第八話 魔王国
魔法生物創造を使い、魔力で動く馬を創ろうと思ったのだが、よくよく考えてみればステータスが上昇したおかげで、馬よりも早く走れるのを思い出した私は、徒歩で旅をすることにした。だが、セバスチャンはまだレベル1なので、レベル上げをしたら私もレベル40になった。もはやSPは数える気もしない。セバスチャンはレベル30になった。なんか、私よりも強いような気がする。称号補正かな?でも、称号は執事だったきがするのだが・・・。ちなみに私の称号は剣士から剣聖に変わっていた。なんか、ステータス変化に伴って称号も変わるようだ。世界図書館によると剣士から剣聖の間には剣豪があったらしいのだが、急激なステータス上昇で飛んだようだ。
セバスチャンの称号を確認したら、万能執事となっていた。世界図書館で調べてみるとどうやら、執事を極めると得られる称号で主人の願う事をすべてこなすことのできる能力があるという良くわからない称号だった。
クロもいつのまにかレベル上げに参加していたようで、レベル80になっていた。よく判らないが人型よりもレベルが上がりやすいのだろうか?称号もただの猫から猫神となっていた。わけがわからない。この称号とかスキルとかを創った女神様はいったいどういう人物だったのだろうか?
クロの戦い方は、魔法でゴリ押しというスキル任せなものになっている。本人?は寝そべっているだけで、クロの周りに無数の炎の塊やら、氷の塊が出てきて敵に飛んで行くのだ。猫に魔術師の知識と経験とスキルを与えた結果。小さな魔王を誕生させてしまったような気がするが、まあ私を含めここに居る三人が魔王もかすむであろうほどの戦力を有しているということはまだ誰も知らない・・・はず。
そういえば、こっちの世界に呼んでくれた者がいると思うのだが、この世界に居るのだろうか?そのうち向こうから現れるパターンかな?
で、旅の準備が整ったところで、旅の目的地なのだが。せっかくなので、魔王国に行ってみることにした。世界図書館によると現在三魔将による跡目争いが起きているそうだ。
なぜそんな危険な場所(もはや危険ではないが)に行くかというと、魔王国に多く住む魔族。彼らは両性具有で、相手に合わせて男にも女にもなり、美男美女しかいないらしい。永続奴隷にも魔族がいるようだが、億単位で取り引きされるそうだ。まあ、別に奴隷を買おうと思えば買えるのだが、ただ実際にどんなもんか観てみたいだけなので、現地に行ってみようと思っただけなのである。見るだけなら、西国の娼館に行けばいくらでも見られるのだろうが、そういうのとはなんか違うんだよね。別に裸が見たいわけじゃなくて、どんな生活しているんだろう?と思っただけである。
まあ、世界図書館で見ることが可能なのだが、それに頼ると前の世界と同じ引きこもりになるからね。
なんやかんやで、魔王国に到着した。嘘です。何にもなかったんです。えぇ。最初の1時間くらいで飽きたので、魔法でとっとと飛んで来ました。魔王が倒されたとはいえ、平和だな。モンスターも魔王国付近になると、勇者たちのレベル上げの餌食になって、ほとんど絶滅しているようだし。世界図書館で確認したら、やっぱり魔王国周辺のモンスターがごっそりいなくなって空白地帯になってしまっているようだ。まあ、放っておいてもモンスターは普通の動物たちが絶滅しない限りはまた生まれるだろうが・・・。
魔王国は西国のさらに西に行った場所にある。痩せた土地の荒野という感じだ。ただ、魔族は総じて生まれつき魔力が高いようで、魔力で農作物を育てたり、鉱物を錬成したりしていて、生活するうえでは特に問題ないようだ。魔王が侵略しようとしていたのは、どんな目的があったのだろうか?世界図書館で調べられるけど、あえて調べずに現地で探ってみる。まあ、魔王国の食堂や酒場を食べたり飲んだりしているだけなのだが。セバスチャンが会話を盗み聞きしてまとめておいてくれる。え?自分で調べないんだったら、世界図書館で調べれば良いじゃん?いや、世界図書館では美味しい物が食べられないじゃないか!
すみません。単純に食べ歩きがメインで、情報収集はついでです。別に分かれば良いかなぁくらいの軽い気持ちです。
それにしても、この世界の食事。元の世界とそんなに変わらないな。召喚者が広めたのかね?この辺は世界図書館で調べないとわからないだろうから、あとでセバスチャンに聞いてみるか。自分で調べてもいいのだが、セバスチャンは趣味が読書だけあって、自分で調べるよりも早く答えが返ってくるのよね。セバスチャン改めてグー○ル先生と呼ぼうかな?
最初の目的でもある魔族を観察してみたのだが、基本的に中性的な美人ばかりだな。ただ、夫婦か恋人同士かはわからないカップルは男女はっきりと分かれている。セバスチャンに聞いたら、恋をしたらその相手にあわせて性が変わるそうな。つまり、中性的な子供がある日、男の子か女の子になって帰ってくるわけだね。と思ったら、そんなに急には変化しないそうな。まあ、そりゃそうか。
さすがに変化の過程を実際に見ることは不可能だと思うので、世界図書館でチェックしておいた。本当に徐々に変化していくようだ。だいたい一年ほどで中性から男女になるようだ。にしてもこれ、旅人に一目惚れした場合。一年待ってから告白するのかね?準備が整った頃には相手はいない気もする。
一目見て、処女または童貞かがわかるって、ちょっと怖いかな。というアホな感想を抱きつつ、近々戦争(紛争?)があるようなのでとっとと次に行こうかな。さて、どこに行こう?
「おい。貴様ら、どこの国から来た?」
食堂から出て、次の目的地を考えながら散歩していたら、そう声を掛けられた。どうやら、この街の兵士のようだが。中性的な顔しているな。なんだ、お子様か。と思いつつもちゃんと相手をしてあげる。
「西国からだけど?何か?」
「くっ!やはりか!魔王様を倒しただけでは飽き足らず。反撃の為の偵察か!?」
「いや。ここに来るまでに普通に自分たちと似たかっこうの人たち居たし。西国から来たから偵察とか意味わからないな。そもそも、偵察目的ならもう少し魔族っぽくするでしょ」
「ええい!問答無用!取り調べは城でやる!ひっとらえろ!」
「だが断る!」
なんとなくチャンスだと思って、言いたかったセリフを言いつつ。セバスチャンに目配せをして全力で・・・逃げた。
「ふはははは。スキルとステータスで強化された我が神速についてはこれまい!」
「ご主人様。すでに聴こえない距離にいますよ」
「いいのいいの。気分の問題だから」
戦えば勝てるのだが、わざわざ面倒に巻き込まれるのは面倒なので、魔王国に入る前からセバスチャンには何かあったら逃げると言っておいたので、目配せだけでついて来てくれた。まあ、よくある物語的にはここで城まで行って、魔将軍のひとりに会い。その力を見せつけて従えさせるか、協力して魔王国をまとめ上げたりする話になるのだろうが。
そういうのは、別の人に任せる。だって、面倒じゃん!そういうのするくらいなら、魔王国に入る前に軍隊を創って攻め込むし。魔王を失って統率のとれていない現在の魔王国ならサクッと占領できるに違いない。そういや、魔王を倒した勇者たちは何をしているのだろう?魔王を倒したとはいえ、まだ魔王国には三魔将が残っているのだから、軍を率いて攻めていてもおかしくないはずなのだが・・・。
街からだいぶ離れた森の中で居住空間に入り、セバスチャンの入れてくれたお茶を飲みながら、世界図書館で魔王を倒した勇者たちについて調べてみる。セバスチャンに聞いても良いのだが、なんでもかんでもセバスチャンに聞くわけでもないのだ。気分によるともいう。
調べてみると、どうやら魔王を倒した勇者たちは全員。暗殺され・・・てはいないようだ。一瞬、用済みになったから毒殺でもされたんじゃないのかな?と思ったが、三魔将がまだ残っているのでそれは無いだろう。たんに魔王討伐後の戦勝記念パーティーにて結婚の申し込みが殺到して、勇者たちはハーレム状態で忙しいらしい。
「過去の召喚された者たちも、貴族や庶民に限らずモテモテでハーレムやら、逆ハーレム状態だったようですよ。どうも、召喚者との子供はユニークスキル持ちが生まれやすいそうで、人気があるようですね」
お茶のおかわりを入れながら、そっと気になっていることを教えてくれる。セバスチャン。いつから私の心が読めるようになったんだい?
にこりと微笑みながら、「産まれた頃からでございます」と怖い事を告白された。セバスチャンの前では変なことは考えられないな・・・。
「ふふふ。離れていてもご主人様の事ならわかりますよ」
何そのヤンデレ的な感じ。超怖い。まあ、セバスチャンだから仕方がない。そんな風になるように私が創ったのだから。
「創造主の苦悩というのはそういう感じなのでしょうね」
念のため、世界図書館で調べたら、レベル上げの時に以心伝心(100000→10000)を習得していた。特定の人物の心や表層心理を読み取れる能力のようだ。って、私が創った結果というよりも、セバスチャンが自分で進化して来てるよおい!
「ふふふ。ばれてしまいましたか。さすがに世界図書館の記録を隠ぺい、削除が出来るスキルはございませんでしたからねぇ」
あったら習得するつもりだったのだろう。なんて恐ろしい子!まあ、世界図書館のスキル持ちが他にいる場合。そういうスキルがあれば便利だろうが。
「ちなみにわたくしの本とご主人様以外には世界図書館のスキルを持っているものはまだいないようですね」
「じゃあ、今のところ。一方的に情報を得られて有利な状態なのかぁ。何かあった時の為に対策しておいた方が良いかな?」
「大丈夫です。わたくしが居りますれば・・・」
「そうね。セバスチャンが・・・」
「にゃー(俺もいるから大丈夫だろ)」
「そうだね。セバスチャンとクロが居れば何とかなるだろうね」
まあ、何事も予想外の事はあると思うので、何かスキルを習得しておくかな。
「それで、今後はいかがいたしましょう?」
「そうだねぇ。魔王国はしばらく面倒な状態が続きそうだし。北国と南国のほうを見に行こうか」
「北国は鍋料理。南国は串料理が美味しいそうですよ」
「にゃー(南国の魚は美味いらしいな)」
なんだかんだで、ただの食べ歩きツアーになるつつあるが。楽しいのでまあいいだろう。さて、北と南どちらから行こう?
あっという間に魔王国を去るユースケ達。残された魔族の兵士たちは開いた口がふさがらなかったとか。
次回。食道楽完結編!