監視
「霊夢さん、お待たせしました」
花落に連れられ秋が紅魔館上空に到着する。
「花落さんに連れられてきましたけど……なにか私に用があるんですか?」
「特にないわよ」
「はい?」
秋が疑問そうに首を傾げながら何かを察して閃いた顔をする。
「だから特にないって」
その瞬間、秋の顔には感情が消えていき、最終的には……
「帰っていいですか?」
この言葉である。
まぁ、急に呼び出されて特になしだなんて普通に考えたら怒るところ。
しかし、秋は恐らく心の中にある感情を封じ込め、帰宅するという結論に至った。
しかし、感情を抑え帰宅しようとする秋に対し。
「思い出した。花落の面倒を見てくれるかしら?」
思い出した、という言葉を付け、反論がないように秋に問う。
秋の性格は基本的に怒りなどは表に出さずに内側に溜め込む。
そしてその感情などをストレスに変え、貯める能力を使いストレスを消す。
そういう性格だからこの話は拒否しない。
霊夢はそう思っていた。
「子守ですか……苦手ですけど、花落さんなら弾幕勝負の練習にもなるからいいですよ」
予想通り、秋は承諾してくれた。
弾幕勝負の練習という口実を付け素直に承諾はしなかったが、嫌そうな顔一つせず承認してくれたことに少し安堵する霊夢。
実は監視のため、なんて言ったら怒るわよね……異変が全て終わって秋が無実だとわかった時に謝ろう。
霊夢は心にそう誓ったのであった。
「え〜私も異変解決したい〜!」
「駄々を捏ねないでください花落さん。霊夢さんも困ってるでしょ?」
「だって〜」
「だってじゃないです」
まるで親子のような会話をしている2人を見守るマシーナ。
その光景は子をなだめる親を見守る祖父母のような状況であった。
って、それを見守る私はおばあちゃんかっての。
「マシーナ、あんたは博麗神社に戻ってなさい。そこでいつか白黒の魔法使い、魔理沙がくるはずだわ。その魔理沙をここにくるように伝えといてくれないかしら?」
「しかし、それだとマスターを守ることができません」
「もし花落になにかあっても秋と私が守る。それに、花落はすぐに負けるほど弱くはないでしょう?」
「それは……いえ、そこまで言うのなら、仕方ないですね。事実、マスターや博麗霊夢、秋は強い。いざと慣れば秋も本気で戦ってくれる。これ以上信用できる状況はないですね」
マシーナの性格だともう少し花落のことを心配すると思っていたが、なぜかすぐに引き、神社の方に向かって飛んで行った。
引っかかるわね……でも、これで秋と花落を監視することができる。
たとえ花落と秋が敵対してきても勝てないような相手ではない。
いやむしろ、2人の戦い方では混乱を生みこちらが有利なのだ。
「行ってらっしゃ〜い霊夢〜!」
「そうだ、あんたらが周りに危害が及ばないように結界を作っておくわね」
「ありがとうございます。霊夢さん」
紅魔館前に無許可で結界を貼り出す霊夢。
門番は一体何をしているのか、いやむしろ気づかなくてよかったと言うべきだろう。
それにしても素直に礼を言われると、監視のために結界を張っていることが心に痛むわね。
「よし、できたわ。出来るだけ弾幕は出さずにお願いね」
「え?霊夢さん私弾幕練習するからって……」
「それじゃ帰ってくるまで遊んでてね〜」
「逃げられた……」
弾幕の特訓ができるから引き受けた秋は、目の光を失いながら霊夢が扉の中に入っていくのを見つめていた。




