見知らぬ場所と落下
目が覚めたら、目の前には木々が生い茂っていた。
さっきまで学校にいたはずだ。
「森の中…かな?」
「たぶんそうだと…」
大介より早く目が覚めたらしい智也と綾子が喋っていた。しかしそこに椎名の姿はない。
「おい、智也。椎名はどこだ?」
智也は首を傾げた後、すぐにニヤリと笑った。
「大介ちゃん、この状態になって最初に椎名さんの事を考えるなんて…もしかして…」
大介は肩をまたかと言わんばかりに落とす。
「別にそういうわけじゃないが、最初に椎名の事を考えるのは普通だろ?」
それに応えたのは綾子だった。
「確かに椎名さんがこの場にいる方が自然ですよね?あの状況ですと…」
大介が考えてるのとは少し考えが違っている。
大介は椎名を疑っている。椎名がココに連れてきたと考えてる。
その時だった。ガサガサという音ともに、近くにあった木から何かが落ちてきた。
地面とぶつかる鈍い音がする。そこには椎名の姿があった。
「うぐぅ…」
「マジでヤバイやつじゃん!今の音とか!」
智也が慌てる。綾子は椎名の元に駆けつけた。
確かに今の落ち方や音には危険な感じを大介も感じていた。しかしそれ以上に大介は椎名がいた喜びや安心を感じた。
これでここがどこかがわかるかも。その淡い期待。
「椎名さん、大丈夫ですか!!?」
綾子が今にも泣きそうな声で叫ぶ。その様子が大介にもただ事じゃないと察しれた。
このままじゃ何もわからないかもしれない。
大介はそう思った瞬間椎名が落ちてきた木を見上げる。高さはジャングルジムの一番上程度の高さだ。そしてここら辺の地面は黒い土が敷いてあり、その上に枝などがたくさん落ちている。
「あいたたた」
可愛らしい声が聴こえた。何よりも安心感が大介にも戻った。
「椎名さん、大丈夫ですか?」
「うん!でもお尻うっちゃった」
お尻を摩る椎名、その横で心配そうに見つめる綾子と、笑顔の智也。
大介は何を思っているのだろうか。
静かに椎名に駆け寄る。無表情だった。
安心感が戻り、その感情が一瞬で他の何かに変わっていた。