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大集合!

「…………あ、えと」

「…………あの、さ」

二人同時に呟いて、

「!?」

「!?」

二人同時に驚いて、

「…………うぅ」

「…………はぁ」

二人共、黙る。

そんなワケの分からない変な空気の中、俺達は何も言えないで黙っていた。

理由は簡単。

二人共、恥ずかしくて何も言えないのだ。

先程の騒ぎは、今こうして思い返すとメッチャクチャ恥ずかしい。

思い返せば、俺も俺で思い詰めていたのかもしれない。周りを巻き込みたくないとか言って結局、立花を心配させてしまった。

「……先言っていいよ、トオル君」

「あぁ……あのさぁ」

そう言って、俺はさっきの口論を思い出す。

「……お前、さ。俺にあんなことしたけど……ホント、なんていうか……」

「う……あ、あれ?いや、あれは勢いというか……その……」

こいつ、いつもはベッドインだの何だのとワケわかんない事言ってたけど、こういう所もあるのか。なんか新鮮だ。

ていうか……可愛い。

「可愛い……」

「ふぇッ!?」

「ハァッ!?」

俺も一緒に驚いてしまった。どうやら思っていた事がそのまま口に出ていたようだ。

ていうかこれはヤバい。猛烈にヤバい。

「え……いや、その今のは違うんだって!その……えと……!」

「わぁぁぁ……!!」

ヤバい、こいつの顔がまるで太陽のように輝いている。嬉しさで紅潮するその表情は、自然と口が開いていた。

「言ったよね!今『可愛い』って言ってたよね!いや、言わなかったとは言わせないよ!私はこの耳で聞いてたんだから!」

「い、言ってねーよ!ゼッテェ言ってねぇ!!」

「言った!!絶対言ったから!!もうこれはあれっすわ、交際決定スっよ!!」

テーブルを挟んだ向こう側から強引に顔を近付けながら、立花はギャンギャン喚く。今の一言がそんなの嬉しかったのだろうか。

しかし、このままではペースを完璧に持ってかれてしまう。それだけは何としても避けたい。

よって、武力行使による強行作戦に出ることにした。

「イットゥリョウダァァァァァンッ!!」

「痛ッタァァァァッ!?」

俺は素早くそこに置いてあったお玉を掴み、それを刀のように立花のヘッドへと降り下ろしてやった。

それは見事に、的確に立花の脳にダメージを与えた。立花は少しクラクラしながらも退いていく。

ちなみに何故お玉がテーブルに置いてあるかというと、今は晩飯を食ってるところだからだ。しかも鍋。オンナノコなんだからもうちょっと可愛げのあるものは作れないのか。いや、それは今までボッチ人生を歩んできた俺の勝手な(ドリーム)なのだろうか。

「……酷すぎる。彼女にする仕打ちとは思えぬ」

「勝手に決めつけてんじゃねーよ。ていうか良い音鳴ったな。脳ミソ空っぽっていう証拠だ」

「私、学力は君よりちょっと高いんですけどッ!?ワスレテマセンカッ!?」

「応用力はお前より上だからな。学校の成績なんか頭の良さの基準にはなんねぇよ」

「何ちょっとドヤ顔して言ってんの!?応用力って何!?」

「そうですよ!!真咲さんの方が頭が良いに決まってます!!先輩なんか足元にも及ばないんです!!」

「足元にも及ばないってなんだよ!!大体お前はどうなんだよ!!」

「僕は……まぁ、そうでもないです。うぅ……」

ったく、大して頭も良くない奴が何を言って……

ん?

「「うわあああああああああああああああああああああああああああああああああああッ!?」」

「あ、お豆腐もらいますねー。お、美味しそー」

俺と立花は思わず大きな悲鳴を上げてしまった。

同じ視線の先。

そこには『正体不明(イレギュラー)』と呼ばれる少女、二十八小夜(つづやさよ)がいつの間にか他人の食卓に加わっていた。水が抜けるように小さな穴がたくさん空いたお玉を使って、のんきに豆腐を取っていた。『正体不明』というより『神出鬼没』の方が正しいのではないだろうか。

「にゃ、にゃんで小夜ちゃんがここにいるの?」

「熱ッ!?豆腐めっちゃ熱ッ!!……あ、はい?えーと、真咲さんの料理が食べたくて来ました。以上」

「忍者みたいな奴だな……お前……」

「ありがとうございまーす。Oh、真咲さんの味がしますよぅ!very good!」

(英語使ってちょっとインテリ演出してやがる……ウゼェ)

小夜は、その後もしらたきだの昆布だのと驚くべき速さで取っていく。しかも食べる度に立花への求愛アピールをするので、はっきり言ってメチャクチャウザかった。一方立花は『何故コイツが……』みたいな顔で小夜を見ていた。ちょっと面白かった。

すると、電話が鳴った。早く受話器を取ってくれと言わんばかりの急かすような音に、俺は慌てて電話に駆け寄った。

「はい、神代です……」

次の瞬間。



『久し振り元気してたか愛しの我が一人息子よォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォッッ!!』



聞き慣れた、しかし滅多に聞かない声が受話器の向こうから俺の鼓膜を攻撃してきた。

「ちょ、うるせぇよ!!っていうかお袋かよ!!」

『お袋言うのやめい。愛しのお母様、もしくは母上と呼びなさい。あと江里様でもいいわよん』

「母親を名前で呼ぶ息子がどこにいるんだ……愛しの、とかマジ気持ち悪ぃからやめてくれ」

神代江里。俺の母親で、滅多に家には帰ってこない。仕事なんだろうが、その仕事すら教えてくれない。正直、ちょっと距離感のある母親だ。滅多に会わないから、顔もあまり覚えていない。確かやたら若く見える母親だったような気がする。30代後半のくせに未だに大学生に見えるくらい。

『息子よ……なぜそんなことを口走るようになってしまったのだ』

「なんか威厳を保とうと重い口調にしてるっぽいけど腹立つからやめろっていうかなんで電話掛けてきた?」

『透のツッコミの精度があり得ないほど上がってる……えと、ちょっと暇になったから』

「あそ。今どこに居るんだ?仕事はどうなってるんだ?」

『ひ・み・つ♪仕事についてはノーコメントで☆』

「何一つ答えてねぇ……」

『フフ♪じゃあ場所だけ教えてあげようか?』

「え?」

そう言うと、お袋は黙りこくってしまった。どうしたのだろうか、と俺が受話器に耳を傾けていると。



「こォォォォォォこだよォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォッ!!!」



「ッ!?」

いきなり玄関のドアが開き、とんでもない速度で茶髪の女性が俺に抱き着いてきた。俺はかわすことすら出来ず、そのまま倒れ込んでしまった。一瞬、あまりの驚きに俺の意識が飛んだ気がした。

茶髪の女性、いや、神代江里は俺の胸に顔を擦り付けながら、

「うわー!大きくなったわねぇ、透!!」

なんて叫んでいる。

それだけならいいのだが、

「どれどれ下の方は……Oh、成長しまくってる」

「俺のズボン引っ張ってアレ見てんじゃねぇよ!!キモいわ!!」

彼女には恥じらいというものが無いようで、俺のアレを覗きながら『……あの人とどっちがでかいかしら。やっぱりお父さんはそう簡単には超えられないかしらね』なんて呟いている。

「うわあああああああああああああああ!!誰!?トオル君に何してるの!?」

今の音を聞き付けたのか、立花が駆け付けたようだ。見知らぬ女性の卑猥な行為に驚いているようだ。当たり前だ。

「あら。まさか透ゥ、彼女かなぁ?いやぁ、やっぱ私の息子なだけあってモテるわね~」

「……へ。息子?」

「あぁ、この大学生みたいなババァが俺のお袋。それとお袋、そろそろ俺の息子観察すんのやめてくんない?」

「ババァとか言うな。ていうか、なんかこの金髪少女が来てから大きくなってきてるけど」

「だッ!?いいから離れろ息子依存症!!息子の息子を覗くな!!」

俺はお袋を突き飛ばし、そのままズボンを整える。それと立花、お前は残念がるな。あと小夜、物陰に隠れながら人の母親に目を付けるな。その獣のような目線は先輩の母親に向けてはいけないものだ。



なんだこれ。



なんで自称彼女(たちばなまさき)ボクっ娘(つづやさよ)変態な母親(かみしろえり)がこう都合よく、一同に介するんだ。



母親との再開。あまり会えないという設定で、一年に一度会えるか会えないかというぐらいです。

母親もこんなキャラで、透は大変だ。そして羨ましい。

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