第五話 やり過ぎ感
翌朝。聖都周辺のモンスター討伐と薬草採集の仕事を受けて、ついでに指名手配リストもブレスレットに入力してもらい街の外に出てみた。武器は武器創造で作った日本刀だ。最初、銃を創ろうとしたのだが、イメージで銃を創っても、内部構造までイメージ出来ていないので全く撃てなかった。というか、分解すらできないただの彫刻みたいなものが出来た。一度本物を見て、分解して中身まで確認しないとイメージで創ることは難しそうだ。日本とは時代劇でよく見るので何とかなった。ただ、分解は出来ないけどね。本当の日本刀は手入れするために分解できるようになっていたはずなのだが、一度そのイメージを含めて創ってみたら、刀を振ったら刃が飛んで行ったので諦めました。まあ、手入れする必要はないと思う。使えなくなってきたらまた創ればいいわけだし。
武器万能のおかげで刀を抜く動作もスムーズに出来るので、戦闘になっても問題なさそうだ。ちなみにこの日本刀。全く斬れない。本物を見た事が無いと切れ味は再現できないようだ。まあ、斬らなくてもダメージを与えることは可能のようなので、問題はないと思う。なんせ、試し切りした太めの木が簡単に折れたのだから・・・。神力とステータスが上昇した効果なのだろうが、さすがにびっくりした。
街から離れて、まずは薬草採集の為に森に入る。討伐対象のモンスターも同じ森に居るようなので薬草採集を終えたら、モンスターを探す予定だ。
森の中を歩くのって、こんなに疲れるものなんだ。ステータスが上がっていても、まだ感覚が慣れないせいか疲れてきた。こんなことなら、何か飲み物でも買っておけばよかったな。瞬間移動を使えば街に戻るのは簡単なのだが、森の中に戻る時はさすがに中に直接は移動できないと思うので、また入り口からになってしまうだろう。日雇いギルドで貰った薬草分布の地図データによると、もうそろそろだろうし。しんどいけど頑張るか。
「あっ。魔法生物創造で探索と採集をしてくれるのを創ればいいんじゃね?」
せっかく習得したスキルがあるのだから、活用して楽をしないと習得した意味がない。というわけで、さっそく創ってみる。折角なので、戦闘にも使えそうなのをっと。
「よし。出来た!」
魔法生物創造で創りだしたのは、女王蜂と働き蜂の二種類だ。まあ、蜂と言っても、昆虫そのままはイメージ出来ないので、羽のある球体なのだが・・・。
テニスボールくらいの大きさの女王蜂。その女王蜂に魔力を与えると働き蜂を産み出してくれる。働き蜂の大きさはピンポン玉くらいだ。女王蜂と働き蜂は情報を共有しているので、女王蜂を手元に置いておけば、遠くにいる働き蜂達の状況が分かるようになっている。つまり、女王蜂は働き蜂を産み出すのと情報端末のようなものだ。働き蜂は重い物でも数十匹がかりで運ぶことが可能で麻痺針も使える。
さっそく動作テストもかねて薬草探索と採集を女王蜂に命令し、魔力を与える。すると、女王蜂から続々と働き蜂が産み出されて森の中に飛んで行く。女王蜂からブレスレットを通してレーダー画面に白い点が表示されている図を眺めていると緑の点が次々に表示されていく。たぶんこの緑の点が指示した薬草なのだろう。しばらくすると白い点が緑の点と重なり、両方の点が移動し始めた。採集してきているのだろう。レーダー画面の中心は女王蜂で、その中心に次々と白い点と緑の点が集まって来た。そして、それらが中心に近づいてくるのと同時に目に見える形で働き蜂が薬草らしき草を抱えて帰ってくるのが見えた。大成功だ!
ちょっと集め過ぎかな?というくらい薬草が山盛りになっている。まあ、アイテムボックスがあるので余裕で全部持って帰れるのだが。日雇いギルドには全部出さずに依頼にあった量にしておくかな?全部出したら薬草の価格が暴落する気がするし。さて、薬草採集が上手くいったので、お次はモンスター探索だな。
討伐対象のモンスターの情報を女王蜂にブレスレットを使って伝える。数を指定しておかないと森の中のモンスターが全滅しそうな気がしたので討伐数を依頼にある12頭にしておく。ちなみに討伐対象のモンスターというのは犬みたいなやつだ。大きさが3mくらいあるようだが。犬というよりは狼なのかな?ちなみに動物とモンスターの違いは魔力の有り無しくらいだそうな。つまり、普通の動物だったやつが魔法を使えるようになったらモンスター扱いになるんだそうだ。つまり、3mの狼が炎を吐いてくるというのが今回のモンスター討伐の対象だ。森の中に数百頭生息しているらしく。数が増えすぎると街のほうまで出てくるので数ヶ月に一度くらいのペースで討伐対象に指定しているらしい。ただ、今回のやつはかなり上位のモンスターなので日雇いギルドの職員に止められたのだが、別に受けられないというわけでは無かったので受けておいた。まあ、スキルでがっちり固めているので余裕だろうという判断なんだけどね。
薬草採集の時と同じようにレーダー画面を確認していると、白い点が広がっていくと赤い点がいくつか表示されていく。その赤い点が12になると白い点が一斉に赤い点に群がる。しばらくすると、白い点の塊と赤い点がこちらに移動を始めた。そして、レーダー画面の中心に近づいて来たら、大量の働き蜂が狼型モンスターのハウンドドッグを運んできた。どうやら麻痺針で動けない状態になっているがまだ生きているようだ。
運ばれて来た奴を一頭ずつ日本刀で頭を叩き潰していく。一頭目の頭を潰した時の感覚でぞわっと首の後ろに悪寒がきたが、12頭すべての頭を潰し終わった頃には慣れていた。ちなみにレベルが上がった。最初の1頭でレベルが1上がり、3頭目、6頭目、12頭目という感じで計4上がった。討伐したことを証明するにはブレスレットに記録されているので報告する時に確認してもらえるらしい。ブレスレットが無い頃は牙2本に付き1頭という確認方法だったらしい。ちなみに牙を含むモンスターの死骸はそのまま日雇いギルドに持って行くと素材として買い取ってもらえるそうなのでアイテムボックスに入れておく。解体したら牙や皮や骨などの素材ごとに価格が付けられて、そのまま出すよりも1.2倍くらい違うそうだが、モンスターとはいえ生き物の解体はあまりしたくない。
女王蜂と働き蜂のおかげで簡単に薬草採取とモンスター討伐が完了した。日が暮れるどころか、まだお昼前である。このまま指名手配リストのやつらを狩りに行くのも良いが、森を歩いて喉が渇いているし、少し疲れた。働き蜂に指名手配リストのデータを送って探索だけさせておいて女王蜂と共に一度街に戻ってお昼でも食べるか。
見た目が球体に羽が生えている状態ではあるが、このまま街に帰っても周りから注目を浴びそうなので、筒状の巣箱を魔法生物創造で創って腰にさげることにした。筒状の巣箱も魔法生物である。能力は女王蜂と働き蜂を収納する空間を内部に作るだけだが。女王蜂と働き蜂ってそのままいうのもなんだし、名前付けるか。う~んと。女王蜂はクイーンで働き蜂はワーカーで良いかな?
名前も(適当に)決まったので、瞬間移動で街の近くに移動し、宿の1階で昼食を食べた。ちなみに日替わり定食でご飯とみそ汁と焼き魚と野菜炒めだ。お米はなんかタイ米っぽいがまずくはない。というか、異世界に来てお米を食べられるとは思わなかったな。それにみそ汁も。でも、本当にみそ汁なのかはわからない。メニューにはスープとしか書かれてないし。焼き魚は鯖っぽいけど、鯖なのかは不明。野菜も知っているやつなのかは調理されている状態からはわからない。今度、市場にでも行ってみるかな。でも、見た目がヤバかったらどうしよう・・・。
昼食を食べ終えてブレスレットでレーダー画面を表示すると赤い点がいくつか表示されていた。街を中心にあちこちにある。距離がどれくらい離れているのかはわからないので、モンスターの時のように麻痺させて連れて来させたほうが良いかも知れない。生け捕りにしたら賞金も5割増しのようだし。ただ、ワーカーに運ばれてくる人間を想像するとホラー映画っぽいなぁ・・・。まあいいや。クイーンを通してワーカーに街の外に指名手配のやつらを運ぶように指示を出してから、街の外に向かった。あ、縄とそいつらを運ぶ荷車か、何かを用意しておくかな?いや・・・職員に相談するか。余計なお金を使いたくないし。いざという時はアイテムボックスに入れてしまっても大丈夫だろう。生物はダメじゃなかったはずだし。
次回。大物新人として有名になる?