシヴァルさんにメッセージを送って謝ってもらっておきましょう。


 「それじゃ、クルス。とりあえず一旦トリビアの居る砂漠の領地に戻るからついてきてね」


 「クエェ!」


 私は黒馬を呼び出し騎乗、高原を突っ切り、一路砂漠へ向かった。



 ★☆★☆★☆★☆★☆


 アイリが高原の集落に戻ってくる少し前……


 「アイリ様……このような形でアイツと会わせる形になったことをお許しください……」


 ユールにいるパーシヴァルは最近よく連絡をよこしてくるヘリオストスの有力者、もとい本来の主からのしつこい要望に負け、アイリに会ってくれるようにメッセージを送った。だがそれは彼自身が望んでいる事ではない。


 パーシヴァルはアイリを独占したい。あの微笑みを自分だけに向けてほしい……。


 いくら自分の主からの要望だからと言って自分の惚れた相手を渡すような真似をしたくなかった。

 と言うのも本来の主は若々しい見た目からは想像もつかないほどに強く、闇の勢力でもかなりの力を持つものとして知られている。かつてはパーシヴァルと同じ程度の力しかなかったがある時を境に急激な力をつけ、あっという間にパーシヴァルは置いていかれてしまったのだ。その後紆余曲折があり、彼の下に付いたパーシヴァル。そしてユール周辺の管理と調査という名目で貴族の地位を賜り今に至っている。


 「はぁ……憂鬱だ。アイツがあの美しいアイリ様に会って行動を起こさないとは到底思えない。もしアイリ様を毒牙にかけようものなら俺はアイツを許すことは出来ない……そのためにも力は必要だ」


 アイリの前では僕と言うパーシヴァルの口調が本来の口調である俺に戻っている。この時期の彼は魔人族特有の活動期に入っており気力、肉体共に全盛期に近しいところまで戻っている。だがその全盛期も心臓の病により力を出し切れない時期があったが、今はその心配もない。むしろ完治してからパーシヴァルの力は増す一方なのである。

 と言うのもパーシヴァルが暇を見つけては闇の森深遠部に赴き、周辺モンスターを倒しレベルを上げているから。そしてその倒した相手の中には赤目の骸骨の姿もあった。

 すでに何度かアイリに倒された個体であり大半の力を失っているとはいえ、王種モンスターでもある死霊王を倒すのは最初こそ骨が折れたが、今のパーシヴァルであればそこまで苦労することは無い。


 なぜなら彼の種族は魔人族で数少ない一次覚醒を迎えた存在だからだ。覚醒には一次から三次までの段階がありその段階を踏むことで種族の力を開放することが出来る。

 彼がその一次覚醒で手に入れたのは封印系スキル。自分より能力が劣る相手のスキルを高確率で封印するという一時覚醒で得るには壊れ性能過ぎるものだ。

 死霊王に挑む前からしっかり下地を積んでいたパーシヴァルは知らぬうちに死霊王を凌駕する肉体を得ていたため封印をすることができ、死霊王を圧倒できたのだ。今となっては片手間で倒すことも可能であり、それを見ていた複数のプレイヤーから「めっちゃ強い住民がいる」などと噂されている。


 何度目かになる死霊王の討伐を完了し、館に戻って来たパーシヴァルにアイリからのメッセージが届く。

 時間的にアイツに会った頃かと思い、開いたメッセージのその内容にパーシヴァルは驚愕した。


 「パーシヴァルさんへ。ごめんなさい。

 あなたが言っていたヘリオストスの偉い人にどうしても会えない事情が出来ました。その事情と言うのは私の魔王の力を狙って魔人王という人が自分の配下にしようとしているらしいからです。この情報はイザベラさんが直接魔人王の陣営から受けた内容なので間違いはないはずです。

 そういう訳で私はヘリオストスの街に戻るわけにはいかなくなったので、先方にはパーシヴァルさんから謝っておいてくれると助かります」


 メッセージを見たパーシヴァルの顔には怒りの表情が浮かんでいた。


 「あのヤロウ、絶対許さねぇぞ。言うに事欠いてアイリ様を従えるだと?そんなことは俺が絶対にさせねぇ!ぶっ殺す!」


 次の瞬間にはパーシヴァルは主との契約を一方的に切り、宣戦布告を出した。

 アイリの言っていた魔人王こそがパーシヴァルの主であり、アイツと呼んでいた存在だ。


 自分一人では魔人王にはまだまだ勝てないが、アイリが家族と呼ぶ強力なモンスター達と、アイリの力の一端である軍勢スキルがあれば勝てる可能性が大幅に上がる。

 そしてもし自分があの魔人王に止めを刺すことが出来れば次に魔人王の位を得るのはパーシヴァルだ。

 その肩書を持ってすでに仕えるべき第二の王と決めているアイリとともに行こうと画策をしている。


 パーシヴァルは手始めに館の部下たちに命じ、戦力をそろえることを始めた。これでも元貴族で王種を倒せる存在だ。周辺の適当な領地の民に声を掛ければ兵は集まる。

 そして兵を集める途中立ち寄った砂漠の集落でアイリと再会し、高鳴る鼓動を抑えつつ魔人王を倒す手助けをしたいと申し出たのだった。

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