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第一話

携帯投稿なので文字少なめで投稿です

「有希もうやめろ! こんなことしちゃいけない!」


 僕の召喚獣ユーピニオンドラゴンがブレスを吐く。辺り一面の大地は捲れ、爆風にまかれて敵モンスター達が散らされていく。そして爆風は有希にも牙を向き迫り来る。

 だが有希の背中に生える翼により軽々と弾かれてしまった。

「兄様は……絶対女神である私には勝てません!」


 あの日、僕達兄妹は過ちを犯した。きっとこれは、あの日の罰なのだろう。そうあの日、僕と妹は越えてはならない一線を越えてしまったんだ。思えばすべて僕のせいだった。どうして僕は妹の願いを受け入れてしまったんだろう。

 それは僕の弱さだったんだ。

 兄として未熟ゆえの過ちだった。そして罪に苛まれた妹は……もう過去は取り返せない。妹との楽しいひと時も笑い声も全て。

 決着は僕がつけなければいけない。





「凄いな有希、今回も成績トップかぁ」

 張り出された学年順位表の一位には当然の如く、妹の有希の名前があった。

 妹は優秀だった。そして僕は落ちこぼれだ。

 妹である犬養有希いぬかいゆうきは僕とは似ても似つかぬほど全てが優秀だった。

「また犬養さん一位じゃん」

「なんで犬養さんこの学園に来たんだろうね? もっと偏差値の高い学校に十分行けたのに」

「ホントだよね! でも凄いなぁ。勉強教えてもらえないかなぁ」

 白波学園高等部。この学園は超進学校で親は期待を込めて子供を学園に入学させる。この学園を優秀な成績で卒業すればエリートコースが約束されるからだ。それは勿論生徒自身も解っている事だから、当然全員成績には過敏に反応する。

 かく言う僕も親から期待されてこの学園に入学したけど、成績は下から数えたほうが早くて、親からはもう見放されているから、生徒間の順位争いには興味なかった。ただ成績でカーストが決まる学校なので、僕は常に階級上位陣のストレスのはけ口になっていた。つまりイジメってヤツだ。

 一方妹の有希は成績が常時学年トップ。だからカーストのトップに君臨していた。有希の周りには何時も友人達がいる。そして異性にも人気があった。

 まぁ確かに有希は僕から見ても可愛いと思う。顔立ちは切れ長の目に整った鼻梁。髪は腰まで伸ばしたストレートヘアーで風になびくと艶やかにきらめく。

 学園で有希はアイドルだった。

「兄様」

 僕が学年順位表を見ていると、超久しぶりに妹の有希が近づいてきた。

 学園で僕に話しかけてくる事はほぼ0だった。

「あ、あぁ有希。どうしたの?」

 驚きで、僕は少しだけ口ごもって答えた。

「今日は一緒に帰りませんか?」

 ジッと僕を見つめて聞いてきた。実は今日はアニメイトに寄ろうと思ってたんだけどなぁ……という僕の考えなど聞く耳持たぬというオーラを醸し出して、

「じゃあ、帰りわたしの教室に寄ってください」

「あ……うん」

 ヘタレな僕は断ることが出来ずに、一方的に決められてしまった。



 放課後、僕は二年生のクラスがあるB棟に向かった。妹の犬養有希は白波学園二年生、僕の一学年下だった。

 有希のクラスに行くと、既に有希が廊下で待っていた。

「兄様遅い。妹を待たせないようにもっと早く来るべきです」

 少し怒っている。有希は時間にはうるさかったからなぁ子供の頃から。いや、時間という事じゃないな。言うならば有希は理想主義者ってやつだった。悪く言えば寛容さがなく自分勝手な理想を押し付ける迷惑な人間って事になる。それが災いして小さい頃は友達も少なかったんだよな。まぁしかし、今はそんなことないようだ。有希の周りには何時も友達がいるから。

 でも、これでも授業が終わったら速攻で教室から抜けてきたんだけどなぁ。クラスの奴に捕まるとイジメられるから。まぁ確かに若干遅かった自覚はある。

「ごめんごめん。急いだつもりだったんだけどごめん」

 などとつい余計に誤ってしまう。イジメのせいかもうクセになってるなぁ。

「まぁ遅れたことはいいです。それより兄様、その謝るクセは辞めたほうがいいんじゃないですか?」

 ムッとした表情で有希が僕を見つめる。結構迫力あるな。

「う、うんそうだな」

 たしかに有希の言うとおりだ。ごめんという言葉の価値が超デフレになっているのは自分でも感じていたことだった。そうだな、もう簡単に言うのはよそう。それにしても、こんなこと妹に注意される兄ってどうなんだ?

「でも……いいわ。さあ兄様帰りましょう」

「?」

 有希は何か言いたげだったけど、僕達は廊下を進んで校舎を後にした。


 下校途中歩きながら、

「有希、何で今日は一緒に帰ろうなんて……?」

「い、いけませんか?」

 有希は珍しく言いよどんだ。

 それにしてもこんなことは中等部にいた頃以来だった。有希とは仲が良くて、有希が中等部に入ってしばらくは一緒に登下校していたものだった。でも暫くしてから、有希が急激に距離を置くようになった。それはつまり年頃というやつだ。異性と歩くのを急に意識してしまう年齢を迎えたんだろう。僕にはそういう意識はなかったけどね。だって妹だし。

 それ以来お互いに話すことはほぼ無くなった。だから四年近くは一緒に歩いていない計算になる。

「いや、久しぶりだなって思ってさ」

「そうですね。兄様とこうして歩くのは久しぶりです。話すことも」

 同じ家から学校に通い同じ家に帰るというのに、四年近くロクに会話もしていないのだった。年頃の妹がいると普通そうなのだろうか?

「ところで兄様?」

「うん、何?」

「あの、いつも私のせいですみません」

 と言って有希は俯いた。

「どうしたの? 急に?」

「兄様その……クラスでイジメられてますでしょ?」

 ああ、そりゃ知ってるよな有希は学校のアイドルだから。その兄がイジメられてるってのは充分学校のニュースになるかな。

「うんそうだけど……でもなんていうか有希から言われるとな……」







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