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存在干渉の法則  作者: たびくろ@たびしろ
壊れゆく二人
62/110

非情な選択肢

「え……?」

何故?

何故、こんなところで『あいつら』が出てくる?

(透を捕まえる?そんなのは聞かされていないわよ?)

そんな事は、昨日の電話では聞かなかった。というより、そもそも『あいつら』と会話すらしていない。

なんで?

なんで、こんな―――――――――



――――――彼らは、彼も狙っているわ。あなたの幼なじみ、神代透君もね。



「――――――!」

そうだ。私は、水瀬が言っていた言葉を思い出した。

『あいつら』は、透を狙っている。

なんで狙っているのかは知らない。透が『界転(リバース)』を使えるからだろうか?

いや、それはない。私は『あいつら』に身体をいじくられて、『界転(リバース)』を使えるようになった。何もない私にそれを宿らせる『あいつら』が、それの事を何も知らないとは考えにくい。

ならば何故?

何故、『あいつら』は……。

「スマンな、榎田」

男の一人が、私に声を掛けた。

「お前に言うと、反対すると思ってな。悪いが、連絡はしなかった」

「あんたらは……なんで、透がここにいるのを知ってたの?」

「お前の携帯を傍受させてもらった。あらかじめ、話は聞いていたってわけだ」

その男がリーダー格なのか、私に近付いてくる。

私の前で立ち止まると、こう言った。

「これから彼を連行させてもらう。大丈夫、危害は加えない。少し協力してもらうだけだ」

「……なんだよ、協力って。お前ら、一体何なんだよ」

透が敵意の視線で睨み付けながら言う。

しかし、その足は震え、声も軽く上ずっているようだ。やはり、どこかで恐怖感が残っているのだろう。

「俺達は……まぁ、組織だ。特に名前は無いんでな。そのまま組織とでも呼べばいい」

「……何余裕ぶっこいてんのよ。私がそんなこと許すと思ってんの?」

私が透を庇いながら、彼の前に立ちふさがる。

こいつらに透は渡さない。

透は優しくて、本当に優しくて、私の先を行っている。

『闇』に染まらず、『光』を突き進んでいる。

そんなコイツを、『闇』に染めたくはない。殺人や裏切りが当たり前の世界へ、放り込みたくない。

私は、自分のポーチに手を伸ばす。その中には、鉛で人の命を断てる塊が入っている。

しかし。


「あんまり抵抗すると、血が飛ぶぞ」


ガチリ、と。

私の頭に、私が手に取ろうとしたものと同型のものが突き付けられた。その瞬間、私の手は本能的に動きを止めた。

「……っ!」

「舞!」

「おっと、お前も動くな。コイツの頭から血が噴き出すのを見たいのか?」

私が動けないまま、他の二人が透を押さえ付ける。両腕を掴み、透は身動きが取れなくなっているようだ。

(透……!)

「……あんた達、こんなことして誰かが通り掛かったら……!」

「その点は大丈夫だ。この辺はうまいこと人が通り掛からない様になってる。例えば、ベタだが交通禁止の看板を立てるとかな」

つまり、その辺の情報管理は万全というわけだ。

もちろん、

「銃声なんか起きれば、辺りの人にはバレるだろうけどね……」

「まぁ、そうだな。住民が窓を開けたりしても、ここの公園は木が多いせいで見通しが悪い。だから見つかる可能性は低い……が、音だけはどうやっても防ぎようがない。ま、お前が抵抗しない事を祈ってるがな」

(コイツら……心理的な面でも私を押さえ付けてる)

私がもし動いたとしても、コイツらは銃を撃たないかもしれない。周りに感付かれるのを避けて、他の方法で私達を押さえ付けるかもしれない。そうすれば、私にも勝機がある。

だけど、コイツらは躊躇なく撃つかもしれない。私を、殺すかもしれない。そうなれば、その先は私には何も出来ない。

その二択。

僅かな可能性をわざと与えることによって、私の判断を鈍らせる。どっちにするかの選択で、心を揺すぶる。

どうすればいい。

どうすれば、私達は助かる?

私はまるで救いを求めるように、透に目線をそらした。

「くっ……そ!舞!」

「…………!」

彼は、あくまで私を助けようと、必死にもがいている。

(そうよね)

そう。

(私は、何をしたかったの?)

私は、透を助けたかった。『闇』へと、進ませたくなかった。

だったら。

だったらやることは一つ。



私は、



透へと、駆け出した。



「っ!?くそ!」

その時、私はどんな顔をしていただろう。

苦しい顔をしていたのかな。

悲しい顔をしていたのかな。

まぁ、そんなのどうでもいい。

私は今、



撃ち貫かれるだろうから。



私が最後に見たのは、

透の、信じられないとでもいうような顔だった。

私が最後に聞いたのは、

普通の、映画とかでよく聞くような銃声だった。

カラオケって楽しいですよね。ドリンクバー付きだとなおよし。うん。

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