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104話

 ギンちゃんと別れ五層にやってきた私たちがそこで見たものとは大きな神殿っぽい遺跡……とさらに下層へつながる階段。

 遺跡に関してはどうやらダンジョンの中にさらなるダンジョンがあったっていう感じだろう。


 「ゼリンならどうする?というかどっちに行きたい?」


 「私なら先に目の前の遺跡から行くわ。こういう場所なら案外珍しい装備品が手に入るかもしれないしさ」


 言われてみればそうだよね。私もゲーマーの血が騒ぐというか……一人で探索してる時に宝箱を見つけても「やっぱあったかぁ」みたいな冷めた反応だけど、連れが居ると「みつけたぁっ!」って言う感じに少しばかりテンションが上がるもんね。


 「それじゃまずは遺跡から行くってことでいいかな?」


 「おっけぇ!私の槍で敵を蹴散らしてやるわよっ!」


 「おぉ、頼もしい」


 「わふっ!?」


 コウガが自分も忘れるなと言いたげにすり寄って来たのでちゃんとモフモフしておいた。何度も言うけど柴犬系モフモフは最高だ!

 ……そういえば血の誓いでコウガと意思のやり取りができるって表示されてたけど、結局できてないよね。今迄通りだったよ。たぶんその今まで通りの結果が血の誓いの効果と同じだったから影響がなかったんだね。ロアンが通訳できるから困ることは無いけどやっぱり話せた方がうれしかったんだけどね。まあやっぱり【念話】習得かコウガ本人(通訳:ロアン)から聞いた王種覚醒は必須みたい。


 神殿に連れて入るメンバーだけど……レベル上げ目的もあるのでコウガは必須、同じくまだレベルが10になったばかりのセツナも連れて行きたいね。とこうなったら獣つながり&通訳でロアンも連れていくべき?あっ、でもゼリンにロアンが話せることがバレたら困るかぁ。大きいモンスターってことで何とでもなるけど喋れるのは流石にマズい気がする。


 結局連れて行くメンバーは攻撃兼補助も出来るコウガとセツナ、補助特化のカエデ、そしてなぜか非常に乗り気のティアの四人とした。ここに私とゼリンさんの合計六人パーティだね。ルドラには悪いけどロアンやイリスと一緒に収納の中でお留守番です。



 - 堕惰なる天上宮殿 ー


 その昔、天界から追放された堕天種たちが寄り集まって建造した秘密の建物。男女共にその整った容姿から想像もつかないほど性欲旺盛な堕天種達が住んでいたというだけあり、そこでは異種族間の隠れた交流が盛んにおこなわれていた。

 だが今となってはそれらの名残の残るモンスターの生息地となっており、所々に昔使用されたであろう物が残っているだろう。



 「思ったよりしっかりした建物みたいね」


 「ですね……出てくるモンスターも妖魔種と物質といったところでしょうか……」


 私とゼリンは宮殿の探索を行う。出会うモンスターは上半身の二つのお山を隠す布切れだとか、三角形のヒラヒラした何かだとか、棒状の硬いような柔らかいような微妙なナニカだとか、中に何やら液体の詰まった(残っていた?)ゴムのような残骸だとか詳細説明に苦しむモンスターばかり。なお、その強さは光の領域で言う初期フィールドのポポとかと同じレベルで当然経験値もそれに応じた数値。

 要するにザコ中のザコ。頑張ればティアですら倒せるレベル。


 いや、レベル65のティアでやっと倒せるのだから強いのかな?なーんてね……。

 感想を言わせてもらうと私だけでなくゼリンさんですらほんのりと頬を染めるくらいに、最後の出来事以外は来ない方が良かったと思わせるダンジョンでした。


 はい、ですがちゃんと最深部まで行きましたよ?そこにあったのは綺麗な装飾がされた宝箱が一つだけ。宝の守護者みたいなボスとかは出ませんでした。いくつか見つけた道中の宝箱も回復系のアイテムだったり、普通に出るモンスターより強いモンスターが入ってたりで別の意味でもドキドキさせられた。

 ちなみにここの通常モンスターは誰一人として勧誘してないよ?下着を呼び出して戦うとかすごく滑稽じゃない?

 ほら、考えてみて?ある巨大モンスターに襲い掛かる下着やその他怪しい物品の群れ……逆に怖がられちゃうって!



 「さて、宝箱自体はすごそうだけど中身は何だとおもう?」


 「……こういう時って、あまり期待しない方がいいのよね……」


 「そうだね……でも、もしかしたらってことも在るかもしれないよ?」



 と言う訳で宝箱を開封……そこに入っていたのは……


 「あっ、あはは……こういう事だと思ってたけど……最後くらい予想を裏切ってほしかった」


 「そうね。こんなもの誰が使うというんでしょう。……でもアイリなら似合うわよ、きっと」


 「や、やめてよ?こんなの着れるはずがないじゃない!さすがに恥ずかしすぎるよ……」


 「そんなこと言って……アイリはすでに似たような(恥ずかしい)服を着てるじゃない」



 最深部の宝箱に入っていたのはボンテージ風の衣装。背中までスリットが入っており、ふくらみの頂点部分だけはしっかり隠れていて、下の方はハイレグ調の十八歳以下お断りな要素が満々の衣装。もちろん網タイツや蝶型メガネもセットでついている。……何が勿論なんだろうね?


 なお、ゼリンのいう似たような服って私のヒマティオンの事?これとは全然似てないよ。

 少なくとも私のヒマティオンはこんなエッチィ服じゃないって断言できるよ!このボンテージ風の衣装より露出面積は少ない(肩ぐらいだ)し、若い子なら十分着れるよね?

 とりあえず装備性能の確認をしておこうかな。



 堕天のボンテージ:その昔麗しき一族が使用していたと言われる伝統の衣装で着る者を選ぶ装備品。 一族の中でもこの衣装を身に付けることを許可されたものは少なく、認められ身に付ける事が出来ればその隠された力を開放する礎になるだろう。

 (スタイルのいい)女性プレイヤー装備時 VIT+30、CHA+30(両方に+10)

 特定種族装備時、永続称号【淫姫】習得。効果:その種族の持つあるスキルの効果が大幅上昇。対象スキルは複数ある。



 まあ確かに見た目さえ気にしなかったら良い性能を持つ装備だとは思うけど、私が着ることはないかな。そもそも装備条件限定しすぎ……。()の中の補正には多少惹かれたけど。

 スタイルで選ばれるなら私よりもすごいのを持っているゼリンが付けた方が似合いそうだよね……と言おうと口を開くと同時に、持っていたはずのボンテージ風衣装は誰かに奪われてしまっていた。


 なお、ゼリンが似合うと言っていた意味は私の装備している鞭を見ながらだったという事には気づかなかった。



 ボンテージを奪ったのはこのダンジョンに入る前からやけに乗り気だったティア。今考えてみれば、中のモンスターの強さがわかっていたのかもしれない。だから戦闘が嫌いとか言っているティアが出てきたんだろう。


 「それでどういうつもりなのかな。ティア?」


 「マスター!一生のお願いです!この服を私に譲って下さい!」


 「へっ……?」


 私はこの時きっとポカンとした顔を晒していたに違いない。

 ゼリンさんに見られてたらどうしようかと思ったけど、ゼリンもボンテージ衣装を奪取したティアのその速度に驚き、目を見開いているので大丈夫そう。……確かにこの衣装ならティアほどの蠱惑なイメージを抱かせる体には似合うだろうけど、それって道徳的にもプレイしている中学生以下の教育的にもどうなのかなぁ?


 「ティア、本気……で言ってるのよね?」


 「はいっ!」


 「アイリ、説明をお願いしたいんだけどこの子は何か言ってたの?」


 「そっか、ゼリンにはティアの声は聞こえてないんだったね」


 私はゼリンにティアの意思を教えるとゼリンも絶句し「本気なの?」という顔を浮かべてティアを見ている。しかし、すぐにその顔も元に戻り、こういった。


 「あ~私は構わないよ?もともとここに来た目的はアイリへの恩返しだからね」


 「そういって自分が持ちたくないからこの衣装を私に押し付ける気だね?」


 「あはっバレた?でもいいじゃん。ティアが装備するって言うなら無駄にならないしさ(私もあんな格好をしたくないし……)」


 確かにそうだった。基本ティアは収納の中に入っているんだしそういう服装をしていても別に困ることは無いね。でも情報集めの時にあの格好で町に出ていかれたら……うん、すごいことになりそう……。

 次の日に運営からのメールで「お宅の家族がハレンチ法で捕まっているので引き取りに来てください」とか言われたらどうしよう!?そもそもハレンチ法って何?とかは言わないようにっ!


 「……そうだね。わかった。ゼリンもこういってるし、この衣装はティアにあげるわ」


 さっき考えたことが現実ならともかく、コッチで起きるなんてことは無いだろうし、構わないかな。


 「マスター、ゼリンさん~、ありがとうございます~。私の祖先が使っていたという由緒正しいものを頂けて私は最高に嬉しいです!」


 えっ?その服って堕天種にとって由緒正しい服なの?そうは見えないよ。


 「それではさっそくこの服を身に付けさせてもらいますね!」


 いうなりティアはイソイソと、その場で服を脱ぎ始め……じゃなくてワンタッチで装備をチェンジする。

 そこに現れたのは、なんかすごいエロスを漂わせる黒い羽根を持つ堕天使だった。素材はいいと思ってたけど、服を変えただけでここまで変わるものなんだなぁと素直な感想しか出てこないわ。



 《個体名:ティアが条件を満たした為、特殊な進化先が追加されました》


 「えっ、うえぇぇ~~!?」


 こんなアナウンスが流れたら普通驚くよね?まさか装備を変えてあげただけで条件を満たしたわけじゃないよね?最近私ってこの子たちに驚かされてばっかりなんだけど……。あぁ、何事にも動じない鋼の精神が欲しくなってきた。



 「ど、どうしたのよ、アイリ?突然大声を上げて……」


 ゼリンも突然叫んだ私を心配そうに見ている。うん、恥ずかしい。これからは大声を出してしまうだろう時はTPOを弁えておかないとだめだよね。

 私はティアが進化できるようになったとゼリンに教えてあげた所、ティアの進化が見たいと言い出した。

 私としては人目に付かないところで、ゆっくりさせたいんだけどな……。


 「マスター、私は見られていても大丈夫ですよ?」


 いやいや、ティアさん……私の心配はそこじゃない……。人目に付くと私が困るのっ!

 とはいってもこの場にはゼリンだけだし、何か変なことがあっても口止めすれば大丈夫かな?



 「今から起きるのは特殊な進化みたいだから他言無用でお願いしますね」


 「わ、わかったわ……口は堅い方だから安心して」


 「……それじゃあティア進化先は次の通りよ」



 名前:ティア

 種族:フォーリエン♀ 堕天種ランク1

 LV 65(72155/198500)

 スキル:【念話】【一目散】【話術(極)】【チョメチョメ(謎)】【中級合成】【予測】【事後処理】【体力自動回復:中】【意識操作】

 パッシブ:【魅惑】

 強さ

 物理能力 7

 魔法能力 54


 【事後処理】:情報収集後にそれを提供した相手の好意(行為)以外の記憶を消す。これを行うことで相手に後腐れなく同じ相手から様々な情報を集めることが可能になる。ただし、相手からの忌避感・嫌悪感がたまりやすい。

 【体力自動回復:中】:情報収集に消耗した体力をそれなりに回復する。夜は回復力が上がる。

 【意識操作】:事後処理スキルと組み合わせて使用することで効果を発揮する。記憶を消した相手の意識に語り掛けることで自分への忌避感・嫌悪感を消失させる。

 【魅惑】:異性の住民に効果を及ぼすスキル。このスキルを使用された異性の住民はその魅惑の体から意識を外すことができなくなる。最終的に色々なものを搾り取られるらしいが詳細は不明。不明ったら不明。プレイヤー・同性の住民・女の心を持つ男性には効果がない。



 進化可能(通常)

 堕天種レベル20ランク2:アビルテン

 堕天種レベル30ランク3:キュウテン

 堕天種レベル40ランク3:メイデル

 堕天種レベル50ランク4:チェルノス

 堕天種レベル60ランク4:チェルノス


 進化可能(特殊)

 堕天種レベル40ランク4:エルローム

 堕天種レベル50ランク4:アマニーエル

 堕天種レベル60ランク4:ディオニース



 アビルテン:一般天使が堕天した種族。生まれたばかりのフォーリエンよりはわずかに力を高いが、あくまでもフィーリエンよりマシ程度。手先が器用でフォーリエンよりも夜に強くなる。【器用増加】


 キュウテン:大天使が堕天した種族。天使の位の中では下級に属するが戦闘力が高く、魔法を得意とする。大天使以上になると一週間位は夜の戦いも全然平気……。【光魔法3】


 メイデル:大天使が堕天し、魔素の影響を受けた種族。魔素の影響を受けているため多少性格が荒々しい。他の堕天種なら注意で済ますところを実力行使で排除することが多い。夜は一層荒々しい。【大暴走攻撃(スタンピードアタック】


 チェルノス:権天使が堕天した種族。自分のすることは基本的に正しいと思い込んでいる厄介な性格。

 基本は他人を唆して洗脳し、よほどのことが無い限り自分は手を下さず自分の非は認めない。夜は非常にねちっこい。【洗脳】


 エルローム:権天使の堕天した特殊な種族。権天使本来の能力をいかんなく発揮する。指示や監視が得意。その他にも……。仕事柄体力は少ないが夜はまた別問題。【看破】【千里眼】


 アマニーエル:能天使の堕天した特殊な種族。成るべくして堕天したものが多く戦闘力が高い。力と技に優れているが、その他の仕事もそれなりにこなす。身体能力が高いので昼も夜も平気。【身体能力増強・大】【口八丁】


 ディオニース:能天使の堕天した特殊な種族。他の堕天種に比べ戦闘力が劣っているがモノづくりや既存のものに新たな力を付与する作業に優れる。堕天する前は軍での製造を担当していた。

 当然夜の生産力にも優れる【錬成】【魔導付与】




 なるほど。かぶっている進化先もあるけど最高でランク4まで進化できるんだね。ティアにどれになりたいかちゃんと考えてもらおう。というかなんで全部に夜云々のコメントがあるんだろう。これはつまりもっと諜報活動に派遣しろって言う合図だったり?そんなはずはない……よね。


 「そうですね……少し迷ってるのでもう少し時間を頂けますか?」


 「いいよ。ティアの事なんだからじっくり考えて」


 ティアが悩んでいる間、私はゼリンさんと周辺の下着退治にせいを出すのだった。消える寸前の下着モンスターたちが私たちの前に広がった理由が最後に着用してほしかったのに……とかいう理由じゃないよね。

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