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102話

5/3まで8時に投稿予約みです。こっちが6800文字なかわりに明日の分は3500文字くらいしかないけど……


(呟き) GW前は仕事が忙しい?さて何のことだろうね?いつもと変わらないじゃないか。きっと誰かが夢でも見たんだろう。そういう感じ……

 ー 常闇の高原 -


 名前の通り年がら年中、暗い雲に覆われている高原。そんな場所でも草花は育ち、色や見た目は悪くともさまざまな薬効をもっていることから薬を作ることを生業とするものには無くてはならない場所。 だが薬になるものばかりではなく、触るだけで状態異常になる毒草もあるので採取には細心の注意が必要である。ただしこれらが需要がないかと言われると否である。全域には主に魔獣系と魔鳥、特に馬や羊、大鷲系のモンスターが多く生息している。山に近い場所になると偶に山から巨人が下りてくるので要注意。





 ヘリオストスから出て一日後、道中でいろいろな魔獣を配下にしながら常闇の高原にやってきた。私たちの目的地である新発見ダンジョン《暗鬱なる洞穴(グルーミーズホール)》の前にはたくさんのプレイヤーの姿があった。

 出てくるモンスターの種類から火を扱う魔術師と盾となる戦士系が約三割ずつ、残りはヒーラーとか様子見とかそんな感じの人達かな?

 ダンジョン攻略を目指すからには戦力とかが偏っていると思うけど、出るモンスターがモンスターだからしょうがないんだよね。一層と二層には火系魔法に比較的弱い魔蟲系が、三層には件の物理や魔法にかなりの耐性を持つという魔粘体がわんさか出てくるらしいし。私はその三層を無事通り抜けその先に何があるかを報告するのがイザベラさんに頼まれた仕事。もちろんマップ情報があればなお良いとのこと。


 「三層をクリアできる人募集中でーす。当方魔術師~」

 「ダンジョンに入る前にポーションの補充いかがですか~」

 「落)撲殺も出来るヒーラー、魔蟲系も魔粘系も嫌いですよ~」

 「僧正の槍持ちですー。攻略中の食事は用意できまーす」

 「こちら野良パーティ【男尻だんじり】でぇ~す。イケメンさんきていいのよぉ~?」


 うん、人が多くて次から次へとログが流れて行っちゃう。まあいろいろな募集方法があるんだねぇ。三番目のどう考えてもこのダンジョン向きじゃない人が募集かけてたりさ。あと最後に聞こえたのとか……いや、そっちは気にしないでおこう……。私のサーモンピンクな脳みそが真っ黒になっちゃいそうだしね!


 あ~今考えてみれば私って初日のアレとFSの人達としかパーティプレイしてきてないんじゃ?いや、まあ私が隠し事してるからなんだけどさ……。

 まあ、私は私、他所は他所ってことで……さっさとダンジョンに行こうかな。だけどダンジョンへ入ろうとした瞬間とき後ろから声を掛けられた。


 「あれっ?アイリじゃない?まってよ~」


 むぅ、誰ですか?私の名前を大声で呼ぶのは……。大勢がいる中で超迷惑なんだけど?名前を呼ばれて足を止めたせいかなんか視線を集めてる気がするし。いや、この場合は足を止めた私が悪いのか……。

 仕方なく振り返ると私への視線が一層激しくなったので軽く愛想笑いを浮かべておきました。後ろの方で「あの美人があのアイリなのか?」とか「あれ?なんで状態異常?」とか聞こえるけど気にしない。


 「こんにちはアイリ。先日はお世話になりました」


 私に声を掛けてきたのはやはりというかゼリンだった。そういえばさっきの募集ログの中にゼリンっぽい声がいたような気がしたかも?ほら、槍がどうのとか料理がどうのって言ってた……。


 「久しぶり。さっき募集してたみたいだけどこっちに抜けてきたりしていいの?」


 「いいのいいの。拾われたらラッキー程度の募集でしたから。それよりアイリはなぜこっちに?」


 「なぜって言われても住民から受けたクエストの消化兼、ダンジョンの攻略情報集めだよ」


 「なるほど、ちょうどよかった。先日のお礼を兼ねて一緒に行きませんか?」


 「えっ?このダンジョンに?」


 「……もしかしてダメだった?私もあれからレベルを上げて強くなったはずなんだけど」


 「だ、ダメってことは無いんだけど……」


 いや、本当はすごく断りたいです!でもフレンドだしなぁ。どうしようかなぁ。


 「うぅ、あっ、そうだ。私ってテイマー系だから使役のモンスターを出さないといけないし、パーティ枠とか経験値奪っちゃうかもしれないからやめた方がいいと思うなぁ」


 こういえば地雷職扱いされてるってことは通じるはず……だったんだけどなぁ。事実テイマー系が野良で拾われる可能性はすこぶる低い。テイマー達のモンスターが強いとしても同レベル帯のプレイヤーには大抵劣る事が多いためだ。もちろんその様な事を気にしない物好きなプレイヤーもいるが数えられる範囲だろうね。


 「大丈夫!私はそんな事気にしないからねっ!」


 「むぅっ(どうすれば……)」


 その後何とかやめておきますという言葉を引き出そうと努力しましたが、ゼリンは強情だった。まあ配下を増やす工程も仲間を増やすテイムみたいなものと言えば見られても問題ないように思えるし……仕方ないよね?どっちかが折れないといけないけどゼリンはあきらめる気はなさそうだし。


 こうして私とゼリンはパーティを組むことになりました。その光景を見ていた他の募集者も自分も入れてくれ!とか言ってきましたが本当に戦力(コウガたちの召喚数)が減るのでお断りさせてもらった。

 ここの戦闘全てを軍勢を使って倒すとかすでに別のゲームになってる気がするしね。


 でも後ろから付いて来るのは構わないと言ったら急いでパーティを組み始める人が多かった。

 まあ言わなくてもついて来る人はついてきてただろうからね。とりあえずもう私の事は大体知られてしまったみたいだから、魅了能力以外の家族の戦力くらいならバラしてもいいと思うんだ。


 考えが纏まった所でついて来るつもりのプレイヤー連中を待つ必要はないから……と言う事でさっさと入っていく。それを見たプレイヤーの中にソロでついて来ようとする猛者もいた。もちろんその人たちが後ろで何かにひき殺されてても気にしないよ?(【軍勢】スキルを使うっていう意味じゃないからね?今そんなことしたら私が賞金首になっちゃう)




 ー 《暗鬱なる洞穴(グルーミーズホール)》 -


 闇を好む生物が多く集まる洞窟である程度の力を持つものでないと先に進むことができないと言われている。この中には鉱物や食材など良質な素材が数多く存在し、ひと昔前は魔物が住み着いたりはしておらず、地元の住民でも気軽に採取・採掘に来ることができた。

 なお、魔物たちが住むようになってから新しいフロアが多数出現しているらしい。




 私とゼリン、そしてコウガとルドラ、イリスの五人パーティは順調に一層目を進む。

 もちろん私とイリス以外は前衛である。まあイリスも前衛に立ってもいいくらいには強いんだけど、今回求めてるのはやっぱり回復役なんだよね。残りの三枠には誰も入れずに少しでもコウガの経験値を稼げるようにしている。

 コウガに関しては進化したてでレベルが低いから頑張ってもらって強くなってもらわないといけないし。

 メンバーに火力ナンバーワンのロアンを入れていないのは単純に大きさの問題。この暗鬱なる洞穴はちょくちょく見かける広間ならいいんだけど、そこに至るまでの通路の広さがそれほどではないので、ロアンくらい大きいと通路をふさいでしまい、行動もままならないんだよ。


 現在の攻撃力ランキングでもコウガは四位まで転落してる。ちなみに一位はロアン(氷獣王バージョン)、二位はセツナとロアン(蒼剣獣バージョン)、三位がクルスである。やっぱりランクによる能力上昇値は越えがたい壁なんだね。



 道中に出現する魔蟲系センターピルバグやモスキートタランチュラを片付けながら進む。もちろんやってるのは私以外の皆。戦闘では役に立ってないけど、ある程度弱った(実は元気いっぱいのもいたけど)センターピルバグやモスキートタランチュラを勧誘して配下に加えていたりする。ちなみにこのモンスターは毒や猛毒攻撃が得意なモンスターらしい。

 イリスが一度猛毒になってた。自分で治してたけど。


 「へぇ、アイリはそういうタイプのキャラなんだね。初めて見る形だよ」


 ゼリンは次々と配下となり消えていくモンスターを見ながらそう感想を述べた。

 どうやらゼリンは今までもテイマー系の人と組んだことがあるらしく、その人たちと私を比べていた。

 私も通常のテイマーがどういう風に仲間を増やしていくかが気になっていたので聞いてみることにした。


 「ゼリンが今まで見たテイマーとやり方が違ってるのなら教えてほしいな」


 「いいよ。って言っても大したことは無いんだけどさ……」


 ゼリンが言うには他のテイマー系は自分の攻撃力を高め敵を弱らせてから勧誘……というかテイムするんだって。効果が出るまで何度も……ね。

 しかし……私の場合は他のテイマーと違い一度配下に勧誘したら、間違いなく配下に加わってくれている(仲間には中々なってくれないんだよね)ことから少し変だなぁと思ったそうだ。ちなみにテイマー系の基本ステータスの振り方はSTR=VIT>INTという形が定番だって。そりゃ、弱らせるためにはSTRって必要だよね?VITは単に敵の攻撃を受けるため。AGIでも代用できるんじゃないかって思うでしょうけどこれにも理由がある。


 AGI=回避だよね?そうすると回避に費やした分、次に勧誘するまでにまた近づいていく必要があるのでその時間のロスが無駄だと言われたから。VITなら殴られ続けたとしても勧誘し続けることができるし、こっちの方がいいと判断されたのだ。


 なお、このタイプのテイマーは【ドM】という称号が付きやすくなるんだとか……こわいよねぇ?このゲーム。……ごめん間違えた。VITが高くて短期間に攻撃を何度も受けた人が取得しやすいんだって。だから持っているのはモンスターハウスに遭遇するくらいのタンク系の人達か、このタイプのテイマーばっかりなんだって。

 でもこの称号があると、耐久力みたいなものが上がるらしくて一部の人はこれを取得するために頑張っている。私は……欲しくないかなぁ。耐える以前の問題だし。世間体の問題って言うのもあるし……?


 INTを伸ばす理由に関してはよくわからないけど、テイマー達が言うには少しでも賢そうに見えた方が懐くかもしれないからだそうです。その考えに至った経緯がわからないよ。


 ちなみに私自身はテイマー系ならCHA一択だと思ってる。


 賢そうに見えるより、強そうに見えるよりなによりもそれでは言い表せない魅力こそがモンスターを引き寄せるに違いない。私の場合も仲間たちの育成に関しては初期設定のおかげで限界突破とかしているけど、仲間への勧誘に関しては普通のプレイヤーの設定と変わらないからね。ただ、目に見えて効果が表れるの数値がわからないからCHAは見向きもされていないんだろうね。


 勧誘の成功率の高さはもちろん魔王というものも影響はしているだろうけど、それはあくまでも「仲間になりやすくなる」だけだから、その元となる魅力が無かったら仲間や配下にならないと思うんだよ。

 ほら、どんな事でもいいけど魅力値がない人に誰が付いていきたいと思う?それは魔王の職業効果があっても同じことが言える。魅力のない魔王に誰が付いて来るのってね。1が2になってもそうそう変わらないよね?



 「っと、まあこんな感じかな。そういう事でアイリはすぐに仲間を増やせてすごいと思うけど……今どれくらい仲間がいるの?」


 ちなみに普通のテイマーなら収納に入れて置ける仲間は十体まで。私は……たぶん無制限。理由は言わずもがな。


 「メインになる子達は七体かな?さっきここで仲間にした子はまあ別の使い道で増やしてるだけ」


 「へぇ、テイマーってそういうことも出来るんだね」


 そうこう話しているうちに二層への階段を見つけたので降りていく。当然後ろには三層の魔粘体の出現地帯を私たちがどう切り抜けていくか気になるプレイヤー達が付いてきているので後ろからモンスターに狙われる心配はないだろう。ただ、PKが解禁されてるからその心配は必要だけど。


 二層も魔蟲系が大半で稀に物質系のオブシディアンというモンスターが出たので勧誘しておいた。ただこのオブシディアンというモンスターは倒すと良質の武器になる鉱石素材を落とすらしく、後ろから付いてきていたプレイヤー達が残念そうにしていた。

 そんな顔するならこの階層でオブシディアン探し頑張ってればいいじゃないと思いつつ三層への階段を下りていく。情報ではこの二層に五体まで湧いてるレアモンスターなんだけど、即湧きするっていうことだから運が良ければ独占できるかもしれないからね。



 三層目……問題の魔粘体が出る場所というか目の前にうじゃうじゃ居るね。物理も魔法もかなり効きにくいという事から、私が考えてきたのはこれだ。


 「コウガ、【毒撃】・【乱れ爪牙】」


 コウガの毒付与効果付きの攻撃を次々と魔粘体モンスター、マイティスライムに当てていく。すると、斬りつけられたマイティスライムたちが敵意を向け次々と飛びかかってくる。情報通りリンク型なんだね。

 リンク型というのは仲間が攻撃を受けると周りにいる同種モンスターが敵意を示してくるというものだ。ちなみに毒を食らったマイティスライムは二十秒ほどで爆散、経験値になった。


 もちろんマイティスライムの敵意は私にも向いてるけど、私への攻撃はルドラが防いでくれる。ルドラにはじき返されて地面にべちゃりとなったマイティスライムを次々と勧誘。もちろん成功率は100%です。

 でもそういう風にしても一向に減らないマイティスライムたち。


 「うーん、これは確かに厄介だね……」


 大体こういうキリがないタイプのモンスターってリーダー役のモンスターが居ると思うんだけど。

 そう考え、モンスターを確認するも見た目はすべて同じだね。困った。


 「ワオォォオン!!」


 突如吠えるコウガ。あぁ、コウガのスキル【威嚇】かぁ。可愛いなぁ……じゃなくてあれ?何か一体だけ変な反応をした子がいるね。なぜわかったかというともちろん私のスキル【感応】に反応したから。

 なるほどぉ、スキルの説明通り確かに感じやすいかもしれない。


 「コウガ、左の奥のごつごつした壁の辺りにいるスライムを全部毒にしてきなさい」


 「わふっ!」


 コウガは私が指示した辺りに火纏・毒撃・乱れ爪牙を使用しながら突っ込んでいく。結果そこに固まっていたマイティスライムはすべて火傷やら毒の状態異常に。

 私の反応にあったリーダースライムも状態異常に陥っており、しばらくフルフルっとした後爆散した。どうやらステータスは似たようなものだったみたいね。


 リーダースライムが死ぬとあれだけ居たマイティスライムたちが目に見えて消えていった。いやもちろんまだ残っている個体の方が多いんだけどさ。

 ちなみにリーダーじゃないマイティスライムを勧誘したけど、それらはそれらでちゃんとした個体だから配下になった子達まで消えたわけじゃないですよ。


 「そうかっ、あのスライムの中にいるリーダー個体を状態異常で倒せばいいのか!」

 「なるほどなぁ。でもどうするよ?俺らの中に状態異常攻撃できる奴なんていねぇぞ?あと、感知系も必要だな」

 「私も麻痺とかの異常付与はあるけど毒ってマイナーすぎて持ってないんだよね……」

 「こんな単純な話だったなんてね……そういえば基本攻撃力が低いから気にしなかったんだけどヘリオストスにいけば状態異常を付与できる武器があった気がする!」

 「あぁ、俺も前にフィールドボス倒した時状態異常を付与する武器を手に入れてたわ」


 後方でついてきていたプレイヤー達が相談している。どうやら倒し方は理解してもらえたみたいだし、これで攻略が滞るってことは無いかな?

 というかなんで今まで気づかないかな?魔法も物理も効かないならそれ以外の方法、そう状態異常系で倒せばいいだけなんだよ。

 あっ、でもそれだとアサシンギルドの人達がクリアできないはずはないかぁ。きっと毒で倒せることは知っててもリーダー個体がいることに気づかなかったとかそういう事なのかな?


 私からもう一つ助言をしてあげた。


 「一層にいる魔蟲は毒の攻撃スキルを持っているからどうしても厳しいならテイマー系の人を入れてその魔蟲をテイムすればここはクリアできると思いますよ。安全に魔蟲をテイム出来てテイマーもうれしいし、あなた方も三層をクリアできるかもしれない。どうですか?」


 それを聞いたプレイヤー達は「なるほど、メンバーをそろえて俺達もやるぞ!」と地上へ戻っていった。



 ちなみに私だけ(ゼリンがいなければ)ならこの三層はさっさと魅了の覇気を使用して突破してたよ?最初に話を受けた時からそんなものだろうって思ってたし。



 「アイリってすごいのね。手をこまねいていた三層をこんなあっさり攻略しちゃうなんて」


 「そうでもないとおもうよ?だってほら……すでに先に数人プレイヤーがいるみたいだし……」


 四層に降りると、剣戟の音が響いていた。


 「えっ?何この音……」


 音に導かれ進むとそこには一人の着流しを着た侍っぽいプレイヤー、一人に対して騎士風のプレイヤーを含めた四人が戦っていた。パッと見た感じは仲間割れにも見えなくはないかな?

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