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存在干渉の法則  作者: たびくろ@たびしろ
神代・立花編
9/110

交差点での出来事

この世の中はとっても不思議だ。

そう、私は思う。

だって。

「もう一回死にかければ帰れるんじゃね?」

目の前に、大好きな人が。

「何、お前俺を殺したいの!?そんなに不確定要素に俺の命を託せるか!!」

二人もいるのだから。

「結局、いいアイデアは出ない、と。やっぱりネットか何かで調べた方が」

「「嫌だ」」

私がそう言うと、二人は口を揃えて断った。いや、絶対ネットの方が楽でしょ。

しかし、彼らには彼らなりのプライドが存在するようだ。ネットの必要性を否定する年寄りか。

そんな二人の後を付いていく私は、どこか嬉しかった。

私、立花真咲は、目の前の少年、神代透が大好きな高校生。JKですよ、JK。

そんな私だけど、特に華々しい青春ライフを送れているわけでもなく、それどころか同性にまで気味悪がられる始末だ。

何故なら、私の瞳は赤いから。病気なのかは分からないが、生まれつきこうなのだ。この超能力者じみた赤い瞳のせいで私は友達も出来ず、いわゆるボッチな高校生活を送っていた。

だけど、神代君はそんな私を気味悪がらなかった。こんな私でも分け隔てなく接してくれるあの人に、私は次第に惹かれていった。

いつも彼の側に居たかった。いつでも彼を見ていたかった。

でもですね、どうやらこの行為は『ストーカー』と呼ばれるらしいです。はい。

そんな生活を続けていって、ついに彼と付き合うことに(半ば無理やりだが)なった。

だが、そんな時。


『えええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええ!?』


困惑した叫び声を彼の家で聞きつけ、二階へと上がってみると……彼が増えていた。

二人になっていた。

話を聞いてみると、どうやらどこかトンデモな超次元に巻き込まれてここに来たとか何とか。

見分ける事は出来ていた。その偽者らしき神代君の瞳は、緑色に輝いていたからだ。緑色の神代君によると、あっちの世界ではそれが当たり前だという。めんどくさいからこれから緑色の瞳の方を緑の神代君と呼ぼう。

まぁ、そんなこんな一部始終があって、何故か図書館へと赴くことになったのだ。まったく、本当はこれから神代君と二人でデートに行くところだったのに……。

「おい、なにしょげてんだよ」

緑の神代君が声を掛けてきた。いや、ほぼお前のせいだ。

なんだか、私は緑の神代君に違和感を覚えていた。なんというか、こちらの神代君とは雰囲気が違うような……だけど何故かどこにいても見付けられるような、そんな『存在を感じる』ような感じもした。

「あ、そういえば立花」

「え、あ、な、何?」

今度はこちらの神代君が話し掛けてきた。突然だったのでキョドってしまった。ここがダメなんだなぁ、私。

「そういえば、さっき言ってた頭痛。治ったか?」

「頭痛……あぁ、そういえば。うん、大丈夫だよ」

そっか、と言ってこちらの神代君は再び前を向いた。……優しい、やっぱり。

ちょうど学校から帰る時、私は一瞬だけ頭痛を感じた。いや、頭痛というよりは脳に電磁波を突っ込まれたような、痺れたような感覚。

……まぁ、すぐに治ったから大して気にもしていなかったが。

と、私は急に目の前の神代君にぶつかった。こっちの世界の神代君に。

「ん?どうしたの?」

「どうしたのって……赤信号だろ。ちゃんと前見て歩けよ」

見てなかった。注意不足ですね。

しかし、車道の方の信号も赤に変わっていた。後少しすれば、歩道の信号は青に変わ……あ、変わった。

「よし、行こうぜ」

「あ、ちょっと待ってくれよ。靴ひもが……」

緑の神代君が靴ひもを縛りながらそう言った。しかし神代君は聞いていなかったのか、一歩踏み出そうとする。


「―――――――――!!」


私は、無言のまま神代君のフードを後ろに引っ張った。突如引っ張られた神代君は、そのままバランスを崩し後ろに倒れこんだ。

「おい!!何すんだいきな―――――――」

私に向かって抗議しようとした神代君は、しかし目の前の光景を見て口をつぐんだ。

目の前の横断歩道。本来歩行者が通るタイミングである今、



猛スピードで、赤いスポーツカーが横断歩道を横切っていった。



「―――――り……!?」

神代君は驚愕していた。他に歩行者が居なかったから良かったものの、あの時一歩踏み出していたら神代君はあのスポーツカーに弾き飛ばされていた事だろう。あのスピードだ、死ぬに決まっている。

「あ、危なかったね……はぁ、良かった……」

私は思わず溜め息をついた。それは驚きからの変化によるものでもあるし、安堵が身体から滲み出たからでもあった。

思わずその場にへたりこむ。怖かった。神代君が牽かれていたらどうしようかと考えてしまった。私は頭を振り、そんな恐ろしい考えを頭から振り払った。

と。

「ありがとう!!マジでありがとう!!死ぬとこだった!!マジで!!マジでありがとうございました!!」

神代君に、目の前で土下座された。いや、とりあえずこの人が通り掛かる往来で土下座はやめてください。こっちが恥ずかしい。

……とはいえ、大好きな人を守れたのだ。それは、誇ってもいいと思う。

なんだか、ちょっとくすぐったいな。むふ。

今も交差点では人のざわめきと共に、信号の甲高い音が一定間隔で鳴り響いていた。

シリアス「すいません、ちょっとだけお邪魔しますねー」

ほんのちょっとだけでしょ、まったく。

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