龍王
聴力が無くなったのか?
探楽が声という音を発声させ終わったその刹那……弾幕の音、自らの少し後退りした音、そして何より、自分の呼吸音が聞こえなくなっていた。
ーーパクパクパクパク……
感覚で、探楽が何か言っているようだが、恐らく聴力が無くなっているので何も聞こえない。
視力、聴力、そして足。
足が動かなくても、飛んで避けたりすればなんとかなるが、視力と聴力を失ったのがキツイ。
感覚を頼りに避けようとしても、博麗の巫女とはいえ、いつか限界が来る。
博麗神社に魔理沙が来たらこちらに来るように、マシーナに指示しておいたが、いつ魔理沙が来るかわからないし、多分ないだろうが、マシーナが裏切る可能性もある。
魔理沙が来る可能性に賭けて避け続けるしかない。
霊夢が思いつく限りの戦術はこれしかなかった。
「話してないでかかってきなさい!博麗の巫女の目や耳を奪ったところで、勝てないということを見せてあげるわ!」
ーーパクパクパクパク……
霊夢が探楽に叫びかけたが、聞こえていないのか、パクパクと何かを言っているような気がする。
まさか声もやられた?
いや、声がやられては探楽が言っていた問題について話し合えない。
考えれば考えるほどわからなくなる。
とりあえず、なにがきても対応できるように間合いを取る。
感覚から取れる情報は少なく、読み取るのが難しい。
しかし、1つだけ確実なことがある。
それはーー
ーー探楽が笑っていることだ……。
「おいゴミィ!」
「なに黙ってんだよ!カネよこしな!カネェ!」
「あぁん?早く出せよ~今日も蹴られたいのかぁ?あぁん!?」
住宅街の空き家の裏の人が滅多に通らない道。
そこに一人の弱々しい少年を囲む、金髪や赤髪に髪を染め、耳にはピアス、言葉遣いの荒い。
世間一般で言う不良という者だ。
「きょ、今日はお金を、持って……いません……」
少年は静かに、弱く答える。
それにヤンキー達は、はいそうですかというはずもなく。
「あぁん?舐めてんのかてめぇ!」
「どうせ、そのカバンの中に隠し持っているんだろ!」
「開けろ開けろ!」
「だ、こ、この中には……大切なものが……」
「そんなの俺らには関係ねぇよ!早く寄こしやがれ!」
「あぁ……」
少年が右肩から斜めにかけていたカバンを、不良どもが奪い取り、チャックを開け中に入っていた物は……?
「ガキのくせに高そうな物持ってんじゃねぇか」
カバンの中にあったのは、金の龍と銀の龍が絡み合っている模型だった。
しかし、その模型から発せられる光はまるでライトのように眩しく、素人が見ても高値とわかる品であった。
「そ、それは。昔、ある人から貰った大切な物なん……です!」
「うるせえなぁ~今日はこれを貰うからもういい。早く帰れ」
「でもそれは!」
「いいから黙って帰りやがれ!」
少年はその模型を奪い返そうと勇気を持って不良に飛びかかったが、少年は蹴られ、地面にうずくまってしまう。
力なき者は、力ある者に従わなければならない。
これはいつになっても、生きている限り発生する問題だ。
しかしこの少年は、模型が高値だから奪い返そうとしているのではなかった。
「龍王以外が模型に触れたことを確認。直ちに削除する」
「は?」
ーードサッ……
何かが床に倒れる音が響く。
それは模型を持っていた不良が突然、白目をむいて倒れた音だった。
その時不良たちは背筋が凍るような感覚……いや、全身が凍る感覚に襲われたであろう。
なぜ全身かって?
なぜなら……
ーー不良たちは既に凍っているから




