封印されてく霊夢
「ようこそいらっしゃいました。博麗霊夢さんですよね?」
扉を開け、中に入ると一人の紫のロングヘアーのメイド服を着ている女性が立っていた。
彼女に攻撃をする意思は無く、むしろ主人に合わせるためにいるように感じた。
「そうよ、この手紙にここに来るように書いてあるから来てあげたの」
「わかりました。どうぞこちらに、ご主人様が待っていますので」
そう言い奥の部屋へ案内される。
戦う意思が全く感じられない……紅魔館の連中みたいに、全員で一人づつ戦うかと思ってたけど、違うみたいね。
今まで異変を起こして来た者たちは全員戦闘をする気があり、戦ってきたのだ。
しかし、今回は【案内役】と言う一風変わったことをしてくる。
そのことを少し不気味に感じつつ霊夢はそのメイドに連れられついて行った。
「客人をお連れしました」
長テーブルを何台も置いてある広い空間に出た。
その奥に大きく、無駄に飾りが沢山付いている背もたれがある椅子に座っている者が1人。
「よく来てくれた。博麗霊夢よ」
茶色の迷彩服を着て、黒色のショートヘアーの上に茶色の帽子を被った男が座っていた。
あの顔、どこかで見たことある気がするわね。
霊夢が見た気がするのは当然、前に秋が博麗神社に初めて向った時に居た者。
それは【探楽】であった。
明らかに一般人……人間に見えたが手紙の内容が本当だとしたら、幻想郷の全てを封印する力か能力を持っていることになる。
例え能力が「ありとあらゆる物を封印する程度の能力」だとしても、人間の、それに一般人の探楽がそんなに強い霊力を持っているとは思えない。
「この手紙を書いたのってあんた?」
「その通り。俺が書きその手紙の内容も本当っだッ」
なんだこの喋り方、うざい。
幻想郷には変わった妖怪が沢山いるが、こんなにうざい喋り方をする奴はいるのだろうか?
いるかもしれないが、とにかくウザイことには違いないだろう。
霊夢は一々最後の一文字を強調する探楽のことを、内心【近づきたくない人間】と思うのであった。
「それで、この手紙の内容通り来たけど何の用かしら?手紙で先に警告を伝えたということは、平和的解決を望んでいるのよね?」
「その通りっだッ。私は……いや、私たちは【ある問題】にぶつかっていっるッ!」
「その問題を早く教えなさい?場合によっては手伝ってあげるわよ」
さっさと終わらしたいので、本題を追求していく霊夢。
優しく手伝うと霊夢が言った瞬間、探楽の口の端が吊り上がり……。
「ふふふ……あはははは。……あーッはっははっはははは!……はぁ……」
突然、不気味に大声で笑いだす探楽。
周囲にある物全てが笑っているような感覚に襲われる。
寒いようで暑い。
そして寒い、という変わった感覚に襲われ、目の前が突然真っ暗になる。
「霊夢さんよぉ~なんか、ちと勘違いしてりゃあいませんかね?」
「え……?」
突然視界を奪ったことの余裕からか、探楽の態度がさっきより大きくなる。
しかし、視界が何も見えなくてもまだ感覚と聴力がある。
このまま戦うのもよいが、なにか仕掛けてくる可能性がある。
冷静に判断し、屋敷の外の方へ移動をしようとしたが足が動かない。
「言い忘れていたが、視力と足を封印させてもらっている」
「こんなことをしたらその問題を私が解決する手助けをしないって気づいてるかしら?」
「気づいてないのはそちらでは?霊夢、あんたは今交渉をしているんじゃない。脅されてるんだ」
最初から最後まで脅されている。
そのことに気づけなかった霊夢には恐らく【慢心】をしていたのだろう。
今までも異変を何度も解決してきたからこれからも。
そしてこんな手紙を送ってきたということは、突然異変をおこせない程度の妖怪か、感知されるぐらい雑な事しかできない。
霊夢は無意識の中で思っていただろう。
「脅し?私を封印したところで幻想郷中を敵に回すだけよ」
「なるほど……私がやられたところで魔理沙や紫がなんとかすると。考えが浅いな。それでも博麗の巫女か?」
ーーカッカッカッカッカ……
探楽がこちらに向かって歩いてきているのが感覚と音でわかる。
それを聞いた霊夢がスペルカードを握りしめる。
そう、例え見えなくても方向が分かれば攻撃ができる。
次に喋った瞬間にスペルカードを撃つ。
心の中で1発で終わらせると思い、探楽の方を睨みながら喋るのを待つ。
「たとえ他の者g……」
「霊符【夢想封印】!」
探楽の方にい向かって全力の夢想封印を放つ。
相手が先に視界と足を奪ったんだ、卑怯とは言わないだろう。
そう思っていたが少しだけ罪悪感が出た。
しかしーー。
「だから考えが浅いんだよ考えが」
探楽の声が全方位から声が聞こえているように感じ、次の瞬間には。
ーー聴力もなくなっていた。




