100話
「請けられた依頼三種のうち二種は完遂を確認。本当に残り一つの依頼はキャンセルという形でよろしいのですか?……そうですか。手続きが完了しました……それではクエストの報酬をお支払いいたします。こちらをどうぞ」
冬空獅子の目玉の収集だけはやはりキャンセルということにした。配下にいる冬空獅子を差し出すわけにもいかないから仕方がないよね。
と言う訳で上級鑑定士関連のすべての報酬(以前受け取ったものも含める)を合わせて160万Dになった。やっぱり数を多く集めたから種類当たりの報酬が高いね。お金と言えば大河エリアも私の領地になったことで統治スキルで設定できる金額の上限が二つ分の80万になったし、順調にお金の消費額が増えている。
お金を補充した額からしてそろそろ【統治】スキルのレベルが上がってもいいと思うんだけどね?
統治のレベルアップ条件はお金の補充額と領地の数でレベルが上がるみたいだからね。まあ後者でレベル上げを狙うなら目立たない場所の賞金首モンスターを狩って領地を増やせばいいだけかな。
なんかもう、王種討伐とかの件で名前が売れて来ちゃって(?)隠そうとしても無駄なことに気づいたんだよね。まあ姿はバレてなさそうだけど、きっと近いうちにエレノアやバッカスさんを除く知り合った人にもバレちゃうだろうし。
話を戻して大河エリアの代官は誰がやってくれてるんだろう?多分大河の集落の長がやってくれてると思うんだけど、早いうちにトリビアに相談しておいた方がいいよね?
「続けてこちらが追加報酬となる上級鑑定士への紹介状です。これがあれば彼も貴女からの仕事を優先的に作業をしてくれるでしょう」
「あっ、どうも。それで上級鑑定士のお店はどちらに?」
「それでしたらギルドを出てすぐの所にヘリオストスの全体地図を設置しておりますのでマップデータに取り込んでおくと細かい場所まで把握できて便利ですよ」
なるほど、そういうことも出来るんだね。……あっ、今のはつい先日実装された内容だった。
先日新たに実装されたシステムとは……今言ったマップデータの更新に加え次のものが上がっている。
➀PKの実装。PKを行ったキャラの賞金首化/牢屋の設置(各フィールドで戦闘行為を仕掛けることが可能となった)。
➁バザーで購入もしくは売却をする際に出品者もしくは購入者と相談ができるようになる。
➂新スキルの追加
➃新ダンジョンの追加
➀はゼリンさんからのメールでもあったPK/MPKに関することだね。まあMPK自体はゲーム開始当初から可能だったから真新しいことではないけど。むしろ私初日にやられかけてましたし?
こっちの賞金首云々は酒場のマスターから受けれる特殊なモンスター関連ではなく、プレイヤーを対象としたもの。やっぱりPKを生業にするだろう人も多いと思う。襲われた時にそういう人を逆に倒すことができるとそのPKの罪の重さに応じた報酬が手に入る。これは倒した瞬間に自動的にはいるものなので受け取り拒否や倒してないといった嘘は通用しない。まあ倒してないとか嘘をつく意味は無いけど。
あとはそうだね、PKプレイヤーに勝利した時は何かアイテムを奪える&敗北した時は奪われるというのがあったかな。アイテムの対象には装備しているものも含まれるのでその辺要注意です。
例えば服などの防具系装備を一着しか持っていないプレイヤーキャラが居るとしましょう(なんかデジャヴ?)。その人がPKに負けて運悪く服を取られるとどうなるのか……。
解:見た目的な変化として持っていないはずの街人の服に変わります。
装備品は確かに盗られてしまいますが、ビジュアル的には表示されないアバター装備で保護されるので女性の皆さんも気にせず戦うことができます。(戦う事ができるだけで被害には遭いたくない気持ちは重々承知してますよ)
けど大抵のプレイヤーは装備が無くなったら戦闘や狩りを続行できないので、しばらくの間困ることになるのは間違いないね。私も狩られないように気を付けないと……。まあ警護担当のコウガやセツナが間違えて(?)逆に狩っちゃうかもしれない、そしてそれで飼い主である私が賞金首になるとかもあるかもしれない。
あれ?みんなの事は信じてるけどありえない未来ではないかも知れないじゃない?まあそうなったらそうなったで……ダメだってばっ!
仮に、仮にだよ?私が賞金首になったらそのあと牢屋でしばらく過ごすか大金(保釈金?)を支払えばその罪が消せたり短くできるらしい。なる気は無いけど私が賞金首になっちゃった時のためにそういうことも覚えておこう。
次に➁のバザー関連だけど、今までは値段を決めて出品したら出品しっぱなしだったからその辺が改められたのかな?取引用掲示板を覗いた時にそういう要望が多く出てた。
一例として、ユールでSTRが30上がる装備をバザーに出品されていたとして、それを買いたいけどお金がないから掲示板で出品者を名指しで値引き交渉を始めたりとかで無駄にスレが流れたりしたとかさ。
そういう時の為に出品者と交渉ができるようになるという寸法ですね。ただ仮に匿名希望で出品してたら交渉時に出品者の事がバレてしまうので、システムを仲介する形になる。
そのシステムとはバザー項目から「売り主と交渉する」を選べばいいだけだから簡単でしょ?これで相手とお話ができるとなる。ただし、バザー出品は露店と違ってログアウトしても期間内は出品されたままになっているので売り主と連絡が付かない時もあるけど交渉申請履歴が残るしタイミング次第だよね。
三つ目に➂いくつかのスキルが増えたらしいけど、私自身がそこまでスキルに詳しいわけじゃないから「ふ~ん、そう」でおわっちゃった。こういうのはスキルを考察している集まりが居るみたいだからそっちに任せておけばいいと思う。この辺は掲示板さえ確認してれば役に立つ情報が出てくるかもだね。
最後➃の新ダンジョンの実装だけどユール、ヘリオストスのすぐ近くにレベル制限付きの初心者ダンジョンもどきが実装された。ここでそこそこの経験値と素材を稼げるのであまり力のないプレイヤーはこぞってここに訪れている。
ちなみにユール周辺の入場可能エリアはレベル1~20までの初級エリアと1~30まで入場可能な中級エリア、ヘリオストス周辺にある1~50までの上級エリアがある。各エリアの最大制限レベルを超えた場合は入場不可になるのは言わなくてもいいよね?
すべてがレベル1から入ることができるようになっているのはプレイヤー同士のパワーレベリング(強者・ベテランが初心者を連れて鍛えてあげる行為)?が許されているからである。その代りパーティのレベル差が激しすぎた場合素材ドロップ率が下がるし、パーティ人数が多すぎても経験値の総量が減少するのである(1~20のエリアに関しては先に上げたペナルティはなく、すべて通常値/通常確率で得られる)。
なお、このダンジョンの実装に関して目安として終了時期が明記されている。今回のアップデートと同時にスタートした第三陣の約六割が30レベルを超えるまでである事。30レベルまでと言っておいて、その先のレベルまでエリアが用意されているのは既存のプレイヤーへの配慮であり、初心者から上級者まで楽しく潜れるような設定になっているのだ。
公式サイトの運営コメントでは「全員が全員、レベル上げに必死になることは無いだろうから恐らく長い時間存在する物と思われます」とのこと。そういう風にプレイヤーをたきつけたら反骨心溢れるゲーマー達が頑張っちゃうと思うんだけどなぁ。
これが落ち着いたころに第四陣の募集が始まるとかいう噂もあったはず。
私も気が向いたらこのダンジョンに来ようと思ってる。私ならソロ扱いだし、レベルも低いし素材ドロップ率&経験値効率が非常に良くなるからね。皆が居ればいきなり1~50のエリアに潜ってもいけそうな気がする。
とまあこんな感じ。ちょっと説明が長くなったかな。
気を取り直して早速上級鑑定士の元へ行くとしましょうか。
……数分後、私は上級鑑定士の店で受付を行っていた。
「なるほど、これは相当に珍しい装飾品ですね……。
ギルドよりあなたが私の依頼していた媒体のほとんどを集めていただいたと聞いておりますので急ぎ鑑定をさせていただきたいと思います……が、この装飾品、先ほども言いました通りパッと見た感じでもその珍しさに加え、私の知らない効果を秘めている感じがするのでその効果などをより詳しく記載することも含めて数日……いえ、一週間ほどお時間を頂きたいのですがよろしいでしょうか?」
「いいですよ。では私はその間、他の場所に行くので装飾品の鑑定の方お願いします」
「承りました」
こんな感じであっさり仕事を受けてもらえた。あっ、そうそう、ついでにキャンプ時に入手した未鑑定装備アイテムも預けておいた。数が一種類でも多種類でもかかる時間が同じだって言うなら一緒に渡しておいた方がいいもんね。
「さて、それじゃ準備も出来たし常闇の高原にいこうか?」
「ガルルッ?」
「主よ。コウガが進化しないでいいのであるか?と聞いて居るがどうするのだ?」
「あっ、そうだった。ごめん、忘れてた!それじゃ進化してから高原に向かおうか。そうすれば少しくらいレベルも上がるだろうし」
「ガルッ!?」
「なになに……?コウガが忘れてたなんてひどいである!といっておるぞ?」
「えっそうなの?コウガ、ゴメンってば~」
コウガの機嫌取りにブラッシング時間とモフモフ時間がいつもより長くなったのは言うまでもない……。
「よし、それじゃあ、コウガの進化やっちゃおう~!」
調教スキルの中の項目からコウガを選択し、進化選ぶとそこには多くの進化・派生先が記されていた。




