103話
やばいほど忙しいと言う訳じゃないけどパートさんがGW休むからいろいろ回すのが大変。
っと上司が言ってた。お悔やみ申し上げまする。
更新は5月4日まで予約済みです
《暗鬱なる洞穴》の四層にいたプレイヤー達。
見た感じPKをしているように見えるというかそのままPK……しているんだよね?問題はどっちが仕掛けた方かなんだけど……。
「なんや、また誰か来たんかいな……せっかくソロで楽しくレベルあげしてたっちゅうのに……」
侍がぼやく……関西の方の訛りかな。(あえて○西弁とは言わない)
なんとなーく聞き覚えがある声だけど、今はそういうのを気にしてる余裕はなさそう。だって騎士風の人達をはじめとした四人がこっちを睨んできてるし。
「女二人とテイムモンスターか。ここまで来たってことはスライム地帯を抜けてきたってことだし、強いに決まっている。気を抜かずさっさと倒してこの侍野郎の武器を奪うぞっ!」
どうやらあっちの数が多い方がPKらしい。そしてこの侍の持つ武器を狙っているみたい。
でもそこに三層を抜けてきた私たちがきちゃったから、ついでに始末して何かを奪おうと言う訳かな?私達とばっちりを受けてるね。
「アイリ、どうする?って聞いても無駄か。やるんだろ?」
戦闘モードに入ったゼリンさんは綺麗系な女性だけどすごく男らしくなる。その槍による突きは光や闇の領域で見たどのプレイヤーよりも鋭い。特に今回はついでに倒してやる感を出してるPKに腹を立ててる模様。
「なんや?こっち手伝ぅてくれるんか?」
侍の方もPKから目を離さずに声を掛けてくる。
「うーん、面倒だけど手伝おうか?侍さんなら一人でも余裕そうだけど?」
「いやいや?手伝ぅてくれるならその方がありがたいで?レベル的には余裕あるけど人数の差があるからなぁ」
「それならこっちのパーティに入ってくれる?そのままだとうちの子たちの攻撃が侍さんにもあたるかもしれないし。一応言っておくとウチの子の攻撃力シャレにならないからね?」
「なんやて?まあえぇけど、その犬っころ達がそこまで強いんかぃな?ていうかあんさん、なんでそんな喧嘩腰なんや……」
「別に?(PKに巻き込まれるのが嫌だなんて言えない)」
内心いろいろ思いつつ、巻き込まれるくらいなら先に片付けた方がいいと考えた。あとで判断ミスするよりいいだろうし。
侍へパーティ申請を飛ばすとすぐに了承のコメントが表示され侍がパーティに入って来た。
その名前は【ギンジロウ】。あぁ、やっぱりそうかぁ……。ま、この事は今は考えず、目の前のPK達を倒すことから始めよう。そういえばこれで倒したら、どっちが賞金首候補になるんだろう。私たちは返り討ちにする予定だから大丈夫……だよね?襲われたって言うのに賞金首になったら運営に異議申し立てでもしよう。
「いつまで喋ってる?隙だらけだぜ!」
考えてる間にPKの皆さんに囲まれちゃってる。いや、別に油断とかはしてないよ?感応スキルで動きは察知してたし、何よりコウガ達がいれば全く問題は無いから。
「オルァッ!」
PKが斬りかかってくる。しかし、ルドラがその前に立ちはだかりその攻撃を無傷で跳ね返す。
「んなっ!?」
PKは驚いている。なぜなら彼の使う武器も今現在においては高い攻撃力を誇っているからだ。それで無傷だというのは正直信じられないのだと思う。
「ルドラ、ファイアブレス」
「うぎゃぁ!」
ルドラは剣による攻撃をはじき返され硬直しているPKに火のブレスを吐いた。そのブレスはPKに直撃し大きなダメージを与える。プレイヤーに関しては一度に大きなダメージを受けると行動不能のバッドステータスが付く。このPKにもそれが付いたのか、身動きを取れないでいる。
そんな悲鳴を上げた仲間のことなど気にせず残りのPK達は私たちにじりじりと近づいて来る。
「ゼリンは一人の相手お願い、ギンちゃんはこの後に包囲網に穴が開くからそこから抜けて背後攻撃で!」
「わかったわ」
「この歳でギンちゃんいわれとぅないわっ!ってその呼び方するあんさんは……」
「ほら急ぐ急ぐ!」
盾をもっていたPKに向かってコウガが体当たりをして吹っ飛ばす。ちなみに盾の上から当たったのでダメージ自体は大きくないが、人と巨大な犬という体格の違いからノックバック効果が非常にデカい。
その穴を抜けたギンジロウは予想通りの素早い動きで吹っ飛ばされたPKの背後に回り込み刀による一閃を放った。
「ぐあっ!?」
盾持ちPKにまとまったダメージが入ったところでコウガの追撃が入る。その一撃で体力をすべて消し飛ばされた盾PKは死に戻りとなった。
残りは三人。そのうちの二人は私を警戒しつつゼリンの攻撃に対応している。残った一人は最初にルドラのファイアブレスを受けたせいで少し離れた場所で死にかけてる。ほら、ファイアブレスの火傷効果で継続ダメージがね?あと麻痺にもなってるから回復行動もとれないんだよ。……あっ、死んだ。
「くそ、デカい柴犬がこんなに強いとは!」
残った二人は予想に反して自分たちが追い込まれ、不利になった事に気づき狼狽している。その視線は時折三層への階段を見ていることから逃げようとしているんだと思うけど……盾職とさっき継続ダメージで死んだ斥候がいなくなった以上、上の層を抜けれるとは思えないんだけどね。それならここでちゃんと戻して上げた方がいいでしょ?この人達の言動からPKが実装されてからそれなりに数をこなしてそうだし、その罪のリセットも兼ねてね?
「ルドラ、PKが逃げられないように三層への道を塞いでおいて?あっでも、上から誰かが来たら通してあげてね。その際はその人たちに注意を促すようにして!」
「ギルルッ」
「で、コウガとイリスは暴れて来ていいよ。あっ、でもゼリンとギンちゃんの邪魔はしないで上げてね」
「わふっ!」「クポォ~」
なおゼリンから自分の守りはどうするか聞かれたけど、ほっといてもコウガ達が守ってくれるので問題ない。特にコウガはその手の感知が鋭くなったしね。これはきっと進化して血の誓いをしたおかげだと思う。
一方ギンジロウはというと、すでに楽勝ムードの漂っているなか、アイリたちを観察していた。
「ワイをギンちゃんと呼んだことからあのお嬢であることは間違いなさそうや……。見つかりとぅない相手に見つかってもぅたなぁ」
見つかりたくないとは言うものの、別にアイリの事を嫌っているわけではないギンジロウ。ただ、以前付き合ったばかりに余計な苦労をすることになったのがちょっと引っかかっているだけだ。
その直接の原因になったのはエレノアだけど、アイリ自身も実はアイリが気づかないところでいろいろ問題の原因になっていたりして、そのフォローに回るのはいつもギンジロウだったと言うだけのこと。
まあその問題というのは大体アイリ自身のプレイヤースキルとか作られたキャラの容姿に対するいろいろな感情からくるもので、アイリ自身が悪いことをしたと言う訳ではない。
「それにしてもあの犬っころ……レベルは低いのにかなり強いやん。少なくともボス級……この辺で出会えるレベルのモンスターやない。それに堅そうなドラゴン……さっき攻撃をはじいとったけど、ワイやったら死にはせんでも痛手を負うてたのは間違いなかったはずや……こんな変な奴らと一緒にいるお嬢は一体どういう存在になったんや……」
なおイリスに関しては回復行動がメインだったので珍しい魚がいるな程度の認識である。
「これで終わりみたいだね」
「くっそっ~、最初から侍だけ狙ってればよかった……ぜっ」
残っていた攻撃系のPKをイリスが魔法で倒したところで個人アナウンスが来た。
《個体名:コウガが賞金首に認定されました》
《個体名:ルドラが賞金首に認定されました》
《個体名:イリスが賞金首に認定されました》
むう……。このコウガ達の賞金首化はプレイヤーに対する扱いではなく、私が酒場で受けたような害獣扱いなので討伐すれば報奨金が出る。まあ誰にも倒させはしないけど。問題はコウガ達を害獣扱いしていることと次の個人ログ……。私の大事な家族を害獣扱いした事は運営に文句を言おう。
《プレイヤー:アイリの配下がPKを討伐したことで称号【狙われるもの】を会得しました》
狙われるもの:場数を重ねたPK達から見ると一際目立って見える。PK側がこの称号を持つものを倒した時、一定期間経験値ボーナスがかかる。(PKに連続で複数回狩られた場合、この称号の効果は無くなる)
逆にこの称号を持つものがPKを倒す度に得られる賞金額が増加する。負けるとリセットされる。この称号がある限りPKを倒しても自分が賞金首になることは無い。
1~5人まで=そのまま規定値 6~10人=1.5倍 11人以上=3倍(1.5倍(6~10人討伐の)x2倍(11人以上ボーナス))。
私自身が賞金首になったと言う訳ではないけど、倒せばおいしいプレイヤーという事でPKに狙われる危険性が増したという事らしい。どういう風に目立ってしまうのか非常に気になるけど、私がPKする訳じゃないから理解できようはずもない。
あとはそうだね。PKに倒されたら私の魔王の力がどう作用するかわからないから負けるわけにはいかないという事がわかる。
「おやっ?ワイも賞金首になってもうたわ……まあええねんけどな」
「私は……なってないか。よかったぁ」
どうやらギンジロウは賞金首に、ゼリンはなっていないらしい。そりゃ、ギンジロウはPKに致命の一撃をくらわしてたもんね。その点ゼリンの攻撃はすごいけど、避けられてたからって事かな。
あとは四人のPKを倒した賞金が私たち三人に均等に割り振られたんだけどその額も結構なものだった。やっぱり彼らはかなりの人数をPKをしてきてたんだね。
「さてと、聞きたいねんけど……あんさん、お嬢やんな?」
「天帝の時の事を言ってるならそうだね」
「さよか。まあだからなんやねんってだけの事やねんけど確認はしておきとぅてな」
「こっちからも一つだけ。既読スルーはひどいと思います!」
「今言うのがそれかいな……えらい、すんませんなぁ。ぶっちゃけこっちでは関わりたくなかったんや」
「エレノアも言ってたよ」
「なんや、お嬢はもうエレノアにおうとんのかぃな。ワイはまだおうてへんわ。代わりにアイツにおうたけどなぁ」
「あえて聞くけど騒がしい方?おとなしい方?」
「後者や。たぶん今もヘリオストスにおるで。ワイのこの武器もアイツに作ってもろたからな」
「そっかぁ。あの子もいるんだね。生産職かぁ。ちょうどいいかな。……となればもう一人もいるのは間違ないないかぁ」
「せやなぁ。アレは二人でワンセットやから絶対おるやろうなぁ」
「ギンちゃん、アレ扱いは可哀そうだと思う」
「ええねんええねん、アレはアレ扱いでちょうどええねん」
「ところでギンちゃんは私たちと一緒に遊ぶ気はないの?」
「せやなぁ。今はまだ断ることになるやろなぁ。まだこのゲーム始まって三カ月程度やし、もっと楽しめそうなことを楽しんでからの話になると思うで」
「そっかぁ。まあしょうがないよね。コッチではしょうがないけどたまには携帯の返信くらいしてよね」
「了解や。ほなワイは抜けるで」
「またね」
「……あいよ」
こうしてギンジロウはしばらく四層で遊ぶといい、パーティを抜けた。
私はおとなしくしていたゼリンと一緒に四層を抜け五層へと足を踏み入れた。そこで私たちを迎えたのは……。




