ロッカーと筆箱
転校生の椎名が来てから可笑しなことばかりだった。
授業の終わりを告げるチャイムが鳴らなくなってしまったり、美術室の机がなくなったりした。
極めつけが同じクラスの星井綾子さんの筆箱の中に急に、大きなウシガエルが入ってたりした。
誰かのイタズラかと思われたが誰も名乗りではしなかった。
そしてついに、今日の学校生活を終えることができる時間がきた。
大介は早く片付けをして、帰ろうとしたら。
「おい、大介ちゃん待ってよ。掃除手伝っておくれ」
めんどくさいのがきたなと大介は思った。
大介にとっては幼馴染であり、大親友の緒方智也。サッカー部に所属しており、イケメン。帰宅部の大介とは違って女子から人気がある。
しかし、何かと軽い感じがある。長いこと一緒にいた大介からしたら、本当は智也は本当は芯が通っており、かなり頼れる奴だとはわかっている。
「なんで俺が…」
「そこをなんとか!」
大介は自分でわかっている。自分が推しに弱いと。
「しょうがないな」
大介はしぶしぶと了解する。
「ありがとねぇ!持つべきものは友だよ♪」
智也が大介の手を握る。しかし一瞬で振りほどかれた。
「ひどいにゃ」
大介はスルースキルを駆使した。
2人で掃除用具を入れるロッカーの前に行く。そこに今にもロッカーを開けようとする、綾子の姿があった。
「あれ?菊池さんって掃除当番でしたっけ?」
綾子が首を傾げる。
「いや、違います。でも掃除を手伝うんです」
大介は簡単に答えた。大介は人と話すことが苦手だった。
「あ、ありがとうございます」
「いえ、どうせ俺帰宅部ですし」
大介にとってこれ以上の会話は不可能だった。そして綾子も普段は大人しい性格である。
「大介ちゃん、もっと話繋げようよ?」
「さっきから指摘しなかったが、そろそろ限界だ。大介ちゃんと呼ぶのはやめろ」
智也は仕方ないなと言わんばかりの顔をしただけだった。これは懲りてないなと大介は直感的にわかった。
「さあ、掃除しましょう?」
綾子が気づかいをしてくれた。しかし大介と智也にとってはこれがいつものことであり、そこまでピリピリとした空気ではなかった。
そこにテケテケとふわふわの薄い緑の髪の毛をした娘が歩いてきた。
「あっ、椎名さん」
綾子が椎名に挨拶がわりに軽くお辞儀した。
椎名は少し黙り、キョロキョロした後
「どうもです」
ニコリとしながら言った。
初めて喋る人にあそこまで笑顔で喋れるとは…
大介は関心した。今までそんな人間は智也ぐらいしか知らない。
そして椎名はロッカーの扉を掴む。
「あれ?掃除は私たちがするけ…」
綾子が言う前に椎名はロッカーを開く。
すると中がピカーンと光る。
「うわっ!!なんだ!?これはぁ!?」
智也が叫んだ途端、大介と智也と綾子の身体を光が包んだ気がした。そしてその瞬間、3人の意識がなくなった。