113話
次話は水曜日くらいです
あの後の家族会議は大変だった。やれ誰の子だ!だの、生まれるのが早すぎだの……。
まあそれもこれも次の一言で解決した。
「あの~、マスター?誰の子だとか言う前にモンスターである私と住民たちの間でいくら頑張っても子供とか出来るはずありませんよ~?この魔獣の卵は私の生産スキルで産んだんです!」
ティアはこっそりと自分と住民の関係をさらけ出しつつスキルを習得したという。まあそのスキルを覚えるためには色々あったことを赤裸々に告白してくれたけどそれはまあ割愛します。説明してたら私の頭がおかしくなりますし?
とにかくそれを繰り返し、レベルアップとともにスキルが生えたらしい。まあ回数とかまでは流石に聞いてないけど、きっとシステムがスキルを与える判断を下したんだから相当な回数だったんだと思う。
そのティアに生えたスキルと言うのが魔物専用スキルである【生産:魔獣の卵】というそのまんまのスキル。
だけどその効果はメリットもあればデメリットもある。メリットは単純に私の戦力が増やせるようになる事。だけど卵から孵したティアの子(?)だけでパーティ作るのもどうかと思うんだよね。
そう、私としては勧誘をしていろんな子に仲間になってほしいんだ、と。そう言ったらティアの返事はこうだった。
「えっ?卵は卵ですから孵化するまで私にもどんな子が生まれるかもわかりませんよ?それに卵から孵す気がないのでしたら孵化器に入れなければいいだけの話ですし……」
あっ、そうだよね……。ならいいのかな?ティアに似た子ばかりが生まれても……ね。おもに私の精神面の問題で。まあ今回のは2つとも孵化させる気でいるけどさ……。
ここで【生産:魔獣の卵】のデメリットをお知らせします。まず卵を産むにはスキル使用者のレベルを消費します。作るときに消費すればするほど(最低でレベル20~、最高で99)孵化までの時間が短縮されたり、強力な子が生まれる可能性が高くなる。もちろん高くなる最大倍率といっても通常のせいぜい3倍くらいまで。
ちなみにこのスキルを使用する際は使用者のレベルもそうだけど使用者のランクなども影響する。使用者のランクが高く消費するレベルの数字が大きければその分確率が上昇するというシステム。
ここまでは普通にスキル説明扱いでいいんだけど、問題は次。
このスキルを使った後しばらくのあいだ消費した分のレベルの経験値を稼ぐまで使用者のレベルを上げることが出来なくなる。それプラス自分の所持する一部のスキル(使用可能・補助スキル・パッシブスキル。使用不可能戦闘スキル(物理・魔法系)・生産系統スキル)を一定期間使用不可能となる。
そう、このスキルを使うとただでさえ無力なティアがさらに無力になる。テイムスキルの中の収納に入れておけばいいんじゃと思うでしょ?それも無理なんだよね~。
なぜなら【生産:魔獣の卵】で無力化している間は主人とともに行動しないといけないという制限が付くのです。主人がログインするとともに強制召喚され共に行動。主人がログアウトすれば収納の中に戻れる。
だから考え付きそうな卵を大量に作ってバザーに流して金儲けとかいうことも出来ないし、どこへ行くにも足手まとい(酷い)を連れて移動する必要がでてくる。
「それでこの卵はいくつレベルを消費したの?」
「お試しですからもちろん最低値の20レベル分です!」
言われてからティアのレベルを見ると現在57……20レベル消費してなおこのレベルですか、そうですか……。
最低でもレベル77まで戻すために最低4~500万の経験値を稼ぐまではティアがつきっきりと言う事かぁ。
それだけ稼がないといけないなら進化させたかったんだけど、それもスキルのペナルティの影響でロックされちゃってるからできないし。
あっ、もちろん勝手に生んだことに関してはしっかりと叱って注意しておきました。ティアも二度と勝手に生みませんと反省したみたいだしこれはもういい。
案外一緒に行動してれば戦闘スキルを覚えるかもしれないし、それにかけてみるかな。
戦闘力が低いと言っても魔法能力だけはそこらのランク2~3程度はあるから、魔法を一つでも覚えてくれれば何とかなるかもしれない。
「それじゃこれから行動するメンバーを決めようかな。まずはティアは確定だから……ルドラにティアの守りをお願いするとして……残りはそうね。育成も兼ねてイリスとカエデもいらっしゃい。あと、いざという時の為にロアン。以上。コウガ達には悪いけど皆は収納でお留守番ね」
「うぅ、わかりましたぁ」「ギルルッ!」「ピヒュッ~」「ズザザザッ(注:声ではなく移動音です」「主がいうのなら同行しよう」「ワフゥ……」「グルゥ……」「クワァァ……」
「それじゃあ明日から初心者ダンジョンにいくからねっ」
翌日、私は大学が始まり面倒だと思いつつも授業を受ける。数カ月ぶりに会ったおしゃべりのできる友人が隣に彼氏を連れているのに驚きつつ、その日を終えた。もちろん帰宅したらすぐにログインです。
大学が始まるにあたりバイトの日数をギリギリまで減らしたから時間がある!私がバイトに行くと一時間以内に来店する男性客が増えてる(若干)らしく、バイト先の店長としては出てほしいらしいけど断わった。私はゲームが優先なんですっ!
初心者ダンジョンの1~50のフィールドにやってきた私たちはまず、中級プレイヤー向けエリアでレベル上げを行った。中級向けだけど、冒険に慣れてる既存プレイヤーはこんな場所にはほとんど潜ってこない(ドロップも含めて特筆するものがないから旨味が少ない為)し、初心者もここまで来れるほど育っていないので遭遇するプレイヤーの数は限られていたので思う存分レベル上げに専念できた。
「マスター……戦闘ってなかなか経験値が稼げないものなんですね~」
「……あなたが普通じゃなさすぎるだけなんだけど普通はこんなものだよ?」
「そうなんですかぁ……早く情報収集を出来るようにするためにも私頑張りますっ!」
「……なら、ティアはその辺から敵を連れて来てね。【魅惑】と【一目散】を使えばできるでしょう?」
実はティアのパッシブスキル【魅惑】は住民男性だけでなく、モンスターにも効果があることが判明したのです。ティアを連れているとやけに狙われてるなぁって思ってたらそういう事だったというだけなんだけど。【一目散】も敵から逃げる時に役立つ補助スキルでペナルティの対象外だから使える。
おかげで私が狙われにくくなってやりやすいったらないわ~。でも魔蟲系だけは私の虫嫌いの称号のせいで寄ってくるんだけどさ。それくらいなら何とかなる!
「うぅ、出来ますけどぉ~マスターの鬼ぃ~」
「早く自由行動がしたいのなら死ぬ気で連れて来るのね」
「ふぁ~い……」
とこんな感じでティアも戦闘に貢献してくれてる。もちろんティアが連れてきたモンスターは次にカエデの仕掛けたモンスターを集める実の効果で固定され、私が覇気で魅了し、無防備になった所をロアンやイリスが魔法や物理攻撃で殲滅するという形にしている。
モンスターの群れを一塊倒せば数万ほどの経験値が入るので意外と効率がいいんだよね。もちろんこの経験値を人数で配分するので実際に個人が取得する経験値はもう少しだけ少ないけど。
まあ場所が中級者向けだから仕方ないよね。
それを繰り返すこと一週間。ようやくイリス達進化組の二人が15まで育ち、上級モンスターからの攻撃されても一撃で殺されることは無いだろうと確信したところで狩場を奥へ進めた。……学校のせいでまとまった時間が取れないからこのくらいかかっても仕方ないよね?
上級エリアは中級エリア以上にガラーンとしていて、モンスターだけがバカみたいに犇めいていた。
さすがにティアを突っ込ませると間違いなく死ぬ量なので、防御に優れるルドラに行ってもらった。群れの中に入ったルドラに上級エリアのモンスターが殺到し攻撃し続けているが、持ち前の防御力のおかげで耐えている。まあ氷獣王の時のロアンの攻撃にすら耐えきったんだからできると信じてた。
モンスターがルドラに集中している間に次はロアンが突っ込んで周囲の数を減らしていく。セツナより所持数の多い氷魔法を使いながら行動阻害や移動速度低下を利用し次々と屠っていった。さすが氷に特化した元魔獣王というだけはあるね。倒し方に無理も無駄もない。
ある程度の数を倒したところでカエデの木の実でモンスターを固定、その後の展開は中級と同じ。
一体辺りが強いので倒すのは時間がかかるものの、危なげなく倒していく一行。
魅了に抵抗出来るモンスターがいないので危なげないのは当たり前なんだけど、それは言わない約束。
中級エリアの狩りの成果は一時間当たりで十万程度だったけど、上級の前半だけでもその1.5倍は稼げた。
上級エリアの中盤では中級エリアの2倍、そして深部ではなんと3倍以上の経験値効率をたたき出した。
これならティアのペナルティ解除までそう時間はかからないかも。けど、獲得した経験値が今どのくらいたまったとかの確認ができないのがつらいとこなんだよ。
一応他の皆の経験値を計算してティアがどの位取り戻してるか調べてるんだけどね。それでもあと数週間はかかるとおもう。学校さえなければ数日で行けるのになぁ。何度も言うけどこればっかりは仕方がないよね。
上級エリア深部で安定して狩れる様になる頃には進化したイリスとカエデの二人はレベルが30台になって、進化前とは比べ物にならないほどの強者になっている。イリスの【連続魔法】がレベル1から4に上昇し、連続魔法で四発、その後の追加で一発の計五連続まで魔法を撃てるようになったし、カエデは新スキルの【ワン・ツー・フィニッシュ】を使い続け、攻撃上昇率200%を安定して出せるまでに使いこなしつつある。
けど【アン・ドゥ・トロワ】の方は持っている攻撃魔法の少なさからまだまだ使いこなしていると言えないけど、二人とも上級エリアのモンスターならソロで戦っても問題ない強さになった。
進化組がここまで育てばメンバーを入れ替えつつ均等に戦闘経験を積ませていける。
なんだかんだでランクは高いけどレベルが低いままのコウガやセツナもここで一気に10ほどレベルを上げたしね。時間はかかったけどさ。コウガもセツナもレベル20代にして物理or魔法能力が1000を超えたのはすごいと思う。特に柴犬のコウガの見た目に拠らない攻撃力の高さに脱帽です。
前回、進化を見送ったクルスもとうとうレベル60間近になり次に現れる進化先に期待を膨らませている。
今の時点でクルスの良い進化先はライジング・バーディというランク5のモンスター。
このモンスターは【熱風波動】という今まで聞いた事のないスキルを覚えられるし、攻撃にも優れているというので今の所、私もクルスもこの進化がいいんじゃないかって考えてる。
ならなぜ進化しないのかと言うと、コウガがレベル60で進化したなら自分もそのレベルで進化をしなければならないというクルスの対抗心から。
仲間になった時から二人は攻撃力関連で争ってたからね。
対抗するなら61まで上げればいいじゃんとなるが、それはそれでクルスの矜持が許さないと……意味が分からない。女である私には理解のできない男心ってやつなのでしょうか?
まあそういう理由から60まで育てることになったんだけどその時が間もなくやってくる。
深部で戦闘を済ませた時に待ち望んだそのログが流れたのだ。
《個体名:クルスのレベルが60に上がりました。新たな進化先が追加されました》
ふふっ、きたよっ!さあ、クルスの進化の始まりだよ!その前にどんな進化先か調べておかないとね。
あっ、クルス自身の希望により魔鳥種への進化は外してますよ~。
名前 クルス
種族 ストライクバーディ♂ 鳥種ランク4
LV 60(2784/10456200)
スキル 【土魔法10】【翼闘技14】【奇声8】【土纏】【雷撃衝】【一撃必倒】【スキル封印中】【風翼波】【岩流衝】
パッシブ 【超飛翔】【狩人の根性】【振動感知】【危険感知】【スキル封印中】
強さ
物理能力 945
魔法能力 781
称号:王位剥奪されし者、魔素掌握せし鳥
進化可能
鳥種レベル40 ランク5 ロックエンド・バーディ
鳥種レベル50 ランク5 ライジング・バーディ
鳥種レベル60 ランク5 メティオール・バーディ
ロックエンド・バーディ:地魔法の派生である大地魔法と岩石魔法のうち後者を操ることに長けた鳥。次の進化先は固定されている。【岩石魔法5】【レストタイム】習得可能。
【岩石魔法】:巨岩・巨石を生み出し操る魔法。空を飛ぶ敵にスタンを与えやすい。
【レストタイム】:自分の体を支えられる木の枝にとまることで体力を一瞬にして最大値まで回復する。魔力は回復しない。
ライジング・バーディ:日の光と共に行動をすると言われており、ある東の地方では神鳥といわれている。体が赤く染まり口から熱風や炎を吐き出したりもできる。成長すれば火と岩の複合魔法を覚える。
【熱風波動】【火炎放射】習得可能。
【熱風波動】:口から火と風を複合させた砲撃を放つ。着弾する前は単体を対象に、外れた場合は範囲攻撃になるそれなりに使い勝手のいいもの。威力は魔法能力が大きく影響する。
【火炎放射】:体内で作り出した熱を炎に変えて吐き出す。鱗種や竜種が使うブレスとにたようなもの。
メティオール・バーディ:ここではないどこかから降って来たと言われている宇宙的な力を持つ鳥種の亜種モンスターの幼体といわれている。一部地方で豊穣の神本体として伝説が残っているらしい。体の色は青白く、見れば見るほど畏怖を感じさせてくれる。
なお、幼体とはいえ体長は5メートルを超えるので取り扱いには注意。【隕石魔法】【小宇宙力1】習得可能。
【隕石魔法】:この世界ではない場所から隕石を引き寄せて敵に落とす魔法。基本は使用者のレベルと地属性関連や風属性関連に適正があればそれに応じて威力が上がる。隕石魔法は種類が少なく全部でメテオ・ストライクとメテオ・プロージョンの二種のみだが威力と範囲が恐ろしく広い。ただし連続発動は出来ないし、即時発動するようなものでもない。
【小宇宙力】:昼夜問わず世界の外からエネルギーを吸収するパッシブスキル。
昼は太陽光により物理能力が、夜は月光により魔法能力が上昇する。上昇率はスキルレベルに依存する。
さて……と、まずはクルスの新スキルからだね。【岩流衝】は【雷撃衝】のように属性をまとった攻撃。
雷撃衝ほどの威力は無いけど、命中率が高く連続発動に要するクールタイムが少ないのが特徴だね。
進化先に関しては……うん。ちょっと考える時間を置きたいね。そうしよう……。




