116話
クルスのレベルアップにマンツーマンで取り組んだ結果、何とか先に進化したイリス達二人と同じく30レベルの大台に乗せた所で一旦ストップ。クルスの攻撃力が10台後半で1000を超え、現在1200オーバーでロアンを抜き去って物理能力が家族でトップとなった。
先に進化したコウガ達もレベル上げが遅れている(必要経験値の都合上、仕方がないんだけど)ため、歯がゆい気持ちでクルスを見ている事だろう。コウガからしたら1ランク下のクルスに力負けしてることが悔しくてたまらないはず。出来るだけ早く育成するからもう少し我慢しててね。
ここまでの所要時間は二週間くらい。細かくは言わないけど、ご年配の教授が運転してた車がコンビニに突っ込んだってことみたい。本人曰くアクセルとブレーキを踏み間違えたらしいよ?皆も気をつけようね。
そんな感じで大学関連でごちゃごちゃあったからゲームをする時間が取れなかったのよ……。
……ってこれは私のゲーム時間が取れなかった理由になってないかな?事故を起こした教授関係の講義関連でいろいろやる事があったって事で納得しておいてくださればいいかと。
あと進化が遅れ気味なのはルドラだけだね。
このままルドラもレベルを上げちゃいたいところなんだけど、初心者ダンジョンだけでずっとやってるからそろそろ狩場を変えようと思うんだ。
一応一番奥に行ってボスっぽいやつも倒したんだけど、その奥にある扉は開かなかったし、お宝もなかったからね。たぶん反対側の扉を開ける条件もどこかにあるんだろうけど、今現在ではどうしようもないと思うし。
それに閉じこもっている間に私に関する掲示板の話題も落ち着いてきた感じだから、もう初心者ダンジョンにこだわる理由もないんだよね。
問題のルドラは現在49レベルでホワイトドラゴンとか騎士ドラゴンというランク4の進化が表示されてる。ただ、他の子はレベル50や60まで上げてランク5や6に進化してるのにルドラだけランク4進化じゃ仲間外れみたいだから4への進化は無しっ!
ティアも現在ランク4だけど進化前がランク1だったから、3ランク上がってるよね。
ルドラはランク1ブルーリザードから今のランク3のベビードラゴンに進化してきた。なら次の進化は2ランク以上上昇した5か6にしてあげるべきだと思うのです。
おそらくレベル50でランク5、レベル60でランク6が解放されるはず。あとは特殊進化とかがあれば、そこまで上げなくてもいい気がするけど……。
例えばここで竜王(光側の王種)とか龍王(闇側の王種)のどちらかを倒したら間違いなく、特殊派生とかしそうだけど勝てるかどうかわからないしね。そもそもどちらの居場所もわからないから考えること自体が無駄なんだけどさ。
「龍王に挑むなら戦闘に参加するものはランク7には成っておきたいところじゃな」
……ロアンもこういってることだし保留で。
ていうか、ロアンが龍王の居城を知ってるのはなんで!?と聞いたら転生前に何度か交流があったらしい(もちろん血が飛び散る方の交流)。今の数倍強かったという最盛期のロアンというか氷獣王で決着がついてないんだったらよっぽどだよね。うん、今の私達じゃ厳しい。
てかそういう竜とか龍系の王種って強いと言うのが定番だから最後の方まで残すつもりだったし?
話を戻して、とりあえず初心者ダンジョンで採れる素材もレアものを含めて十分集まったし、ティアの経験値もいい感じに戻ってきている(はず)。ティアが戻った時にはまず錬成から入ってもらう予定だから、素材は確保しておかないと。
「今で大体半分くらいは戻ったと思いますよ~?」
……まだまだ先は長いみたいです。というか、ティアに聞けばどの位戻ったか判断できるなら初めから聞いておけばよかったよ。そういう事はちゃんと自己申請しておいてくれないと私だって家族の細かいデータまで目を通してないんだからね!(だってプライベートらしきものもあるだろうしさ)もうティアに限っては事細かに目を通しておいた方がいいね。はい決定!
その結果、ティアの行動ログを大まかな括りで見ることが出来た。メリュジーヌでどういう情報収集をしたかとか、魔獣の卵をくれた研究者とどういう経緯で知り合ったとか……まあその辺だね。
その中に大図書館に侵入して禁書を閲覧したというログもあった。これは気になるので聞いておいた方が良いかもしれないね。もしかしたら役に立つ内容だったのかもしれないし。
「あっ、マスター。禁書の報告聞きたいのですか?うーん……」
「やっぱり大変なことが書いてたの?」
「いいえ、禁書と言うのは名ばかりで男女の営みを書いた春画と言うやつでしたよ」
「えっ……もしかしてそういう意味で禁書になってただけ……なの?」
「その通りです。中身も薄い内容で実際に試したのか疑問が残りました。きっとあれを書いた人は、け……「あっ、それ以上は言わなくていいわ」……そうですか?」
やっぱり聞くんじゃなかった。せめて古代魔王種とかトリビアがいってた魔素を吸収する謎の王種あたりの情報が書いてたらいいなぁとか思ったのにさ……。メリュジーヌに入れるようになった時にそれを目にしないように禁書を見る時は先にティアを行かせよう。ティアに情報整理をさせて結果を報告してもらい、気になった内容とか必要だと思う本を私が読む。うん、これがいいね。
他にも気になる箇所はあったけど、なんか禁書の話と同じようなことになりそうだからこれ以上は辞めとこうと思う。ティアに関しては禁断の箱の度合いが高すぎて幸運に当たる部分を引き当てられる気がしないよ。《触れるな危険!》って書いてティアに張り付けておいた方がいいかもしれない。
おっと、それよりも今は、ルドラのレベル上げに最適な場所さがしだったよね。
うーん、そうだ。たしかメリュジーヌの門番から聞いた周辺ダンジョンとかなら敵が強そうだし、経験値もたくさんもらえるかも。場所が場所だけに誰も来ないだろうから、いい稼ぎ場になるはず。
町に入る条件があれだけ厳しいんだから周辺ダンジョンもそれに応じて強いはず!
考えを纏めている間に暗闇の山を越え、やってきましたメリュジーヌ……から馬で数時間ほど離れた場所に複数あるうちの一つの地下ダンジョン。その名も《死せし者の共同墓地》。
名前から出現する敵の種類が手に取るようにわかるよね。それじゃ、さっそく入ってみよう!
《死せし者の共同墓地》
過去には、当時存在していた王族から下々の民まで分け隔てなく埋葬されていた共同墓地。だがある時からこの共同墓地内で死者が徘徊しはじめ、周辺住民に危害を加えた為、住民は墓参りに行けないと嘆き悲しんでいる。さらにその嘆きに惹かれた妖魔までもが共同墓地に入り浸るようになり、余計に人が入り込むことが出来なくなりやがて放置されてしまった。
一層目。メインで出現するのは剣と盾を持った死霊種モンスターであるボーンデッド・スケルトン。申し訳程度に現れる妖魔種のガーゴイル。
今連れ歩いているのはレベル上げの主要キャラであるルドラとデメリット中のティアは強制みたいなものだから、あとはコウガとセツナ、そして死霊系にダメージを与えやすい光魔法を使えるイリス。
ついさっきまではフルメンバーで挑んでたんだけど、強いことは強い。だけど恐ろしく強いと言う訳でもなかったので戦力をいつも通り分散させてみた。
ちなみにボーンデッド・スケルトンの単体の経験値は8500と多め。だけど一対一で戦うには時間がかかるし、墓地だけにこのモンスターが湧きやすいので厳しくなりかねない。
ガーゴイルは子供サイズの空飛ぶ小悪魔みたいな感じ。闇とかの魔法攻撃を得意としてるけど、私が全部無効化してるから問題なし!むしろ私に攻撃した報復としてコウガに狩られちゃってる……。
まだ配下に勧誘してなかったんだけどなぁ……まあいいか。で、その経験値は7000と若干少ない感じ。
その代りにドロップアイテムで鑑定が必要な《コケティッシュな指輪》や《型崩れした指輪》と言うアイテムがほぼ毎回落ちてるね。ここまで落ちやすいのなら大したものじゃないだろうけど、一応貰っておくことにしましょうか。
なお、ボーンデッド・スケルトンからも未鑑定ドロップがありました。見た目のシルエットは剣だと思う。これに関しても三十体倒せば一本は手に入るくらいの割合かな。
二層目はガーゴイルがメインで、フィールドに数体程度出てくるバンシーと言う魔法型で物理耐性が高い死霊系モンスターが出る階層だったので私が魔法を無効化しつつ、コウガ達に倒してもらった。
やっぱり指輪系のアイテムが沢山落ちてた。手に入れた時の名前が違うから、それぞれの指輪も別物だと思うんだけどそんなにたくさんの指輪をどこから調達したんだろうね?
三層目はデクスター・グールというグールの強化系(もちろん死霊種)が現れた。でも私って普通のグールと戦ったことないんだよね……どこにいるんだろう。そんなことを考えてるうちにコウガの火纏やイリスの光魔法で浄化されてた。経験値は一体に付き12000と大きい。でも倒すまでにかかる時間とか費用(魔力的な)を考えると微妙な気がする。ドロップはまだ確認できてない。
四層目、死霊王と似たようなローブ姿の骸骨モンスター、リッチがたくさん出てきた。もちろん死霊王より弱い。
やっぱり魔法で攻撃してきたので私が無効化してそのうちに他の誰かが倒す。なんか新しい敵が出ても作業化してる気がする。
経験値はなんと23000……名前と同じくリッチでした。戦利品はレアドロっぽい未鑑定被り物と通常ドロップの骨くらいだね。
……それにしてもどうしよう。出てくるモンスターのほとんどが沢山の経験値を持っていておいしいのは確かなのに、ここまでのマップには集中してルドラの経験値が稼げそうなモンスターが居ない。おこぼれにあずかっているけどその上昇値は多いとは言えない。一応最後まで見てから考えるつもりだけど三層のデクスター・グールに戻るのが無難なのかもしれない……。
五層目、モンスターが出る最下層らしい。と言う事は六層目はボスと宝箱が置いてあるんだね。
五層目を探索……出現モンスターは妖魔種の鬼神将という鎧姿のモンスター。属性を帯びた刀を二本持っており、出現する個体によりその属性が違う。火・水だったり火・土だったりね。もちろん上位の大地とか岩とか氷とかを付与してる武器も使ってくるよ。
とりあえず挨拶代わりに十体ほど配下に勧誘しておきました。あとでじっくり配合しつつ情報を集めようと思う。
鬼神将の攻撃は物理一辺倒。属性を帯びてる武器なので、その見極めは必要になるけど氷の属性刀じゃなかったらルドラなら耐えれるし倒せる相手。
氷の属性刀持ちに関してはセツナに行動力などを低下させてから始末させた。その鬼神将の経験値は21000でリッチよりは少し少ないくらい。でも数が多いからルドラの経験値稼ぎにはここがよさそう。
あとドロップも未鑑定武器(きっと刀系じゃないかなぁ)だね。ここってやっぱり墓地だからそういう一緒に埋葬された武器を使っているという設定なのかな?
なお、ティアに関してはおとなしく逃げ回っています。
経験値効率がいいからか二時間ほど続けただけでルドラのレベルが49から53まで上昇した。これならあと二~三日程ここに潜ればレベルが60を超えると思う。
三日後、ルドラのレベルが60に到達したというお知らせが届いた。それと同時にアサシンギルドのイザベラさん、ユールにいるパーシヴァルさんからもメッセージが届いていた。




