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異世界立志伝  作者: 遊路
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第十話 初めての友達




 空き家の掃除を引き受けてから三日後。いつものように午前のお仕事を探しているとヒナタさんが声をかけてきた。


「あ、カツオさん。ちょっといいですか?」


「はい?」


「先日の空き家なんですけど」


「空き家がどうしました?」


「契約が決まったそうで、庭の清掃を頼まれたのですがカツオさん受けます?」


「ん?また急ぎですか?」


「いいえ。五日間ほど猶予があるので誰でも良いんですけど・・・」


「いくらですか?」


「庭の草刈りが終わり次第ですので、時給ではなくて完了次第8000エルンのお仕事ですね」


「あの家の庭だったら・・・一時間かからないかな?まあ、いいか。それ受けますね」


「はい。お願いしますね。それとですね・・・」


「はい?」


「今日の夜。あいてます?」


「え?」


「約束していたお食事なんですけど・・・」


「あ~。あれね」


「どこが良いですか?まあ、私はそんなに給料多くないので、あまり高いお店は・・・」


「いやいや。高いお店なんて行きませんよ。そうですね・・・。じゃあ。ひぐらし亭で」


「え?いいんですか?」


「はい。食べ慣れたお店のほうが俺も良いですし」


「じゃあ、5時に仕事が終わりますので・・・」


「6時くらいまでには宿に戻っていると思いますよ」


「じゃあ、6時にひぐらし亭で」


「はい。よろしくお願いします」


「ふふふ。こちらのほうがお願いする立場ですから」


「え?そっか。そうですね」


「それはでは、お願いしますね」


「はい。それじゃあ。行ってきます」


「はい。いってらっしゃい」


 うーん。これはデートと言っていいのだろうか?でもまあ、ただの急な仕事を頼んだ事に対するお礼ってだけだし・・・。ヒナタさんは男だし・・・。


 その日は空き家の庭の草刈りをした後、犬の散歩や窓拭きなどいつもの仕事をいつものようにこなした。そして、約束の時間となり、一階の酒場兼食堂に降りるとヒナタさんが待っていた。


「カツオさん。こっちです」


 なんか、周りから見られている気がする。ヒナタさんが男ということは街中の人が知っていることとはいえ。美人なのには変わりない。そんな美人が男と待ち合わせをしているのである。薄い本が厚く・・・腐女子はいないか。というか、宿屋の酒場兼食堂に女性は滅多に来ないし。食事処は宿屋の一階だけでない。夕方になると、屋台で買い物をして帰る女性を多く見かける。女性は暗くなってから街中とはいえ外を出歩こうとしないので、暗くなる前に食べ物を適当に買って家で食べるのであろう。


「それじゃあ。この間は急なお仕事を受けて頂いて助かりました」


「いえ。短い時間で結構いい収入になりましたのでこちらこそありがとうございました」


「それではささやかなお礼ですけど。今日は食べて飲んでくださいね」


「じゃあ。遠慮なく」


「かんぱーい」


「かんぱい」


 うん。女性と食事をしたことが無いのでもっと緊張すると思っていたが、相手が美人とはいえ男であることを知っているので、割と平気のようだ。


「カツオさんはこの街に来てどれくらいになります?」


「えっと・・・三カ月・・・いや。もうすぐ四カ月になりますかねぇ」


「へぇ。もうこっちの生活に慣れました?」


「え?」


(俺が召喚者と知っているのか?)


「この街に来る前はどこに住んでいたんですか?」


「ああ。そういうことね」


「はい?」


「うん。ごめんごめん。えっと、南のほうの森の・・・」


「ああ。森の向こうなら、イナカ村ですね」


「そ、そうだね。本当に田舎だよね」


「え?イナカ村って召喚者のマナブ・イナカが開拓した村だからイナカ村っていうんですよね?」


「え?ああ。そうそう。そうなんだけどね。よく知っているね」


「イナカ村から出稼ぎに来ていた人が前に居ましたからねぇ」


「そ、そうなんだ。で、でも、俺は割と早く村を離れてあちこち見て回っていたから、最近の村の事はわからないなぁ」


「そうなんですか?凄いですねぇ。私は街の外はちょっと怖くてひとりでは出歩けないですねぇ」


「いやいや。俺もモンスターは無理ですね。なので、とりあえず見かけたら逃げてましたし」


「またまた~」


「いやいや本当に・・・」


 そんな感じでなんか危なげながらも会話が弾み。気が付いたら、お互い酔いが回って来ていた。トイレがやたら近くなる。ちなみにこちらの世界のトイレは水洗である。水がどこから流れてるのか良くわからないが。とにかく水洗なので助かる。トイレットペーパーはロールじゃなくて紙状の物が置かれている感じではあるが。それなりに柔らかいので問題ない。使う人は少ないようだが・・・。え?拭かないのかって?いや。魔法で洗浄しているそうだ。俺は魔法がまだ使えないので紙があって助かっているのだが。簡単な魔法を使える人は十人に七人くらいなので、いつ紙が置かれなくなるのか・・・。無くなったら自分で用意するしかない。


「カッちゃん!実はね。私・・・男なの!」


「うん。知ってる」


 飲み始めて二時間ほどでヒナタさんは完全に酔っぱらっており、俺の事をさん付けから、あだ名で呼ぶくらい仲良くなっていた。そして、男であることを告白するのはもう3回目である。最初は知らないふりをして、驚いて見せたが。さすがに3回目となるとね。


「ねえ。カッちゃん。寂しくない?こっちに来て、友達もいないんでしょ?」


 酔った勢いで、俺がこの世界の住人じゃなく召喚者であることはすでに告白済みである。男であることを告白してくれたので、なんとなく俺も正直に話したのだ。なんか、気持ちが楽になった。


「う~ん。向こうでもリアルで会う友達はいなかったからなぁ。ひとりでいることに慣れてるかなぁ」


「大丈夫!私が友達になってあげるからね!寂しくさせないから!」


「うん。それも三回目くらいだけど。ありがとうねぇ」


「うふふ。でも、カッちゃんは恋愛対象にはならないかなぁ~。私。これでも仕事とプライベートは分けてるんで!」


(仕事で出会った人と色々あってから、別けるようにしてるんだっけか)


「でもでも、カッちゃん。良い人だからそのルール破っちゃってもいいかなぁ~。なんてね!」


(男と知っているとこういうセリフは複雑だよなぁ)


「そろそろ送ろうか?明日は仕事休み?」


「え~。もう終わり~?明日は~。休み!だから、まだまだイケるよ~!イエ~イ!」


 そろそろ眠くなってきたのだが、ヒナタさんはまだまだ飲み足りないのかねぇ。何度目になるかわからない乾杯をする。


 そして、一時間後。ヒナタさんは酔いつぶれてしまい起こそうとしても反応しなくなってしまった。しょうがないので、俺の部屋に運んでベッドに寝かせた。そして、別の部屋を一泊だけ借りようとしたのだが・・・。


「すまんね。今日は部屋が空いてないな。もうすぐ誕生祭があるからなぁ」


「誕生祭?」


「ああ。来月の第一日曜なんだが、遠いところからこの祭りを見にくる客が一週間前くらいから押し寄せてくるから、お前さんみたいに月契約で借りているやつの部屋以外はもう埋まってしまっていてな」


 なんか、この国の王様の誕生日を祝うお祭りだそうな。部屋が借りられないのならしょうがない。自分の部屋に戻り、床に寝ることにした。


 翌朝。目が覚めると体が節々痛む。やはり、床で寝るものではないな。起きて立ち上がると、ベッドにはなまめかしい姿で寝ているヒナタさんがいた。なんか服がめくれてほぼ半裸である。


「ぶっ!ちょっ!さすがにこれはまずいだろ!」


 男とはわかっていても、なんかやばかったので、シーツをかけ直して隠す。まだ起きそうにないので、先に朝飯を食べに行く事にした。


 飲んだ翌日のみそ汁って、なんか美味いよなぁ。とか思いながら食べていると、ヒナタさんが起きて降りてきた。なんか、顔が真っ赤である。


 朝食を持って来て俺の向かいの席に座ると、唐突に頭を下げる。


「ごめんなさい!昨日は飲みすぎちゃって!」


「ううん。別に良いよ。久しぶりに飲んで楽しかったし」


「昨日、いくらかかった?私が払うって言っていたのに酔いつぶれちゃったから・・・」


「うん。えっと、たしか。8000エルンくらいだったかな。でも、楽しかったから今回は俺が出しとくね」


「いいえ。ちゃんと私が出しますんで」


「いいからいいから」


「いいえ。出しますから」


「いやいや。そもそもヒナタさんが出す事ないよね?俺は良い仕事を紹介して貰っただけなわけだし」


「いいえ。それでも一度約束したからにはっ!」


「じゃあ、また今度飲む時に出してくれればいいから。その時は酔いつぶれないでくれると助かるかな」


「ちょっ!き、昨日は久しぶり楽しく飲んじゃって・・・飲み過ぎちゃって・・・。だから、普段はあんなに飲むことはないですからねっ!」


「へ~。じゃあ、今度飲む時にわかるね」


「そ、そうですね。じゃあ、それじゃあ再来週くらいにでも」


「了解。じゃあ、その時はヒナタさんが出すって事で」


「なんかごめんなさい。あと、ありがとうございます」


「朝から刺激的なものを見れましたので、逆にありがとうございます」


「え?」


「いえいえ。なんでもないです」


「え?あの・・・」


「そうだ。ヒナタさん。ちょっと聞きたいんだけどさ」


「え?はい。なんですか?」


「スキルってどれくらいのレベルで習得出来るものなの?」


「え?習得条件を満たしていたら、スキル一覧から習得できますよ?」


「え?」


 どうやら、俺はレベルが上がればスキルを自動で習得していくものだと思っていたのだが、どうやら違うらしい。レベルが上がるとスキルポイントというものが得られ、そのスキルポイントを使ってスキルを習得するんだとか。スキルの存在については日雇いギルドに登録する際に少し聞いて知っていたのだが、習得方法についてはこの世界の人には常識的過ぎていちいち説明するわけもなく。召喚者であることを黙っていた俺はそのことを知らないままレベル10までスキル未習得状態で苦労していたのだ。いや、昨日レベルが上がったから正確にはレベル11までなのだが。


 レベルが1上がるにつき、スキルポイントが10貰えるそうで、確認してみたら確かに610SPというのが確認できた。って、あれ?


「あのさ。俺はいまレベル11なんだけど。なんか110SPじゃなくて、610SPになってるんだけど」


「ああ。初期SPは500あったんですね。召喚者にしてはだいぶ少ない気がしますけど、私たちも物心ついた時には300くらいあるんで習得条件さえ満たしていればスキルを習得しますよ。でも、成人する15歳までは習得しないでおいて良いスキルを習得できるように待ちますけどねぇ」


「なるほどねぇ。それで、習得する時はこのスキル一覧ってところから?」


「そうですね。そこに習得可能なスキルが表示されますね」


「えっと。そうだな。最初は何を習得すればいいかな・・・」


「私は称号が【精霊使い】でしたので、精霊魔法系のスキルを身に付けましたね。でも、街の外に出ることが無いので、いまは後悔してますけど・・・」


 なるほどね。勢いで習得すると後悔しそうだな。じっくり考えなければ。と言っても、習得条件を満たしていないのか。表示されているスキルはだいぶ少ない。


「スキルについて詳しく知りたいなら、日雇いギルドの図書室に初心者向けの解説書があったと思いますよ」


「そっか。じゃあ、その本を読んでからどれを習得するか考えようかな」


「そうしたほうがいいですよ。私も今日は休みですから一緒に行きますね。カッちゃんがどんなスキルを最初に習得するか興味あるし」


「昨日の事。ちゃんと覚えているんですね」


「うん。酔っぱらってはいたけど、記憶は無くしたことないから、安心して。私がカッちゃんの友達第一号だよ!」


「よろしくお願いします」


「こちらこそ。不束者ですがよろしくお願いします」


「なんか、それ嫁にもらうみたいで嫌だな・・・」


「え?嫌なの?」


「いや。その。泣きそうな顔で言われても、友達としては問題ないからね?恋人となると話は別ってだけで」


「そ、そう?私としては恋人でも良いんだけどなぁ」


「え?」


「ううん。なんでもない」


 なんか、小さな声で何か言っていたが、何だろう?




ようやくスキルが自動習得では無い事に気が付いたカツオ。果たしてどんなスキルを習得するのか!?次回。ヒナタさんと図書室デート!?

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