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存在干渉の法則  作者: たびくろ@たびしろ
二人の同型真像の少女
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豹変する少年

「~♪」

時間としては午後10時くらい。食器洗いを少しだけエノ君に任せて、自分はシャワーを浴びている。

特にやらなければいけない事もない。なんとなく、今は少しフリーな感じがする私、立花真咲である。

「……エノ君ちゃんと出来てるかなぁ?」

一応、彼からの申し出によって、月三度くらいのペースで手伝ってもらっている。が、彼はそういう作業が少し苦手な節がある。まぁ、大丈夫だとは思うが。

「……っと」

バスタオルを手に取り、私はバスルームから出る。自分の金髪から水滴が落ちる前に、私は急いで髪を拭く。この髪は結構長かったりするので、拭くのが少し面倒だ。ていうか、全然髪を切りに行ってないため、もうなんかヤバイほど伸びている。肩甲骨の下くらいまでは伸びているだろうか。

髪を拭き終わった私はバスタオルを身体に巻き、ドアを開ける。そこには、食器を洗い終わりのんびりしているエノ君が居た。

「あれ?マサキ、もう上がったの?」

「うん。そっちこそ、食器洗いは?」

「終わったよ。もう結構やってるから、慣れてきた」

そう言って、彼は小さく笑う。無邪気に、純粋に。

(癒されるなぁ……)

正直この笑顔は、長い砂漠の果てにオアシスを見つけたかの如く癒される。なんというか、可愛い。子供特有の可愛さというか、そんなものが滲み出ている気がする。

「……そう。ありがとね。助かってるよ」

なのに、私ときたら。神代君の仇も取れず、結局はただのんびりしているだけ。

同型真像(オリジナル)には、裏世界まで行く手段がない。だから、あちらから来ない限り、私があいつを殺す事は出来ない。

早く、終わらせたい。偽者を殺し、裏世界の計画を潰し、そしてエノ君と日常を過ごしたい。

「……どうしたの、マサキ?なんだか、すごく苦しそうだよ」

「うぅん、大丈夫」

私はそう言い残し、居間を去る。自分の部屋で、いつものジャージに着替える。

(……どうしろっていうの)

ジャージの袖に腕を通す。

理不尽過ぎる。表世界(こちら)からの攻撃方法はない。なのに裏世界(あちら)側は自由に世界を行き来出来て、しかも同じ自分なら触れただけで殺せる。

なんで。

なんで、表世界(こちら)側には、一つも対抗策が無いのだろう。

『紅い目』なんて些細なものだ。あちらが来なければ、ただの気持ち悪い瞳。日本人のくせに紅く染まった、蔑まれるような人間。

私にも、力が欲しい。

偽者(ヤツ)を殺せるような、そんな便利な力が。

そうやって歯噛みしながら、私は部屋を出る。居間に戻り、ふとエノ君に目を合わせる。

と。

「マ……サ、キ……、」

「ッ!?」

エノ君が頭を抱えながら、苦しんでいる。テーブルに座ったまま、身体を震わせている。

「エノ君!?大丈夫!?」

「……に、」

彼は、小さく呟いた。



「……逃……、げ……て………………!」



「え?」

瞬間、彼の震えが止まった。

まるでスイッチを切ったかのようなその動きに、私は一瞬たじろいだ。

と、

「ッグ!?」

拳が飛んできた。それは私の腹へと吸い込まれ、私は衝撃によって勢いよく吹き飛ばされた。

「……、エ、ノ……君?」

「……マ……ササササ…………キギキギギキ……!!」

声がおかしい。喋っている言葉が、ノイズを入れたかのように荒ぶる。テーブルからゆっくり立ち上がる彼の目は、


両方、黒く染まっていた。


「……ッ!?」

「……『Black-eye』、遠隔操作モードヲ確認。コレヨリ、身体、及ビ精神的ナ全権ヲ操作者ニ委譲シマス」

言葉のイントネーションが、驚くほど均一だった。まるで、ロボットのような。

「エノ君!?エノ君、どうしたの!?なんでそんな……!!」

「…………」

彼は喋らない。感情のない瞳で、私の事を見つめる。

台所から、包丁を持ち出しながら。

「――――――!!」

私は、瞬時にやるべきことを判断した。この選択が出来ていなければ、私は今頃死んでいただろう。

私が咄嗟に横に動いた瞬間。


元居た場所へと、包丁の切っ先が刺さったからだ。


(逃げなくちゃ……!!)

私はそのまま玄関へと向かい、家を出た。階段を降り、道路へと駆け出す。

しかし。

ガラス窓の割れる音と共に、彼は外に飛び出してきた。

(ありえない……!!私の部屋は二階なのに……っ!!)

私の部屋はアパートの二階。死にはしないだろうが、それでも衝撃はあるはずだ。

なのに、彼は特に痛がりもせず、私の事を追い掛けてくる。

(クソッ……何なんだよ、これ……ッ!!)

いつも使っている拳銃も、風呂上がりに襲われたんじゃ持っているハズもない。一方、あちらは包丁持ちだ。スピードも私より少し早い。そもそも運動神経のない私は、彼から逃げ切れる自信がなかった。

一体、何が起こったのだろうか。それすらも、よくわからない。よくわからないうちにエノ君がおかしくなって、私に刃物を向けてきたのだ。

と、その時。

(あれ……!?エノ君から……同型虚影(ドッペルゲンガー)の反応が……!?)

いつもは何の反応もなかった彼が、今は私の『紅い目』に反応している。

(なんで……!?)

そう考えてる間にも、エノ君は私にも追い付いてくる。いつの間にか、私の後ろにまで近付いていた。

「――――――ッ!!」

咄嗟に、私は身体を屈めた。一旦走るのをやめ、転がるようにエノ君へと向かっていった。

一瞬遅れて、エノ君の刃が私の頭上を行く。私の伸びた金髪が、微かに切られる。

しかし、その刃は私には当たらない。エノ君を転ばせる感じで、私はエノ君の足を掴み、倒す。

「…………!!」

エノ君は無言で横転した。地面に突っ伏し、再び立ち上がろうとする。

私はその包丁を奪い取り、そしてエノ君の首元へと構えた。

「動か……ないで……!!」

僅かに息切れするも、エノ君の動きを封じた。

「……なんで……こんなことするの……!?」

「…………」

私が聞いても、エノ君は答えない。その無表情を、崩そうとはしない。

さらに首元へ包丁を近付ける。

「答えて……いや、答えろよ!!」

言葉を強める。しかし、それでもエノ君は何も言わない。

「…………っ!!」

殺せ。

こいつを、殺せ。

こいつは、同型虚影(ドッペルゲンガー)だ。裏世界の人間だ。しかも、私の命まで奪おうとしてくる。

「ぅ……ああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああッッ!!!」

私は、彼の首へと、包丁を振るった。

久しぶりに立花書いたなー、ていうか最近更新ペース遅いですね。すいません。

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