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存在干渉の法則  作者: たびくろ@たびしろ
二人の同型真像の少女
89/110

謎の少女

「……あ、れ?」

私の傍らから、そんな声が聞こえた。

自らの机の上でパソコンをいじっていた私は、そんな声のする方へ顔を向けた。そこには私のベッドがあり、その上には『彼』が寝ている。

緑色の髪の毛、緑色の瞳をした、

緑色の少年が。

「……起きた?エノ君」

「マサキ……」

目の前の少年は、泣き出しそうな顔をしていた。

おそらくは、先程のことを申し訳なく思っているのだろう。いや、きっとそれどころじゃない。思いやりや感受性が強い子だから。

「……僕……マサキを……」

私は机から身を離し、エノ君の寝ているベッドに腰掛けた。慌てて起き上がろうとするエノ君を諭し、私は話し出す。

「大丈夫、エノ君のせいじゃないよ。悪いのはエノ君を操っているヤツなんだから……」

確信が持てるワケじゃない。エノ君が誰かに操られている、なんてのは私がその場で造り上げた予想だし、きっとエノ君にもそれを裏付けするための記憶はないだろう。

実際、エノ君は黙って俯いたままだ。状況が分からず、自分が何なのかもわからないような、そんな感じ。

「……私ね、信じてるから」

そんな彼の頭を撫でながら、私は微笑む。

上手く微笑むことが出来たのかは分からない。実際、私も何でこんな心理に陥ってるのかすらわからないからだ。

でも、これだけは確信している。

「エノ君は……私を傷付けるような人間じゃない。私の事を大事に思ってくれてる……とっても優しい子だよ」

「でも……でも……!!」

エノ君の言葉に、嗚咽が混じる。やっぱり、彼自身のメンタルはか弱い。

「だって、泣いてくれてるでしょ?」

「…………!!」

「私に申し訳ないって思ってるから……私が大事だから。そうだよね?」

彼は小さく頷く。自身の涙を拭いながら、何度も。何度も。

だからこそ、私は信じてる。



君は、私なんかよりも、ずっとずっと、優しい人間なんだって。



こんな復讐にしか心を燃やせない女より、よっぽど出来てる人間なんだって。



別に、自分を卑下しているワケじゃない。自身に悲観的なワケでもない。

ただ、比較対象が私なだけ。

そう考えると、目の前の少年がとても哀れに思えてきた。

こんな人に好かれるような性格をしていながら、恐れられる外見。

何処の誰かも知らない人間に(予想ではあるが)操られて、殺しなんてしなくてはならなくて。

まるで、生を縛られているかのように。

そう、鳥籠に囚われた、羽ばたくことのできない鳥のように。

「……本当に優しい子だから。私なんかの所に突然現れて、私の心を癒してくれて」

「ぼ、僕は別に何かしたわけじゃ……」

何だか、私はこんな事ばかり言っている気がする。

いや、こんな事しか言えないほど、私は彼に癒されているのだ。彼の笑顔に助けてもらって、私の心の傷を埋めてくれて。

感謝しても、しきれないくらいだ。

「そ、それにあの人が居なかったら……やっぱりマサキを殺してたと思うし……」

不意に、エノ君が意味深な発言をした。

「……あの人?榎田サンの事?」

「榎田サンっていうの?あの黒髪の人?」

黒髪と言うのだから、きっと榎田サンの事だろう。実際、私を助けてくれたのは榎田サンなんだし。

しかし。

「……うーん、違うと思うなぁ……前に会った気がするし……」

「え?」

前に、会った?

それはおかしい。

確かに、私は榎田サンとは一度会った事があった。水瀬に呼ばれた時だ。

しかし。


その時、エノ君は連れていかなかったハズだ。


(……前に……うーん……?)

エノ君は物事を記憶するのが苦手な方だ。実際、私もなのだが。

しかし、私は滅多なことでは外には出ない。高校も神代君が死んでからは、一度も行ってない。

なので、外出した記憶は鮮明に覚えている。数少ないからこそ。

別に、威張ることではないのだが。

(一個一個思いだそう……)

最新のは水瀬に呼び出された時。その前には、あのボクっ娘の家。

あの時は……なんで偽者を殺さなかったんだろう。やろうと思えば、できたハズだ。

エノ君……何気に同型虚影(ドッペルゲンガー)と仲良かったなぁ。ちょっと複雑な感じ。

「――――――!!」

その時、私は思い出した。

そう言えば、私はあの時以外エノ君を同型虚影(ドッペルゲンガー)共に会わせたことはない。と、いうより人と会わせすらしてなかった。

そして。

あの中で、黒髪の人間といえば。

「エノ君。それってさ、確か女のクセに僕とか言ってたヤツじゃなかった?」

それを聞いて、エノ君も思い出したように、

「そうだ……サヨだ!」

「サヨ?」



「確か……二十八小夜って名前だったと思う!」



「二十八……小夜……」

私は、それに少し引っ掛かった。

アイツは、確か自分の事を『正体不明(イレギュラー)』と名乗っていた。表の人間でもなく、裏の人間でもない。

だけど、アイツは神代君の偽者の力で裏世界に戻ったハズだ。

そして、ここは表世界。

アイツの能力は、能力を持つ人間と持ってない人間を繋げる能力。

なら、



アイツはどうやって、表世界に来た?



偽者の力を借りた?いや、それなら偽者もいたハズだ。

「ねぇ、その二十八小夜以外に、誰か居なかった?」

「いや……サヨだけだったよ?」

だったら、偽者に連れてこられた説はあり得ない。隠れていたとかはあるかもしれないが、わざわざ隠れる意味がないのだ。

「…………?」

アイツは、一体何者なのだろうか?

まさしく、『正体不明』だった。

何気に重要ですよサヨは。

ちなみにエノ君は親しい人の名前をカタカナで呼びます。小説ってこういうところで個性を出せるからいいですね。

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