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存在干渉の法則  作者: たびくろ@たびしろ
進みゆく物語
80/110

もう一つの顔

「な、なによ……どうしたの、透」

その日の夜。

いや、時刻は既に深夜を回っている。大体、午前三時というところだろうか。


真咲の死。


それについての警察沙汰で、結局問い詰めるのが遅くなってしまった。

俺はお袋の襟首を掴んだ。体重はそんな重くはなかった。問い詰めるのには十分だ。

「お袋……アンタ、何か知ってんだろ」

考えてみれば無理やりだったかも知れない。お袋と真咲には、何の関係も無いのだ。

だが。

お袋は小夜の性同一障害に気付いていた。小夜とお袋には何の接点も無かったハズなのに、だ。

小夜自身、お袋には会った覚えすらないと言っていた。とても嘘をついているようにも見えない。

「な、何の事かし……ら?」

「ふざけんな。アンタは小夜の性同一障害に気付いてた。小夜はアンタなんか知らないって言っていた」

「ん……く……ぅ」

「アンタ、何を知ってんだ?『組織』について、何か知ってる事があるんだろ?」

俺の態度は、驚くほど冷静だった。多分、真咲の死から時間が経っているからだろう。

俺の復讐劇の組み立てを、一寸を狂わず行う事。

それだけを、考えられている。

「……は、なしなさ……い。母親に、対して……それは許さな、いわ……」

「うるせぇ。アンタはもう母親なんかじゃねぇ。『水瀬江里(みなせえり)』だ。アンタの旧姓だろ?いいから教えろよ」

「…………ククッ」

次の、

瞬間。


「ククククッ、クハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハッッ!!」


「ッ!?」

その瞬間から、『神代江里』は『水瀬江里』になっていた。

笑い声とともに、母親の表情が豹変する。残酷な笑みを浮かべる、心底楽しそうな顔に。

「知りたいの?私のもう一つの姿を。あなたの母親とは違う、『水瀬江里』の姿を!!」

その時。

「ガハッ!?」

彼女の右足が、俺のみぞおちに命中する。思わず、襟首に掛けていた手を緩めてしまう。

その手が、無理やりほどかれる。

(しまっ――――――)

彼女は俺の肩と腰を掴み、そのまま柔道の背負い投げの要領で横に投げる。とっさの抵抗が出来なかった俺は、そのまま投げ飛ばされる。ドスン!!と、床に叩き付けられた俺は、とっさに起き上がろうとした。

が。

「させないわよん♪」

お袋、いや、水瀬江里は、俺の背中をとんでもない力で踏みつける。あの華奢な身体から繰り出されるのが信じられないほどの威力だった。俺の肺から、勢いよく酸素が飛び出していった。

そのまま動くことが出来ない。

「舞ちゃんもあなたも同じねぇ。変に暴力振るわなければこっちもやらないんだけどなぁ」

その時、俺は妙な突っ掛かりを覚えた。

「ま……い、だって……!?アンタ……やっぱり……」

「えぇ、そうよ。でもね、私は『組織』の人間ではない。むしろ敵対しているのよ」

そう言った瞬間、俺の身体が持ち上がった。彼女が俺の背中を掴んで引っ張っているのだ。

彼女は俺を一回転させると、俺に顔を近付ける。


「分かる?私はあなたのミ・カ・タ♪」


楽しげな声でそう言った後、彼女は俺を蹴飛ばした。やはり女性とは思えない力だった。俺は弾かれ、そのまま後ろに壁に激突した。

「あガッ……!!」

「いやぁ、でもやっぱり息子ってのは特別なポジションよね。本当だったら腕一本折って黙らすんだけど……やっぱし情が移るね」

まともに息をする事すら苦痛な俺に、水瀬江里は笑顔で言う。

「舞ちゃんは一本折ったわよ、右腕をね☆」

「なっ……!?」

俺が信じられない、という顔をすると、彼女は俺に近付いてくる。

「だってー、話聞いてくれないんだもの。しーんぱいしなさんな、人間腕の骨折ったくらいじゃ死なんっちゅーの。ダイジョビダイジョビ」

次々と恐ろしい真実を笑顔で暴露する『元母親』に、俺は本気で恐怖感を覚えた。

今まで知らなかった母親の裏側。

名字が変わるだけで、こんなにも逆転する人間の本性。

いや、違う。

彼女の場合、名字を逆転の基準としていただけだ。

本当の彼女がこっちである可能性だってあるのだ。いつも俺に見せていた『神代江里』は、偽者なのかもしれないのだ。

「だーかーらーぁー、ちゃんと話を聞きなさい?大丈夫、私はあなたのミカタだって言ったでしょ?」

話を聞くも何も、今の俺に彼女を拘束する術は無いように思える。

圧倒的な武力。

それでいておちゃらけた口調。

どれもこれも、俺を恐がらせるには十分だった。

まるで、こんなもの本気ではない、とでもいうかのような威圧感。

無力感が、俺を包み込む。

別に何かに押さえ付けられた訳でもないのに、ピクリとも身体が動かない。精神的な部分を、ガッチリと押さえ付けられている。

「んー、どこから話そうかな?」

彼女は妖艶な笑みを浮かべる。

人差し指を軽く顎に当て、あからさまな考えている仕草を見せる。



そして、彼女はゆっくりと話し出した。



だいたいこれくらい書くと、別のアイデア出てきてそっちが書きたくなる作者。しかし、いやたぶん、こっちが終わるまで書かない。たぶん。

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