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魔法を使おう

ふわあぁあ、ご飯だーーっ。どうしよう、これっ。

起きたら、ご飯が、たくさん。それも、虫とか野草じゃないんだよ。

お家でつくる、ちゃんとした料理なの。


でも、ちょーーっと怪しい気がする。

食べていいのかなぁ。毒の臭いはしないけど、誰が作ったのかな。

それに、ここ、さっきまでいた廃墟の外だよねぇ。


なにかを調理してるような音も聞こえてくる。

本さんが近くにいるのかな。でも、周りは見晴らしのいい草原だし、どこにいるんだろう。


お腹が、悩むボクにキュウと抗議する。……昨日は小さなお魚しか食べてないや。

ふわっふわの白パンと、タレがテカテカしてる、大きなお肉。

季節のお野菜をたくさん使ったサラダに、とってもいい香りのオニオンスープ。


あぅ、見てるだけでツバがたまってきちゃう。

お行儀悪いけど、誰も見てないし、一口くらいなら——


「おぅ、起きてたのか」

「ひゃあああごめんなさい食べないから怒らないでぇ!」

「はぁ? 何のために用意したと思ってんだ。俺はお前の師匠だぞ。生活の面倒は見てやるさ」

頭に、柔らかくて暖かい感覚がした。

怖い夢を観たとき、よくお母さんが撫でてくれたっけ。


「ほら、さっさと食え。冷めちまうぞ?」

「はぁい。いただきます!」

おいしい、おいしい、おいしい。味覚がしあわせぇ。

「ごちそうさまでした」

「細っこいわりに、健啖家だな。作りがいがあるってもんだ。さて、魔法の授業だ。なんでもいい、使え」

「本さん。ボク、たくさん練習したけど、なにも使えないの」

「……ふむ。では、目を閉じろ」


そっと目を閉じる。眠たいよぉ。

「お前は一滴の血だ。心臓から旅立ち、戻ってこい。終わったら寝ていいぞ」

「ふぁい……」

心臓からトクトクと押し出されたボクは、大冒険を繰り広げた。

なんども迷子になったけど、ようやく戻ってこれたんだ。

これで寝れるぅ。


「む……にゃっ? 本さん、先に進めないよぉ」

「——ほぅ。お前、利き手は?」

「えぇっと、右だよ」

「手を突き出せ。目は閉じたままでいい。目の前になにがある?」

「ボクの心臓があるよ」

上出来だ、と呟いた本さんが、笑ったような気配がした。


「心臓を守る罠があるようだ。右手から飛び出して罠を壊せるか?」

「がんばる!」


心臓から、右手に意識を流して、そのまま、一方前へ。

あれ、出れないよぉ。はやく寝たいのに。

はっ、だめだめっ。落ち着くのよ、ニナ。

猫又族のレディーなんだから、いつでもクールでいなきゃっ。


タイミングをあわせて、いち、にぃ、の、さんまーーーーっ。

ごう!と右手から、ボクが飛び出す。


現実のボクは、引っ張られて空に浮いた。

ひにゃあああ、目が回るううぅ。

本さんと地面がボクから遠ざかって、そして近づいてくるのが見えた。


こここここ、怖くないもんっ。

全身のバネを活用し、着地の衝撃を受け流す。

やけに身体が軽いから、思わずポーズまで決めちゃった。


「ただいま!」

「おかえり。どうだ、魔法を使う感覚はつかめたか?」

「さっきのが、魔法……」


じんわりと熱を持つ手を、にぎにぎ動かす。

使えた。やったよ、ペロ。ボクにも、魔法が使えるんだ。


「——さぁ、もう疲れたろう。ゆっくり休め。火の番は俺がする」

「本さんはどうするの? 交代しなきゃ寝れないよ」

「睡眠は必要ねぇよ。俺は、魔導書だからな」

「そうなんだ。お休みなさい、本さん」

「お休み、ニナ。いい夢を」


お腹もいっぱい。本の師匠にも会えた。

生きててよかった。明日、起きるのが楽しみだなぁ。

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