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一時の休息

「ねぇ、感動の再会の中水を差すようで申し訳ないんだけどさ」

私と江里姉ちゃんが抱き合っていると、先程の金髪赤眼少女が話しかけてきた。

「あなた達ってどういう関係でどういう経緯なの?ちょっとよくわからないんだけど」

あれ……?この声どこかで聞いたような……?

さっきは状況がわからずろくに聞けなかったが、確かに聞いたことのある声だった。

「舞ちゃんは知ってるはずよ。あなたの命の恩人でしょ?」

江里姉ちゃんが、離れた後にそう言った。

命の恩人……。聞いたことのある声……。

ということは声しか聞いたことのない、お互いを見たことのない関係。

あ。


「た、立花さん!?どうしてここに……!?」


「やっと思い出したの?一方的に電話かけてきて、散々『頭の回転が速い』だのなんだの言ってたくせに」

彼女、立花真咲(たちばなまさき)は敵対的な視線でこちらを睨んできた。電話の口調から私にあまり好印象ではない事は察していたが……これまで敵対的だとちょっとヘコむ。

「あと質問に答えると、私はあなたの『素材』みたいなモンだから」

「そ、素材……?」

私が首をかしげていると、江里姉ちゃんは、

「まぁ、それも含めて今から説明するから。とりあえずどっか座って?適当なところにね」

彼女にそう言われて、私はようやく周りを見回すことができた。

でも、私はここを覚えている。

ここは、研究員の休憩室みたいなものだ。広さと不釣り合いなライトが一つしかないのは、確かいつも研究員がみな、コンピュータの画面とにらめっこしているために、目を休めるのも兼ねているから……とかだった気がする。

端にある自販機から、江里姉ちゃんは私達に一本ずつジュースを買ってくれた。それを両手で包み込みながら、私達は白い長椅子に座った。背もたれがない、プールサイドなどによくあるようなアレだ。

立花さんも長椅子にゆっくりと座った。座りながら、彼女は小さく『エノ君晩ご飯ちゃんと食べてるかな……』なんて呟いていた。

あ、そういえば……。

「ねぇ、立花さん。今何時かな?」

すると、彼女は少し苛立ったような表情を向けた。なんだろう、嫌われてる?

「あぁ……今は大体七時過ぎってところだと思う」

「あ、七時ですか……って夕飯!ヤバイ、誠の夕飯作ってない!江里姉ちゃんが買い物のタイミングで連れてくるから……!」

「てへ☆」

「てへ☆じゃないよ馬鹿か!どうしよう、あの子餓死しちゃうよ!」

とりあえず携帯を見よう。私は携帯の電源を入れると、画面をタッチしてメール画面を見る。

一つだけメールが来てる。誠からだ。

(あぁ……心配させちゃったかなぁ……)

そのメールを開くと、


件名:楽しんでらっしゃい


本文:帰ってくるの遅いから先にカップ麺でも食ってるわー

姉貴だからどうせナンパでもされてんでしょ?

明日の早朝に家でお待ちしております。

姉がベッドの上ではドSになると信じてる弟より


「………………」

「どうしたの、榎田サン……ってなんでメール消してんの。誰から?内容は?」

「知らない」

アイツ、姉貴を侮辱しおったな。シメあげたる。

ナンパはされた事あるけど、速攻で逃げたから大丈夫。

私は無言でメール作成画面を出し、たっぷり五分掛けてこんなメールを書いた。


件名:死ね


本文:しねシネ死ねしねシネ死ねしねシネ死ねしねシネ死ねしねシネ死ねしねシネ死ねしねシネ死ねしねシネ死ねしねシネ死ねしねシネ死ねしねシネ死ねしねシネ死ねしねシネ死ねしねシネ死ねしねシネ死ねしねシネ死ねしねシネ死ねしねシネ死ねしねシネ死ねしねシネ死ね


「送信っと。あー、すっきりした」

「呪いのメールじゃんそれ……ホラゲーみたいだね」

立花さんが私の携帯を覗き込みながら言う。

「いいのいいの。あの子きっとこれ見ても何の反応もしないと思うから」

「じゃあ何で書いたの?」

「ストレス発散」

私は満足げに携帯を切ると、そのまま顔を上げる。

目の前の椅子に、江里姉ちゃんが座っていた。顔を上げ、ジュースを口に含んでいる。

「じゃあ、さっさと話してくんない?水瀬、アンタと榎田さんの関係ってのをさ」

立花さんが急かすように言うと、江里姉ちゃんは小さく笑った。

「まぁまぁそんな焦らなさんな。今話すから」

江里姉ちゃんは、向かいの長椅子の上で足を組みながらニヤける。

(やっぱスタイルいいなぁ……足長いし、胸もデカいし……)

「何見てんの舞ちゃん?男の人みたいにジロジロ……フフ」

「ふぇ!?い、いや……相変わらずスタイルいいなぁと……」

江里姉ちゃんは白衣をまとってはいるが、身体のラインが丸わかりだ。私が覚えているかぎりでは、確か彼女は露出が多い服が好みだった気がする。今だって、白衣の下にはへそ丸出しのタンクトップ、下は黒いハーフパンツに黒いサイハイソックスだ。なんというか……男が食いつきそうな感じがプンプンする。

「あら、ありがと。嬉しいわね」

彼女は素直に喜んでいるようだ。私的にはけっこういろいろ含んだつもりなのだが。

「……まぁ、結構アレな格好だよね、水瀬は」

いや、ジャージの前を全開にしてるあなたが言うな。

「……さて、そろそろ話しましょうか?」

彼女はそう言ってジュースに口を付けると、一気に飲み干した。



「私たちが知り合った経歴、そしてあなたたちをここに集めた理由を……ね」



……夏休みが……終わる……あぁ。

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