相変わらずの二人
「わーいトオル君の家だワーイ!」
「勝手に上がり込んで来やがってよく言うぜコノヤロウ……」
あのあと30分以上も討論していた俺達は、とりあえず話し合いの場を設ける事にした。
で、俺の家になった。
もちろん俺が立候補したわけではない。立花が当然の如く、
『トオル君の家がいいです!決定!ニャー!』
『ニャーじゃねぇよ!嫌だよ!?俺絶対嫌だよ!?』
『うーん、別に先輩の家でもいいんじゃないですか?』
『お前までッ!!』
そして現在に至る。あぁ、チクショウどうすりゃいいんだ。コイツらを家に入れたら隣から苦情が来ること間違いなしだ。うるせぇし。
「ふーん。先輩の家って結構整理されてますねー意外」
「意外っていうな意外って。整理整頓は基本。コレ当然」
俺の家は一戸建ての小綺麗な感じである。両親は仕事の出張でしょっちゅう居ないため、基本的には俺が一人で住んでいるようなものだ。
その為、一階の居間はほとんど使用しておらず、小綺麗なままなのだ。俺は飯以外ほぼ自分の部屋で生活しているから、一階が汚くなることはあまりないのだ。
……ちょっと見栄張って俺が片付けたかのように見せ掛ける。おい俺、策士だな。
そんな自分に酔いしれていると、立花が俺の袖を引っ張りながら、
「トオル君の部屋行こ!ベッドイン!ベッドイン!」
「冗談じゃねぇお前と一緒に一晩過ごしてたまるか!!」
「えぇ~こんな可愛い女の子と寝れるのに~?」
「や、やめろって変な事言うんじゃねぇ!!」
「あ~、赤くなってる~可愛いなぁ、コノコノ」
立花が馴れ馴れしく俺の頬をつついてくる。俺はそれを払うと、立花の肩を強引に引っ張って居間のソファーに座らす。
「ほら、お前はここで大人しくしてろ!」
「ちぇ、トオル君としたかったのに」
「ふっざけんな!!俺は死んでもしたくねぇよ!!」
「あぁ、この身体をトオル君にめちゃくちゃに―――――ってやめて痛い!!ガラスのコップで殴るのは痛いって!!気持ちいいけど!!」
俺は我慢出来ずにガラスのコップを構えていたが、立花が喜んでしまうのでやめた。ったく、コイツ何しても性的快感に変換してしまうから対処法がない。助けてくれ、誰か。
俺が仮にコイツとベッドインしたが最後、そこから生きて出られなさそうな気がする。最終的にカラッカラのミイラになって死ぬ。絶対。
「先輩、僕はどこに座ればいいですか?」
「あ、えーと、勝手に好きなとこ座ってくれ。今ジュースか何か持ってきてやるから」
「私はトオル君の体液全般を一リット……すいませんすいません包丁は流石に恐いですゴメンなさいゴメンなさい」
俺が台所から包丁を持ち出す仕草をすると、流石の立花も大人しくなった。
とりあえず冷蔵庫からかの有名な炭酸飲料を取り出すと、それを三つのコップに注いだ。立花が何やら期待の目で俺を見ているが気にしない。見なかった事にしよう。ここで奴の要求を飲めば俺も変態に成り下がってしまう。それだけは御免だ。
とりあえず二十八と立花のコップを持っていく。俺のは最後でいいか。
「ほら。炭酸で大丈夫だったか?」
「あ、全然大丈夫です。いただきまーす」
「女の子の奴から持ってくるっていうね!レディーファースト精神があるね!さすが私の彼氏!」
「へ、変な風に褒めんなよ。別にそういうわけじゃねぇし……」
ちょっと恥ずかしくなってしまった俺は照れ隠しついでに自分のコップを取ってくる。
(はぁ……彼女ならもうちょっとマシな子がいいよな……それぐらい俺に選ぶ権利があってもイイハズだろ……)
何故あんな変態もひっくり返って逃げる程のド変態に彼氏扱いされるんだ。冗談じゃねぇよ。神よ、これは俺が今まで送ってきた人生の報いなのか?だったらなんでもしますのでコイツと俺の仲を引き裂いてください。その為だったらアイツと一晩寝てもいいですよ。それからもう一生出会わないのであれば。
そんな叶わない願望をしながら、俺は居間に戻る。
「で、何の話だ?そもそも二十八、お前が俺に話し掛けてきたからこうなったんだ」
「えーとね、私とトオル君のラブラブ結婚生活の話を……」
「お前に聞いてない。ほら、何の話だ?」
うるさい立花の顔面を押さえ付けながら、俺は二十八に問い掛ける。
「えーとですね……まず、僕は先輩に質問があるんです」
「どんな質問だ?ってうわキモい立花俺の手のひら舐めてんじゃねぇよ汚ぇな!!」
「アハハ……あ、それと僕の事は下の名前でいいです。小夜で。そんな堅苦しく名字で呼ばなくても」
「いいから質問してくれねぇか?俺もうコイツのせいで手のひらベタベタなんだよ」
俺は立花の顔面から手を離すと、もう片方の手を固く握ってアッパーカットを喰らわせてやった。立花はそのまま後ろに倒れた。よし、これで大人しくなるだろ。
「あ、はい分かりました。それじゃあ……」
二十八……じゃなかった、小夜は小さく息を吸い、俺の目をじっと見つめてこう言った。
「先輩は『界転』の力を使えますよね?」
「は?」
一瞬、小夜の言っている事が理解できなかった。
俺のこの力について知っているのは誰も居ないハズだからだ。立花にも話してはいない。
「まぁ、使えるのは最初から分かってますけど。実はですね、僕にも変な力があるんですよ」
そう言った小夜の顔は、まるで小さな子供が新しい自分のオモチャを見せびらかすような、そんな悪戯っぽい笑みだった。
立花さんが一番書いてて楽しいキャラですね。うん。




