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存在干渉の法則  作者: たびくろ@たびしろ
壊れゆく二人
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疫病神

「…………」

手術室前の長椅子。俺は、そこに座っていた。

まるで神頼みでもするかのように両手を握り合わせ、ただ一つ、祈っていた。

(……舞)

アイツは、どうしてああなったのだろうか。

いつから、ああなってしまったのだろうか。

手慣れた調子で銃を握り、俺のためだと言って何の躊躇いもなく人を殺す。血を流しても、イカれたようになってしまっても、俺を助けるために戦う。

いつからだ。

何故。

どういう経緯で。


誰のせいで。


「俺に決まってるだろ」

なんでこうなる?俺は、その辺にどこにでもいるような、ただの高校生じゃなかったのか?

俺が、ただの高校生だったら。

変な組織に狙われるような、こんな『能力(ちから)』なんて持っていなければ。

こんな事には、ならなかった。

もちろん、俺だけじゃないかもしれない。誠の死も要因の一つだし、実際それがキッカケになったことも事実のようだ。

だけど。

今回の惨事は、アイツの傷は、全て俺のせいだ。

アイツの行動理念は『俺を守ること』だった。俺が居なければ、こんなことには。

「……こんな『能力(ちから)』なんて……何のために……っ!」

俺は両手を固く握り締める。なんで、俺にこんな力が宿ったんだ。

この力は、何も幸運をもたらしてくれなかった。

同型真像(オリジナル)の俺を殺し、同型真像(オリジナル)の立花を復讐の色に染め上げてしまった。同型虚影(ドッペルゲンガー)の立花だって傷付けた。俺が表の立花と関係を持たなければ、作られなかった傷だった。

こんな力なんて、なければよかった。

こんな最悪の、こんな最惡の、こんな災厄の力なんて。

何が助けるだ。

何が救いだすだ。

結局、災いを与えてるだけじゃないか。



その時、『手術中』のランプが消えた。中から執刀医らしい男性が現れた。



「―――――!先生!あの、彼女は!舞は……!」

彼はマスクを外す。そして次の瞬間には、にこやかに笑って、

「大丈夫。手術は終了したよ」

「……!よかった……!」

「ただし、脳の損傷が激しい。精神的な問題が生じるかもしれないね……」

「え……!そ、そうですか……」

精神的な問題……か。俺は小さく俯き、あの時の彼女を思い出す。

『あんたダケハ、守ッテミセル』

『アハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハッッ!!』

『透の周りの人間を全部殺す。透の側にいるのは私だけでいい。そうよ、そうすればよかったのよ』

『おかしいってェ?別におかしくないわよォ?これが私なのよ、アハハハハハハハハハハッ!』

あれは、まさに『イカれた』とか、『頭のネジ吹っ飛んだ』とか言われる状態だろう。

いや、口で言うのは簡単だ。

だけど、舞は大事な人の死を見て、組織としての任務を全うして、色々な葛藤を繰り返した上でああなった。

あんな状態、普通の人間がなるはずがないのだ。

「……ちょっと聞きたいんだけど」

「は、はい?」

「何故、彼女はあれほどまでの怪我を負ったんだい?しかも銃弾ときた。随分と物騒に巻き込まれたね」

医師は訝しげな顔で、そう聞いてきた。まぁ、疑問に思うのも当たり前だろう。こんな事件は、普通ならば起きないハズなのだから。

「……変な黒服の男に襲われたんです。それも三人組に。あいつらは俺を捕まえようとしました。舞は俺を守ろうとして、撃たれました」

「……三人組はどうなったんだい?」

「……死にました。二人は舞が、一人は俺が殺しました」

「……そうかい。悪いことを聞いたね。きっと正当防衛で何とか罪は免れるだろうが、君自身は辛いだろうね」

「えぇ。……でも、アイツは、舞はもっと苦しいんだと思います。あんなになってしまったんですから」

「あんなに?」

そうか、彼は知らないのか。確かに、舞がここに搬入されてからすぐ手術だったから、きっと事件のことなんで聞けなかったのだろう。

「……まるで殺人を楽しんでるかのようでした。人を傷付けるのを快楽としてるような、そんな感じでした」

「そ、そうかい。随分と……バイオレンスな感じかな」

「はい。……俺を守るために……俺のせいなんです。全部……俺の……」

結局。

あの時、俺が死んでいればよかったのだ。木材に押し潰された、あの時。

もう嫌だ。

俺が生きてることで、誰もが不幸になるのなら。

いっそ、死んでしまおうか。

俺が生きていたって、誰も得をしない。むしろ疫病神のように、不幸を振り撒いてるじゃないか。

俺って……。


「俺って、何のために生きてるんだよッ!!」


「ッ!?」

「あ……すいません……」

「い、いや……大丈夫だよ。そこまで思い詰めなくてもいいと思うよ……僕は」

執刀医がそんな言葉を掛けてくれたが、心の支えにはならない。

浅すぎるのだ。

上っ面だけで心配されたって、何の意味もない。逆にイラついてくる。どうせ、この人は早く厄介事から逃げ出したいんだろう。

別に構わない。こんな事に関わりたいと思うほうがバカだ。

それに。


俺に助けを求める資格なんて、無いのだから。



だんだん悲観的になってく透。やっと主人公が出てきた……。なのにこれですよ。作者は相当鬼畜ですね。何言ってんだろ、俺。

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