夜の匂い
るなは バイクの鍵を探した
薄暗くなった部屋はいまいちどこに何があるかわかりにくい
しかしいてもたってもいられずに 壁のフックにかけてあったヘルメットのおしりを叩くように持ち出すと チャリっと鈴の根がが響いた メットの中に鍵をいれて置いたのだった
るなは革のシースに先ほどのサバイバルナイフを収めとベルトの腰部分に横一文字にくくりつけた
そしてスニーカーの紐を結ぶと金属の板でできた階段をゴーンゴーンと音を響かせて降りていき バイクに飛び乗る スカートは翻り白いふとももは露になるがそう言ったことは気にする性分ではない 早速セルを回した
キュキュキュ キュキュキュ
「この子は寝起きが悪い」
ぼそっと彼女はいうと少し嬉しそうでもあった
革のグローブを肘の方に引き寄せるとチョークを引いた
夏場でもこの子はチョークが必要でそれすら楽しみだとるなは思っていた レトロな曲線がふんだんに使われたそのバイクにエルメスと名づけて気晴らしに何処へ行くでもなく走らせるのが好きで自分語りを満喫するためのツールとしても相棒としても気に入っている
辺りは夜の緑の香りや木の実の香りが立ち込めて湿気を少しおびた空気が少し肌寒いくらいだった
やがてセルの回る音から単気筒のエンジンが爆音を放ち辺りの静けさを奪いるなは加速する車体に身を預けた 長い髪は舞うように街灯に照らされ煌めいていた